宙組新トップスター・桜木みなとのプレお披露目公演、
『ZORRO THE MUSICAL』を観に東急シアターオーブまで行って参りました。
すごーく良い席で観させていただきました。
感想をさっくり書いていきます。
若谷先生はレンブラント
2008年初演の海外ミュージカル、ロングランを経て世界中で上演されている作品ということで、安心安全なんだろうなと思って観に行きましたが、まさしくザ・海外ミュージカルな作品でした。キザな男役芸ではなく、純粋な歌唱力や発声、フラメンコ調の怒涛のダンスシーンが目立っていて、良い意味で宝塚らしからぬ作品というか、(会場東急シアターオーブなのもあり)外部っぽい作品だなぁと感心してしました。レンブラントのようなドギツイ色味と光のコントラストは、まさしく若谷先生らしい演出で本当に素晴らしい。ぜひポスト小池氏として大劇場で早く大作を手掛けて欲しいっす。
舞台はカリフォルニア。市長には二人の息子がいたけれど、父は後を継ぎたがる誇り高き長男ラモンではなく、誰からも愛される優しい次男のディエゴを後継者に指名。スペインへの留学を勧め、そこから溝ができる二人。父の死後、市長となって圧政を敷くラモンを打倒するため、ディエゴは立ち上がるのであった…。
まず個人的に面白いなと思ったのは、長男ラモンは「秩序」を大変重視していること。だいたい悪役は女や金に目がくらんで圧政を強いるものですけど、彼は違う。ルールや規律で雁字搦めにすることで、人々を「正しい」道に導けると本気で信じている。だから秩序を乱せば即処刑などということを、平気でやってしまう。だけどそれは、正しい行いをしてきたはずなのに父に選ばれなかったがゆえに起こしている歪んだ行動なわけですけど…まぁ同情の余地はありませんね。
主人公のディエゴは、兄の前では道化を演じながらも、夜は正体不明の仮面の男・ゾロとして人々を守るため立ち上がる。やがて彼はみんなからヒーローと呼ばれるようになり…って完全に雪組『ROBIN THE HERO』と同じ。新トップお披露目だからヒーロー誕生ってマンネリ過ぎるにも程がある。だけどそこは海外ミュージカル、齋藤先生のようなお寒い演出もなく、緊張感と切なさが入り混じった王道の展開で、素直に観ることが出来ました。
主要キャスト別さっくり感想
そのディエゴを演じた桜木みなとは、もうエネルギーが有り余ってるのか主演者としての吸引力が物凄かったです。特に伸びやかな歌唱力は圧巻で、今までセーブしてきたパワーを全てぶつけてやる!!!みたいな謎のパッションを感じました。情けなモードのディエゴのヘナチョコ風味は彼女は、これまで何回も何回も見てきたものですから笑っちゃうほど板についていたし、だからこそゾロモードとのギャップが出ていて良かったです。お披露目がこの作品・役で大正解だったと思います。
ヒロイン・ルイサを演じた春乃さくらは、トップ娘役としての風格充分に大成長しましたね。ちょっとお堅い良いところの淑女系ヒロインが本当に良く似合う。桜木みなとに引っ張られているのか力んだ歌い方にちとビックリしましたが、気の強い女の子の役だし、これでオッケーなのでしょう。『カルト・ワイン』で分かっていたとはいえ、桜木みなととの並びも思いのほか良かったです。
2番手格・ラモンを演じた瑠風輝。圧巻のスタイルが本当に素晴らしい。ただ、ラモンという役が救いようのないクズ過ぎて、父に選ばれず歪んだ背景を思えばもっと同情されて良いはずなんですけど、それが出来ないくらい嫌な役として見事に演じ過ぎたのか、スター本人の魅力に直結しづらそうだなぁと思ってしまいました。例えば鏡に映る自分に見惚れている様子とか、もっとコミカルに見えても良いはずなのになぁ…。ま、そんな弄っちゃいけない笑えないレベルでナルシーくんに見えて凄かったっす。
だけどこの「本当は笑ってよいはずなのに笑えない」のは、3番手格・ガルシアを演じた風色日向も同じだったんですよね。第一幕にて、主人公一行に目隠しされる場面とか、もっと客席が笑ってあげれば良いのに…過剰リアクションの月組までとは言わないけどさ(小声)。あまりにシーーーーンとしていて、ちょっと気の毒に思ってしまいました。例の事件の影響で宙組観劇時は微笑み禁止なるものがお触れで出ているのかと思いましたが、桜木みなとの場面ではどっかんどっかん笑いが起きてたし。なんだろうなぁ、真面目過ぎるのかなぁ?
ただ、やはり天彩峰里演じるイネスとの関係性・やり取りにはホロリと来るものがありました。はい、彼女が今回のMVPです。というか、天彩峰里史上一番の役だったかもしれない。根無し草のジプシーでありながら、陽気で情に厚いみんなのアネキ。最初は主人公が好きで世話を焼いていたけれど、その流れで風色ガルシアとも良い雰囲気になっていき…という。物語の裏カップルとして悲恋が進行するのってウエクミがよくやる手段でしたけど、いや本当に泣いちゃいますよね。天彩峰里のカラリとした笑顔も、キっと睨む表情も、なにもかもが本当に良かった。
新生宙組の夜明け
全体的に素晴らしい公演だったんですけれど、ただ一つだけ文句をつけるとしたら。
フラメンコ調の怒涛のダンスシーンは確かに圧巻でした。まさに熱情の律動。いや、本当に凄かった。だけど…ちょっとしつこいよね。
長尺のダンス場面が何回も何回もあって、だけど出てるキャストも変わらんから、「また?」と我に返る瞬間があったのは事実。ストーリー展開が王道過ぎて何の捻りもないからこそ、単調に感じてしまった部分もありましたね。例の事件の影響で経験値の少ない若手にも出番を、ってことなんでしょうけど、同じこと『Razzle Dazzle』でもやっていたからこそ、余計に。
【追記】個人的には、例えば弟が生まれる前から父の後を継ぐべく死ぬほど努力したシーンとか、実はヒロインのルイサが子供の頃から好きで弟にばかり構う姿を見て嫉妬に狂った、みたいなシーンを少しだけでも入れていたら、もっとルイスに同情出来ただろうし、宝塚らしい三角関係の愛憎劇になっただろうにな…と思う一方で、長過ぎるダンスシーンは抑圧された市民の怒り(=舞台に立てない宙組タカラジェヌンのもがき)で、ルールにうるさいラモンが倒されハッピーエンドで勧善懲悪=新生宙組の夜明け、というのが主題なんだなと私は思ったので、長過ぎるダンスシーンも意味があるもので、悪役に徹した瑠風ラモンは正解のキャラ造作なんですけど、だからこそ同情しずらい役どころなのは仕方ないのかなとも思ったのでした。
新生宙組の熱き一体感を感じられた本作。この熱い熱いパッション魂で千秋楽まで駆け抜け、新体制への弾みになると良いですね。
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コメント
いつも拝見しています。
ラモンに同情の余地ないと仰っていますが、私は特に終盤の独唱と少年時代のラモン目線の様子を通して、彼の不器用さを感じ、号泣しました。
単なる二項対立の悪ではなく、拗らせまくった上での悪という感じがして、父親の育て方でもう少し何とかならなかったのかなと思いました。
悪役なのに最期の場面が救いにも見えたところに、キャラクター造詣の重厚さを感じ、感動しました。あれだけの悪事を重ねたのに同情の余地があるラモンに嵌まる人多そうだなと。
人によって捉え方が違うものですね。自分と違う感想を知って、興味深かったです。
最後のシーンが救いになっている、というのは観劇後に他のブロガーさんの記事でもちょこちょこ見かけたんですが、私はそこに至らなかったんですよね…。ラモンを撃った後にあっさりハッピーエンドを迎えたことも含めて、愛憎劇というより勧善懲悪ものに近いのかな、と。
例えばラモンが親の期待に応えるべく弟が生まれる前から死ぬほど努力してた様子とか、あるいは実は好きだったルイスがディエゴばかり構うことに子供ながら嫉妬してた…みたいなシーンが最初の頃にほんの少しだけ差し込めば、ラモンに感情移入出来るし宝塚らしい三角関係構図になっただろうにな、と思う一方で、そうすると本作の主題からはズレていってしまうのでそうならなかったんだろうなとも思ったり。難しいですねぇ。
お陰様で少し頭が整理されたので、記事に追記させて頂きます。
蒼太さん、観劇感想楽しみにしておりました!
この宙組別箱、両方とも頑張ってチケットとりましてすでに観劇しております。
ゾロの感想、なんだか私が思った事を言葉にして下さったような、ほんとそうですよね!と思いました。
桜木さんはゾロも情けないディエゴもザ 桜木みなと!
持ち味にぴったり!そしてうますぎる瑠風ラモン。
鏡のシーン、苦笑いしたくなるもシリアスすぎて笑えないし。強すぎるさくら嬢。あんなに闘うトップ娘みたことない。。フラメンコは凄いけどお話のすじとしてあと30分短くしてフィナーレ長くとってくれたらなあ、なんて思ったのと。なんといっても天彩さん!大海賊のお役と似ていますが今回のイネスは舞台上の天彩さんイメージの最たるもので、ダンス、歌、お芝居。全て最高!!どうしましょう、さくら嬢がいくら上手くても天彩さんの前ではかげります。。そしてKAAT REDSTONEも水美、きよら、ゆゆお三方と高翔さんのお力で最早宙組でない組、水美組となっておりました!!REDSTONEもぜひ蒼太さんに観ていただいて感想をお聞かせ頂きたいです!!
いつも記事を楽しみに拝見してます。
幸運に自分もゾロを見る機会があったのですが、桜木みなとは予想より良く、今後に勢いが付いたのではと思います。元からの破綻のない舞台技術に加えて、自然にユーモアを混ぜられるようになったところに成長を感じましたね、007の時はまだちょっと無理してる感があったのに良くぞここまでと思いました。
あと春乃さんも良かったが、天彩さんは特に輝いていましたね。正直瑠風さんを演技で食っていたと思います。
既成の海外作品という点では十分合格点だと思いますが、ただ宝塚らしさと言う点では正直物足りないと思いました。敢えてスターの没個性を目指していないのに、ミニ劇団四季みたいなものを見せられている感じを受けます。特にモブ達が所謂アンサンブル過ぎて、調和を重んじ過ぎでは?と思いました。
それが宙組らしさといったらそれまでですが、そうなると宙組と宝塚のスターシステムって水と油なので、そりゃスターが生まれにくい、となってしまうんですよね。真逆は月組ですね(踊りは結構揃ってないが、、、それはご愛嬌)
宙組の復興の気配を感じたと共に、構造的な課題も見えた良い作品だったと思います。
これからも楽しい記事お待ちしております。
初日明けてほどない頃に観劇しました。
宙組生のエネルギーに圧倒されました。フラメンコ場面は多かったですが、喜び悲しみ怒りを全て表現できることに感動して、しつこいとは感じませんでした。
ついに外様の重石がとれた生え抜きトップの桜木さんはしなやかで伸びやか。
ダンス 歌 階段を使った立ち回りと消耗しそうなのにあのエネルギーはどこから来るんでしょうね。
風色さんは天彩さんあってのものでしょう。同期の天飛&彩海に比べて経験不足は否めない。でも私が観たときはちらほら笑いが起きてました。むしろラモンの鏡の前、ここ笑うとこだよね?と思ったのに客席静かでした。
一番笑いをとってたのは雪輝れんや の神父さまかな 笑
長身の瑠風さんと風色さんの軍服姿の映えること!オペラがたくさん上がってました。
春乃さん本当に綺麗になりました。しっかりヒロインです。
そして舞台を一段格上げしているのはやっぱり天彩さんです。何をやっても上手い。ヒロインを立てつつ自分の役も演じるサジ加減は絶妙。どんなに叩かれても舞台に立ち続ける彼女の信念を見た思いです。
月が煌々と照らす夜と薄いベージュを基調とした昼間で乾いた大地を感じられましたし、ジプシーの衣装は色とりどりなのにどきつくならない加藤真美先生の色彩センスにも脱帽。そういえば昼と夜 ジプシーと民衆 ディエゴとラモン ルイサとイネス 皆対になってました。
話は単純明快でも歌とダンスが素晴らしいので、桜木チームを敬遠した人にもぜひ配信を観て欲しいです。
余談 桜木弟分の泉堂さんがキラッキラしてます!