2.5次元作品は難しい・花組『悪魔城ドラキュラ』新人公演感想

 

花組『悪魔城ドラキュラ』新人公演をライブ配信で観ることが出来ましたので、

さっくり感想を書いていきます、が。

最初に前置きしておきますが、辛口気味です。あしからず。

 

2.5次元作品は難しい

 

『悪魔城ドラキュラ』新人公演、私は残念ながらいまいちピンと来ませんでした。これは花組生が下手だったと言いたいのではなく、2.5次元作品という題材が若手にとっていかに難しいかを痛感した、という話です。シンプルに芝居力や男役らしさを見せる演目よりも、再現度や原作イメージとのバランスを考えなければならないぶん、若手には荷が重かったのでしょう。

加えて、105期以降の男役をしっかり育ててこなかったツケが如実に出ていた印象です。全体的にアップアップで、舞台上で息も絶え絶えに見えたのが残念。特に今回の新人公演は、期待の超新星・彩葉ゆめのデビュー戦こそが至上命題だったわけですけど、十分に支え切れていなかった…のではなく、彩葉ゆめのオーラに負けて他の若手陣(美空真瑠、七彩はづきあたりは除く)の存在感が霞んでいた、というのが正直な感想です。でもこれって、かなり致命的ですよね…。

ってことで最初に彩葉ゆめの感想を書きますが、デビュー戦でこのクオリティを見せられるのは本当に素晴らしいと思います。マリアという役は最初から最後まで舞台に出ずっぱり、出番の多さは新人公演の娘役としてもかなり過酷で、歌・芝居・立ち位置の切り替えなど気を抜けない難役。途中でスタミナ切れを感じる瞬間もありましたが、それでも最後まで大きく崩れることなく走り抜けたのは見事でした。舞台経験の浅さを考えれば、十分に評価できる成果だったと思います。

顔立ちは音波みのり風の大人っぽい印象で、クラシカルな美しさ。そして何より、彼女には「華」がある!!本役の星空美咲が2.5次元的なキャラクター性を押し出していたのに対し、彩葉ゆめはよりクラシカルで良くも悪くも「宝塚の娘役らしさ」が強く出ていたなと思いました。歌の処理の粗さや、顔芝居の圧など気になる点もありましたが、修正可能な伸びしろでしょう。今後の成長が実に楽しみです。

 

さっくりキャスト感想

 

では、キャスト感想を。

主演は105期生・8人目の男役主演となった夏希真斗。花男らしい華やかさ、ダンスの切れ味、落ち着いた佇まい、そして高身長がゆえの存在感と、十分に見ごたえがありました。シリアスでストイックなアルカード像は新鮮で良かったです……けど、それだとこの作品特有の「萌え」が生まれないのかな、マリアとの並びがまったくしっくり来ない(し、それをフォロー出来る技量を彩葉はさすがに持っていない)な、とうっすら思ってしまいました。人間味や、心の奥にある優しさを芝居でにじませ、母性本能を擽らせる本役・永久輝せあの巧さを、改めて思い知らされた気がします。ただ、最後の挨拶の頃の糸の切れた後の「素の夏希真斗」は凄く魅力的に見えたので、そんな彼女の持ち味に似合うような役・作品に巡り合えたら良いですね。

2番手のリヒター役は106期生・宇咲瞬。歌はズゴズゴでしたが瞳のキラキラが印象的、声の抑揚や表現の工夫には「芝居上手」と言ってよいものがあると思いますが、惜しいのは滑舌の甘さ。これが改善されれば大きく飛躍できるのではないでしょうか?

同じく106期生の鏡星珠は、本役:輝月ゆうまのドラキュラ伯爵役。若い頃からの抜擢経験ゆえか芝居度胸があり、舞台上での安定感がありました。これまた2.5次元に特化している輝月ドラキュラとはまた違う、宝塚ちっくドラキュラ伯爵で良かったです。彼女の課題は男役度、すなわち花男らしいシャープさだと思うんですけど、その方向性とは違う方向に尖った輝月ゆうまから学べる部分は多かったのではないでしょうか。この経験を次につなげて、ぜひ主演を射止めてほしいところです。

これまた同じく106期生の遼美来はサキュパス役。普通に綺麗過ぎて娘役かと思ってしまいました。顔芸が凄いのは役どころ的にオッケーでしょう。花組106期トリオの中では一番好きなんですけど、今回の配役からみるに路線からは外れそう。あと、今回すごくええやん?と思ったのが、本役:一之瀬航季を演じた月翔きらだったんですけど、彼女も106期生で笑ってしまいました。

抜擢はマグヌス(本役:希波らいと)を演じた109異性の月世麗でしょうか。ビジュアル系デビルメイクなので顔立ちはよく分かりませんでしたが、セリフ回しや発声がしっかりしていて、舞台上での聞き取りやすさは新人らしからぬものがありました。堂々とした立ち姿も印象的で、デビューとしては非常に良い滑り出しだったと思います。

あとはやっぱり、神官シャフトを演じた105期生の美空真瑠。やはり頭ひとつ抜けた実力を持っており、芝居も歌もぶっちぎりで上手い。…んだけれども、声を張り上げたときに音が割れてしまう点だけは毎回残念。ただ、それを差し引いても群を抜いた安定感と説得力、そしてギラギラを持っているのは間違いありません。

 

娘役は「いつもの」

 

一方の娘役は、ほっとんどセリフがないのに可憐な娘を演じた106期生の真澄ゆかり、安定した歌唱力と姉さま系な持ち味がピタリとハマった107期生の七彩はづきと、凄く安定感のある配役でした。歌で魅せた花海凜、一瞬の役で可憐さで目を奪った翠笙芹南など、新公ヒロ候補も着実に爪痕を残していましたね。

全体としては粗削りで課題も多かった今回の新人公演ですが、それは裏を返せば「伸びしろだらけ」ということ。彩葉ゆめを筆頭に、確かな光を放つ若手がいるのも事実です。

花組がこの世代をどう育てていくのか。そのプロセス自体が今後の見どころになるのではないでしょうか。不安はありつつも期待が勝る、そんな花組の益々の飛躍を期待しています。

 

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