水美舞斗・Best Acting Selection

不定期更新シリーズ『95期生 Best Acting Selection』、

95期生が出演している公演の中で、

私が個人的に好きな役・作品を3つ選んで紹介していく連載企画。

(オススメ作品ではなく、あくまで私が「好き」な作品です。)

 

本日は花組の水美舞斗編。

最後まで書き終わった後にこの部分を書いているのですが、

いわゆる水美舞斗ファンの皆様の趣向とはズレている可能性が高いです。

(理由は最終項にて)

 

ということでさっそく参りましょう!!

 

東上公演『はいからさんが通る』鬼島森吾役

 

彼女を語るうえでやはりこの役は外せないでしょう!!

同期・柚香の東上初主演作品にして、

あまりの評判の良さにお披露目公演として再演予定になった本作。

 

粗野で無骨な軍のはみ出し者、だけど実は根が良い人という

彼女が本来持つ爽やかさと、花男としてのワイルドさ

絶妙なバランスで調和した役どころだったと思います。

 

そして何よりもビジュアルが良い!!

モッサモサな軍服姿なはずなのに、

なぜかスタイリッシュさも感じる絶妙な華やかさ。

 

ちょいちょい挟まれるコミカルなやりとりと、

本筋のシリアスな芝居のふり幅を含め、

安定した芝居回しも見どころでしょう。

 

入団成績上位者なのに、

なぜか苦労人だった彼女にとって

初の当たり役にしてホームラン級のヒットとなった役と言えます。

 

今回記事を書くにあたり本公演を見直しましたけど、

うん、やっぱり面白いなぁこの作品。

再開後の本公演でどのように進化するのか今から楽しみです!!

 

本公演『BEAUTIFUL GARDEN-百花繚乱-』

 

これはもう、水美舞斗の水美舞斗による

水美舞斗のためのレビュー公演だったと言えます。

 

もうとにかく舞台に出ずっぱり。

歌って踊って出まくって大活躍の様相は圧巻でした。

 

ミツバチボーイのフレッシュさ、

「花美男子」のお得意オラオラ芸、

けどやっぱり一番の見どころは「アンダルシアの薔薇」でしょう。

 

死の象徴としての牛演じる水美が

闘牛士扮する明日海と対峙する場面は、

一挙一動、どの瞬間を切り取っても絵になるような美しさ。

 

ダイナミックかつ俊敏な動きは

マッチョ型ダンサーである彼女にしか出来ない芸当だと思います。

 

水美舞斗と言えば「爽やかさ」か

「花組的男クサさ」のどちらかの印象が強いのですが、

今作のような得体のしれない不気味さを表現するのも上手な印象です。

 

ちなみに、同時上演『MESSIAH』の松平信綱も良かったですね。

フォトブックでの書道家の恰好にも思いましたが、

彼女は和服がよく似合うなぁと。

 

この両公演は彼女にとって

大事なターニングポイントになったことは間違いなく、

当時の勢いは本当に凄まじいものでした。

(なにせこの前後にバウ初主演、全ツ2番手を経験するわけですから。)

 

そんな彼女の押せ押せドンドンな勢いを

肌で感じられる公演だと言えるでしょう。

 

本公演『A Fairy Tale』ニック・ロックウッド役

 

本公演で彼女に一番似合ってた役は何かなぁと考えた結果、

ラストはこちらを上げさせて貰いました。

 

明日海りお退団公演として、凡作名高い本作ですけれども、

とはいえ物語性は非常に「宝塚的」だった印象。

 

その中で水美演じるニックは、

愛情溢れる優しい庭師として、

物語に温かい色味を加えてくれた重要な役どころだったと思います。

 

台詞を発せずとも動作と表情で

ここまで「慈愛の人」を表現出来るのは、まさにお見事。

 

設定では雇い主の妻・フローレンスに

秘かに想いを寄せていたようですけれども、

それがいやらしく見えないのが彼女の芝居の妙でしょう。

 

確かに出番は少なかったですけれども、

彼女の本来持つ爽やかさと、オラ芸に傾斜気味だったそれまでの流れの中で

久しぶりに「静」の芝居をきちんと成立させていたことも含め、

非常に素晴らしい役どころでした。

 

本来、このような役どころが彼女に一番似合うはずなのに、

振り返ってみると案外無いんですよね…。

とはいえつい1年前までは5番手だったわけですから、

これからの本公演での抜擢に期待したいと思います。

 

三要素の調和を目指して

 

さて、きっと水美舞斗ファンの皆さんにとっての好きな役・作品って

『Senhor CRUZEIRO』『メランコリック・ジゴロ』あたりなんでしょうけど、

お読み頂いた通り、今回このあたりの作品を挙げておりません。

 

『はいから』『BG』の頃の彼女は結構「推し」で

前進ブログ開設時は95期の中でも2推しなくらい応援していたのですが、

これ以降の彼女は「花組的男クサさ」を全面に押し出し過ぎていて

正直なところ個人的にはあまり好みではなく…。(小声)

 

たぶん、礼真琴の2番手就任直後の

空回りに通ずるところがあると思うのですが、

 

巡ってきたチャンスを逃すまいと必死だったがゆえに

肩に力が入り過ぎていたんじゃないかと個人的には思っています。

 

映像で見る限り、その力みが『Dream On!』や

『恋スルARENA』で徐々に抜けていき、

『A Fairy Tale』では見事な「静の芝居」を見せてくれたことから

良い具合に力が抜けて、これからが彼女の本領発揮なんじゃないかと思うのです。

 

花組で育んだ「男役芸」に、本来持つ「爽やかさ」と、

「静」の魅力が上手にブレンドされたら、

それはそれは最強のスターへと進化するんじゃないかと個人的には思っています。

 

まずは本公演『はいからさんが通る』で

当たり役・鬼島森吾をどう進化させるかだと思いますが、

今後のさらなる活躍、飛躍に期待したいです。

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。もはやYouTube専科の地方民です。

    「花組的男クサさ」・・・そうですね、水美さんに花組の「釣り」というのかなあ、歌舞伎町的な意味の「ホスト芸」の危うさを感じることがありまして。

    岸田劉生氏が歌舞伎の魅力を「芸術的に高級なる卑近美」と表現したそうですが。

    卑近という字があれですけど、温泉ランドで活躍する「純烈」的な「親近感を感じる、わかりやすい、通俗的な」魅力はもちろんあっていいけれど、バランスですよね。やりすぎると、なんだか芸の格が小さく見えるんですよ。

    私は宝塚の男役さんに、大階段で凛々しく、古代ギリシャで太陽神に祈りを捧げる巫女みたいな、すっくとした風格がほしいのです。

    明日海さんも柚香さんも、決して高身長ではないけれど舞台で「小さいなあ」とは思わない。実身長より大きく見える(羽立さんと並べばそりゃ小さいけれど)。

    水美さんは、まだ実身長相応に見えるなあ。もっと高く!期待しています。

  2. わんこそば より:

    水美さんについて書かれるのがいつになるのかずっと楽しみにしておりました!!
    私は『MESSIAH』で初めて花組を観劇しました。和服でのお芝居を生で観劇することも初めてでして、そこで松平信綱を演じていらっしゃる水美さんに一目惚れしました、、。
    蒼汰さんのおっしゃるように本当に水美さんは和服、そして青天が似合う!!爽やかで、でも情熱的なところもあり、暑苦しくなく、またあのお衣装も水色で光沢があり、なお爽やかで輝いて見えました。
    母には「珍しいね」とよく言われるのですが(笑)この水美さんの良さがわかる方がいらっしゃって嬉しいです!
    BGでの活躍ぶりも大好きですし、どの場面も素敵ですが、あの松平信綱には敵わないなと今でも思っています。
    ですが、ニックもとても素敵でしたし、あのようなお役を今後も見たいなとも思いました。
    番手も上がり、また役の幅も広がるだろうと思いますので、これからの水美さんに期待ですね。そしてはいからさん再演も楽しみです!
    また、蒼汰さんのブログも楽しみにおうち時間過ごしていきます^ ^

  3. 桜井 より:

    いつも楽しく拝読させております。

    水美さんの記事、とても楽しみにしておりました。そしてBGを挙げられたあたり苦肉の策だったのでしょうか?ご指摘の通り、2018年~CASANOVAにかけて、芝居の圧が強めに出ることの方が多かったですね。特にメラコリは真風さんが演じたのと同じ役とは思えずびっくりしました。ファンである私なんぞはショー含めとても楽しかったですが、初見の方が引いていなければいいなと思ったのを覚えております。

    朝美さんのサンジュストのようなこれ!といった当たり役には水美さんはまだ出会っていないように思います。メサイアの信綱はかなり良かったと思いますが、正直発声に苦戦しているなあと感じましたし、観劇後大部分の方の印象に残るのがBGの方ではまだまだ…。一ファンの私はアイラブアインシュタインのトーマスを推しますが、やはりバウではなく色んな方に観ていただける大劇場公演で運命の役と巡り会えたらいいなあと。だからこそ番手も上がる今年2作目のオリジナルはやや期待していたのですが、このままでは上演も危ういですね。

    今はじっと1日も早い収束を願うばかりです。

  4. スイ より:

    私も水美さんのファンなのですが、桜井さんと同じくお芝居でのオリジナル当たり役は今のところアイラブアインシュタインのトーマスだと思いますし、お芝居の圧が課題なのも同意です。一時期の望海さんにも同じように感じることがあったので、花組で超路線の横で埋もれないようやっていこうとすると無駄に押し出し強くしていかないと生き残れないのかなあとも思ったり(でもショーではこの強い押し出しが生きることが多いんですよね〜)

    カサノヴァのバルビや青薔薇のニックは月組育ちで芝居巧者の明日海さんからお芝居を学ぶ機会だったと思っていて、段々うまく力が抜けてきたように思っていたので彼女の今後のお芝居が楽しみでした。
    それもこれも次の公演の目処があってこそなのですけれどね…はいからさんだけでなく夏の別箱もその次も今のところどうなるか不透明ですが、今は収束を祈ってじっと待つしかないですね。