月組『ELPIDIO』キャスト別感想

 

月組『ELPIDIO』観劇記、後半はキャスト別感想編です。

 

【前半の全体感想編はコチラから】

 

主演コンビ:鳳月杏&彩みちる

 

鳳月杏が演じた主人公は、過去にワケ有りの詩人、ロレンシオ。

彼女の魅力と言えば、クラシカルな男役像の中に、

謎の「クセ者」感があるところだと思いますが、

そんな彼女のスター性が生かされた、実に面白い役どころだったと思います。

 

アルバレス侯爵との演じ分けもさることながら、

思い出という呪縛、そこからの脱却、

冷たい男のようで微かに香る人間臭さ、光刺す希望の予兆といった、

細かな心情表現が見事に表現されていました。

 

鳳月杏が望む大恋愛物ではなかったかもしれないけれど、笑

とはいえこの作品は彼女なくしては成立しえないものだったと思います。

 

そしてヒロイン:パトリシアの彩みちる。

雪組時代はキャンキャンうるさい(褒めてます)子役専科のイメージがありましたが、

『CITY HUNTER』から一転、淑女キャラへと路線転換大成功。

 

本作では見た目の麗しさだけでない、

知性を兼ね備えながら、けどどこか貴族的な世間知らずで、

だけどひたむきに努力する現代思考の女性像を見事に演じ切りました。

 

ロレンシオとパトリシアの関係性で実に特徴的なのは、

昼メロ的ドロドロ恋愛劇をしているはずなのに、なぜか爽やかなこと。

 

そう、見目麗しい男女の燃え上がった肉欲、ではなく、

あくまで思想的に惹かれ合った恋愛として描かれていたのが面白かったですし、

それが成立し得たのは、二人の「品の良さ」がゆえだと思います。

 

2番手格:彩海せら&きよら羽龍

 

あっさり2番手格での登板となった彩海せらは、

アナーキスト集団に身を投じながらも、

決して自分を見失わず、最後までロレンシオを助けたセシリオ役。

 

得意な芸風出し安パイ、かと思いきや、それ以上!!

特にその歌唱力の向上には大変驚きました。

完全に歌ウマ組に昇格ですやん??!!

 

また、ビジュアルも極まっていて、久しぶりの前髪系男子にも関わらず、

きちんと爽やか青年に見えて普通にカッコ良かったです。

 

同じく、娘2ポジションのベニータ役はきよら羽龍。

「Camino」店長の娘にして、

ちょっぴりロレンツォに気があるお転婆ガール。

 

ストローハットにドーナツヘアにそばかすお嬢さんなんて

ずーるーいー!!&かーわーいーいー!!笑

ビジュアル的にもだいぶ洗練されてきましたね。

 

クセ芝居もだいぶ軟化され、瑞々しくフレッシュ!!

その高い歌唱力は冒頭くらいしか生かされませんでしたが、

それでも印象に残るソロで素晴らしかったです。

 

侯爵家:輝月ゆうま&蓮つかさ

 

続いて、アルバレス侯爵家の秘書官であるゴメス役の輝月ゆうまと、

執事であるアロンソ役の蓮つかさ。

この2人は本作のコメディパートを一手に引き受けていました。

 

輝月ゴメスは、デカイ図体と物々しい言い分から、

てっきちりのお堅い人かと思いきや、全くそんなことは無く、

隠れ「イイ人」感が出ていて面白かったです。

 

鳳月杏との二重唱も素晴らしく、

専科生らしい重厚感もある素晴らしい芝居をしてくれました。

 

そしてアロンソ役の蓮つかさ!!

私は嬉しい!!こんなにも芝居上手な人が生きる役を貰えて!!

 

最初は後ろで棒立ちしているモブかと思いきや、

メジャーを持ち出して早口でまくし立てるところに始まり、

最後は拳銃で終わる(物騒)という、

別格男役道極まれり、という美味しい役どころだったと思います。

 

だからこそ、なんでナウオン外すん????!!!!と私は怒り心頭なのですが、

いいんです、だって印象的な出番が多かったもーん。

 

この2人と鳳月杏という実力者トリオがコメディパートを担ったことが、

本作の成功の鍵だったんじゃないかと私は思います。

 

その他のキャストについて

 

その他のキャストについて、まずは酒場「Camino」の人々。

歌劇によると「Camino」はスペインの縮図をイメージしたそうで、

まさに様々な面白キャラがたくさんいるパートとなりました。

 

お得意のやれやれ系店長の千海華蘭、

女性の社会的地位向上を目指すマグダレーナ役の白雪さち花の2人が、

芝居面で本作を引っ張っていたのはもちろん。

 

髭男の佳城葵、スタイリッシュキザな英かおと、

モブ枠でも顔面が綺麗な瑠皇りあ、

若手陣から登板の(たぶん)和真あさ乃と、

それぞれが適材適所で仕事しつつ、少しずつ見せ場もあって良かったです。

 

地味に娘3ポジションだったのが、エステル役の蘭世惠翔。

彩海せら演じるセシリオに片思い中、

ここは同期コンビによる芝居で妙に感動してしまいました。

 

ジプシー役に100期の桃歌雪。

素晴らしいスパニッシュダンスとやさぐれ芝居が良かったです。

フィナーレでは一瞬センターを取ってましたね?

こういう活躍の仕方、好きですよー。

 

そのお供であるギター弾きの青年が、天つ風朱李。

彼女のエキゾチックな顔立ちがよく似合っていて、

特にセリフも無いのに印象に残りました。

 

老け役組に、ロメーロ大佐役の柊木絢斗とモンテス中尉役の大楠てら。

特にロメーロ大佐は第一声から「男!!」って感じで良かったです。

 

不思議なクラシカル月組感

 

ところで、今回の主要キャストは鳳月杏、彩みちる、彩海せらと、

組替え経験者が多いはずなのに、

クラシカルな月組の印象が残ったのが不思議でした。

 

月城かなとに代替わりして以降ガラっと空気が変わったはずなのになぁ、

と思いきや、白雪、千海、輝月、佳城といった、

前代時代から活躍していた強い別格組が全員いるからかもしれません。笑

 

さすが芝居の月組だなと思わせる芝居力で作品を引っ張り、

見事「裏切りの名作」にしてくれたメンバーに、改めて乾杯!!

ぜひ最後まで上演出来ることを祈っております。

 

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コメント

  1. 五條 より:

    いやー素晴らしかったですね。流石は月組。芝居がスムーズで破綻しない。シリアスコメディラブロマンス一人二役なんでもござれ。
    みちるの歌こんなに聞いたことなかったんですが、割と歌えるんですね彼女。彩海も期待にはキッチリ応えられたのではないでしょうか。さあ月でバウ取れるかな?

    正直演出面は癖強すぎて、これ月じゃなかったら事故るかもなと感じました。説教臭くてもう…黒幕も、誰?っていうw 出てない(ですよね?)人物を黒幕でしたー!って言われましても、いや知らんがなって。
    襲撃に対してわかってる上で1人で待ち構えるとかも意味不明。いやいくら元軍人とはいえ対4人+刃物ですから普通に負けます。しかもこっちは武器なし!あり得ない…。序盤から戦争云々死者がどうとかとシリアスな事言ってるのに、そこは温いんかい!という。誰も死なないものを作りたいなら、初めにそこ触れないでよかろうと。
    ちなつの最後の説明長セリフも演出のやり方としては下の下。シナリオ広げすぎて無理矢理回収しました感がありました。

    ただ、コメディ部分を含めエンタメに特化する部分は徹底的にやってますし、今後悪い癖が薄まればだいぶ期待できますね(ていうか、期待したい!)。場面転換やダンスパートへの入り方は素晴らしい!流石は振付師、やりますねえ!このあたりは明確な強みですよね。

    恐らく星のも今回のも評判は本人に伝わってるでしょうし、いい部分は伸ばし、悪い部分は改善されればいいのですが…
    演出家は先生じゃない、客はエンタメ求めて来ているわけでイデオロギー&説教ゴリゴリで来られても困惑するだけです。まずは楽しめないと。
    主義主張は大変結構ですが、客に説教だなと捉えられた時点で(宝塚の)舞台としては失敗してます。講義ならわかるのですが、講義求めて宝塚見に来る客は0ですし。
    形は違うかもしれませんが、鷹翔のバウにアレな香ばしさを感じるのですが…w

    もし改善されなかった場合、今後は明確なハズレ演出家とみなされると思います。せっかく主演とれたのに演出コイツかよーっていう。SとかKとかに並ぶかなと。

  2. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、拝見しております。
    前回の作品感想に続き、キャスト別感想、とても素敵な記事でした。ありがとうございます。
    そうですかー、そうなんですねー。蓮さん、ぴったりの役なんですね、よかった~。
    柊木さん、みせてくれましたか~。わぁ、楽しみ!
    ちなちる・あみおはね、まゆぽん…、早くみたいです。
    来週、梅芸DCで観劇するのが、俄然楽しみになりました!ありがとうございました!

  3. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    「ELPIDIO」、第1幕は面白かったです。第2幕は、うーん・・・個人的にはしりすぼみでした。

    謝先生は、事件が現場で起きずに背後で起きていて、面白そうなところを語りで済ませる。小劇場演劇での、「予算の都合」に合わせて、なるべくセットや舞台転換を少なく書く癖がしみついているのか?

    第2幕は、軍のクーデター未遂計画の描写をするとか、最後のロレンシオのひとり語りは、国王への直訴のシーンでしたほうが舞台映えしたのでは?将校や国王の衣裳はいくらでも倉庫にあるでしょうに。

  4. ずんだもち より:

    ポスターがアレで食指動かずだったのですが、評判が良いので視聴しました。全体感想は面白かったです。
    コメディ部分もちょうど良いさじ加減でした。舞台装置もシンプルで美しく見やすかったです。
    彩みちるは今まで子供と色っぽい姉さんの役しか観たことがなかったので、今回の役は新鮮でした。彩海せらはちゃんと青年らしくて妙に感激
    きよら羽龍は可愛かったですね。暗いものを背負ったアナキストの彩音星凪も印象に残りました。
     人は多面体、物事も複雑で簡単に白黒つけられない というメッセージは受け取れました。が、序盤、時代背景の説明セリフが多く、スペインの植民地の紛争まで語られても、頭が追いつきません。画面越しなだけについうっかりリモコン持って、巻き戻ししそうになる。
    ひと筋の光を見つける物語の終わり方は良いと思いますが、スペインもイタリアもいずれ独裁政権になって行くので、(今年上半期はネバセイ上演しましたし)あの人達はどんな人生を歩んで行くのでしょう。
     
    扇を使った男役群舞は超カッコ良かった!