古典はやはり素晴らしい・雪組『ベルサイユのばら』感想

 

彩風咲奈の退団公演である、

『ベルサイユのばら』を観劇して参りました。

 

 

さっそく私の感想を綴っていきたいと思います。

 

良い意味で期待を裏切った作品

 

今年で上演50周年になる『ベルサイユのばら』。私はこれまで2001シリーズ(2001年の星・宙)、生誕250年シリーズ(2006年の星・雪)、宝塚100周年シリーズ(2013年〜の月・宙・雪)を映像で見ただけで、実物を観たことがありません。そしてベルばらはオスアン編、オスカル編、フェルマリ編、フェルゼン編の大きく4つがありますけど、この中だとフェルゼン編がブッチ切りで低評価です。そう、10年前に上演された雪組フェルゼン編は、客を舐めてるとしか思えないほどの最悪な脚本だったと思います。

何が酷いって、客がベルばらを知っている前提で作られた内容であること。裏を返すと、初見さんがその舞台を観ただけでは話の筋がさっぱり分からない、素っ頓狂で珍紛漢紛な内容であること。客に理解させようとせず、ブツ切りの継ぎはぎでチグハグな自己満足絵巻を、よくもまぁ商業興行として金とって上演したなと驚くくらい。

そんな前提条件があった中で本作を観に行ったので、それはもうハードルをおもっくそ低くしていたわけですが…。あれ、想像よりちゃんと観れたぞ???確かに1幕は物足りない部分もあったけれど、2幕からは名場面が目白押しなハートフルな展開で飽きさせず、不覚にも最後はホロりときてしまいました。

ど、どうした?と驚いていたら、有識者によると90年上演の花組版を下地にしているそうですね?wikiによるところの通称「踊るフェルゼン編」と呼ばれる、あの。なるほど、時代とともに改悪される一方のベルばらですが、まさか35年の時を超えて過去のきちんとしていた頃の作品を準拠するとはっ…!!良い意味で期待を裏切ってくれたおかげで、普通に楽しむことが出来ました。

 

ただ一つの文句とそれ以上の喜び

 

話の大筋は、フェルゼンの回想→マリーアントワネットと出会った仮面舞踏会→フェルゼン・マリー・オスカルの三角関係の示唆→フェルゼン&マリーの蜜月→マリーの立場のため別れを迫られるフェルゼン→スウェーデンに帰国→オスカル&アンドレ「今宵一夜」→マリーの窮地を聞きパリへ向かうフェルゼン(1幕終了)→新場面のパリ革命ダンス→行け行けフェルゼン→オスカル&アンドレのバスティーユ陥落→死刑前夜の最後の別れ、という流れ。

10年前の壮版と違い、フェルゼンとマリーアントワネット2人の場面を(それでも短いけど)入れ込むことによって、ちゃんと愛の物語になっていたし、その分オスカル&アンドレが「出会って数分でセ〇〇ス」みたいな超展開になってますけど、みんなが見たい「今宵一夜」があり「千の誓い~」のセリフもあり、2幕にバスティーユの場面をもってくることで出番を分散。かつ、そのまま最後の別れの場面に繋がるので、物語的に意外と自然に入り込めました。

た、だ。個人的に文句を言うとしたら。

フェルゼン(&マリー)編の重要アイテムは「人形」だと思うのです。とするなら、フェルマリ編冒頭にある幼少期マリーの場面(母・マリアテレジアから「フランスから愛される女王になってください」と言われ旅立つシーン)はやっぱり欲しかった。夢見る少女が「私は夢の花嫁人形~♪」と歌うからこそ、パリ到着時にメルシー伯爵から「もう子供ではないのだから」と取り上げられ、だけど死刑直前の最後の面会で返されて、「このお人形がわたくしで、わたくしがお人形だったのですね」という悲しい呟きが映えるし、その人形が最後にフェルゼンの元に残ることに哀切を感じられるのに…。

ま、今回はサヨナラ仕様のためフィナーレが長めに設定され、かつジャンヌという美味し過ぎる名脇役が再登場したから時間の尺的に仕方ないのかもしれません。はい、今回はジャンヌ大勝利ですよね。よくもまぁこんな魅力的なキャラが長々と(91年雪組版を最後に)封印されていたことよ。もちろん、それを魅力的に演じてくれた音彩唯のパワーによるところも大きいですが…これは長くなりそうなのでキャスト別感想で綴ります。

 

やはり古典は素晴らしい

 

確かに『ベルサイユのばら』は演出手法が古いかもしれない。緞帳前芝居も多いし、場面はブツ切り。キャラの背景が描き切れていない不親切設計、ですが、古典作品でしか得られない感動があるのだな、と本作を観て改めて思いました。鐘の音と「ごらんなさい♪」で始まるオープニングも、歌舞伎のような言い回しも、デデーン!!という巨大効果音も、何もかも愛しい。大階段を断頭台に見立てるラストシーンを生で見た時は「これが…伝説の…っ」と感動すらしてしまいました。

そして、私の応援しているスターがオスカルを演じる喜びったら…もう…。バスティーユの場面なんて、あえて古い表現のままでいこうという気概が感じられるわけですが、だからこそ胸に迫る何かがあって、その真ん中に朝美絢がいることに例えようのない高揚感が止まりませんでした。

その一方で、2幕冒頭の革命ダンスや、いけいけフェルゼンの背景映像が現代的だったりと、令和ならではの演出方法もあり、単純に凄く楽しめました。特にラスト大階段に「バラを散らせた」映像を映したのは、タイトル回収(&場面の区切り)としてお見事でした。

やはり古典は素晴らしい!!この作品が観られて本当に良かった。ぜひオスアン(orオスカル)編もやって欲しいのですが、2025年に上演しないんですかね…。ってことで50周年ベルばらが1人でも多くの方が観られますように、最後まで完走出来るよう祈っています。

 

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コメント

  1. エマ より:

    私も映像では何度も見ていたものの、初めて生でベルばらを観劇し本当に感動しました。
    古典的演出が一周回ってまさに昭和レトロで逆に新鮮さもありました。

    名場面の連続でなんだかんだ納得してしまいますし、愛あればこそなどの曲も古めかしいのに場面に合っていて、オーケストラで聴くと感動以外の何物でもありませんでした。

    特に、彩風咲奈さんと夢白あやさんと朝美絢さんが
    植田歌舞伎を見事に昇華、体現し素晴らしい演技でした。
    汝鳥伶さんもこの方だから描かれたメルシー伯だろうと思わせる名演技でした。

    御年90歳で伝統と新たな挑戦とを両立させている植田先生は凄いと恐れ入りました。
    流れが不自然だったり、全部説明してくれれる緞帳芝居に苦笑する場面もありますが
    また宝塚のベルばらを上演してほしいですね!!

  2. かめちゃん より:

    オスカル朝美絢めっちゃよかったですよねぇ。配役時(というか和希そら退団発表時)には、「朝美絢はアンドレでしょ〜!」と拗ねてましたが、いざ舞台を見ると、朝美オスカルはビジュアルも役作りも素敵でした。

    お人形の演出は、過去作に明るくないこともあって十分満足できました。ファルマリの蜜月でのやりとりだけでも、ラストのアントワネットのこぼれ落ちた「私がお人形」に涙がこぼれました…こればっかりは作品への思い入れと好みですかね。

    ※余談ですが、蒼汰さんは『アナスタシア』でも、「あの日(過去)のパレードについて、どこかでお辞儀シーンを入れ込んだほうが…」とご指摘されていたかと思うので、キーとなるシーンは強調して描いて欲しいタイプなのかなとお見受けしました…(ちなみに私は『本当にアーニャがアナスタシアかは断定されない(できない)』解釈が好きなのであの日のパレードはいらないな…と思う派です)

    本筋から外れて申し訳ありません!キャスト感想も楽しみです!

    • masa 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます!
      ギクッ、言われてみたらそうかもしれません…。たぶん私は「伏線回収」にカタルシスを感じるタイプなので、そのキーとなるフラグをちゃんと明示して欲しいだけなのかも、と気付かされました。

  3. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、拝見しております。
    わが姪は、祖母、叔母も巻き込み、東京遠征もして、ベルばらを堪能しております。
    世代の違いで、感想はことなりますが、時代時代のオスカル、アンドレ、フェルゼン、そして叔母はアントワネットに思い入れがあります。
    姪と私は、専ら、今回の朝美オスカル、です。彩風フェルゼンは、ブルボン王朝で、浮いてしまうぼくとつさが、彩風さんの素を思いおこさせてくれて、真のカッコよさをみせてくださったようにも思えます。
    雪の王子様、大千秋楽まで、どうか宝塚人生を楽しんでください。やはり、いいですよね、雪組。

  4. アオセトナ より:

    こんにちは。

    確かに今回のベルばらはちゃんとして見やすかったです。
    失神婦人方のくだりもあるにはあるけどしつこくなかったし笑

    ただ、今回の前評判は見聞きせず観にいったので
    「あ、今回はバスティーユなしか」と思ったら唐突に始まって今更感。
    それなら2幕冒頭でよかったかと。
    (革命ダンス自体はかっこよかったですが、古典の中では浮いてただけに)

    あと、フィナーレがほぼサヨナラショー風味というのも…。
    やっぱりベルばらのフィナーレがみたかったです。
    パレードでフェルゼンが「宝塚我が心のふるさと~」って下りてきたときには椅子からずり落ちそうでした笑。

    最後にそのパレード、2階席でしたが彩風ひとりぽっちで??でした。
    客席から登場なんてさっぱりわからんし。
    サヨナラなら余計にみんなに迎えられて階段下りて欲しかったです。
    2階席ほったらかし演出やめてほしいですね…。
    演出家には2階席に座って客席降りの時の微妙な空気を感じて欲しいです。

  5. WEST より:

    お読みした時は、きちんとしていた!?あれが?蒼汰さん何言ってるの??と思ったのですが・・・確かに再演される度に更にどんどん改悪されていったので、あれでも「きちんとしていた頃の作品」なのかも・・・と悲しくも納得してしまいました。
    あれだけ不評で東京公演でカットされた「フェルゼンからのお手紙」を復活させることはなかろうに・・・とは思いますが。

    幼少期マリーについては役を増やす意味でも賛成です。
    お人形もですが、幼少期と断頭台で対になっている、さようならお母様、さようならウィーン、さようならオーストリア も好きなので、出来れば入れてほしかった。
    あ、踊るフェルゼン編でもやってなかったので、それ準拠と言われれば仕方ないですかね。

  6. より:

    今の公演を初めて観た時にモヤっとしたことを解決して頂きました。
    いつも有難うございます!
    何かもう一場面入れられなかったか?と終演後に時計を見たら5分オーバー。
    無理かー。でした。
    確かに蒼汰さんのおっしゃる場面を入れたらエンタメとして原作を良く知らない方にも伝わりますよね〜。さすがでございます。

    今回見て思ったのは『ベルサイユのばら』ってオスカルとマリーアントワネットがダブル主演のような原作なのでフェルゼン編ってどうしても無理が出てくるんだ、そこに登場人物がそこまで多くないのと組事情で役付きを考えるとどうしても歪みが出てくるんだなとつくづく思いました。ベルバラ再演にかなりうんざりしてましたが、観たらやっぱり凄いと思えた今回はあの世界観をきちんと魅せようとした生徒、スタッフと50周年の歴史の賜物なんだなと思った次第です。
    オスアン編、全ツで是非やって欲しいです。

    オスカル良かった〜!予想以上でした。オペラで観ていてアップで視界に入って来た時には美しすぎて息を飲みました。観たいオスカルを魅せてくれてしっかりあーさオスカルにハマりました。そして縣アンドレが大健闘!これが大きいです。最近の縣くんは似たような役やコミカルな役が続きアンドレ大丈夫だろうかと恐る恐るでしたが、心配ご無用でした!稽古で苦しんだかもしれませんが、こういった飛躍のチャンスを掴まないとスターの階段は上がれません。これからの雪組も楽しみです。

    千秋楽まで無事に駆け抜けられますように!!