月城かなと・Best Acting Selection

不定期更新シリーズ『95期生 Best Acting Selection』、

95期生が出演している公演の中で、

私が個人的に好きな役・作品を3つ選んで紹介していく連載企画。

(オススメ作品ではなく、あくまで私が「好き」な作品です。)

 

本日は、正直なところ7名中3作選びに

最も迷った月城かなとです。

 

本題の前に、唐突ですが彼女って

雪組時代と月組時代で

持ち味が変わったタイプだと思いません?

 

私は完全に月組へ組替えした後の彼女の方が断然好みで、

深く考えずに選んだらオンリー月組作品になってしまいました。

 

今回の記事のために

雪組時代の彼女の出演作品をひたすら見返したのですが、

やっぱり月組時代の彼女の方が 私 は 好み。

 

よって今回はオール月組時代となっておりますので

雪組時代の彼女が好きという皆様、ごめんなさい。

ということで参りましょう!!

 

本公演『BADDY -悪党は月からやって来る-』ポッキー巡査役

 

この『95期生 Best Acting Selection』は

時系列で作品を紹介している関係で

飛び道具的な今作を最初に書くハメになってしまいました。笑

 

というわけで奇才・上田久美子氏初のレビュー公演にして

色んな意味で物議を醸した一作。

 

月城かなとはと言うと、ポッキー巡査という

ちょっぴり気弱な情けな男子を通し役で演じるわけですが、

 

分かります皆さん?

あの超絶美貌と男役らしい骨太さを合わせ持つ、

月城かなとにそれをやらせるというカオスさ。

 

愛希演じるグッディ捜査官に片思いする彼、

彼女に振り向いてほしくて悪の道へ。

 

前半のおマヌケヘアにメガネ姿からは想像出来ないような、

後半の悪に染まった版ポッキー巡査もそれはそれは麗しいし、

しかも最終的には正義の心で悪のアジトを破壊し殉死、

スイートハートに「男の中の男!!」とかき抱かれるという、美味しい役。

 

もう一度言いますが、

これを月城かなとは演じているというのが

メタ的で面白いよねっていう。

 

ただ無難に美しいのではなく、

別の角度からスターにスポットを当てることによって

もともと持ち合わせたスター性がさらに輝きを増すという、

そんな化学反応が起きた一作だと思います。

恐るべし、上田久美子。

 

バウ公演『Anna Karenina』アレクセイ・カレーニン役

 

同系統の役柄、作風ということで

彼女主演の東上公演『THE LAST PARTY』と本当に迷ったのですが、

個人的にはこっちの彼女の方が好きなのでチョイス。

 

美弥るりか選別バウ公演の2番手役なのですが、

何が良いって、やっぱりビジュアル。

 

ご存じの通り、元の造形が超絶美形なことはもちろん、

髭が似合うし貫禄があり、でも洗練されたスタイリッシュさもある。

 

冷静さという「仮面」で心の中の熱を封じ込め、

それが男のプライドでもあり悲哀でもある

上流社会の男性像として説得力のあるいで立ち。もうね、完璧です。

 

身も蓋もないことを言ってしまうと、

アレクセイって要は寝取られ男じゃないですか。

 

だけどそれを残念な男に見せず、

一つの美として魅力的に見せられる世界観こそが宝塚であり、

それを虚像として作り出すのがタカラジェンヌのパワーであるとするならば、

彼女は立派なスターだと言わざるを得ない役作りだったと思います。

 

何が恐ろしいって、

彼女がまだ当時研10だったことですよね。

 

現宙組トップ・真風涼帆もそうですが、

正統派男役として実学年よりも上の年代の男性を演じて

魅力的に見せられるのは、本当に強みだなと改めて感じます。

 

本公演『I AM FROM AUSTRIA』リチャード・ラッティンガ役

 

つい最近の公演ですけれども、

いやー、個人的には結構ツボな役回りでした。

 

まずはビジュアル、完璧じゃん?

分かりやすい悪役像、完璧じゃん?

ちょいちょい挟まれるユニークなやり取り、完璧じゃん?

 

これまでの経験を集約し、

月城かなとを魅力的に映すに充分な役が

やっっっっときた!!と大喜びだった作品です。笑

 

圧倒的造形美、男役らしいスタイルのスーツ姿はもちろん、

汚職のタンゴで突然のけ反ったり、

無駄に「このウィンナー野郎!!」とメンチ切ったり、

でもどこか憎めない役作りはポッキー巡査や本位田又八などに通ずるなぁと。

 

そして今作を通して、

私は改めて彼女の芝居上手さを再認識したわけですが、

一番分かりやすかったのは、

最後のエマがジョージとの関係を告白する場面。

 

リチャードはエマがパブロとの婚約を発表すると思っていたのに

ドヤ顔→「おや?」→「なに言ってるんだコイツ?」→「おいふざけんなよ!!」と

心情の変化を表情と少ない動作 だ け で分かりやすく表現していました。

(この公演を何回か見ましたが、この場面だけはずっと月城を凝視してしまいました。笑)

 

感情の流れが自然で動作に無駄がなく、

だけど分かりやすいデフォルメとのバランスがちょうど良い。

彼女の職人的なスター性を楽しめる一作だとも言えるでしょう。

 

オリジナル主演作品が1つだけという驚き

 

この記事を書いていて改めて思いましたけれど、

彼女って柚香、礼に続く95期生の3番手として走り続けてきましたけれど

オリジナル主演作品って4年半前『銀二貫』しかないんですよね。

 

トップ就任前の柚香が『ノクターン』『はいからさんが通る』『花より男子』

礼が『かもめ』『鈴蘭』『阿弖流為』、

さらに続く桜木も『相続人の肖像』『パーシャルタイムトラベル』『壮麗帝』と

それぞれ3作品あるのに比べると、やっぱり少ない印象。

 

トップ就任への「カード」として必要かという話ではなく

前述の通り、私は月組へ組替え後の

大人の色香と抜けてるキャラのバランスがちょうど良い今の彼女が凄く好きで、

だからこそトップに立つ前の一番自由な醸成期間

劇団は様々な挑戦をして欲しかったと思うのですが…。

 

まぁもうトップに立つのは確定みたいなものでしょうから

ここまできたら関係無いんでしょうかね、きっと。

 

少なくともあと本公演2作分は2番手スター期間がありますので、

美味しい役・作品に巡り合って欲しいなと一ファンとして願っています。

 

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コメント

  1. コスモスハート より:

    95期シリーズ、興味深く読ませて頂いています。

    月城かなとさんは、All for oneの時のベルドナルドで好きになり、カレーニンで完全にノックアウト?!されました。
    美弥さん演じる色気全開?のアリョーシャとは全く異なる大人の落ち着きが、私なら、カレーニンだわと、完全にヒロインに成り変わり?物語に入り込むという現象になっちゃっておりました。

    無現無双では、あの作品そのものは、??でしたが、本位田役は、笑いも取れる憎めない役、色男、金と力はなかりけり。いいねボタンがあったら、押してます。

    IFAでは、自分の野望とか計略を歌で表現、格好いいけど、お金儲けに燃える雰囲気が、どこか滑稽で三枚目ぽいという不思議な魅力。緑のスーツがインパクトあるな~と着こなせるビジュアルが羨ましい。

    蒼汰さんの次なる企画、楽しみにしています。

  2. MIKA より:

    こんにちは。
    いつもいつも鋭い観察眼に脱帽な記事ですが。

    I am from Austriaが大好きな私は、
    蒼汰さんと同じところを凝視してたと気づいてうれしくなりました。
    曰く
    >ドヤ顔→「おや?」→「なに言ってるんだコイツ?」→「おいふざけんなよ!!」
    の所です。

    宝塚はセリフのないキャストもずっと演技していますよね、
    だからメインキャスト以外にも目を向けたりしますが、
    この時の月城かなとさん、本当にきちんと演技されてましたよね。

  3. あやこ より:

    ちょうど昨日、月組公演を観たところです。月城さんって、おキレイなんですよ、おキレイなんですけど、崩し方もお上手。上品な顔芸(←分かりますよね?)がお見事。目線配りなど、丁寧に研究されているなと感じます。だから、貫禄のある役からダメ男まで、何をやってもサマになる。ズルいぞー。今回の静養が、彼女のお怪我の完全回復になるといいですね。

  4. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。最近YouTube専科の地方民です。

    IFAのリチャード役を見て思ったのは、月城さんは「機嫌がいい」芸風だなあ、と。

    彩風さんの陽属性が真夏のお日さまピーカン的(笑)明るさとすると、月城さんはノリノリのウイーンのオペレッタ「こうもり」的な喜歌劇(きかげき)・軽歌劇(けいかげき)の重すぎず軽快な感じが良かったです。

    最後にパパラッチともども逮捕されて「チクショー!」という役だけど、これが重すぎると最後の「めでたし、めでたし」が苦くなるし。塩梅が絶妙だなあと思いました。

    シェイクスピア喜劇とか似合いそうなんですよね・・・ピガールみたいよう。