おかえり、美園さくら/『DEATH TAKES A HOLIDAY』感想

 

元月組トップ娘役・美園さくらの復帰を見届けに、

東急シアターオーブ『DEATH TAKES A HOLIDAY』の、

9月29日13時公演(つまりダブルキャストの美園版初日)を観に行きました。

 

 

さっくり感想を書いていきまーす。

 

男女だからこそ描けるロマンチックさ

 

私は2023年に上演された宝塚月組版を生で観ているのですが、実は相当退屈しました。

【当時の感想】

 

なので、ハードルを相当低く見積もって行ったからかどうかは分かりませんが、前回よりはフツーに楽しめました。それは、当時の月組批難をしたいわけではなく、単純に番手制度に囚われない自由闊達なキャストが配されてたことで、本人たちの持ち味似合った登場人物で、舞台の世界観を構築出来ていたからだと思います。

主人公は死神で、人々の死を見届ける使命を果たしていたけれど、戦争や疫病と過重労働により息も絶えだえ。そんな時に若く溌剌とした女性の魂と相対し、「人生とは」「愛とは」をふと知りたくなった…。なのでボイコット的に無理やり2日間休みを取って、人間界に降り立った。別にその若き女性・グラツィアに一目惚れしたわけではないけれど、屋敷に住む人々と触れ合うことで、次第に「人生とは」「愛とは」を理解していくと同時に、純真に愛を求める彼女に惹かれていく…、という、まぁそんな話です。

初めて迎える爽やかな朝や人々とのふれあいにウキウキする死神も、友愛と情愛の違いにとまどう死神も、若くキラキラした小瀧望氏が演じてこそ、薄暗い舞台なのにロマンティックなラブロマンスに見えました。そう、私は宝塚版を見た時に、本作は『エリザベート』『ファントム』なラブロマンス、すなわち「死の匂いが香る尊大なる主人公に無垢なヒロインが愛を与える話」だと思っていたんですけれど、死神もグラツィアも若さがゆえに「真実の愛」を知らなくて、だからこそ暴走して走り抜けた、という意味では『ロミオとジュリエット』に近い話になったなと感じました。

本作は途中で様々な男女の営みがオムニバス形式で話が進んでいくわけですけど、宝塚版では「死との向き合い」に近かった(息子を失った両親、認知症の元恋人を支え続ける老齢の医者)ですけれど、本作は単純に「様々な愛のカタチ」というラブロマンスに留まっていて、だからこそ主人公カップルの悲劇的な、だけど運命的な愛が映えて良かったと思います。宝塚版では2番手格がヒロインの父だったのに、本作ではヒロインの兄の親友にして若き飛行士に変わってる時点で、演出意図の変化は明らかでしょう。

そして最後の大オチが、宝塚版と真反対な決着に辿り着いたのも良かったですね。宝塚版は「まんまエリザベートやん!!」と突っ込んでしまいましたけど、本作は伝承に残る悲恋伝説になぞらえながらも、あくまで主人公は死神で、その役目に戻っていくからこそ、ストーリーに説得力があったと思います。同時に、多くの観客に「私も死神(小瀧望氏)にこんな風に連れ去られたい」と思わせる展開で、ラブストーリーとして正解過ぎる演出ですね。

 

おかえり、美園さくら

 

さて、ヒロインを演じたのは我らが美園さくら。ヒロインのグラツィアは、恋に恋する箱入り娘の不思議ちゃん系ですが、深く考えもせず幼馴染と婚約しちゃったり、悲恋伝説に本気で物憂いちゃったりと、この時代にはよくいる、普遍的な一人の女性でしかありません。が、それでも死神に愛を教え、死神としての使命を揺るがせるだけの何か(ここでは純真さ)がないと物語が成立しないわけですが、それをちゃーーーーーーーんと表現していました。

そもそも美園さくらが不思議ちゃん系なのですが、それを差し置いても真っ白で無垢で、若く溌剌としていて、そりゃ死神も何かを感じちゃうよなと納得出来る仕上がり。でありながら、あくまで主人公は死神(小瀧望)であり、彼が主人公のラブストーリーの相手役でしかない、という記号的な存在感を感じずにいられませんでした。ら、公演プログラムにしっかりお相手をどう素敵に見せられるか、ということを常に考えている」「ご覧のお客さまが自身の思いを投影できるような理想の女性像を作りたい」と明記してあって、さすがですよ、我らが美園さくら!!

もともと得意だった歌もより進化していて…というより、たぶん宝塚時代に無意識にセーブしていたものが解き放たれていて、伸び伸びと、だけど自分の使命(お相手を素敵に見せたい)を見事果たしていました。芝居はもともとクセ系でしたけど、むしろ本作のような外部のザッツミュージカルな作品だと全く浮いていなくて、むしろヒロイン芝居がピタっとハマっていて驚くくらい。小瀧望との並びもロマンチックで凄く良かったです。

月組トップ娘役時代の彼女は本当に不遇で、劇団からも彼女以外のファンからもぞんざいに扱われ、私は本当に不憫に思っていましたけれど、当時の環境があまりに不穏で不快過ぎて彼女をちゃんと見送れなかったことが、ずっと、ずーっと心残りでいました。だから美園さくらが舞台の上に戻ってきた時は絶対に観に行こうと決めていたわけですけれど、彼女は慶應義塾大学大学院に進学し、ストレスとの向き合い方について研究する道を選んだ。ま、今の宝塚の凋落を見ればさもありなんって感じですけれど、それでも再び舞台に立ちたいと思ってくれた彼女を私は温かく応援したいし、だからこそこうしてチケットを買い、そしてその場に立ち会えて本当に良かったです。

おかえり、美園さくら。このまま再び舞台の上に戻るのか、それとも勉学の道に進むのか、目の前に選択肢はたくさん、そして自由にあります。どの道を選んだとしても、私は貴女を応援していますよ。

 

小瀧望氏の輝きっぷりに驚く

 

さて、主人公の死神を演じた、小瀧望がまぁ素敵な殿方でして。先行イメ画だとタレ目が強調されていたのと髪型いかにも当時のヨーロッパ男性って感じで、さして強い関心は無かったんですけど、舞台で観たらあーら素敵、スーツが良く似合うどちゃくそイケメンでキラキラした貴族様でした。歌もしっかりミュージカル発声で、渋めなのに甘い声も良い。こんなイケコ好みそうなのにイケコに汚れてなさそうな(オイ)子、どこにいたんだろうと驚いていたら、幕間で購入したプログラムを読んでビックリ、なんとジャニーズの方だったんですね…?!

我ながらジャニーズは完全に管轄外でして、嵐なら「a Day in Our Life」「PIKA☆NCHI」あたりで止まってる世代なもんで、存じ上げなかったです、ごめんなさい。けどまぁばっちりミュージカル俳優していて、座長として本作をバリバリ引っ張っていました。単純に凄くカッコ良かったです。いやー、ビックリ。こんな逸材がいらっしゃるのですねぇ…。私はまんまとWEST.に興味惹かれて、youtube見て帰ったのは秘密です。笑

彼のこれからの活躍も期待大ですね!!無事、千秋楽まで走り抜けられることを心から祈っています。

 

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コメント

  1. あずきなこ より:

    初めまして。いつも楽しくブログ読んでます。私は宝塚ファン兼WEST.ファンなので、小瀧くんのことをとても褒めてくださって嬉しいです。WEST.は事務所の中でも実力派で舞台ではちょこちょこOGさんと共演しています。来月からはメンバーの桐山照史くんが主演の『グラウンドホッグデー』というミュージカルで咲妃みゆちゃんとの共演が決まっているのでもし機会があれば、是非観劇して頂きたいです!!ちなみにwestubeでのオススメは大洗旅行編とリレークッキングです!! 長々と失礼しました。これからもブログ楽しみにしています。

  2. ゆきち より:

    初めてのコメント失礼します。
    いつも冷静で愛のあるブログの更新を楽しみにしています!
    WEST.ガッツリ、宝塚にわかをやってるのでコメントせずにはいられませんでした。発表当初、生田先生の演出で小瀧君が美園さくらさんとデスホリ!?私得すぎる!と歓喜していたオタクです。

    結論、今回観劇はできないのですが、まさか、蒼汰さんのデスホリ観劇感想を見れるとは…。美園さくらさんと小瀧くん、作画合うだろうなーと思っていましたので、並びがロマンチックと聞いて勝手にガッツポーズです。

    そして小瀧くん褒めとWEST.のYouTube見てくださったのもめちゃくちゃに嬉しいです。
    彼らもジャニーズの中では苦労人で、中々の成り上がり、というか自分たちの売りを試行錯誤して掴んできた実力派なので蒼汰さんに刺さるんじゃないかなーなんて思っています。(小声)

  3. ASわんだふる より:

    昨年のジャニーズの件と宝塚の悲しい出来事で、心が沈んでた時、WEST.さんの歌で、随分なぐさめられ、励まされました。グループの存在自体は知っていたのですが、某サッカーアニメのOP曲で、YouTubeのMVを、何回もみました。ミュージカルの主演をするというので、どうだろう?と思いましたが、素晴らしいそうで何よりです。私は残念ながら観に行く事が出来ないのですが、千秋楽まで走りぬけるといいですね。

  4. より:

    こんばんは。
    あまりOGの事に言及しない蒼汰さんが、さくらの復帰舞台を観劇して記事にしてくださるなんて…どの立場って感じですが感無量です。
    私も、美園さんの舞台復帰を見届けずにはおれない!との思いで、本日観劇してまいりました。

    勝手に色々心配していたのですが(今どきのジャニ俳優さん相手にこってり芝居で相性悪いのでは、とか)全くの杞憂、むしろ宝塚時代よりよっぽどイキイキとしていて、美園さんの魅力も実力も全開でした。
    とくに歌唱のさらなる進化にはびっくりでしたが、蒼汰さんご指摘のとおりあの頃は無意識に(もしくはある程度意識的に?)蓋をしていたのかもですね…
    小瀧さんとの遠慮のないクソデカボイスどうしのデュエットは、本当に気持ちよかった!!
    そして期待以上にかわいかった…今からでも娘1できるんじゃない?ってくらいの瑞々しさを感じました。

    これからもコンスタントに舞台に出続けてくれるのか分かりませんが、美園さくらの舞台人生第二章が、どうか素敵なものになりますように。
    そして個人的には、ぜひいつかIAFAのエマをやり直してほしい…良いキャスティングで…と願っています!