そして花開く・花組『Goethe!』感想

 

花組『Goethe!』をライブ配信にて観劇しました。

こちらもさっくり感想を書いていきます。

 

花組『Goethe!』さっくり感想

 

まずは演出を手掛けた植田景子先生、なんだかお久しぶりですね?『舞姫』の再演こそあれど、本格的な新作(とはいえ原典ありの日本版ですが)『Hotel Svizra House』以来の約6年ぶり?どうしてここまで宝塚と距離が空いてしまったのでしょう…やはり例の事件以降の不用意発言の影響なのか、と邪推してしまいます。個人的には、そこまで気にする必要があったのかな、という気もするのですが…。

とはいえ、植田先生といえば、大劇場では事故ることもあるものの、特に小劇場での繊細でふわっとした世界観づくりにおいては右に出る者がいないプロ中のプロ。本作もその手腕が存分に発揮されていたと思います。空間の使い方が多角的で本当に巧みで、舞台中央に段差や扉をわざわざ配置し、キャストを上り下りさせたりくぐらせることで動きそのものを「魅せる」演出が、心情の移り変わりをよく表現していたと思います。あ、馬チャリは笑うところでしょう。←

物語としては「若きウェルテルの悩み」をゲーテが生み出すまで、に焦点を絞った構成が見事でした。同時上演中の花組『DEAN』が、ジェームズ・ディーンの半生を中途半端に描こうとして散漫になってしまったのは対照的で、絞り込んだからこそ濃密なドラマが成立しており良かったです。

そして本作最も特徴的だと感じたのは、主人公とヒロインと三角関係となるケストナー(侑輝大弥)が嫌なやつじゃない、ということ。ヒロインが「貧困ゆえに裕福な男と結婚させられる」という図式ではなく、ケストナーがイイ男なんですよなぁ。たしかに冒頭では主人公に対し当たりは強いものの、それは仕事に真面目であるがゆえの裏返しだし、気になる女性を前に不器用にまごついたり、恋敵が現れても紳士に追い返したり…(ま、最後は策士でしたけど)。何より顔面がイケメン過ぎて、「ごめん、これは勝てないわ……!」としか言えない展開でした。

ヒロインは愛する男ではなく、収入の安定した堅実な男を選ぶ。恋に破れた主人公は苦しみの果てに『若きウェルテルの悩み』を生み出す。創作の果てに魂が救済され、冒頭に戻る…。実に見事です。この自然過ぎるストーリーを、ほぼ前編歌と舞台演出で見せたという構成力が素晴らしかったです。これぞザッツ、ミュージカル!!

 

キャスト別感想

 

ゲーテを演じた永久輝せあ。彼女といえば苦悶顔、ただ本作はこれまでの絶対殺すマン的な眉間の皺でなく、もっと柔らかく、もっと青く、もっと脆い、まさしく若き青年の胸焦がれる爽やかな苦悩。そんな恋に落ちていく過程に見せる表情の透明感や、恋敗れた後の焦燥など、これまでとはまた違う魅力を引き出していて、文句なしの当たり役でした。

ヒロインのロッテを演じた星空美咲。まず一言、抜群に歌が上手過ぎる!!冒頭、白い衣装をまとい、澄みきった鈴のような声を響かせる姿は、もはや天使としか形容できません。ぶっちゃけ、第一幕はどっからどう見てもほぼクリスティーヌですけど、最後の説法ソングはほぼ魂の絶叫のようで、見事でした。これをヒロイン性を失わずにやりきれる技量が本当に素晴らしい…感服です。

ゲーテの友人、ヴィルヘルムを演じた聖乃あすか。ここ最近はクセの強い役や闇を抱えたキャラが多かった印象ですが、今回は一転して静で魅せる役。共に恋を語らい、そして恋に破れて死を選ぶ…。静かに恋に狂っていく確かな芝居力も良かったです。

そのヴィルヘルムと恋仲となった人妻・マルガレーテ役の美空真瑠。彼女もまた歌が上手く、特に星空美咲との二重唱は圧巻でした。人妻役としての成熟した雰囲気もしっかり表現していて、存在感は十分。ただそれが路線スターとして正しいかどうかは現時点では分かりません…。

悪魔・メフィストフェレス役の夏希真斗。マネキンばりの異次元スタイルと朗々たる歌声に感動しましたが、ビジュアル的にこれで正解なんでしょうか、植田先生?もっとトート的な死神風を想像していたので、勝手にコレジャナイになってしまったのは…まぁ私のせいなんですけどね。少なくとも正路線の役じゃなかったな、というのが正直な感想です。

で、逆に想像以上に良い役に巡り合えたのが、前述の通りケストナーを取った侑輝大弥でしょう。そりゃ確かに歌唱力的にアレレな部分ありましたが、そんなものが些細に感じられるほどイイ男でした。瀬戸かずやぶりの正統派別格花男として、これからも活躍して欲しいですね。

そしてヒロインの妹役の七彩はづき。夢見がちな姉とは違い、実はしっかり者な妹感があって良かったです。そして彼女もまた歌が上手く、出番こそ多くはないものの、その一声で舞台を優しく照らす存在感がありました。彼女もまた今後の活躍が楽しいです。

 

王道のミュージカルに感服

 

正直なところ、今の花組は中堅どころや別格枠に歌ウマが少なく、歌唱面で講演を支えるには決して盤石な布陣ではありません。しかし本作では、その穴をむしろ強みに転化するように、若手である美空・夏希・七彩を要所に配置することで、音楽的な厚みと新鮮な息吹を見事に生み出していました。

そして花組は、極美慎を迎えたことで、いよいよこれから最盛期へと向かう気配が濃厚です。主力が育ち、若手が台頭し、トップ周辺の役者がそれぞれ持ち味を確立しつつある今、組としての完成度が一段階上がる予感しかありません。

美しい花々が次々とつぼみを膨らませ、やがて満開を迎えていく…、そんな未来を確信させてくれた一作でした。次の大劇場公演もますます楽しみです!!

 

☆★☆★☆

ランキング参加始めました!!

ぜひポチっとお願いします↓↓

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

コメント