追想・蘭乃はなが思い出に変わるとき

トップ娘役というポジションは、

ある意味でスケープコードの役割を担う存在であり、

得てして叩かれまくるポジションだと言えます。

 

下手くそ、ブス、なんでお前が、トップに似つかわしくない、etc…

それはそれは口汚い誹りを受けるわけですけれど、

平成以降の宝塚史30年の中で最も叩かれた娘役と言えば

檀れい蘭乃はなでしょう。

 

檀れいは成績最下位で舞台技術が伴っていない中、

月→雪(1年だけ)→月と無理くりな組替えで他の娘役たちをなぎ払い、

人気スター・真琴つばさの相手役になったことで批判殺到。

 

あまりのバッシングっぷりに

当時存在していた公式HPの掲示板が閉鎖になったほど。

 

とは言え、その後彼女は圧倒的美貌でサヴァイブ。

中国公演では真琴・紫吹を霞ませ「楊貴妃の再来」と賛辞の言葉を送られたり、

『王家に捧ぐ歌』アムネリス『花舞う長安』楊貴妃など当たり役を連発しました。

 

宝塚退団後の活躍っぷりも凄まじく、

CM「金麦」で世のおっさんたちの心を鷲掴みにしたり、

映画界では日本アカデミー賞まで受賞、

一般知名度の高い宝塚OGとして現在も活躍中です。

 

ではその一方で、叩かれトップ娘役のもう1人、蘭乃はなはどうか?

本日はそんな彼女についての正直な感想を書いていきます。

 

珍しいバッシングピーク

 

誰からも愛される完全無欠なスターなど存在しませんが、

一般的に退団発表をすれば、そんな向かい風は収まるものです。

 

「なんだかんだ言ったけど、まぁ頑張ってたね。」

ほとんどの人が、スターに労いの言葉を掛けるはずなのに、

蘭乃はなは退団発表時がバッシングのピークという

ある意味で稀有な存在でありました。

 

それは「蘭乃はな 退団」と検索すればお分かりになると思います。

出るわ出るわ宝塚ブロガーたちの怒りに震えた記事たちが。笑

 

何を隠そう、私はこのバッシング真っ最中期にライトファンになったので

ボコボコに叩かれる蘭乃はな(と夢咲ねね)を見て、

「宝塚とはこういうものなのか」と素直に思ったのを覚えています。

 

そもそも、彼女はなぜここまで叩かれていたのでしょう?

確かにビジュアルは正統派ではないし、歌も不得手。

とはいえダンスは得意そうだし、スタイルも悪くないし、芝居も普通。

 

なんだけれども、例えば最近ファンになった方が当時の映像を見て

「意外と見れれたから叩かれる理由が分からん」というのは

木を見て森を見ずというものです。

 

じゃあ本質は何かと言えば、

まず第一に、実力と人気の割りに任期が長過ぎたことでしょう。

 

前任の真飛も、その前の春野も、任期の途中で嫁替えを1度行っていますが、

逆に蘭乃はなは相手役を真飛、蘭寿、明日海と3回も変えています。

 

平成宝塚史以降で相手役を3人以上迎えた娘役は、

匠ひびき持病による1作退団により後任・春野の面倒まで見切った大鳥れいと、

女帝・花總まりと、蘭乃だけ。

 

特に長い道の果てにやっとトップにたどりついた蘭寿とむが、

相手役として組めたのが彼女だけというのは、ねぇ。

 

おしゃまでお転婆な蘭乃を、蘭寿が大人の魅力で包み込むという芸風は

今見返せば確かにそこそこお似合いです。

けれども、ずっとそれでは流石に飽きます。

 

蘭寿ファン、ひいては花組ファンにしてみれば

全く退団する気配の無い彼女を見て、

「そのレベルでいつまでいるの?」と思い至っても仕方ないというものです。

 

セルフプロデュース力の重要性

 

そして何よりも叩かれる理由となっていたのは、その言動でしょう。

彼女が退団発表時にバッシングピークとなったのは

その前後の立ち振る舞いがあまりにもアレだったからなわけですが、

個人的に一番印象的だったのは、コレ。

 

「娘役のひとつの美意識として相手役さんに添い遂げるというものがあり、一緒に退団するケースは多くあります。もちろん、私の中にも添い遂げる美意識はありましたが、話をいただいた『エリザベート』をやらずして辞めるのは一生後悔すると思ったんです。娘役としてエリザベートをやりたいか、やりたくないか。そう考えた時、奇麗ごとでしかない自分の美意識は捨てようって」

引用元:日刊ゲンダイより「元宝塚花組娘役トップの蘭乃はな “異例の残留”選んだ理由」

 

明日海りおのお披露目は『エリザベート』に決定した。

けど大役・シシィを花乃まりあにはやらせられない。

だから劇団は経験値も豊富な蘭乃に残留を頼んだ。

大人が考えれば、非常に筋の通った話だと思います。

 

とはいえ、もう少し言い方ってものがあるでしょうに。

叩かれがちな蘭乃をフォローしてきた蘭寿が、

そしてそのファンがこの発言を聞いたら、どれだけガッカリすることでしょう。

 

後に彼女は東宝版『エリザベート』のシシィを演じるわけですが、

お披露目公演を踏み台にされる明日海ファンや、花組ファンが、

どんな思いになったのか、私は想像がつきません。

 

はっきり言えば彼女は、

セルフプロデュース力が足りなかったのだと思います。

 

それは彼女が得意なダンスもそうで、

レビュー公演では確かにキレが抜群でセンスも良いのですが、

だけれど凄く自分勝手に踊っているように見えてしまい、

それは現代でドヤ娘と言われがちな真彩希帆舞空瞳なんか目じゃないレベル。

 

これを男役至上主義たる花組のトップ娘役だったんだから

そりゃ叩かれるわな、と思うわけです。

 

そしてそれはナルシズム傾向の強い芝居でもそうだし、

管理人いわく、スカステでの言動も凄かったようで。

(自分は見ていないので分かりませんが。笑)

 

今振り返って思うのは、

誰か彼女に助言してあげられる人はいなかったのか?ということなのですが、

我が世の春たるトップ娘役に忠告出来る人なんて

そういないのかもしれませんね。

 

変わりゆく娘役の暗黙のルール

 

そんな彼女が退団する前後から、

空前の夫婦芸ブームに火が付きました。

ちえねね、ちぎみゆ、みちふう、まぁみり、などなど。

 

それを受けてか、娘役も総ぶりっ子時代が到来。

トップのファンに嫌われないよう、

顔色を伺うような芸風が定着していきます。

 

スカステで放送されているひと昔前のNOSなどを見ると、

娘役が男役に対して思いのほかサバけていて、

昔の方が自由だったんだなぁとライトファンとして驚きました。

 

とはいえ、最近はちとやり過ぎかなぁとも思うわけです。

美園さくらといい星風まどかといい舞空瞳といい、

芸風的にそんなタラタラ喋らんでもと言ってあげたくなります。笑

(華優希はむしろそのままでオッケーでしょう。)

 

これはSNS等で批判が可視化されるようになったうえでの

自衛の意味もあるのでしょう。

いやはや、トップ娘役というのは本当に大変ですね。

 

今の状況を鑑みるに、良くも悪くも

しばらくは彼女以上に叩かれるような娘役はそう表れないと思います。

…変な人事をしなければ。笑

 

蘭乃はなが思い出に変わるとき

 

今振り返って、蘭乃はなとはどういう娘役だったのでしょう。

その評価は皆さんの心のうちでそれぞれ違うと思いますが、

「憧れの上級生:蘭乃はな」という新生タカラジェンヌが

どれくらいいるのだろう?というのがずーっと気になっていることです。

 

その一方で、100周年を迎えるまでの花組を支えたのは確かに彼女だったし、

新公学年時代を月組でともに過ごした間柄だったからこそ、

気難しそうな明日海りおが『エリザベート』で

その重責を果たせたのかもしれません。

 

昨年は明日海りお退団イヤーでしたので、

初代相手役だった彼女の近況をSNS等でちょこちょこ見るようになったのですが、

現役時代の尖りも抜け、普通の綺麗なお嬢さん風になっているのを見て、

なんだか感慨深くなってしまいました。

 

思い出は美化されるもの。

彼女ももう宝塚の在りし日として思い出になった頃合いが

来たのかもしれませんね。

 

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コメント

  1. (旧)紅ペニ より:

    お久し振りです。大好きなエリザベート春野寿美礼さんの最初の相手役さんは、大鳥れいさんでは?
    エリザベートをされてます。
    3、3はここで、やってます。わかりますよね?
    最初に裸足で踊った人トップ娘役、と認識してます、ランノさんは、爪痕は残した?よね

  2. きりん より:

    宝塚の娘役さんに限らず、フニャフニャ喋るのは若い女性の処世術だよなぁと思います。
    私も若かりし頃は、フニャフニャ喋っていたなと思い出しました笑
    今やったら、年齢考えろと言われてしまいますが。

    特に美園さんに思うのですが、もう少しハッキリ喋った方が好感度上がる場合もあるのではないかな。
    こういうのは難しいですね。

  3. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。スカステ専科の地方民です。

    蘭乃はなさん、ねえ・・・本当、おっしゃるとおりですわ。もうちょっと言い回しを考えるとかすればねえ・・・

    でも、私は心底嫌いというわけでもなかったよ(笑)

    宝塚っていいところも嫌なところも日本社会の縮図じゃないですか。

    日本社会って、男性(男役)は多少の逸脱は「個性、やんちゃ」として許容されるけど、女性(娘役)は学級委員長的な優等生でなければ許されない、みたいな窮屈な気風があって、

    私は蘭乃さんを、ちょっと女子プロレスのヒールを見ているような感覚で、面白がっていたところもあった

    (私は花担ではなくて、花組のことはよそさんのことだったので)

    あとね、エリザベート、超わがままで、自分は孤高の存在と思っていて、フランツのことは凡人と思っているやな感じの女で、ある意味史実に近いのでは。個人的に歴代で花總さんの次に人物像としては納得感があった。演技というより地が透けているのでしょうが。

    歌唱力はさすがに評価しないけれどね。

    (ほかの娘役さん、よくできた嫁すぎて、「ウソゥあなた公務をほったらかして旅に出ないわ」と思うことがあって)

  4. 私もライトファン より:

    蘭乃はなさん、個人的にビジュアルがすごく好みだったので、あまり叩かないであげて…と思ってました。「気難しそうな明日海りお」(笑)も彼女にはずっと優しく接していたように思うのでいいコンビだったのでは?夫婦芸じゃなきゃダメとは言わないけど、ミリカノのギスギス感には心が冷えました。普通に仲良くして欲しいのが人情というもの。「エリザやりてぇー」というのも正直で好感が持てます。卒業後のめざましい活躍がないのは実力かなとは思いますが印象的な娘1だったと思います。

  5. abbie より:

    蒼太さん
    いやぁ〜タイトルがかなりウケました!爆

    つい先日のOG達が集結したYouTubeを見て、誰この人?ってずっと判らなかったのが紅さんと蘭乃さんでした。

    紅さんは、出演者の名前欄から辿ってあとから成る程と思いましたけど、蘭乃さんだけは名前が判ったあとでも全く面影が違いすぎて、いまだに同じ人とは思えない程です。

    話は変わりますが…
    私は演技者として現トップ娘役の華ちゃん好きなんですが、彼女を観て、蘭乃さんを見ると踊れるってやっぱり強みなのかしら?ってそれなりに納得します^^;

    でも本当にエリザベートのときはウンザリでしたね。東宝版では悪ふざけはやめてねって…信じられない思いでした^^;

    マミちゃん追っかけしてましたので、抜擢されたばかりの頃の檀ちゃんの棒演技、踊れなさには失笑を禁じ得なかったものです。

    安奈淳からのオールドファンなんですが、マミちゃん退団後は当時の宝塚のひっちゃかめっちゃか感が嫌でヅカから10年も離れてまして、後から空白の時期のDVDを観ると、檀ちゃんがすっかり自信満々な感じで楊貴妃やってて驚きましたね…。演技に関してはやっぱり上手いとは思えないけど。

    長々書いてしまいましたが、このタイトルに久しぶりに笑わせて頂きました。有難うございましたっ♪

    因みに私が好きな娘役トップは、遥くらら、白城あやか、白羽ゆり、咲妃みゆ…です。
    男役は、安奈淳、麻実れい、麻路さき、真琴つばさ、壮一帆、ちぎちゃん。

    え?聞いてない?
    こりゃまた失礼いたしましたっ♪
    …それにしても娘役はまだしも、男役に関しては一貫性がないような。

    宝塚は歌あり芝居あり踊りあり、好きになるキッカケは様々で、だから愉しいですね。

  6. めいみ より:

    蘭ちゃんは単体では好きです。
    でも、私の場合は蘭寿さんが贔屓なくらい好きだったので、
    それを考えるとコンビの相性としては微妙に思え、ヤキモキしました。
    もう一人くらい、蘭寿さんに釣り合う大人っぽい演技もできるトップ娘役でコンビを観たかった…( ;∀;)

    でも、あの気難しいみりおちゃんが
    蘭ちゃんには全幅の信頼を置いている、って感じでしたし
    びっくりしつつ仲が良いのは見てて良かったです。
    外野からバッシングされても、
    コンビが仲良しなら割とホッとしますからね。

    私も失言してしまうことが多々あったので、
    蘭ちゃんが悪気はないのはすごく分かるんです。
    本人は悩みながら考えて言ってるんだってことも。
    だから叩くまではいかないなーって感じですかね。
    その正直さも含めて、
    もっと良さが出ていたらよかったのになーって思いました。
    賛否両論あると思いますが、
    見た目は宝塚っぽい娘役だったと思います。

  7. 通りすがり より:

    こんにちは。
    いつも参考にしたり感心したりしながら拝見させていただいてます。

    ひとつだけ気になったので…

    檀れいさんが楊貴妃の再来といわれた中国公演は、星組公演に専科生として出ており、真琴さんはもう居ませんでしたよ。
    紫吹さんはエミクラちゃんと組んでいたので霞むも何も…です。
    情報は正確にお願いします。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントとご指摘ありがとうございます。
      少し前に真琴つばささんがテレビで記事の内容を話されていたので、そこから引用して書いたのですが、
      「楊貴妃の再来」と正確に言われたのが星組公演の時ということなんでしょうかね?
      書く前に一応調べたのですが、これだと月組公演の時の評価に見えるんですよね…。
      http://www.sankei.co.jp/enak/sumirestyle/2005/jan/kiji/07danchan.html

      って自分で書いといてなんですが、「再来」だからそりゃ星組の時なのかなぁと思わなくもなかったり。不勉強ですいません。

      • まりん より:

        間に割って入ってすみませんm(_ _)m
        余計かもしれませんが、当時の月組ファンでしたので。

        檀ちゃんの楊貴妃の再来は月組の中国公演の時に言われていましたよ。中国で物凄い人気だったので、星組の中国公演にも参加されたんだったと思います。(その為の専科だったのではないと思いますが)

        宝塚と言えば男役❗な日本と違い、檀ちゃんは登場するだけで大盛り上がりだったので、お歌がもにょもにょでも拍手の量が全然違ったので真琴さんや紫吹さんが霞んでいたと言うことだと思います。

        • こんちゃん より:

          更に間に入ります。スカステ専科の地方民です。

          檀れいファンのオールドファンとして老婆心ながら

          昔週刊誌で、山口百恵さんのTVドラマが中国で放送された時、中国の方は彼女を「楊貴妃の再来」と呼んだ、という記事を読んだ記憶があります。

          外国の東洋人(日本とか)の美人を「楊貴妃の再来」と呼ぶのは中国のことわざみたいなものでは?

      • 通りすがりの1990-2006まで日参ヅカオタ より:

        こんな昔の記事に申し訳ございません
        檀ちゃんが、最初に楊貴妃の再来「タンリー!!」と
        絶賛されたのは仰る通り、1999年の月組中国公演です
        その際に、マミリカファンの友人たちが
        タンリーうるせえわとお怒りだったので
        よーく覚えています
        中国では福々しいはっきりした美貌が
        キャッチーですから男役が霞むのも仕方ないと思うんですがね

        その後、専科時代の2002年に中国政府が是非とご指名があった為星組公演に参加しています

        記憶違いの方は、恐らくタータントップ時代の中国公演と、その後星組トップ就任しての
        楊貴妃役とでごっちゃになってるんでしょうね

  8. ぽち より:

    いつも楽しませていただいています。
    以前金の鳩賞に食いつきコメントをした者です(笑)

    20年ほど中抜けして2年前から観劇復帰したので、100周年頃を知らず、蘭乃はなさんについてはまさに「意外と見れたからそんなに叩かれる理由が分からん」と思っていました。
    ビジュアルはイマイチだなと思いますが、ダンスも歌も、現花娘1よりはマシじゃないかなと…。
    でも、この記事を読んでよくわかりました。スッキリ(^^)

    「マシ」と書きましたが、そうは言っても、スカステで色々と過去の作品を見るにつけ、少なくともトップコンビは技術のある人がいいなと思いますね。
    ファンの方はどんな歌でも演技でもダンスでも素敵と思うものですが、よく知らない人から見ると「なんでこの人がトップ?」と思ってしまいます。
    宝塚は技術だけではないと私自身思ってはいるんですけど、やはり最低限度というものはありますね。

  9. さわら より:

    久しぶりにコメントします。
    蘭乃さん、現役時代をリアルタイムでは観ていませんが、映像で観たエリザートやマリーアントワネットは前評判よりも「おや、意外に観れる」と安堵した記憶が。
    またオーシャンズ11も、テスという役にはオーバー気味な芝居がハマっていましたし、ショー作品ではキレのあるダンスは魅力的だと思います。

    ただ、先日放送された『Streak of Light』や『Mr.Swing!』を観て、歌唱力の低さや表情の作り方が苦手だと感じました。
    先の記事にあった夢咲さんも実は苦手でして、(公演名は忘れましたが)男役を引き連れ銀橋でマニフィークを歌う姿がどうしても好きになれず…
    本当に個人的感覚なんですが、お二人に対して共通するのは、”実力が伴っていないドヤ”に共感性羞恥心を感じてしまうんですよね…

  10. ウェッティ より:

    日刊ゲンダイの蘭乃さんのコメント、今読み返してもヤバいですね(苦笑)
    添い遂げ退団を「娘役のひとつの美意識」と勝手に矮小化して定義した挙句、「綺麗ごとでしかない自分の美意識は捨てようって」に繋げる流れが酷すぎる…
    「添い遂げ=綺麗ごと」と言っている、と解釈されても仕方ない最悪の言い回しですが、まあそれはそれで彼女の本心なのかもしれません。

    添い遂げを選んだトップ娘役の中には、〝この男役さん以外とトップコンビを組む事は考えられない〟という唯一無二の想いのもと、退団を決意した方もいるはずです。
    まだ同時退団が珍しかった時代に異例の同時退団を選んだ、いわゆる「添い遂げの祖」である大地真央さん・黒木瞳さんコンビの経緯等を知っていれば、冒頭の蘭乃さんの言葉なんて絶対に出てこないはずです(まだ若かった黒木さんを大地さん自らトップ娘役に引き上げ、公私共に非常に強い絆で結ばれ、同時に退団されたという歴史)。

    その違和感を決定的にしたのが、宝塚100周年の年にジェンヌ100名がスマスマに出演した際の蘭乃さんの言葉です。
    彼女はいかに蘭寿さんに心酔しているかを語った後、「娘役は男役さんにときめく心が一番大事だと思います」と言ったんです。一見耳障りの良い言葉ですが、私はこれがすごく引っかかりました。まるで「娘役はそうあるべきだから、自分も蘭寿さんに対してそうしている」という、ある種の〝やらされている感〟を思わせる言葉でした。
    確かにそれも娘役として大事な要素の一つでしょうし、彼女の言葉は間違ってはいない。しかし、コンビ売りって2人が本当に愛し合ってるように見せる事で注目や人気を集める面が強いのに、彼女はコンビ売り的な言動をしつつも、自らそれを打ち消すような発言をしている。なんというか、「分かってるようで分かってない、残念な子だな」と…

    確か100周年近辺は、柚希礼音・夢咲ねねコンビ(通称ちえねね)がコンビ売りに成功してコンビとしても人気が出た流れを汲んでか、自らコンビ売りするトップコンビが非常に多かったと記憶しています。空前のコンビ売りブームとでも言いましょうか。
    最初は蘭蘭もその流れに乗っただけかなと思っていましたが、蘭乃さんがあまりに蘭寿さんへの愛を語るので、本当に愛のあるコンビなのかも…と思い始めていた矢先の先述の発言。少なからずショックでした。

    そしてその違和感は的中し、あれだけ蘭寿愛をアピールしていたにもかかわらず、やはり彼女は添い遂げ退団しませんでした。その上、蘭寿さんよりエリザを取ったかのような冒頭の発言をまたもや自ら行い、コンビファンからも総スカンをくらうという最悪の結末を迎えたのです。
    カメラの前であんなにも蘭寿さんアピールをしていなければまだ風当たりはましだったのかなという事を考えると、本当に立ち回りが下手な娘役でした(本当は蘭寿さんに対して腹の中で何か思っていて、アゲてアゲてアゲてオトすという壮大な復讐計画だったとしたら怖すぎますが…。そう思ってしまうほど相手役に失礼なムーブでした)
    私は特に花組に注目していた訳ではありませんが、蘭乃さんの言動に纏わる一連の流れは見ているだけでも不快でしたし、もう繰り返してほしくありません。

    蘭乃さんは言わずもがな裕福なご家庭の娘さんであり、それ故に手に出来たものも多いと思いますが、やはり最後に物を言うのは人柄です。特にこの総ネット時代、安易な小手先の言動はすぐに見破られ、叩かれます。
    後進たちには、どうか蘭乃さんの失敗を踏まえた生き方や立ち回りを選んでほしいものです。