月組公演『応天の門』を観劇してきました!!
いつものように、敢えて原作を読まずに観劇してきました。
私なりの感想を綴っていきます。
【レビュー編はコチラ】
闇深き伏魔殿・月組『応天の門』
私は田渕先生と相性が良く、世間的には不評な『異人たちのルネサンス』は大好物過ぎてブログタイトルにつけたくらいですし、『ハリウッド・ゴシップ』『アウグストゥス』も美味しく頂けた。なので少しくらいの不評なんてバッチコイだぜ!!と思いながら『応天の門』に馳せ参じましたが、うーん残念、私は好みではなかったかな。それは「話が破綻している」でも「登場人物が不快」でもなく、ただただ「退屈」だった。その原因は、ハッキリ申し上げまして田渕先生の演出力です。
私は原作を存じ上げませんけど、月城かなと率いる芝居の月組が演じる漫画原作の和物、しかもバディ系。そこに在原業平と高子の許されぬ愛や、藤原常行と妹との萌えが交錯する、宝塚では久しぶりとなる平安物。しかも話のオチとして「鬼とはもののけではなく、欲にまみれた人間の醜い心」という確かなメッセージ性も有る。これだけ道具が揃っているにも関わらず、イマイチ盛り上がりに欠けたまま話が進んでいってしまったのが本当に不思議。なんだろう…山場が無いままサラッとお話が進んでいった印象なんですよねぇ。
で、話がイマイチな時は大概スターの顔を見て誤魔化すものですが、いかんせん舞台が暗いのでそれも微妙に楽しめず…。きっと予算的な問題(本作はどう考えても月城任期における「千尋の谷」でしょうから)もあるのでしょうけれど、さすがに暗くて地味過ぎました。田渕先生の暗さって、スター本人が発光する系だと明暗がハッキリして効果的なのですが、スターが地味めだとただただ色味が暗くなってしまうのかもしれません。そう、闇は光があってこそより際立つものですから。
とはいえ、トップコンビが愛し合う関係でない作品は逆に新鮮で面白かったですし、悪者が捕まらないまま「応天門の先は伏魔殿」みたいな終わり方は斬新で良かったですけどね。なんなら一番最後の幕が降りる寸前の一コマをやりたかったがために話を作ったんじゃないかと思うくらい、あのシーンは最っ強にカッコ良かった!!こうやって拾い集めてみると「低予算佳作」になれるポテンシャルはあったはずなんですけどねぇ…。
さっくりキャスト感想:主要役編
キャラ萌え的には語れるキャストが多かったので、さっくり感想に参りましょう。
主人公の菅原道真を演じたのは月城かなと。まず驚いたのが、原作再現度です。漫画の表紙しか見ていませんが、元の顔とは真反対の、あの目つきの悪い(?)少年っぽい顔立ちを見事に再現。そしてこれまで演じてきた役どころより気持ーち若い言い回しや動きをしていて、「あ、若い役なんだな」となんとなく分かる佇まいがさすがでした。アンニュイボーイだからこそ、ふと見せるコメディなノリも可愛らしかったですね。月城かなとにとって新境地となる役だったと思います。
ヒロインは海乃美月。主人公に「坊ちゃん」と語りかけるような役回りは、上級生娘役だからこそですよね。『ブラック・ジャック』に続く硬質なヒロイン像は、さすが手堅かったです。立ち位置的にヒロイン(つまり主人公と恋仲になる立場)ではなく、大仰な立ち回りも無いクールビューティーな役だったにも関わらず、圧倒的な華やかさで舞台を彩れる存在感がありました。
2番手・在原業平を演じたのは鳳月杏。彼女はいつだって今がベストコンディションですね。女性との浮名を流す色男がよく似合うし、貴族社会との間に揺れ動くビミョーな立ち位置も見事に表現。コミカルな動きで客席を笑かしにかかる技巧もさすがでした。
その在原業平と許されぬ恋仲だった藤原高子役を務めたのが天紫珠李。個人的には彼女がMVPだったかな。というか、私は彼女のことがあまり好きなタイプの娘役じゃないんですけど、やっと彼女の正しい使われ方が分かった気がします。元男役だからこそ放てる存在感がありながらも、今回は威厳と憂いが絶妙に混在する立ち位置を見事に表現。業平との切ないやり取りに個人的には一番ホロリときましたね。
悪役・藤原基経を演じたのは風間柚乃。こわいよー、何が怖いって、こういう役を自然と演じてしまうその実力がこわいよーーーー(笑)。あまりに上手く演じ過ぎて、路線役というよりは別格枠に見えてしまうのは果たして大丈夫なのか疑問が残りますが、まぁこれが彼女の魅力ですのでね。今までは「上手い若手感」がありましたが、学年が上がるにつれてシャレにならない凄みが増してきたのが凄い。これが「枯れの美学」と溶け合う学年にまで到達したら、どうなってしまうんだろうと今から楽しみですが、今の学年頃がちょうど過渡期なのかもしれません。
さっくりキャスト感想:脇役編
美味しい立ち位置だったのが、藤原常行役の礼華はる。妹を庇う無骨な貴族役で、まぁなんとカッコイイ!!顔立ち&背丈がすらりとしているので和服がよく似合うし、スターとしての覚悟が決まったのか、しっかり垢抜けた印象があります。ちゃんと路線感も有って、今後が楽しみな存在となりました。
その妹・多美子役は花妃舞音。くぁわい~かった(可愛かった)ですね(笑)。礼華はるとの並びも萌える兄妹って感じで微笑ましかったです。
主人公のお仲間その1、紀長谷雄役の彩海せらは、まぁやっぱりこういう役どころは上手いよねって感じ。少年系スターって、ある一定の学年になると「そろそろ大人な男役を演じたい」という反抗期を迎えるもので、普段の言動を見るに彼女にもそんな気持ちが微かに芽生えているんでしょうけれど、それを舞台上で一切感じさせないプロ感があるのが良いです。
そして主人公のお仲間その2、白梅役の彩みちる。彼女もまたお得意の役どころでしたけど、今まで一番自然だった気がします。キャンキャン系ってやり過ぎると「うるさいな」って思ってしまうのですが、本作では絶妙にマンガちっくで良かった。これも学年と経験がなせる技なのかもしれませんね。
本作で退団となる組長の光月るうは、悪の総督ポジションの藤原良房役。さすがの上手い&怖い。一人だけ言い回しと存在感がマンガじゃなくて大河ドラマみたいでした(褒めてます)。
そして同じく千海華蘭は破格の扱いであろう清和帝役。他組だったら絶対路線系がやるであろう役を振られるあたり、彼女を労う劇団のアツい気持ちが分かるというもの。本来持ち合わせている「浮世離れした」「少年っぽさ」が見事に結実した、最後に相応しい難役だったと思います。
同じく退団者の結愛かれんは、本人の持ち味である艶とハイパーダンサーとしての実力のどちらも生かせる役どころで良かったです。
あと、個人的には若き日の業平を演じた英かおとが良かったですねー。普段の顔は全く違うのに、ちゃーんと鳳月杏演じる業平の若い頃に見えましたし、和舞も綺麗、そして絶妙な色香と若さゆえの危うさが表現されていて良かったです。管理人が大興奮していました。笑
無事完走出来ますように
まとめると、月城かなとの良い意味で地味な持ち味と、
田渕先生の暗い芸風が重なった作品だったな、というのが私の感想です。
もちろん、それを堅実(とにかく月城かなとの和装は美麗‼︎)と評する方もいるでしょうから、
そのあたりは好き好きかもしれませんね。
以上、月組『応天の門』の感想でした。
無事最後まで走り抜けられることを祈っております。
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コメント
蒼汰さま
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
ケレン味が無い、ハッタリが無いというのは、一般社会では褒め言葉ですが、
芸能では、行儀よく予想の範囲内から逸脱せず、破格とか破調が無い、というのは褒め言葉とも限らない。
私は観劇感想を書きながら、文部科学省推薦の課題図書を読んで読書感想文を書いていた時の気持ちを思い出しました。
いつも楽しく、拝見しております。
キャスト感想を、フムフム、ニヤニヤ、しながら読ませていたはまきました。
今回もまた、読みごたえのある記事を、ありがとうございます。
私には、他組の公演を観ていても、つい戻りたくなる、何とも癖のある月組!なのです。大千秋楽は配信で楽しみたいです。
蒼汰さま
いつも楽しく拝読しております。
私はムラで2回観劇したので、蒼汰さまの感想にわかる〜とにやにやしながら読んでしまいました。
1回目はすぐ話の筋を追ってたのでそこまで退屈しなかったのですが、2回目は眠気が…
私は原作を元々読んで知っていたのですが、原作は主人公のキャラクター性(厭世的で嫌味なガリ勉のチビな少年)と陽キャイケメンの業平の関係性の面白さで成り立っているところが大きいのですよね。
ただ流石に道真のキャラクターそのままだと宝塚的ではない為道真のキャラクター性をトーンダウンした結果物語の面白みも薄れてしまったのかなと思いました。
要するに、原作選びの時点でかなり無理があったと私は思ってしまいました。
原作に寄せての隈メイクも、れいこさんの輝くばかりの美しさを陰らせてしまって舞台の華が余計になくなる結果に。
原作は面白いので、機会があればぜひ読んでいただければと思います。
こんにちは。
全体的に同じ感想でうれしくなりました。
特に、今回初めて天紫さんの魅力が分かったという点と、
そしてそこはかとない色男をやらせたら英かおとは秀逸だよね!という点、
全面同意です。
個人的にかなり期待していた割に面白くなくて、何でだろうと思っていたのですが
タブチ演出というのに加えて月組は漫画原作ははまらないのかも、という結論を出していました(すみませんブラックジャックは未見です)。
光月さん千海さん風間さんあたり、月組が誇る芝居巧者たちは玄人みがすぎて漫画感がなく、
逆に彩さん彩海さんはマンガちっくな表現がうまくて妙に浮いて見えて
月城さんとあわせてここだけ雪組…?というチグハグ感を感じてしまいました。
しかし周りがどんなテイストでもしっくり馴染みながらもちゃんと目を引く鳳月杏、さすがです。
とはいえあと数回観劇予定なので、見どころを見つけながら楽しみたいと思います。