さて、実は雪組『ODYSSEY』で遠征した際に
宝塚大劇場で1度見ていた月組『グレート・ギャツビー』。
東京公演でも無事何度か拝見することが出来ましたので、
感想を書いていこうと思います。
(千秋楽公演までに何とか間に合ったぜセーーーーフ!!)
濃厚なガトーショコラのような
…という書き出して始めたは良いものの、
実は言葉を紡ぐのが難しくって。
東京で観劇し、大劇場の出口を出た際、
近くにいたおば様が「宝塚を見たって感じだったわ」と話していたのですが、
「ま さ に そ れ な 」という感想しか言えません。
いや本当、良く出来たミュージカルでした。
話の内容でいうと、典型的な男目線の男のロマンの話というか、
小池先生が好きそうな「ある男の悲哀」でしかなく、
濃密な物語のようで意外と話は薄いですよね。
それもそのはず、過去には2本立て公演にした経緯もある演目ですし、
見ていて引き伸ばしてるな…退屈だなぁ…と思う瞬間もあったのですが、
それを濃密な人間ドラマのように魅せられたのは、
ひとえに小池氏の演出力と、月組生の実力なのだと思います。
美貌と才覚があり、裏社会で生きていける胆力があるにも関わらず、
一人の女性に執着するあまり身を滅ぼす。
男は愚かで、どうしようもなくて、いつまでも青臭くて、
だけど真剣だからこそ美しい、そんな物語に酔いしれることが出来ました。
主要4役のさっくり感想
主人公・ギャツビー役の月城かなとは、
もうその立ち姿だけで美しい!!
彼女が真ん中にいてこそ、この物語が成り立つのだと胸を張って言えます。
映画版に比べ純愛度が強く、一途に愛を貫くその姿が、
ロマンチックでもあり、狂信的でもあったなぁという印象です。
対岸に家を買って夜な夜なパーティーを開いたり、
家に行けば部屋に自分の写真がありったけ飾られてたりって、
普通に考えれば怖いですけど、笑
なぜかロマンティックに見せてしまうのが宝塚的美意識。
その芝居力の高さだけでなく、歌唱力も高安定。
同期の柚香光と礼真琴が飛び道具的なスターであることと比較しても、
正統派としての気品あるスター性が、本作ではより際立って見えました。
ドリーミングボーイな主人公とは対照的な、
リアリストヒロイン・デイジーを演じた海乃美月。
最初の登場シーンからして優雅さを持ち合わせた風格が凄いですね。
私にはなぜか透き通って見えた程です。
根っからの享楽家クレイジーガールではなく、
「バカな女の子になりたい」と言えてしまうオツムがある役作りで、
だからこそ最後にギャツビーを無碍にする流れが納得出来て、
個人的には好きなデイジー像でした。
その夫であり、アメリカ貴族であるトム役の鳳月杏は、
まぁそうですよね、という安定感のある芝居と歌。
「遊ぶのが仕事!!」と言ってなぜか納得できる不思議なチャラ感は、
さすが上級生にしか出来ない芝居作りだなぁと感心してしまいました。
そしてニック役の風間柚乃、笑っちゃうほど上手いですね!!
私たち観客目線を持つ一般人を演じるがために、
ビックリするくらい印象に残らないのですが、それこそが正解であり、
きちんと引き算の芝居でそれを表現しているのだから恐ろしいです。
その他のキャストのさっくり感想
ジョーダン・ベイカー役の彩みちる、私は結構好きでした。
(なので新公の蘭世惠翔版がイマイチと感じてしまったのかも…。)
『CITY HUNTER』から大人の色香路線に走っていますけれど、
見た目がキャンディ属性がゆえに、大人路線に行き過ぎないのが良いですよね。
逆にマートル役の天紫珠李、正直最初は歌詞も聞き取れなかったし、
あの役どころは上手くないとダメでしょってことで、
うーんという感じだったのですが、
東京公演の後半あたりからグンと良くなりましたね!!
これについては新公の白河りり版が歌とガッツキ具合がめちゃめちゃ良くて、
負けてなるものかと急成長したんじゃないかと睨んでいます。
その同期である101期生の礼華はるは、
まさかの上級生すっ飛ばし抜擢で、ギャツビー家の執事(?)のビロクシー役。
とにかく見た目がスタイリッシュでカッコ良過ぎるし、
硬質な芝居もよく似合っていて、爪痕を残せたと思います。
あと、最後のパレードで、スタンバイ中は普通の顔なのに、
一歩降り出した瞬間に「ニコッ」とするのが微笑ましくて毎回見てしまいます。笑
そんな「抜かされた」夢奈瑠音、蓮つかさ、英かおとですが、
インテリヤクザ、素行の悪いヤクザ、陽気なピアニストと、
それぞれ持ち味にあった役どころで抜擢されて面白かったです。
そして小池先生の凄いところは、こういう中堅スターにも、
物語上違和感無くピックアップ場面を用意してくれる点だよなぁとしみじみ…。
特にトムの楽屋訪問場面で見せる、
蓮つかさスレイグル×結愛かれんヴィッキーの歪んだ愛憎シーンなんて、
もうめっっっっっっちゃオシャレよな!!
「お前は俺から逃げられないんだよ!!」のくだり、毎回興奮しています。笑
新公主演コンビの子役、彩海せらルディときよらジュディも微笑ましいですね。
特にきよらは芝居のクセが相当抜け、
かつ、おしゃまな女の子がよく似合っていて良かったです。
(「ブローチ、貰えないわね…」と毒気無くよく言えるなと毎回思ってしまいます。)
あと、白雪さち花のザマスママ、輝月ゆうまのならず物感、
佳城葵の底意地汚いカメラマンも流石の出来栄えですし、
光月組長のウィルソン旦那も、気迫ある芝居で舞台を見事に締めていました。
大人の愛は、ほろ苦い。
そんなわけで本作は、芝居の月組の真価が発揮された素晴らしい舞台であり、
かつ月城かなと率いる今の月組にピッタリな大人な世界観で、
実に見応えのある作品だったと思います。
残念ながら宝塚大劇場での公演がほとんど潰れてしまったのが本当に惜しい…。
東京公演は残り数日で千秋楽ですが、
どうか最後まで走り抜けられるよう祈っております。
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コメント
いつも楽しく、拝見しております。
『ザ・宝塚』。それに、つきますね。
佳城さんの「底意地悪いカメラマン」って、まったくもってその通り。思わずニヤケけしまいました。
月組のお芝居、惹き付けられますね。次回作も楽しみです。
桜嵐記で『お?』と思っていたのですが、ブエノスアイレス、ギャツビーと続く、蓮つかさヤクザ芸の、凄みと迫力たるや!(一回タヌキを挟みましたが。)低音デカ声と、あの流し目。毎回、震え上がります笑。
彩海さんの、ミキ亜星みたいなちびっこメガネも、そうそう!今の君にはそれ!と言いたくなるような愛嬌。
私たち、芝居の月組ですけど何か?という誇りと努力が、隅々にまで感じられる、素敵な作品でしたね。これからも楽しみ!
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
個人的な感想は、ギャッビーは男のロマンというか無垢に殉じた「きれいなお馬鹿さん」で若死にした。
ディジーは「きれいなお利口さん」のおばあさんになって、パメラが女の子を産んだら「女の子はね、きれいなお利口さんがいちばん幸せなのよ」と言うんだろうな。
という身も蓋もない切ない話で、その切なさが「アメリカ文学の最高峰」たるゆえんなのかなあ、と思いました。
小池先生は、宝塚で宝塚っぽい話を楽しむために来ている客に「ディジー、ひどい女ね」と思わせないように、原作には無い、ディジーが葬式で白い薔薇を墓に一輪投げ入れるシーンを入れたのだと思います。
個人的には、そのシーンの追加によって、アメリカ文学の最高峰が通俗的というかセンチメンタル過多になったような気がしてあまり好きではないのですが、いやここは宝塚だからこれでいいのかもしれない、と、自分の中でまだうまく咀嚼出来ていません。千秋楽のライビュで、もういちど味わいながら考えをまとめたいと思っています。