朝美絢・刹那の煌めき『義経妖狐夢幻桜』

芸事の世界では、

スターがその階段を駆け上がるその瞬間、

例えようのない刹那の煌めきを放つものです。

 

工藤静香『MUGO・ん…色っぽい』

安室奈美恵『Chase the Chance』

AKB48『ヘビーローテーション』などなど、

日本の芸能界でも、エピソードは数知れず。

 

実像と虚像が混じり合い、

これからトップに登ろうとする一人の人間の闘志が透けて見えたとき、

観る者の情感に訴えかける、例えようのないパワーがほとばしる。

 

もちろんそれは、宝塚という舞台公演においても

本当に稀ですが起こるようです。

例えば、紅ゆずるのスカピン新公主演のように。

 

というわけで本日は、

朝美絢の初単独主演公演である

雪組バウ公演『義経妖狐夢幻桜』のお話。

 

刹那に煌めく『義経妖狐夢幻桜』

 

朝美絢の記念すべき初単独主演公演である

雪組公演『義経妖狐夢幻桜』。

 

朝美の出身地である鎌倉の英雄「義経」に、雪組の「和物」

さらに彼女の現代的スター性を「ロック」にかけて生まれた本作は

バウ公演ながら非常に丁寧で緻密な作りとなっています。

 

天才的軍略で平家を打倒した英雄でありながら、

「人を殺めた」罪の咎に苦しみ続けるヨシツネ(朝美)

 

キツネの少女・ツネ(星南)と出会いの中で

「世界の果てに辿り着きたい」という自身の願いの本当の意味に気付き、

ヨリトモ(永久輝)に倒される定められた運命を受け入れ、身を投じる…。

 

話の本筋は『エリザベート』や『ファントム』と同じく、

ずばり、魂の救済。

 

バウ公演って正直、玉石混交で

当たり外れが結構あるのだけれど、

この『義経妖狐夢幻桜』はSF的な側面を持ちながら、

実に王道な展開になっており、佳作と言って差し支えないでしょう。

 

ですが、この公演のキモは「物語の面白さ」でも

「雪組の安定感」でもありません。

 

主演である朝美絢が放つ、例えようのない刹那の煌めき。

それこそが、この公演の見どころと言っても過言ではないと思います。

 

雪組で花開いた朝美絢

 

当時、朝美絢の置かれた立場は

非常に微妙なものでした。

 

月組では1期上には珠城りょうが、3期下には暁千星がおり、

超御曹司コンビに挟まれた、微妙な立ち位置で過ごした若手時代。

 

月組は人事的に長く不安定な時代が続いてたわけですが、

その中でも当時の暁の勢いは破竹なもの。

 

研2~3で『明日への指針』で新公初主演(一部)。

研4の『1789』では階段降りを果たし、

3つも学年が下の下級生に一気に先を越されてしまいます。

 

その後、『A-EN』でW主演を果たしますが、

逆にそれはただの風避けでしかなかったし、

珠城りょうのお披露目公演『グランドホテル』では

ついに役替わりを果たされ、露骨に蹴落とされかけられてしまいます。

 

ロングインタビューでは、当時を振り返り

「本当に大変だった」と話していましたけれど、

まさに、宝塚という競争社会に飲み込まれる瞬間だったと言えるでしょう。

 

そしてそんな中、同期・月城かなと

トレードするかたちで雪組へ組換え。

正直、ほとんどの人が「左遷」だと思ったはずです。

 

ところが、彼女はここで負けるようなタマではありませんでした。

この組替えをチャンスと捉え、必死にもがくのです。

 

そして組替え時に与えられる「餞別」というたった一度のチャンス、

すなわち『ひかりふる路』のサン・ジュストという役で

その細い糸を必死に手繰り寄せます。

 

冒頭、大一番のナンバーを任され、

その大きな瞳をグワッと開きながら歌うその姿に、

どれだけの人が心を掴まれたでしょう。

 

そしてその流れでの、

バウ単独初主演公演『義経妖狐夢幻桜』。

 

まさに今、スターの階段を駆け上がろうと

闘志を燃やす一人の舞台人と、

その熱い思いに応えるため、ともに全力で舞台を構築する雪組生たち。

 

その必死な思いが観客にも伝わったとき、

一つの舞台作品という枠組みを越え、

刹那の煌めきを湛える素晴らしい作品となったのです。

 

今映像で見返しても、そのパワーはまさに圧巻。

当時の彼女たちにしか出来ない、まさに伝説の公演と言えるでしょう。

 

刹那の煌めきは永遠に…。

 

逆に言えば、この刹那の煌めきって

当時の彼女にしか出せないパワーだとも言えるんですよね。

 

例えばもし、今から半年後に再演するとなった場合、

歌や芝居が上達していたとしても、

この時の熱さを再現することは出来ないと思います。

(そしてそれが舞台公演の面白いところでもあるわけですが…。)

 

若くて、がむしゃらで、必死にもがく姿は

端から見たら恥ずかしいものなのかもしれない。

だけどそれが、人々の心の琴線に触れる何かを生み出す時がある。

 

何かに一度全力で打ち込んだことがある人なら

誰でも感じうる「ノスタルジー」に触れられる作品と言えるかもしれません。

 

 

ち、な、み、に。

この『ひかりふる路』『義経妖狐夢幻桜』続く『Gato Bonito!!』の三連発は、

彼女がスターの階段を駆け上がろうと必死にもがいていた時期であり、

全体的にオラオラ芸が凄くて観ていて楽しいわけですが、

 

その後の『壬生義士伝』『はばたけ黄金の翼よ』は

押し出すだけでは無く、引き算の美学を習得しようと

試みているのが分かるのも面白いところ。

 

だからこそ、彼女が男役としてさらなる成長をしていった将来、

振り返った時にこの『義経妖狐夢幻桜』が

ターニングポイント的作品であることは間違いないでしょう。

 

とはいえ、この研10近辺の「何事にも全力投球!!」時代の

刹那的な若さゆえの輝きが、もはや懐かしくもあり

見ていて面白くもあるんですけどね。笑

 

テレビやSNSで彼女を最近知ったというライトファンの皆様には

ぜひ『義経妖狐夢幻桜』をご覧になって欲しいと思います。

青春のように煌めく朝美絢が見られますよ。

 

残念ながら円盤化されていませんが、

スカステでたまーに放送されていますので、ぜひ。

(違法動画はダメですよ!!)

 

以上、朝美絢の誕生日に寄せてでした。

誕生日おめでとうございます‼︎

 

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コメント

  1. ほり より:

    まさに賛成!本当にそう思います!
    この作品賛否両論の作品で、面白くない、との意見をたまに見るのですが、朝美さん贔屓目を取り除いても、実によく出来てる作品だし、組生のどの人一人とって見ても素晴らしい。あまり、、、という意見があることに、ものすごい驚きました。刹那の煌めき、、まさにそう。朝美さんのその時だからこそ出せる魅力。そして、そこに雪組生の演技のうまさと、素敵な楽曲と、、、すべてが合わさって、本当に素敵な作品になってます。
    ちょうど昨夜、朝美さんお誕生日祝いに義経見てたんです。笑 朝起きて、ブログ見て、おおおっ!!ってなりました☆
    壬生~はばたけ、と観劇行きましたが、ひかりふる~義経とはまた違った輝き☆朝美さん、見てて面白いです。顔だけじゃないよ!!と言いたいので、是非とも最近朝美さん知った方に見て欲しいですね。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼まさか同じ日にご覧になっている人がいるとは。笑
      この作品、SFチックな感じが宝塚っぽくないイメージなんでしょうかねぇ。とはいえ、結構2000年代も不思議な世界設定な舞台あるイメージですが。
      壬生以降の新たな魅力も素敵ですよね!!FNSのおかげかここ最近さらなるご新規ファンが増えているイメージなので、
      ぜひ貴重な主演作を見て欲しいと私も思います!!

  2. pomeshima より:

    朝美さんのお誕生日に、素敵な記事をありがとうございます!
    スカステ難民なもので、『義経妖狐夢幻桜』まだ見ていないのですが、朝美さんだけでなく他の組生の熱気も伝わる作品とのこと、とても見てみたくなりました!

    先日発売されたフォトブックで、「義経~」は谷先生が朝美さんに義経をやらせてみたかったから誕生した、とあり、「わかる!」と共感しました。引き算の演技も身に着けた朝美さんは、さらに役の幅が広がりそうですね。今後の活躍が本当に楽しみです。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      実は私、まだフォトブックを入手していなくて(繁忙期のため週末に購入予定)、そちらでも触れられているとのことで楽しみになりました。
      前に一度スカパー無料の日にちょうど『義経妖狐夢幻桜』が放送されたときがあるので、またあるかもしれません。ぜひ見てみて下さい!!

  3. はっちゃん より:

    とても愛のこもった内容に、ぐぐっときました。ちょっと泣けそうです。あーさ、誕生日おめでとうございます。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      まさか泣けそうになってくださる方がいるなんて…嬉しいです。笑
      これからも一緒に応援していきましょう!!そして朝美さんが素敵な一年を過ごされますように…。

  4. はる より:

    蒼汰さんの愛を感じました〜。
    読ませて頂き確かに、確かにとなっております。

    今までのご贔屓さんには居なかったタイプの生徒さんなのですが、何故か惹きつけられます。笑
    霧矢さんとの対談でも自分に足りない部分を分かってるようですし、それに対して克服できるように必死にもがいているのも分かりました。お誕生日に初回放送するなんてスカイステージも粋です。
    雪組に組み替えしてから「さ、成長して。」と言わんばかりに色んな役をやらせて貰い年明けには遂に大人な女役!!組み替えした途端の方向転換っぷりが近年にあまりないんじゃないか?と思うくらいです。それに必死に食らい付いて行ってるのも応援したくなる要素の一つです。

    この1年が朝美絢にとってより素晴らしいものになりますように。。。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      私も対談番組見てましたー。おっしゃる通りファンにとっても色々と楽しめる内容でしたし、誕生日放送素敵でしたよね。笑
      組替えでの成長っぷりと、今後の食らいつきに期待ですね。これからも一緒に応援していきましょう。^^

  5. はづき より:

    はじめまして。朝美さんをきっかけに20年ぶりに宝塚にはまりつつあるものです。当時のご贔屓は高嶺ふぶきさん。朝美さんと同じ雪組でビジュアル良しのスターさんでしたが現理事の轟さんなどライバルが多く、トップなれるかハラハラしながら応援しておりました。当時の高嶺さんの状況が朝美さんとかぶり余計に応援したくなるのかも。自身の美貌に甘んじることなく、目標を持って前進するのみ!の真摯な姿勢にひかれます。実際に朝美さんを舞台を観てみたいのですが、今はチケット取りにくいのですね。衝撃でした。なので、今は専らファンの方のSNSで楽しんでます。来週末のBS放送と年明けの「once・・・」のライブビューがあるかもと期待してます。
    著作権などの関係で無理ですかね?
    いずれにせよ、朝美さんには年明けのキャロル頑張ってほしいです。そういえば高嶺さんも女役が似合うスターさんでした、、。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      高嶺さん、ノーブルで素敵なスターさんでしたよね。映像でしか知らないのですが、フランツやバルモン子爵など、今見ても美しさと気品をたたえた方だなぁと思います。
      BS放送と言うとひかりふるとSVですかね?ぜひ楽しんで下さい!!
      ライビュはどうなんでしょうねー。退団者によりけりかもしれませんが、3月の東京千秋楽は絶対やるでしょう。
      今から朝美さんのキャロル、楽しみですね!!