月組『夢現無双』感想

前回は月組公演『夢現無双』の感想にいく前の地ならしを纏めましたが、

月組『夢現無双』感想の前に【雑記】

本日は感想の本編に参ります。

 

『クルンテープ』の感想はこちらから。

月組『クルンテープ』感想

 

前回の記事で「普通に面白かった」と書きましたが、

それは手放しで「最高‼」と誉めそやすものではありません。

突っ込みどころももちろんあります。笑

 

ということで、個人的に気になったところを先に上げ、

良かった点を後でまとめていきたいと思います。

 

まぁ基本的にはこの作品をそこそこ楽しめた人間が

書いている感想だという前提でどうぞお読みください。

 

『夢現無双』の気になったところ

「心の声」多過ぎ問題

 

私は勝手ながら、舞台というものは

「行間を読む」娯楽だと思っています。

 

例えば、同じ「ありがとう」という台詞でも

言い方や表情、声色や動作によって色んな「ありがとう」を意味付けできるし

なんなら言葉を発さなくても、この人は「ありがとう」と思ってるんだなと

観客に想像させてこそ舞台の魅力が光ると思うワケです。

 

なので、それを舞台上に立つスターに発させず、

機械音で観客に伝えるなんて 言 語 道 断 で す 。

 

もちろん、その場にいない人間のナレーションなら分かります。

でもさ、今作の心の声って

演出方法によっては何とかなるものが、たぶん7割くらいはあったはず。笑

 

お通に対しての「大切に思っている」心の声だって、

例えば聞こえないくらいにつぶやくような演出にだって出来たはずなのに

なんでわざわざ心の声演出にしたんでしょうかね?

 

まぁこんな素人の戯言なんかより、

よっぽど深い意味がおありなんでしょうけど

あれだけ連発されちゃうと、はっきり言って興醒めだったなぁ。

もうこれから一公演につき2回までとか決めて欲しいくらいです。笑

 

話の山場が無い問題

 

今作って、とどのつまりは宮本武蔵人生録ダイジェストであり

NHKとかで放送されるような時代劇だと思えば

「まぁこんなもんかな」と楽しめる作品だったと思うのです、が。

にしたって話の山場が無いと思いません?

 

人と出会って技を習得して、要所で佐々木小次郎かお通と再会し…

をただ繰り返してるだけで、話の盛り上がりなんてあったもんじゃない。

 

そもそも、どれだけ日本史に詳しくない人だって

宮本武蔵 = 巌流島の戦いだって思いますよね?

 

だけど今作では、その場面がびっくりするほど短かったわけで、

これは「巌流島を話のピークにしない」という

演出側の強い意図を感じずにはいられませんでした。

 

じゃあどこに照準を合わせていたかと思うと、それも大してなくて、

ただつらーっと教材Vでも見せられてるのかって感じ。

 

あと3分でいいからどこか時間を作って

巌流島決戦前の佐々木小次郎のモノローグとかに当てたなら

美弥るりか出番少ない問題も解決して、

少しは美弥ファンも浮かばれたのでは?と思わずにはいられません。

 

いや、これが普通の作品だったら

「相変わらず美弥は色気があるなぁ」くらいの普通な出番量だっと思いますけど

退団作ですからねぇ…そりゃファンが怒るのも当然といえば当然かなぁと。

 

宮本武蔵の成長物語に照準を当てたにしては薄味過ぎるし、

なんとかならんもんだったのか…と思ってしまう私なのでした。

 

『夢現無双』の良かった点

 

ここまで我ながら辛辣な意見で

「お前本当に面白かったのか?」って感じですけども。笑

ここからは良い点をまとめていきます。

 

オリジナル作品らしい群像劇

 

これに尽きますね。

今の月組はスターのカラーがてんでバラバラなわけですか

やはりそれは、宝塚オリジナル作品でこそより光ると思います。

(間違っても型に嵌めてく必要のある『エリザベート』のような海外ミュージカルではない)

 

ガタイが良くて破天荒な野生児感強目な珠城、

麗しの剣豪がピッタリな美弥、

いつでもどこでもお慕い続ける愛情深い(ストーカー女)美園、

情けなキャラが板についてきた月城、

大人の色香が感じられるまさに役得な暁(本当に一皮剥けたと思う‼)

美しさと浮世離れさが上手に混在されていた海乃、

ヒールとして腹黒い役がハマっていた夢奈、

とにかく濃ゆい白雪、

ダメ当主感が逆にカッコ良かった輝月、

裏ヒロインとして切ない当て馬が似合った叶羽、

狂言回しとして要所を締めていた晴音。

 

書き出してくとよく分かりますが、

スターの特性が生かされた、非常に魅力的な役ばかりだと思います。

 

そんな色んな人物たちが交錯し、

一つの終着点に向かって織り成す群像劇、という意味では

『カンパニー』と同じ魅力を持つ作品だったかなぁと個人的には思います。

 

まぁその終着点が弱いからこそ、

つまんないと感じる人が多かったのも事実でしょうけど

スターを楽しむ宝塚という娯楽においては、

これはこれで良かったのかなぁと私個人としては思いましたね。

 

テンポ感と歌に頼らない演出の妙

 

そして、話がサクサク進むというのも

話に深みがなくなるという指摘も分かりますが、

個人的には良かった点だと思います。

もうね、笑っちゃうほどサクサク進むんですよねこれが!!

 

例えば物語冒頭での「小次郎破れたり」のリフレイン

→武蔵と母の回想

→子供の頃の日常風景

→大人になった2人がせり上がりで登場

→「皆様、本日はようこそ宝塚歌劇にお越しくださいました~」

 

という一連の流れも、場面展開や人の出入りが目まぐるしくてサクサク進み、

それと同時に血潮が滾る感もバランス良くあって、

まさに掴みはバッチリ‼な演出だったと私は思います。

 

 

そして、そんなサクサク感を出すための一つの大きな特徴は

歌に頼らない演出に重きを置いたことではないでしょうか。

 

最近の宝塚は、歌上手偏重主義になりつつあるからか

なんでもかんでもとりあえず歌うわけですけど、

当たり前ですが、歌うと話は冗長になりがちですよね。

 

その点、今作はビックリするくらい歌ってなくて、

あえて歌を最初から放棄することで、その分生まれた時間を

キャストの動きや台詞、殺陣に当てることができたわけですから

視覚的には楽しめた演出だったと思います。

 

他にも、幕が締まり切る瞬間に人が出てきて場面を繋いだり、

くるくる回る盆であっちこっちに人物を配置したり、

(これ凄かった‼)や雪の演出など、

とにかく目に楽しい舞台だったことには違いありません。

 

ナンバーワン見どころを挙げるとすれば

 

以上を踏まえ、今作のベストシーンを挙げるとするならば

「吉岡一門との戦い」でしょう。

 

「心技体」を極めた武蔵が、粉雪舞う吉岡道場にて、

海乃美月のじょんがら節をBGMに70人あまりの剣士と決闘する場面。

 

それぞれのキャストの魅力と、視覚的・聴覚的演出も相まって、

非常に滾る名場面だったと思います。

 

が、これって物語の中盤ですから

そこで山場を感じてしまうのもいかがなもんよって話なんですけどね。

まぁ睡魔と戦うくらいなら良いのかな?笑

 

ということで次はキャスト別感想です。

 

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