昨日は月組公演『ピガール狂騒曲』の集合日でした。
集合日は同時に退団者の発表もあるわけですが、
特に音沙汰無し、ということは退団者はいないのでしょう。
何が驚きって、これで星組と花組に続き
3公演連続で退団者がいないということです。
いや、正確には専科・華形ひかるが星組公演で退団しますので
3公演連続「組に所属しているスターの退団者がゼロ」ということになりますが、
それでもビックリなことには変わりありません。
ということで本日は、
そんな退団者ゼロにまつわる雑記です。
退団者ゼロという「珍事」が続く
ではなぜ退団者がいないことが驚きなのかというと、
退団者がいないということは人員が増え続けるわけですから、
その分、人件費が増える一方だからです。
企業人事の観点で見れば、
宝塚の組という「部署」には毎年約8名の「新人」が配属され、
ともすれば毎年約8名が部署から抜けなければ
人件費の観点で言えば赤字となります。
もちろん新人と中堅社員の人件費が全く同じとは思いませんけれど、
毎年抜ける人間の分だけ頭数を揃えるのが「新卒採用」であり、
逆に言えば新人を採る分、いわゆる「肩たたき」もあるものと推察されます。
特に宝塚は完全なる実力主義の世界、
かつ一定の学年を越えると社員ではなく
タレント契約(個人事業主)になるようなので
人件費がかさむのであれば「契約を更新しない」という手立てがあります。
ですから、毎年一定数の人間が入団する以上、
一定数の人間が宝塚を去っていくことが「普通」なわけですけれど、
冒頭の通り、3公演連続退団者がゼロという事態に。
(花組と月組は別箱公演で若干名退団者がいましたが)
『ロミジュリ』に出たかった。
新トップを組の一員として支えたい。
オリンピックの影響で退団を自粛した。
まぁ色々理由はあるのかもしれませんが、
それでも大劇場での退団者ゼロって結構なレアケース。
他の方のブログによると
星組『眩耀の谷』の前は月組公演『ロミオとジュリエット』で、
どうやら約7年半ぶりの珍事だそう。
それが3公演連続なわけですから、
いかに珍しい事象が現在発生しているかが分かるというものでしょう。
雪組に見る退団者減少傾向について
とはいえ、この退団者減少傾向は
雪組を約2年半追いかけている身としては
なんとなく実感していた話でもあります。
試しに望海風斗トップ就任以降の雪組生の増減について
ネットの海を徘徊して調べてみたら、以下の通り。
『ひかりふる路』1名退団(+専科の沙央くらま退団)
≪104期生8名入団≫
『凱旋門』集合日1名退団+2名退団
『ファントム』2名退団+1名専科異動(梨花ますみ)
≪105期生8名入団≫
『壬生義士伝』1名退団
『はばたけ黄金の翼よ』2名組替え(永久輝せあ・朝月希和)
『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』3名退団
≪106期生8名入団予定≫
2年連続で入団者よりも退団者の方が少ないことが
一目で分かると思いますし、
人員減少は退団ではなく、むしろ組替えで調整しているようにも見えます。
もちろん、早霧&咲妃退団時に
一気に7名抜けていますので一概には言えませんが、
その後に朝美・綾も補填していますから、
結局は「退団者は減少している」ように感じられますよね。
では、一体宝塚歌劇団で何が起きているのでしょうか?
退団者減少に思う一個人の勝手な妄想
ここからは完全な妄想を書きます。
タカラジェンヌが自身で退団を決める場合、
「タカラジェンヌとしてやり切ったから」もしくは
「これ以上劇団にいても上がり目がないから別の人生を選ぶ」
という理由だと推察されます。
これが減ったということは、
「別の人生を選ぶより、今のタカラジェンヌとしての日々が幸せ」と
感じる人が増えたからなのではないかと単純に想像出来ますよね。
現在は空前のミュージカルブーム、
それに伴い、宝塚自体の人気も高く維持しており、
その一員に自分がいられるということがどれだけ幸せなことだと
スター自身も実感していることは想像に難くないでしょう。
もちろん、色んな「ノルマ」の負担が前よりも軽くなり、
自身の気持ちの持ちようも楽になったのも理由かもしれません。
それと同時に、その人員を維持する劇団側も、
収益が安定すればそれを確保するキャパが増えたとも言えると思います。
事業で最もかさむのは人件費。
「まだ宝塚にいたい!!」と思う人がいても、
それを維持出来ねば「辞めて下さい」と言うほかありません。
(一定学年を過ぎると退団者が一気に増えるのはこのためです。)
人員を維持する金銭的余裕があれば
いくらでもスターを抱え続けることが出来ますし、
逆に言えば「スターの辞め時」を
劇団側が上手く調整出来るようになったとも言えるかもしれませんね。
待遇改善がなされつつある期待
何が言いたいかといいますと、
退団者が減ったのって
待遇改善の結果の1つなんじゃないかっつー話なんですよ。
ざっくり数えたところ、
2016年以降の退団者はだいたい40人を切っているのに対し、
一番宝塚がハチャメチャだった時代、
つまり2010年前後は毎年50人近くが辞めていったようなんですよね。
ちなみに一番減ったのが
たぶん瀬奈、大和&陽月、白羽、安蘭&遠野が抜けた2009年で
60人以上も退団しています。
(いくつかの記録サイトを自力で数えただけなので「たぶん」ですが。笑)
折しもこの2009年は95期生入団年で、
95期生は45名入団、続く96期生は38名入団ですから、
明らかにバランスが崩れています。
それに比べ、今は採る人間よりも
辞めていく人間が少ないくらいなのですから、
いかに今の宝塚が充実しているかが分かるというものです。
現在の小川理事長の利益主義の方針を
「銭ゲバ」だとか「その利益をタカラジェンヌに還元せよ」と
ことさら批判する声も聞かれますけれど、
「宝塚を辞める道を選ぶ人が減っている」ということこそが、
一つの答えなんじゃないかと思うわけです。
元文化事業の営業職に携わった人間としては
自分の所属する劇団のチケットが即完、評価もうなぎ登りなんて
楽しくてしょうがないだろうなと微笑ましい気持ちになりますし、
そもそも職場の離職率が低くなったということは、
従業員の満足度が向上しているからだと単純に思っちゃいますよね。
いずれにせよ、今の劇団の拝金主義方針も
結局はタカラジェンヌに帰ってきているわけですから
そんなに悪いものでもないでしょ?と外野である私は感じる今日この頃です。
いつまで続くか「我が世の春」
とはいえ、それが永遠に続くとは限らないのが
諸行無常のあはれたるもの。
昨今のコロナショックに伴い、
その収益性が崩壊する可能性も充分あり得ますし、
数年に一度起こる意味不人事により
その安定を自分自身でぶっ壊してきた宝塚ですから、
はてさて今後もどうなることやらですね。笑
少なくとも、その利益が所属するスターたちに還元されるのならば
今後もぜひ劇団には頑張って舵取りして欲しいものだなぁと思う
一ファンの妄想に近い雑記なのでした。
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コメント
今回もとても興味深い考察ありがとうございました。
「今の劇団が充実している」のでしたら、本当に素晴らしいことだと思います!
そして、雪組の退団者がセーブされているのも感じてはいましたが、実は次の大劇集合日がコワいです…
だいもんの退団同期、どれくらいの人数になるのかと…
本日明日からの雪組休演が改めて発表されたこともあり、悲観的になってしまっているかもしれませんが、劇団がこれからも居心地の良い場所であるよう願ってやみません。
コメントありがとうございます‼
最近テレワークで退屈なので出てきました。笑
最近、トップ退団時はライビュの時間制限があるからか5人で縛られてるっぽいので、怖いのはむしろ次期トップ就任時かもしれませんね。
いずれにせよ今まで溜まっていた分が一気に放出されそうで怖いです…。
再度の休演は残念ですね。一日も早くパニックが落ち着くことを祈るばかりです。
初めてコメントいたします。
深い推察、いつも感心しながら拝見しております。
今回月組退団者がいないのは、オリンピック期間中(7/24~)の7/26(日)に日比谷公園に白い集団を発生させないためと想像しています。
パラリンピック期間中の宙組退団者もいないのではないかと思っています。
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
退団者が3本公演連続ゼロ・・・これは私の完全な妄想ですが、生徒さんたちがOGによる夢組構想の行方を見ているのかな?と思ったりします。
私は娘はおりませんが、もし娘がいて「宝塚を受験したい」と言い出したら・・・やっぱり不安もありますよ。宝塚って基本長くはいられない、在団中は結婚できない場所。昔のように退団後結婚して専業主婦になるからOK,という時代でもないし。
声楽やバレエの国際コンクールで入賞するような人でさえ、「日本では芸術では食えない」と欧米に流出する現状で、芸に精進する生徒さん達が退団後もその特技を生かせる場を作る、って夢のある構想だと思います。親御さんだって卒業式でそんな話が出たら安心でしょう。少子化の中で優秀な受験生を確保するためにも、いい話だと思うんだけどなあ。
蛇足 センバツも中止・・・日本で一番元気で体力があるだろう野球部員が、屋外で野球をするのを止めて「感染拡大防止」ってねえ・・・電車に乗って通勤して窓の空かないオフィスで働く方が健康に悪(以下自粛)
コメントありがとうございます‼
最近テレワークで退屈なので出てきました。笑
どれだけ偉大なトップ様も、外の世界に出てしまったらそれは別の話。そんな元スターの救済含め、
夢組構想は梅芸など各所の利権と恩恵を考えての大きなプランになるのかもしれませんね。
再中止は予想の範疇とはいえ残念ですね。一社会人としては経済の停滞が怖いです…。
この観点はさすがの一言。
たしかに、離職率の低下は事業が安定的に発展しているもしくはその兆しがある証拠。
こういう記事は営業職ならではの視点で興味深いですよね。
僕も営業やってたので携わってるものが飛ぶように売れるのって楽しくて仕方ないのはわかります。
それを体現できるのは素晴らしいこと。充実ぶりが伺えますね。
このブログの好きなところはこういう話ができるところなんですよねー。
他のブログだと公演を見てよかったや悪かったとかあの人をトップにしろとかなんであの人を贔屓するんだ、劇団はわかってないと感情的に言うものばかり。
それも結構ですが、感情論に任せて個人的な主観を読むのって結構しんどいんですよね。
僕だけかもしれませんが男性は苦手な人多いんじゃないかな。
発信するのは自由ですけどね。
想いが強いあまり批判的なことを感情的に書いているのって僕は見てられないです。些細なことで母親とか彼女と喧嘩というか怒られてる感じがしてすごく嫌なんですよねー。
でもこのブログは論拠が納得できるし(正しいかどうかまではわからなくても納得できる)、宝塚をファン目線のみの短視眼的な見方ではなく、あくまで一つの「事業」として俯瞰して捉えることが本当に見てて面白いし、気持ちが良い。
それでいて、ちゃんと血の通った愛ある意見もあるのが素晴らしいですね。
他のブログを見る気になれないけど、このブログは更新していないか毎日チェックするほど気になるのは観点の違いが最も大きいと思います。
営業職の男性という宝塚界隈では少し”異質”なキャラクターと類まれなる表現力が存分に発揮されてるのでしょうね。
めっちゃ仕事できる人なんだろなぁ。
ブログというよりも、宝塚というエンタメ事業についての「プレゼン」を見る気で読んでいます。
次回の記事も楽しみにしてます!!
コメントありがとうございます‼
最近テレワークで退屈なので出てきました。笑
思いが強いがゆえにそれが暴走してしまうのは、私もそれはどうかなと思ってしまうんですよね。(母親とか彼女との喧嘩はまさしくですね。笑)
なので極力それを出さないようにしているのですが…それでも揚げ足を取られてしまう時があるので難しいです。
逆に観劇感想は我ながらドライ過ぎて「果たしてこれは感想なのか?」と思う時が多々あるので、そういうときは感情迸る人が羨ましい時があります。
なんだか誉め倒して頂き恐縮です!!これからもよろしくお願いいたします。^^
さすがのご指摘です!
まさに、宝塚歌劇団はあらゆる点で人材ありきな組織ですので、中でも公演を主体的に担っている生徒さん達の「離職率」が低いというのは素晴らしいことです。
毎年一定数の新人が入り、「後進に道を譲る」的なプレッシャーがかかるあたりは、プロ野球の球団にも近いものを感じます。早霧せいなさんのように、退団理由に体力的な点を挙げる方もいらっしゃいますし。
ところで小川理事長を儲け主義と嫌う方々のお気持ちはわからなくもないのですが(ちなみにまあまあシビアなビジネス社会の端くれで生きる女性です)、儲かっているからこそ、あれだけの贅沢な舞台が実現できるので…
装置や衣装だけではなく、生徒さんや膨大な数の裏方さん、本公演なら全公演オーケストラ生演奏ですから、実に多くの人が宝塚の舞台に携わることで生計を立てています。
その方々のお給料=人件費にどれだけの大金が必要か。
席がガラガラじゃ全く足りません。
無理を続けて宝塚が潰れるか、生徒さんや裏方さんを盛大にリストラし、お金をかけない舞台でやりくりするか…そこで「もっとゴージャスじゃなきゃ」と思っても、もう遅いので…
夢の世界を創出するにはコストがかかるなあとつくづく思います。
今回の休演で想定外の損失が発生しますが、今後の生徒さんたちの退団にどう影響するのか、あるいは人が要だから持ち堪えるか、妙な視点からですが、注視したいです。
星・花はトップ御披露目で退団自粛(更に言えば星は次作に超大作が控えてるし、花は不満分子は前作で辞めて行った、というのも加わるかも…)というのもあるかと思いましたが、、
例によって月組は例外、でしょうか?
今作では大量退団か、退団者はわずかかどちらか(理由は現トップの退団時期との兼ね合いで…以下自粛)、と予想してましたが、0だとは思わなかったので。
月組は現トップになってから大量退団が相次ぎ、かつ毎公演退団商法をやっていたので、今作が0というのは超意外…
月組に関しては待遇改善、とは思えないので、既に不満分子は大方辞めていったから、とか、現トップの◯◯を待っている、とか別の要因があるのでは、と思います。