叶羽時と96期生娘役体制の終焉に思う【雑記】

今から10年前の2009年に始まった

宝塚歌劇団を大いに揺るがした、いわゆる「96期生問題」。

 

劇団は当初この問題に対し

「私たちは何も悪くない」という態度を貫き

あえて96期生ばかりを舞台上で優遇してきました。

 

とはいえ、それは娘役ばかり。

96期生からトップスターが生まれようものなら

ファンから猛批判が起こることが目に見えていますから

娘役を上げることで批判の芽を潰しながら、

劇団としてのプライドも保つという作戦に出たわけですね。

 

本日はそんな、96期生の娘役スターについての雑記です。

 

96期のヒロイン候補生たち

 

96期生は娘役豊作の学年らしい。

 

いやいや、上記の通り96期生の娘役ばかり抜擢してきたのは

それなりの目算があってのことなわけですが、

それにしたって全組に渡って抜擢しまくるというのは

いささかやり過ぎだったように思います。

 

具体的に言えば、

 

花組は朝月希和(新公ヒロ2回、外箱Wヒロ1回)。

月組は咲妃みゆ(新公ヒロ2回、外箱ヒロ4回、研5で雪組トップ娘役就任)。

雪組は夢華あみ(配属1作目で新公ヒロ、2作目でWトップ娘役を務める)。

星組は綺咲愛里(新公ヒロ3回、外箱ヒロ1回、研7で星組トップ娘役就任)。

宙組は花乃まりあ(新公ヒロ4回、外箱ヒロ1回、研5で花組トップ娘役就任)。

 

しかしながら、全員が全員、

劇団の思惑通りに事が運んだかと言えば、

言い換えれば抜擢によって幸せな思いをしたかと言えば、そうではありません。

 

夢華は96期ヘイトを一身に受け、たった4年で退団したし、

よりにもよって明日海りおの相手役を務めた花乃も新公学年で卒業。

 

咲妃と綺咲は、トップ就任時に「96期生ばかり」と批判にさらされましたが、

本人たちの実力(ビジュアル込)と、

何よりも「時間」という薬により、

ファンからだいぶ受け入れられるようになりました。

 

朝月は花組からの組替えにより、シレっと望海体制雪組の娘2ポジションに。

「TAKARAZUKA REVUE 2019」でもしっかり晴れ着で掲載され、

そして再組替えで花組へ戻り、瀬戸主演の東上ヒロインが決定済み。

 

いやはや、劇団の意図により

無理やり上げられた96期生たちのスター人生もいろいろ。

振り返れば、実に興味深い歴史をたどっているのが分かりますね。

 

叶羽時と月組の娘役事情

 

そして、96期生で新公ヒロを経験しているのは

実はこの5名だけではありません。

 

それは月組『舞音-MANON-』で

たった1回新公ヒロを務めた叶羽時。

 

とはいえ、彼女の抜擢は

はっきり言って本命のそれではありませんでした。

 

なにせ当時の月組は、1期上の愛希れいかが娘役転向後すぐにトップ就任し、

同期には咲妃みゆが、1期下には海乃美月がおり、

さらに途中で94期の早乙女わかばが組替えしてやってくる。

 

そんな中での彼女の抜擢は、

当時の本命・海乃美月の箸休めでしかなかったわけですが、

それでも劇団的には「96期推し」の1人として白羽の矢が立ったのかもしれません。

 

そしてその後の彼女は、本当に新公ヒロ経験者なのか?と思うくらい

役付きが微妙になっていくわけですけれど、

 

月組は「早乙女vs海乃」からの「海乃vs美園」という

娘役戦争が勃発していくわけですから、

情勢的には仕方なかったのかもしれませんね。

 

叶羽時の輝きと散り際

 

とはいえ、それは叶羽にとって

逆に良い方向に作用したのではないかと思います。

 

彼女ははっきり言って、

ヒロインど真ん中というスター性を持ち合わせていません。

 

その代わり、ちょっぴりダサくて、残念で、可哀想で、

でも一生懸命な女の子の役がとてもよく似合う。

 

例えば『夢現無双』では一途に武蔵(珠城)を思う朱実を、

『エリザベート』ではシシィ(愛希)

美味しいところを持っていかれるヘレネを好演。

 

劇団の無理やりな抜擢に押されることはなく、

あくまで普通の娘役として月組を支える立場に回っていきます。

 

そして最後は『I AM FROM AUSTRIA』のアンナという役で、

彼女のスター人生は幕を閉じるわけですが、

アンナはフェリックス(風間)の片思いの相手でありながら、

正直、舞台ではそこまで出ずっぱりではありません。

 

そして同期の乙羽映見のように、

最後の最後で餞別的美味しい役を貰い、

その技巧を知らしめまくるというわけでもありません。

 

だけど明るくコミカルな作品の中で、

笑顔でクルクル踊りながら登場し、そして去っていく叶羽の姿は、

どこか残念だけどファニーな彼女の魅力が、

優しいかたちで結晶しているように見えるのです。

 

それは再び訪れることのない、

短い季節が遠のいていくかのように、美しくも切ない一瞬。

競争社会は辛く苦しいものだけど、でもやっぱり宝塚は「美しい」。

 

あえて普通の娘役として最後に花を持たせたのは

劇団の偶発的優しさなのかもしれませんね。

 

2019年の今、96期生の娘役たちを思う

 

2019年は、明日海りおをはじめ

美弥、七海などの89期生体制の終わりの年でありながら、

96期最後のトップ娘役である綺咲をはじめ、

叶羽、乙羽の退団という96期生娘役体制の終わりの年でもあると言えます。

 

その一方で、現在の宝塚ファンが

推し活騒動や、私設FCの是非や、ポラロイド風フォトカード騒動や、星蘭の専科異動などで

「前代未聞だ」「宝塚の品格を問う」などとSNSで怒っているのを見るにつけ

つくづく平和になったなぁとも思うのです。

 

もう96期生問題も、遠い昔なのかもしれない。

 

些細なことにプリプリ怒っていられるのも、

この10年でどれだけの犠牲を払い、

どれだけ企業側の意識の改革がなされたかの結果によるものなのかもしれません。

 

そして同時に、この10年の間に翻弄された

96期生の娘役たちに思いを馳せずにいられない時があります。

 

スターというのは、

眩い照明の輝きとファンからの喝采を受ける一方で、

それ以上の批判や中傷を引き受けねばならない宿命を背負うわけですが、

 

叶羽は『TAKARAZUKA 花詩集100!!』新人公演や

『A-EN ARTHUR VERSION』ではそれなりの抜擢を受けながら、

だけどもトップの立場になることはありませんでした。

 

その分、夢華や花乃のように

スターがゆえの孤独を引き受けることもなかったのです。

 

どちらが良いか悪いかではありません。

劇団に翻弄された彼女たちが、

納得のいくかたちで舞台を去れるよう一ファンとして祈るばかりです。

 

そしてラストランナーとなった朝月希和が

どのような道筋をたどることになるのか。

96期ウォッチャーとして、その行方を見守っていきたいと思います。

 

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コメント

  1. やまと より:

    先日IAFAを観劇し、叶羽時さんに目を奪われました。彼女、お化粧とカツラのセンスがすごく良いですね。ボーイ2人が取り合うのも納得のかわいらしさでした。アンナは出番こそ多くないですが、娘役冥利に尽きる役なのかも。
    下級生の男役と組んでいるとは思えない瑞々しさ。指先までぴんと神経の通った美しい所作や、軽やかでよく通る声など、娘役の集大成としてのこだわりがたっぷり感じられました。
    男役10年とはよく言いますが、娘役も極めるのに10年くらいかかるものなのかもしれません。

    • いのさん より:

      先ほどたまたまスカステで「memorys of 叶羽時」を見ていました。
      私が宝塚ファンになったのは100周年の少し前で、いわゆる96期問題はリアルタイムで知りません。ファンを辞めてしまった方もいたと聞き、軽々に触れてはいけない話なんだなと感じていました。
      叶羽さんの大階段降りの挨拶の中で、「宝塚が永遠でありますように」という言葉があり驚きました。夢華あみさんも千秋楽で「宝塚が永遠に続いてほしいです」と言っていたからです。(確か壮さんに「退団者から一言」と振られた時)

      今、若者の世代はTwitter、インスタなどのSNSやYouTubeなど、手軽に承認欲求が満たせる環境で育ってきています。元ジェンヌさんの中にもあっさり宝塚時代の暴露めいた話をしてしまう方もいます。
      そんな中でも退団していった96期生たちは、私の知る限り誰一人として言い訳めいた事や、自分たちを正当化するような発言を一切していません。まだ現役で頑張っている同期がいるので当たり前かもしれませんが、私はそこに彼女たちの覚悟と宝塚への深い愛や感謝の念を見るような思いがして、好感を持って受け止めています。

      花組の千幸あきさんの退団も発表され、これで96期生は半分が退団する事になりました。今のまま行くと、男役トップスターは生まれないかもしれません。しかし和希そらさんをはじめ、各組の舞台でそれぞれの立場で輝いている96期生の皆さんをこれからも応援したいと思っています。
      (書いて良い事の基準がよくわからないので、不味ければ消して下さい)

      • 蒼汰 より:

        コメントありがとうございます‼
        もしかしたら裁判の中で取り決めがあったのかもしれませんが、色々波乱があったからこそ、同期としての絆、宝塚への深い愛が芽生えたのかもしれません。
        だからこそ時間という薬が効いているわけですが…和希さんはじめ、96期生も実力相応に舞台で輝くことを祈って応援していきたいですね。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      「瑞々しい」とはまさしくその通りだなと思いました。いつまでもフレッシュさを湛えるって娘役として大切な資質ですものね。
      仙名さんなんかもそうですが、芸歴が長いからこそ魅せられるものもありますよね。娘役10年、確かにそうかもしれません。

  2. ヅカオタ より:

    コメントさせていただきます。
    96期娘役としてトップになった咲妃、花乃、綺咲の中で、花乃ちゃんだけハズレくじを引いてしまった気がしていて。
    個人の資質はもちろんあるのでしょうが、2人との差は結局相手役の差なのかなとか思ってしまって。
    明日海と早霧は同時期にトップになって、なんで咲妃と花乃が逆だとダメだったのかなと。明日海+花乃より早霧+花乃の方がビジュアル的に似合ってるなと思い、2人とも娘役として基本的能力はあるのながら
    早霧+花乃で現代的なビジュアルコンビ
    明日海+咲妃で憑依系芝居コンビ
    という未来はなかったのか。(望海という超人気実力派2番手がいるのだから、舞台技術の高い咲妃を明日海の相手役にした方がバランス、明日海の負担という意味でもいいのではないか)
    というしょうもないことを考えて、蒼汰さんのご意見を聞きたいなと思いました。

    でも、結局ちぎみゆは大人気になり、トリデンテとして雪は超人気組になりましたし
    明日海は孤高のトップオブトップとして人気をゆるぎないものにしましたし
    なんだかんだ成功ですね。
    花乃ちゃんもちゃぴとかみりおんとかと違って、よくみりおをインスタに載っけてて、ハッピーそうですし。

    でも勝手なイメージなのですが、みりおを見ていると、痛々しくて孤高のトップというか、痩せて痩せてあの細い身体にどれだけのプレッシャーや負荷を1人で背負ってきたのかともっと幸せに走れなかったのかと悲しくなってしまうんですよね。もし明日海+咲妃になったら、ここまで孤高で痛々しいトップというイメージではなくもっと幸せなトップというイメージになったのかなとか思いました。妄想を失礼しました。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      なるほど確かに。そう言われてみたらそうですね…。
      もちろん当時の流れは分からないのですが、なぜ明日海に咲妃を当てがわれなかったかと言えば
      個人的にはそれだと「月組の分店」みたいな扱いに見えてしまうし、それで人気が出ようもんなら月組の顔を潰してしまうからかなぁと思わなくはなかったり。
      (もちろん今の雪組コンビはじめ、他組の出身者が別の組で再会してコンビを組むことなんて往々にあるんですけどね。)

      正直彼女の孤独性って、それこそ敬愛する瀬奈じゅんと同じような芸風(宿命)であるがゆえに、
      誰が相手役であろうとそんなに変わらなかったんじゃないかと思うんですよね。結局仙名を相手にしてもそこまでキャラが変わらなかったですし…。
      個人的には夢華が別格娘役として活躍する様や、花乃がカワイ子ちゃん枠で舞台を賑やかにしている様なんか見てみたかったです。悲しいifですが。

  3. 藤尾 より:

    こんばんは
    今回の月組公演を観ながらふと、雪組には朝月さんじゃなくて叶羽さんでも良かったんじゃないかと。でも朝月さんはトップコンビと同じ花組出身だし、永久輝せあを連れて帰ってくるところまでがミッションだったのかも。
    演出家のお気に入りの生徒さんっていらっしゃいますが、乙羽さん、叶羽さんともに景子先生の時は役付きが良い様に感じます。
    あと、愛希さんトップ娘役の月組はほぼ早乙女海乃のW娘2体制で、ずっとモブだった美園さんが急遽上げられた印象です。本公演はカンパニーで初セリフ、初ポストカード用のポートレートすらなかったのは当初上げる予定ではなかった方のように思います。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      確かに叶羽さんでもよかったんでしょうけど、たぶん劇団の評価的に朝月さんのが上だったんでしょうね。東上ヒロも控えてますし。
      美園さんに関しては99期から上げねばならないのも含め、結局は棚ぼたトップだったんだと思います。妃海さんと同じような。
      違うのは、いわゆるみちふうは一つのトップコンビ芸として、またシンデレラストーリーとして物語が完結したのに対し
      美園さんは「本当はその予定じゃなかった」と見えてしまうよう現状でしょう。