2番手スター論と2番目スター論

 

宝塚歌劇団は5つの組のトップスターを頂点とし、

他の組子をピラミッド型に配置する「スター・システム」を取っています。

 

男役の中で、トップの次の番手に居るのが2番手スター。

そう一言で表現しても、2番手スターの中には、

トップ間近な人も居れば、そもそもトップ路線に乗っていない人も居ます。

 

それらを区別するために、一部のファンは、

2番手スター、2番「目」スターと、呼称を変え呼び分けていました。

 

本日はそんな2番手スター論を、

私の視点で分析していきたいと思います。

 

2番手スターの証:2番手羽根&舞台写真東西7枚以上

 

2番手スターの一番明確な証拠、それは2番手羽根を背負うこと。

そしてパレードでトップスター、トップ娘役の前の順番で降りてくることです。

 

それと同時に各種グッズが発売され、主要カレンダーにも掲載、

歌劇やグラフといった雑誌関係の表紙にも登場するようになります。

 

最近の傾向で言うと、新米2番手スターは、

舞台写真東西7枚からスタートし、

トップ路線に近づくと、これが東西8枚に増加します。

 

ここまで到達すると、あとはトップの座が空くのを待つのみなのですが、

最近では美弥るりかという2番手退団例が発生してしまいました…。

 

それ以外の瀬戸かずや、愛月ひかるは、

舞台写真7枚以下の次作で退団となりましたので、

基本的には舞台写真8枚に辿り着けば、

「本人が待てる限り」ほぼトップコースと言って差し支えないでしょう。

 

強い2番手スターの証:1本物で2番手羽根

 

2番手スターの中でも「強い」人は、

1本物大作のパレードで2番手羽根を背負う場合があります。

(例:真風涼帆『王家に捧ぐ歌』、望海風斗『るろうに剣心』など。)

 

そもそも1本物のパレードは、

原則トップスターのみが大羽根を背負うことが多いです。

 

それを敢えて2番手スターまで背負わせるということは、

「彼女が2番手スターなんですよ」ということを、

内外に広く知らしめる意図があるように思います。

 

例えば月城かなとは2番手昇格直後の『I AM FROM AUSTRIA』にて、

いきなり1本物で2番手羽根を背負いました。

 

これを見て「こりゃトップも間近だな?」と思っていたら、

あれよあれよと3作でトップに就任。

しかもその間の2幕芝居物の『ピガール狂騒曲』でも背負っていますので、

まさしくトップまで一直線!!という感じだったのでしょう。

 

ちなみに、柚香光『CASANOVA』や

彩風咲奈『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』など、

トップ就任間近にも関わらず背負わないパターンもあります。

 

これはきっと演出家側の美意識によるものだと思いますので、

1本物で背負わなかったから弱い、

という理論にはならないことが注意が必要です。

 

最強の2番手の証:主演として全国ツアーを回る

 

そして2番手スターとしての最終究極系は、

全国ツアーを主演として巡ること、です。

 

そもそも全国ツアー公演は主催が劇団ではなく、

各地方の興行主に興行権を売る、いわゆる「売り興行」。

 

各興行主としては絶対にチケットを捌ききりたい、

劇団としては収益を最大限にしたい、という互いの思惑から、

当然ながらトップスターが巡業することが絶対でした。

 

だがしかし、100周年以降は宝塚バブルにより、大劇場は常に満員御礼。

全国巡業もトップスターでなく2番手でも埋められるようになり、

小川前理事長の牽引のもと、2番手全ツが頻繁に開催されるようになりました。

 

直近例だと、

柚香光『メランコリック・ジゴロ/EXCITER!!2018』

礼真琴『アルジェの男/ESTRELLAS』

彩風咲奈『炎のボレロ/Music Revolution!-New Spirit-』

月城かなと『ダル・レークの恋』※コロナにより東上公演に変更

 

他にも、

珠城りょう『激情/Apasionado!!III』

紅ゆずる『風と共に去りぬ』

早霧せいな『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』

 

など、共通点は全員そのまま自組で昇格していること。

これは「各地の観劇者を大劇場に引っ張ること」が

劇団の最終目標であることを思えば、当然ですよね。

 

しかしながらコロナ禍により安定して上演が出来ない今、

今後も2番手全ツが行われるかどうかは不明です。

 

2番「目」スターの定義について

 

ここまで2番手スター内の序列の話をしてきましたが、

そもそも、ここに辿り着いていないけれども、

組内の番手上2番に居る人たちのことを、通称・2番「目」スターと呼びます。

 

具体的には

・2番手羽根ではなく、肩羽根やモフモフなどを背負うorそもそも背負わない。

(現在の根拠で言うところの)舞台写真が6枚以下である。

という状態を指します。

 

そして一番分かりやすいのは、

カレンダーや雑誌の表紙に掲載されないこと。

過去の2番「目」スター、すなわち涼紫央、悠未ひろは、ここに該当しました。

 

なので逆説的に、2番手にも関わらず2番手スター扱いを微妙にされていない、

→トップスターになることのない彼女たちを

2番「手」スターではなく、2番「目」スターと呼ぶようになったのです。

 

なぜこのような扱いにしたかと言えば、それは彩吹真央の存在です。

彼女は正2番手スターとして活躍していたにも関わらず、トップになれず退団。

 

それが明らかに音月桂のトップ就任のためと思われたため、

同時期に起きた96期生騒動とともに、ファンに大混乱を生んだのでした。

 

ここから劇団は、トップにするつもりのない2番手スターは

2番手扱いをしない、というサインを出すようになります。

これが2番「目」スターの始まりです。

 

時代で変わるスターのかたち

 

ここで気になるポイントは、

この2番「目」スター論は全て過去の話になりつつある、ということです。

 

最近2番手で退団した瀬戸かずや&愛月ひかるは、

正式な2番手スター扱いされたうえで退団していきました。

 

そして現状2番「目」と思われる水美舞斗は、

カレンダーや雑誌(現状宝塚グラフのみ)の表紙にも登場しています。

 

その理由は何故でしょう?

劇団として多くのスターを華々しく送り出してあげたいという労いの意味か、

あるいは少しでもグッズを売って収益を上げたいという計算か。

 

もちろん私には分かりませんが、

少なくとも少し前とは番手の考え方が変わっている可能性が有るのは確かであり、

それは3番手スターの微妙な格上げからも見て取れる気がします。

 

人気の有るスターに相応の立場を与えたい、と言えば聞こえは良いですが、

次期トップという立場の意味での2番手が分かり辛くなっているとも言え、

応援するファンの皆さんの心理的には、まぁキツイですよね。

それでもスターを信じ、応援するしかないわけですが…。

 

そして人事を読む、という行為も、

時代の変化とともに変えていかなければならないのかもしれません。

2番手スターという価値が変わりつつあるのか、今後の動向をゆるりと見守りたいと思います。

 

☆★☆★☆

ランキング参加始めました!!

ぜひポチっとお願いします↓↓

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

コメント

  1. 五條 より:

    大変わかりやすい説明ありがとうございます。
    他ブログ等でも、朝美水美瀬央が2番手羽根背負っただ背負わねーだで色々騒ぐ割に、じゃあ2番手羽根ってそもそもなんやねん?今後どうなんねん?を書いてくれるところは少なかったもので(羽根の有無を無視し2番手と2番目が混在した記事はありましたが)。私のようなニワカには大変助かる記事です。

    正2番手の証である2番手羽根を背負った後、
    ①そのままトップ
    ②組替え後トップ(明日海?壮も?)
    ③退団(上級生に多い2番手切り)
    ④組替え後退団
    ⑤専科へ
    と5つのルートがあると思うのですが、2番手羽根を背負った以上④と⑤はない(今までにはなかった)、と考えてもよろしいのでしょうか。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      絶対と言うことはありませんが、確かに言われてみると研13を過ぎた正2番手には自組でトップ就任か他組へ落下傘するか退団するかしかなさそうですよね。ただ少し前までは新専科含め色々なパターンがありそうです。

      • 五條 より:

        ありがとうございます。そうか新専科もありましたか…
        コロナで今現在もガンガン中止になってますし、今後イレギュラー等なにがあるかわからないですね。

        個人的には芹香はほぼ確定で朝美はリーチ、鳳月は流石にまだ風間2番手は(聖乃や極美、縣らと比べて)早いのでしばらくは辞めない。その後の本命は永久輝暁で、水美瀬央和希はなにかあった時のスペアルート(北翔や壮のような)かなと感じてます。

  2. N より:

    いつも楽しく拝読しております。
    朝夏まなとさんもベルばらのフェルゼンとマリーアントワネット編でトップ直前に全国ツアーを回られていますね。

  3. こころ夫人 より:

    いつも楽しく興味深く、拝見しております。
    2番手と2番目って、何とも辛い線引きですね。
    グッツ販売や機関誌の表紙のあるなしで、実感させられます。
    瀬戸さんの時も感動でしたが、今月の歌劇誌の表紙の鳳月さんには、既に大羽根を背負ってはいますが、月→花→月の経過を観劇して、垣間見ただけの私ですが、しみじみ感動を覚えます。
    様々組事情や環境の違いはあろうかと思いますし、今後の事は確かではないにしろ、一つの結果として、本当に良かった、凄いと思いました。