前回は宝塚版『ロミオとジュリエット』の個人的総評を書きましたが、
今回は各公演を映像で見ての感想を書いていきたいと思います。
あくまでさっくり感想シリーズなので、
全作レビューシリーズのような本気なものじゃなく、
思いつくまま書いていきます。
※感想とはあくまで個人的なものですので
異議申し立てをされても「そうですか」としかリアクションが出来ません。
あくまで私の主観ですので、ご容赦下さい。
※役名が長いため、以下の通り略して書きます。
・ジュリエット:ジュリ/・ティボルト:ティボ/・ベンヴォーリオ:ベン/・マーキューシオ:マキュ
2010年星組梅芸版:伝説の初演
【主な配役】ロミオ/柚希礼音、ジュリエット/夢咲ねね、ティボルト/凰稀かなめ、ベンヴォーリオ/涼紫央、マーキューシオ/紅ゆずる、死/真風涼帆、愛/礼真琴
初演にして、今のところの正典。
この公演が他の作品と大き違うのは、
主要男役4役、すなわちロミオ、ティボ、ベン、マキュの4名が
ちゃんどほぼ同い年というか、同格に見えることだと思います。
街の若者たちの命を懸けた喧嘩。
そんな中、ティボは少しだけ粘着質で、
ベンは少しだけしっかり者で、マキュは少しだけ年下で喧嘩っ早くて、
ロミオはみんなのリーダーで少しだけロマンチスト。
その少しだけの違いが物語を大きく動かしてしまう、
というのが自然に描かれていて素晴らしいと思います。
あと、涼紫央以外は比較的若目なのに、
みんな大人っぽいですよね。
衣装も含め、なぜかファイナルファンタジーみが凄いです。笑
そして真風涼帆の死の凄み、
礼真琴の愛のたおやかなダンスも見どころの1つ。
後にトップスターになる人だらけな豪華な布陣という点で、
なんだか初演『エリザベート』を思い出し、
宝塚を代表する一作になる運命だったのもうなずけます。
…とまぁ、全力で誉めそやしたいのですが、
やっぱり夢咲ジュリがねぇ。
壊滅的に歌えていないし、なんだかメイクも不安定。
そこだけが惜しいなと単純に思ってしまいました。
2011年雪組版:混迷の象徴
【主な配役】ロミオ/音月桂、ジュリエット/舞羽美海・夢華あみ、ティボルト/緒月遠麻、ベンヴォーリオ/未涼亜希、マーキューシオ/早霧せいな、死/彩風咲奈、愛/大湖せしる
初見の感想は、正直「精彩を欠いているな」というもの。
他の公演と比べてみても、なんだかふわふわしてません?
と、完全に忘れていました。
この作品は雪組トップスター・音月桂のお披露目公演。
すなわち、彩吹真央の2番手退団からの
96期ショックからのトップ娘役不在決定からの
夢華あみスケープゴート真っ只中、な公演なんですよね、コレ。
そりゃしっちゃかめっちゃかだわ、と思ってしまいました。
(さらにこの公演中に東日本大震災も起きるわけですから、まさに悲惨。)
公演のクオリティ的にも…うーん。
なんだか全体的に大人しいですよね。
星組のフレッシュなんだけど大人っぽいじゃなく、単純に渋いというか…。
本来は10代前半の若き血潮の暴走がテーマなはずなのに、
音月、緒月、未涼あたりが落ち着いたキャラだからか、
20代後半の不倫劇みたいに見えてくるというか。
そして唯一キラキラ枠の早霧マキュは歌いだすと固唾を見守らざるえないし、
彩風演じる死のメイクの事故っぷりも、
沙央演じる乳母の歌えてなさっぷりも、うーんという感じ。
まぁ一番酷いのは、
青チーム赤チームに別れてのバトルこそが一番の見どころなのに、
全員白にするという演出の改変だと思いますけどね。
当時の劇団の迷走っぷりが伺える公演です。
2012年月組版:異例の体制こそ正解
【主な配役】ロミオ/龍真咲・明日海りお、ジュリエット/愛希れいか、ティボルト/龍真咲・明日海りお、ベンヴォーリオ/星条海斗、マーキューシオ/美弥るりか、死/珠城りょう、愛/煌月爽矢
この作品を見て驚いたこと、
それは龍真咲はロミオとティボ、どちらを演じてもしっくりくるのに
明日海りおのティボが全く似合っていないということです。
あの芝居上手な明日海りおが、役をモノにできていないなんて…!!
まさに準トップ体制の歪みかもしれません。
よって個人的には明日海ロミオ、龍ティボ版が好きなんですけど、
スター制度を取る宝塚として、
それは有りかと言われると微妙ですよねっていう。
しかしながら、愛希の性転換直後のトップ娘役就任、
からの準トップ制度という前代未聞の事態でありながら、
公演自体のクオリティは高めです。
しっかり者のベン、喧嘩っ早いマキュというキャラ立ちはもちろん、
乳母もロレンス神父もどちらも歌えるという点で大量加点。
愛希はやんちゃ味が強い役作りでしたけど、
個人的には歴代で一番しっくり来たジュリ像でした。
文句をつけるとしたら、美弥マキュが薄味なことでしょうか。
組替え直後とはいえ、もうちょっと出来たよねっていう。
このチャンスを大いに生かせなかったのが、
後に響くことになるのかなぁと思っちゃったのは、また別の話。
2013年星組本公演版:外伝的面白さ
【主な配役】ロミオ/柚希礼音、ジュリエット/夢咲ねね、ティボルト/A紅ゆずる・B真風涼帆、ベンヴォーリオ/A礼真琴・B紅ゆずる、マーキューシオ/A壱城あずさ・B天寿光希、死/A真風涼帆・B麻央侑希、愛/A鶴美舞夕・B礼真琴
実は、円盤6枚のうち星組A版を一番最後に見たんです。
なぜなら期待値が最も低かったから。
だけどごめん、それが思いのほか良かったんですよ。
そもそも、モンタギュー側の男子3人組って、
しっかり者の長男:ベン、ロマンチストな次男:ロミオ、喧嘩っ早い三男:マキュ
っていう関係性が一般的じゃないですが。
だけどマキュを激情的な上級生・壱城、
ベンを優等生的な下級生・礼が演じたことで、
リーダー的長男:ロミオ、情緒不安定な次男:マキュ、しっかり者の末子:ベン
という、また別の関係性で作品を見ることが出来て、
それが意外にも面白かったんですよね。
紅ゆずるも粘着質な悪役であるティボの方が板についてましたし、
何よりも壱城マキュが個人的に本当に良かった!!
『ロミオとジュリエット』という原作ありきの作品の
設定をぶっ壊すような演出はいかがなものかと思いますが、
ちゃんと成立していた分、これはこれで面白かったです。
全体を通しての感想は…
そして全体を通しての感想を申し上げますと、
輝月ゆうまのヴェローナ大公が最強過ぎるということです。笑
噂はかねがね聞いてましたけど、これで研4とは…。
衝撃のハイクオリティ。大抜擢した月組も凄いけどさ。
以上を踏まえ、個人的に一番好きなのは
やはり月組明日海ロミオ版ですかね。
礼ロミオ版は、それを果たして越えてくるかなー?
次はまだ見てない新公シリーズを楽しみたいと思います。
我ながら良い年末を過ごせそうです。笑
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コメント
こんばんは。みりおちゃんバージョンしか見てない美弥オタなのですが、美弥さんに対して同じ感想持ちました。2番手後半期に初めて見てファンになったのでそのギャップに愕きました。
星組の番手ついていない状態から組替えして急遽のW3番手の大抜擢で、しかも歌唱指導っていう、、(歌唱指導もAfO・エリザと比べると初々しくて頑張れ!って感じで。笑)
まぁ、月Pにとっては明日海と後にくる凪七への同期支えのためのご祝儀だったんですかね。
ご本人が納得されて退団された後に、自分の知らない過去のことを一ファンが語るのは不敬なのかもしれませんが、もしかしたら望海にとってのオーシャンズ11、紅にとってスカピンがあったように美弥さんにとってのターニングポイントになりえた大抜擢でしたよね。
ですが、こういう必死にもがいた過去があったからこそ華々しく大きな唯一無二の花が咲いたんだなとロミジュリ観ながら感慨深い気持ちになったのを思い出しました。
こんにちは。
そういえば程度の話なんですが、明日海さんがトップになってから「好きな映画のワンシーンを再現撮影してみよう」的な企画で、レオナルドディカプリオ主演の映画ロミオ+ジュリエットの再現撮影していたことを思い出しました。舞台を現代に置き換えた演出で、古典的雰囲気は皆無で現代的、でも若さが暴走したゆえの悲劇性はしっかり原作の遺伝子を汲んだ作品です。(あと若かりし頃のディカプリオやっぱり超イケメン)
明日海さんの目指したかったロミオ像ってあんな感じだったのかな…とかふと思いました。
トータルでは何だかんだ初演星組公演が好きなのですが、どこが好きなの?と言われてもうまく言語化できないので、毎度ちゃんと言語化されている蒼太さんはすごいなと思います。
私も月組明日海ロミオが好きです!みんな大好き輝月ゆうまの、ここはヴェローナは定期的に再生したくなりますよね。
ロミオは礼真琴より彩風咲奈の方がイケイケ感と繊細な面を上手くやってくれそうなので、雪組で観たかったなあ…と思います。ティボルト朝美絢、マーキューシオ綾凰華、ベンヴォーリオ諏訪さき、死縣千とか、いいんじゃないかな〜と思います。…誰も2番手に来ない前提ですが。
朝月ジュリエットはさすがに難しそうなので、しばらく雪組ロミジュリはないだろうと思うと、すこし残念です。