男役別格道・97期編 ~綺城ひか理と蓮つかさと留依蒔世~

 

別格男役路線について語ろう、本日は97期編です。

 

【前回の96期編はコチラ】

綺城ひか理:別格路線を大謳歌中

 

まずはここ最近で最も別格路線を謳歌しているであろう、綺城ひか理から。

入団成績14番、花組に配属。

 

当初は組内同期の矢吹世奈の方が推されていた印象がありますが、気付けば逆転。

『ME AND MY GIRL』で優波慧と新公主演を分け合い、

続く『金色の砂漠』で2度目(人事屋的には1.5回目)の主演を果たします。

 

95期の超路線柚香光、花組お得意の判官贔屓枠で水美舞斗、

そして100期下に聖乃あすかを抱え、

優波慧、飛龍つかさ、帆純まひろとともに別格枠として立場を確立していく彼女。

 

…と言えば聞こえは良いですが、

年功序列の花組ではモブに毛が生えた程度しか使われません。

 

同期の永久輝せあの玉突きで、星組に異動。

ここからの扱いの良さが凄かった!!

 

『ロミオとジュリエット』でのベンヴォーリオにはじまり、

『マノン』ではミゲル役だが2番手格、

そして『めぐり会いは再び』『モンテ・クリスト伯』と、

自身のスター性を武器に別格枠として確固たる地位を築いていきます。

 

それは高身長と歌唱力を武器にした、悪役、あるいはイケオジ枠。

もはやトップ路線でなく、かつ外様であるからこそ、

本人も肩の力を抜いてそのポジションを全うできるという、

まさに別格枠として最高の立ち位置を確立していきます。

 

ただし、これは「自身の立場を理解し全うする」という、彼女の頭の良さと、

トップ路線を諦めるという覚悟がゆえの結果であるとも言えます。

 

彼女の一番の武器はそんな客観性なのかもしれませんし、

劇団が別格枠(やスカステ等の司会業)で重宝するのは、

そういう人材なのかなと思ったり。

 

星組としては歌劇の組レポに抜擢し、

本人も星組に骨を埋める覚悟だったのでしょう、

けれど、ここで花組への再異動の指示が出されます。

そう、同期の超路線である永久輝せあの支え要因としての号令です。

 

スターであること以上に、一人の人材として優秀であろう彼女が、

これから花組でどのような立場を確立していくのか、今後が実に楽しみです。

 

蓮つかさ:まずは別格枠と呼んでくれ

 

続いて、月組の蓮つかさ。入団成績8番。

『All for One』にて新公ラストチャンス主演を果たします。

 

ところで、前述の綺城ひか理が所属していた花組と月組には共通点があり、

それは新公主演者が多く輩出される傍ら、

舞台ではモブに毛が生えた程度しか使われず、

上級生別格(非新公主演者)の方がよっぽど扱いが良い、ということです。

 

蓮つかさも完全にそのパターン。

月組は光月るう、千海華蘭、輝月ゆうまと別格枠がめちゃめちゃ強い上に、

紫門ゆりや、夢奈瑠音と新公1回組が他にも居るという状況。

 

そんな中、ほぼニコイチだった上級生の夢奈瑠音にスポンサーがついたことで、

舞台での扱いにさらなる差がつきはじめたのが、ここ1、2年の話。

 

『ダル・レークの恋』や『ブエノスアイレスの風』といった、

人数が減るために役が上がるはずの外箱ですら、あの扱いですぜ?

『チェ・ゲバラ』ミゲル、『グレート・ギャツビー』スレイグルといった、

やさぐれた役をやらすとめちゃめちゃ上手いんだけどなぁ…。

 

そんな中、月組は代替わりを経て、紫門ゆりやと輝月ゆうまが専科へ異動。

下級生の風間柚乃、だけでなく礼華はるにまで抜かれたけれど、

コマが減ったことで出番が増えるチャンスが来た、かもしれません。

果たして「果報は寝て待て」になるのでしょうか?

 

彼女に関しては、まずは別格枠と呼ばれる程の出番を上げて欲しい、

という一ファンとしてのボヤキでした。

 

留依蒔世:路線としての運命を分かつもの

 

最後は97期生首席入団にして、

初詣ポスターモデル経験者の留依蒔世。

 

彼女のスター人生を語るうえで避けて通れないこと、それはケガです。

時期で言うと、2015年~2016年にかけて。

本公演では『Shakespeare』をケガにより休演しています。

 

そしてこの公演で、1期下の瑠風輝が新公初主演を飾り、

ここから4回を経ての超路線へと上がっていきます。

が、もしこの作品をケガで欠場せず、

もし留依蒔世が主演を果たしていたら何か変わっていたかもしれません。

 

その後、『王妃の館』で新公ラストチャンス主演。

本公演では珍しいコメディ作品を割り当てられたわけですが、

ここから『神々の土地』新公ラスプーチン、『不滅の棘』ハンス、

『パパ・アイ・ラブ・ユー』レズリー、『FLYING SAPA』タオカと、

悪役でも汚れ役でもない、アクの強い枠へと歩みを進めていきます。

 

なまじ、実力者であるからこそ上手く出来てしまうがゆえに、

そのポジションで大活躍してしまうわけですが、

(このあたりの葛藤は宝塚GRAPH2022年11月号で語っていますのでファンは要確認!!)

けどもう少し、男役としてカッコ良い姿も見たかったよね、という。

 

そんな中、退団を決めた彼女に劇団が送ったもの、

それが『カルト・ワイン』のチャポと、

『HiGH&LOW-THE PREQUEL-』リンという男役冥利に尽きる役に、

『Capricciosa!!』の気迫のエトワール。

これこそ、彼女のこれまでの活躍を劇団も高く評価していた証では無いでしょうか?

 

特にエトワールの迫力、そしてずっと拍手を送り続けるファンの姿の暖かいこと。

そして他のエトワールに比べロングトーンであることに対し、

「最後までストイックに挑戦し続けたい」と語った彼女の、らしいこと。

 

別格枠として生きることは、時に何かを諦めることかもしれないけれど、

その道を突き詰め評価された時、別の何かが咲き誇る時もあると、

エトワールでの雄姿を見て思ったのでした。

 

別格枠、人それぞれ

 

97期といえば、数年前までは永久輝せあとそれ以外だったのに、

同じ別格枠でも月日が経つにつれ、置かれた立場もこれからのポジションも、

全く違うものになったんだな、とこの記事を書いて改めて気付きました。

 

ずっと同じ組で励む者、2度も組替えする者、退団を選んだ者、

それぞれがそれぞれの別格男役道を、

胸を張って歩んでいるのだな、としみじみ感じます。

 

3人のこれからのさらなる活躍を期待するとともに、

どんな場所であれ最後まで美しく咲き誇って欲しいと強く願っています。

 

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コメント

  1. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    別格道シリーズの記事、楽しいです。今回は97期なんですね。惹かれます。
    おっしゃるとおり月組は、先輩別格の方々が本当に強い!芝居巧者なので、まぁそうなるのか、とも。
    でも、『チェ・ゲバラ』での蓮さん、目を引きました。
    もっと役付きをよくしてほしいです、はい。
    月組の集合日は毎回、ニュース欄・退団者の報をひらく時、心拍数があがります。
    どうか素晴らしい宝塚人生を、全うしてくださるように、と願います。

  2. ずんだもち より:

    あなたは本当にもうすぐ退団してしまうのか、留依蒔世。
    退団発表の衝撃と共に「やっぱりそうなるか」と思ってしまったのも事実です。誰もが認める実力者でありながら、ちょっとツイてなかったですものね。「オーシャンズ11」と「エル・ハポン」は立て続けに歌進行係、「アナスタシア」はバイトばっかり、「ホームズ」は警官の一人。その分別箱では大活躍でしたが、あろうことか「プロミセス×2」と「カルト・ワイン」は配信も円盤も無しですよ、神様こんなのあんまりです!泣
    女役は不本意だったのかと思ったけどそうではなく自ら望んでのこと。ラ・パッショナリアはオーディションで勝ち取ったものだし、これを聴けただけで幸せと感じる程素晴らしいラ・パッショナリアでした。
    トップに立とうと立つまいと、そんなことは関係なく大輪の花を咲かせて見せてくれたと思います。外部の舞台を目指していそうですし、これからも注目していきたい人です。

  3. YUKIMARU より:

    いつも楽しみに拝見しています。
    この別格枠は 新人公演主演経験者なのですね。
    97期といえば、雪組の叶ゆうり。月組の佳城葵。華もあり、存在感もあって、いつも舞台にいると目がいってしまいます。
    ちょっと語ってみたくなるそんなおふたりです。
    蒼汰さんは いかがですか?

    • 美椒 より:

      横から失礼いたします。

      私も 佳城葵、秋奈るい、97期の芸達者さん、大好きです。
      長く在団してほしい方々です。