年末恒例企画「ルネサンス宝塚大賞2022」と称し、
2022年東京宝塚劇場で公演された舞台作品の
全作レビューを書いていきます!!
ルールは以下の通りです。
・第2位~最下位、からの第1位(ルネサンス宝塚大賞)という順番に発表します。
・順位は私の好みだけではなく芸術性や大衆性を加味します。
・あくまで当ブログの独断と偏見によるランキングです。
なお、今年は花組『巡礼の年』を残念ながら観劇出来なかったので、
泣く泣く除外しランキングします。
詳細は昨日の記事をご覧ください。
それではさっそく参りましょう!!
2022年本公演全作品レビュー
第2位:劇団渾身の超大作
■雪組『蒼穹の昴』
宝塚歌劇団がコロナ禍以降で最も予算を割いたであろう超大作にして、
久しぶりの中華系一本物。
衣装も装置も豪華絢爛!!
これぞ宝塚という美意識で描き出すのは、
時代の荒波に埋もれながらも心の「昴」を信じた男達の物語。
そう、宝塚としては珍しく骨太な歴史絵巻となっています。
首席育ちの優等生たる彩風咲奈×成り上がり美少年の朝美絢という、
当て書きのようなキャスト割り含め、
まさに今の雪組でしか出来ない一本だったと言えるでしょう。
第3位:目覚めし名作
■宙組『NEVER SAY GOODBYE』
本作で初舞台を踏んだ真風涼帆がトップスターとなり、
16年の時を駆け戻ってきた超大作。
…という物語性だけで評価するにはもったいない程の超名作。
戦場で芽生える男と女の「ある愛の物語」は、
いかに時を超え、何度見たとしても、人々の心を打つものでした。
「キスしてくれたら返してあげよう」
「あんたがそんな男だったら惚れないよ!!」など、明言多数。
真風涼帆の円熟味溢れる男役芸と、潤花の気品、
コーラスの宙組の名に恥じない実力、
そして現代の演出装置で生み出された本作は、
まさに「幻の名作の再演」だったと思います。
第4位:目覚めし名作その2
■月組『グレート・ギャツビー』
月城かなと率いる芝居の月組が送る、極上のビターラブストーリー。
これを観れば、なぜ月城×海乃が組んだのかの理由が分かるというもの。
小池先生の大好物であろう男の破滅を正面切って描いた作品であり、
それが陳腐なメロドラマにならなかったのは、
「芝居の月組」の圧倒的なパワーがゆえでしょう。
男は背中で語るもの。
これが就任2作目でハマる月城かなとが恐ろしいし、
微妙に「青さ」が残るのもまた、ギャッツらしくてイイんだな。
主要キャストだけでなく、脇路線のメンバーにも、
それぞれ少しずつ見せ場があったのも、小池先生の名手腕。
ヅカファンなら誰もが楽しめるであろう、
宝塚とはこいういうものという価値観を分かりやすく示した一作でした。
第5位:宝塚の新境地にしてお約束?
■宙組『HiGH&LOW-THE PREQUEL-』
宝塚×LDHという、相反する価値観のクロスオーバーにして、
劇団の原作再現力の高さが光った一品。
ケンカに明け暮れる青年たちの物語がここまで宝塚にハマったのは、
それがロミジュリやWSTの設定と酷似しているからだけでなく、
原作世界の彼らだって、清く正しく美しく生きているからだと気付いた一作。
また、大階段を使った演出やシンメな立ち位置、
5組に色分けした男達の衝突など、
野口先生の性癖がいかんなく発揮された本作。
それでいて「カタチ有るものは永遠じゃない」という、
実に普遍的なメッセージも込めてくるあたり、先生やりよるわ。
第6位:ビジュアル最強な新演出作品
■花組『元禄バロックロック』
かの有名な『忠臣蔵』を、
若谷先生の価値観でひと昔前の電撃文庫風にクロスオーバーさせちまおう!!
という実に意欲的な作品。
谷先生お得意のスチームパンク風な世界観が、
花組メンバーの最強ビジュアルと絶妙にマッチング。
柚香光のヤレヤレボーイはマジでハマり役だったと思います。
小難しい時代設定を観客に上手に説明しながら
使い古されつつも宝塚では新しいタイムパラドックスネタを混ぜ込み、
それでいて多くのキャストに役を振るという、
演出家・大劇場デビュー作にしては相当なハイクオリティ作でした。
なお、「6位」と書くと低く見えますが、
今年は大劇場作品のクオリティが高く、
ここまでが「普通に面白かった」作品だと私は評価しています。
第7位:ある意味でフェスティバル
■星組『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人-』
愛月ひかるが退団し、暁千星がやって来る前の、
星組の星組による星組のためのスターフェスティバル、
もとい、究極の内輪受け作品。
過去2回に渡って上演してきた『めぐり会いは再び』シリーズのスピンオフで、
礼真琴にとって初の大役となったルーチェを主人公にし、
当時のキャストたちも10年の時を経て現代に引っ張ってくるという、
実に面白い着眼点でしたけど、ちょっとお子様過ぎたかなー。
これが主人公たちが15歳くらいの設定なら微笑ましく観られましたけど、
ビミョーに笑えない年齢設定に羞恥心が…。
とはいえ、柚希礼音政権時代の礼真琴を知っている層からしたら、
「まこっつぁん、大人になって…」と感涙ものでしょう。
偉大なるトップオブトップ・礼真琴にとっての
新たなステージに上がる前のトップ黎明期に別れを告げた作品、と、
後に評価されるのかな?と勝手に思っています。
第8位:THE・マンネリ紙芝居
■雪組『夢介千両みやげ』
彩風咲奈は雪組の御曹司、だったらやっぱり和物でしょう。
前代は望海風斗の持ち味的に悲劇が多かったから、
今回は明るくカラッと喜劇で行こう!!
というコンセプトが非常によく分かる作品なんだが、
うんごめん、単純に面白くなかったかな。
主人公がトラブルに合い、特に何もせず解決し、その人柄に惚れる、を、
何度も何度も繰り返し見せてくる紙芝居的構成で、
例えるなら、30分の時代劇をそのまま3本分一気に見た感じ。
時代劇を見慣れている人(すなわちオールドファン)は楽しめたと思うのですが、
疎い私は残念ながら厳しいものがありました。
組ファンとしては、多くのキャストに出番が割り振られていたこと、
お手を拝借で終わるハッピーエンド感は良かったかな、という感じです。
ここまで2022年上演作品をまとめてきました。
なお、花組『巡礼の年』を配信で観た印象は、
第5~6位くらい近辺かなという印象です。
それではお待ちかね、ルネサンス宝塚大賞の発表です!!
ルネサンス宝塚大賞・ミュージカル部門 発表!!
ルネサンス宝塚大賞:月組『今夜、ロマンス劇場で』
月城かなと×海乃美月のお披露目公演にして、
「芝居の月組」復活の狼煙。
平凡な男とお姫様が出会い、恋に落ち、だけどお互いに触れあえず、
命の灯が消えいくその瞬間に、ついに手を取り合う。
目が覚めるとそこは色付いた世界で、懐かしい人々に祝福されながら幕が降りる。
一分の隙の無い、完璧なエンターテイメント!!
最初見た時、ドライな私でも珍しくスーパー感動してしました。
原作ありきの作品とはいえ、
上手に宝塚ナイズトした小柳先生の演出が素晴らしいし、
(我ら陽気な三銃士~♪も大蛇丸タンゴも最高だった)
それを見事に表現してみせた、月組生の圧倒的芝居力が本当に凄い。
演出、キャスト、全てが満点で、
誰が見ても心揺さぶられる、ハートフルな一品だったと思います。
以上を評価し、月組『今夜、ロマンス劇場で』にルネサンス宝塚大賞を送ります。
(なお、この企画を5年やって来て、ついに2本立作品初の大賞受賞です!!)
演出家の大劇場デビューが続いた2022年
ここ最近、竹田・栗田・指田・熊倉と、
演出家の(バウ公演)デビューが相次いでいますが、
大劇場でも野口、若谷、そして原田先生の一本物デビューと続いていますね。
お抱えの演出家がどんどん高齢化していく中、
若い芽がデビューしていくことは実に有意義であると思いますし、
それでいてクオリティも高かったのでほっと一安心。
引き続き、素晴らしい作品をぜひ世に生み出して欲しいと思います。
次はレビュー部門です!!
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コメント
細々観劇&視聴の私は、ランク付けはできないので、蒼汰さんの評価を興味深く読みました。今後オンデマンド等で購入するときの参考にさせていただきます。
配信でよく分からなかった「ハイロー」 ディスク映像と違うかどうか。当然ですが違いました。
配信は人気スターのアップ多用は嬉しい半面、悪くすると場の雰囲気が「?」になることもしばしば。
ディスク映像は舞台全体を見渡す画面も多く、演出家が何をどう見せたいのか、もう少し理解できたように思います。なので私の評価も一段上げます。笑
舞台を映像化する難しさもあると思いますが、編集は大切な作業なんですね。
いつも深い洞察力に感嘆しながら興味深く記事を読ませていただいております。
ルネサンス宝塚大賞、もしや…と読み進めておりましたら、期待通り「今夜、ロマンス劇場で」が選ばれていて大変嬉しく思いました。
ちょうど昨日この作品のブルーレイを観て、やっぱり素晴らしいと感動したところでした。
場面の構成、台詞、音楽、舞台美術、配役の妙、演技力…とどれも優れていて、
観終わった後、すごい幸福感に包まれます。
記事に書かれていること、全て共感致します。
大好きな作品が大賞ということに感激して、初めてコメントさせていただきました。
ありがとうございました。
いつも楽しく、拝見しております。
2022年『ルネサンス宝塚大賞』の発表、とても読みごたえがありました~。自身の一年の観劇を振り返る事ができ、あらためて宝塚歌劇の面白さを実感できました。
レビュー部門もさることながら、誰に金の鳩賞がおくられるのか、親族でわちゃわちゃと語る中で、楽しみにしております。タカスペ開催が今年もみおくられ、一年の締めくくりの記事、本当にありがとうございます。