星組『マノン』感想

 

愛月ひかるの東上公演『マノン』を配信にて観劇しました。

思ったこと、感じたことをさっくりまとめていきます。

 

あえて今、破滅の美学の物語

 

アベ・プレヴォー「マノン・レスコー」をもとに

舞台を19世紀スペインに移してミュージカル化された本作は、

情熱的で自由奔放な女性に恋に落ち、

全てを捨て堕ちていく青年貴族の破滅の美を楽しむ作品。

 

2001年瀬奈じゅん主演の再演物ですが、私は初見。

個人的には、こういうファム・ファタール作品は大好物、

しかも大好きなスパニッシュテイストということで楽しんで見られましたが、

正直、令和のこの時代には受けがよく無さそうな作風です。笑

 

恋に落ち堕落していくしょーもない話ですが、

着道楽か!!とツッコミたいくらい華やかな衣装をコロコロ変えつつ、

スターのキラキラと美しいメロディーで展開を飾り、

宝塚的な世界観を構築していたと思います。

 

何よりも愛月ひかると有沙瞳が想像以上に似合っていた

愛月ひかるの規格外の包容力は、

娘役としてはアクが強い有沙瞳すらも包み込んでいたし、

だからこそ有沙自身も全力全開でぶつかっていけたと言いましょうか。

 

月城かなと、礼真琴、瀬央ゆりあと95期に縁のある有沙瞳ですが、

舞台技術が高安定維持のわりに何故かしっくりこないことが多く(主観です)

ここでやっと、理想の相手役に出会えた感じ。

 

2人のただことじゃない演者としてのパワーが、

現代ではツッコミどころの多い物語の展開をねじ伏せ、

最後まで飽きずに楽しむことが出来ました。

 

キャスト別さっくり感想

 

ってことでキャスト別に見ていくと、

まずは、主役の愛月ひかる。

 

普段は悪事を働く側なのに、今回は振り回される役ということで、

それだけでものすごーーく新鮮でした。笑

 

自身が宝塚大好きキャラですので、よくよく研究しているのでしょう。

想像以上に無垢な青年役を見事に演じ切っていました。

 

立ち姿だけで宝塚だと納得させるオーラは、本当にお見事。

どの衣装もカッコ良く着こなしていました。

 

その友人・ミゲル役の綺城ひか理は、

『ロミオとジュリエット』に続き、良き友人役が良く似合う。

 

見る度にキラキラ度が増し、星組ナイズドされていくのが面白いですね。

得意の歌と足の長さで作品を支えていました。

フィナーレでのはっちゃけ具合もいい感じ!!

 

大抜擢となったレスコー役の天飛華音は、

歌えて芝居も出来て運動神経も良い、

なんでもござれスターであることが良く分かりました。

 

劇団が本作で修行の場を設け、

大いなる飛躍を期待した理由が分かるというものです。

 

俊敏過ぎる一回転銃弾受けは、運動神経が良い人しか出来ない芸当で、

『アルジェの男』の礼真琴を思い出させるし、

なんなら芝居の組み立て方、発声方法もまんま礼真琴で笑っちゃいました。

 

そしてヒロインの有沙瞳は、とんでもない悪女になり過ぎることなく、

頭弱そうで弱過ぎず、良い塩梅に可憐に見えて良かったと思います。

 

高い歌唱力と芝居力で愛月ひかるを見事に支えていたし、

まさに集大成的役どころになったのでは?

 

その他、輝咲玲央朝水りょうなど、

星組が誇るイケオジ祭りも見応えがありました。

あと、娘2ポジとして活躍した水乃ゆりの華やかさも良かったですね。

 

今、この作品を再演するということ

 

唯一引っかかったのは、やはりなぜ今、

この作品を愛月ひかるで再演したのかということです。

 

瀬奈じゅんがこの作品で主演した時、彼女は研10だったそう。

確かに、主人公が翻弄される話という展開を考えるなら、

学年的に極美慎とか天華えまあたりの方が、よっぽどハマったような気が。

 

愛月ひかるは研15、男役として充実期に入る彼女に、

なぜこの作品を?という理由を考えた結果、

彼女に翻弄される側の資質を取り戻して欲しかったのかな?と思ったり。

 

宙組で3番「目」に昇格して以降、成金オヤジや堕ちた聖職者(しかも2回)など、

路線らしからぬアクの強い役が続いた彼女に、

『エル・アルコン』に続き正統派な役を演じさせたかったのかなぁ、と。

 

そして本作を見た私個人の感想としては、

闇属性じゃない役も魅力的に演じられる力量を感じましたし、

それでも役より自身の資質が勝ってしまうあたり、

やはり彼女はスターなんだなと改めて思ったのでした。

 

星組の皆さん、お疲れ様でした。

東京も無事最後まで公演出来るよう祈っております。

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    おお、「マノン」を楽しまれたようでよかった。私も「マノン」配信をツッコミながらも大いに楽しんだのですが、どうやら宝塚ファンのストーリーへの評判は散々なようで。

    「マノン」、まあ暗転が多くてイマドキの若手先生のようにスピーディな舞台進行では無いですが、原作のキモは外していないと思いますし、各キャラクターの演技も方向違いでなく、しっかり指導されていたと思うのですが。

    令和の時代、社会に女性やLGBTの方々への配慮は浸透してきたなあと思いますが、性的なことや不倫に関しては昭和のころより学校の道徳の教科書みたいな生真面目なモノサシが主流になってきましたねえ。

    ポリティカル・コレクトは大切と思いますが、18世紀フランス文学の世界をポリティカル・コレクトで断じてもなあ、と思うのですが。道徳や法律で縛れない人間の心理をえぐるのがブンガクでしょうに。

    礼さんのコンサートはご覧になりまして?もし観劇or視聴されましたのなら、感想記事を楽しみにしております。

  2. こころ夫人 より:

    いつも楽しく拝見しております。
    「マノン」、バウホールで観劇しました。
    愛月さん主演では、「不滅の棘」の方が印象的で、似合っていたように感じました。
    今回、3分列の星組公演後の大劇場公演が、また楽しみです。

  3. MS より:

    2016年宙組でエリザベートが上演された時、ルキーニに愛月ひかるが決まり、愛ちゃんに悪役が務まるのかなと心配していた頃がウソのようです(笑)
    でも、1周回って戻ってきた正統派は、そこらじゅうのオーラを引き連れて戻ってきた感じです。
    マノンは、瀬奈さんのを観ましたが、感動のひとかけらもなく、全く泣けないイライラする作品という記憶だったので、再演と知った時は、えっ!この作品を観たい人がいるんだ!と驚きを隠せませんでした。それが、愛ちゃんの死を観てから、今の愛ちゃんと有沙瞳なら、作品をというより、2人の演技を観てみたいと思いました。
    でも、本当に何故いま愛ちゃんにだったんでしょうね。トップの道を作ってくれる気なんでしょうか。

  4. 夏みかん より:

    今なぜこの作品?
    ひょっとして、有沙さんへの餞別なのでは?
    新公ヒロ・理事ヒロ・外箱ヒロをやり尽くし、ロミジュリでやりたかった乳母をやりきって、娘2として旬のピークに。
    ベテラン上級生への道も充実しそうですが、お芝居の上手い彼女が女優として活躍するなら今かな、という気もします。
    まだまだ星組で見ていたいけど、集合日が怖いです。

  5. ぽんさん より:

    こんばんは。蒼汰さんの、愛月ひかる(と有沙瞳)に令和の今、あえて昭和のメロドラみたいなマノンとゆう作品を亜違った理由、にうんうんと納得させられました。
    私は愛ちゃんのグイド司教に魅せられファンになりましたので、正直言って今回のロドリゴやエルアルコンのルミナスはなんだか気恥ずかしい気もしますが、愛月ひかるはどちらでも演れる人なんですねぇ。ちょっと昔すぎるけど、紫苑ゆうさんみたいなところありませんか?いや、真琴つばささん的なところもあるかなぁ。。。

    とにかくスターの圧がすごかった。ライブ配信でもその圧が凄いことになってたので、再来週のkaatではじっくり確かめてこようと思います。。。

  6. kobara より:

    愛月さんと有沙さん、大人の魅力を備えた2人になぜ「マノン」なんだろう?と同じく考えていましたがリハビリだったんでしょうかね?
    愛月さんは今後も見据えて若い白い役をしておいてね。有沙さんは乳母から可憐な娘役に戻っておいてね、という感じなのかな。
    配信しか見られませんでしたが、2人ともバウからはみ出そうなほどの存在感で、演目も相まってどこぞのトップコンビの地方公演かな?と思えてしまいました。(なんならこの2人のコルドバ見たかったかも)
    自分より若い学年のトップの下にいるお2人ですがこのままではもったいないなと改めて思いました。
    愛月さんはトップになるとしたら学年も考えるとこの1年くらいに何もかしらあるんでしょうね。(逆に何もないと厳しいかな…)
    今後が気になります。

  7. まい より:

    星組の3分割全部見に行くので楽しみです!
    登場人物に共感することよりも演技を楽しむことにします。
    舞浜の方はご覧になっていないのでしょうか。
    エルアルコンも見られていなかったようですし、あまり興味がないのでしょうか。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      エルアルコンと舞浜は用事が被って見られず、ちなみに明日の婆娑羅も仕事が休まず見られません。悲しい。全部見られるなんて羨ましいです…。

  8. May より:

    蒼汰様、もう一人の管理人様が星ご贔屓ということでご覧になったかな?と思っておりましたが、VERDADご覧になれなかったのですね…!
    当方は運良く8Kの幸運に恵まれ、リモート鑑賞しました。
    Defying Gravity、良かったですよ〜。歌唱力もさることながら、さすが耳が良いのでしょう、英語が話せるようになりたいとスカステでおっしゃっていたはずですが、発音が非常に綺麗でした。どうにもカタカナ発音だとブロードウェイの歌には違和感を感じてしまうこともありますが、それが一切なかったです。傑物ですね。
    男役として不利な身長も、卒業後にはむしろ女優として使ってもらいやすいでしょうし、真彩希帆さんと同じくらい、卒業後が楽しみなジェンヌさんだと思いました。今は少しでも長く男役の礼真琴さんを堪能したいですね。