雪組『ファントム』感想

さて、役替わり公演どちらとも見てきましたので

雪組『ファントム』の感想をまとめていこうと思います。

 

もちろん前提として

・歌が上手い

・映像演出が凄い

 

ということを踏まえ、

今日は個人的に抱いた感想や解釈について書いていきます。

 

今回の公演において、ほとんどの方が

「歌」「歌」「歌」「歌」と歌ばかり取り上げられていますが

 

私が今回、公演を通して率直に思ったことは

その歌唱力を生かしたことで、

公演全体を通してより心情表現が豊かになり

 

「誰も救われない悲しい愛憎劇」

見事に生み出したなぁということです。

 

【諸注意】

一応お断りしておきますが、舞台の感想というのは得てして「個人的なもの」です。

つまりただの感想文なので、お読みになって反論、批判等もあると思うのですが

それを投げかけられても「そうですか、私達は価値観が合わないんですね」

としか言えませんので、ただの一個人の感想としてどうぞお読みくださいませ。

 

2006年花組版『ファントム』のまとめ

 

実は、今回『ファントム』を見るにあたり、

事前に2006年花組版を予習で見ていきました。

 

比較して見ていくと、

今回の雪組版の特色が非常に分かりやすかったので、

まずは簡単にまとめていきますね。

 

2006年版は春野寿美礼がファントムを演じてたわけですが

個人的に彼のファントムは、

非常に幼いエリックだったと思うんですよね。

 

地下という隔離された世界で育ったため、

精神年齢が幼いまま大人になってしまった怪人。

 

だから人を殺すことも、まるでおもちゃを壊すように簡単にするし

その無邪気さがゆえの狂気、

無邪気さがゆえの残酷さ、が際立っていたと思います。

 

そして相手役である桜乃彩音は、

非常に娘役力の高い、寄り添い型のジェンヌさんのように見受けられます。

(端的に言うと歌唱力より可憐なビジュアルと存在感が勝つという)

 

歌が上手い才に恵まれた少女と言うより、

田舎から出てきたばかりのちょっと歌が上手な女の子、という感じで

シャンドン伯爵とのやり取りも、恋の駆け引きに見えて

「洒落た遊び人にダマされるぞー?」と心配になるくらいです。笑

 

そんな彼女だからこそ、エリックとの関係性は

いかにも宝塚的で絵空事のような「儚い恋」に見え、

結果として「とある男女の悲恋」を経て

「エリックという魂の救済の物語」に昇華された、というのが個人的印象でした。

 

望海・真彩が描いた「救われない物語」

 

で、それに比べて望海演じるエリックは

とてつもなく歪んだ青年として表現されてますね。

もうね、笑っちゃうくらいひん曲がって屈折してます。笑

 

「どうして生まれてきたんだろう」という

誰からも愛されない孤独を抱え、

鬱屈した思いをマグマのように煮えたぎらせている怪人。

 

感情の波が不安定で、常に高ぶっており

人を殺すときも非常に激情的です。

 

ずっと描いていた「天使の歌声」に救いを求め

その幻想に捕らわれている憐れな存在なわけですが、

クリスティーヌに出会い、その運命の歯車が回り始めます。

 

特に、彼女がビストロの場面で成功を得て

その喜びをシャンドン伯爵に(形式上)横取りされたことで

独占欲・所有欲・嫉妬が爆発し、あらぬ方向に暴走していきました。

 

誰からも愛されなかった彼だからこそ、

まっとうに人を愛する方法が分からず、

異常な執着と、逸脱した行動に出てしまうわけですよね。

 

 

でも、そんな彼の想いは届かない。

 

自分の全てを受け入れてくれると思ったクリスティーヌからの

「仮面を外して」という願いに応えた結果の、

あの手ひどい裏切りにどれだけ傷ついたことでしょう。

 

キャリエールとの会話の中で

「あの一瞬でも彼女から愛されたなんて、生きている価値があった」

と嘲るシーンがありますが、

 

春野エリックは、たぶん心底そう思っていて

その一瞬を心のよすがにして生きていける強さ(幼さ)を

感じることができましたが

 

望海エリックの場合、

それが無常にも虚空に消えてしまう呟きに聞こえます。

 

さながら強がりのように自分にそう言い聞かせているように見え

だからこそ、その憐れさがより際立って見えました。

(裏を返せば真彩クリスティーヌが本当に酷い女に見えます。笑)

 

けど、クリスティーヌに根本から拒絶されたことによって

この後に続く父との繋がりをより深く感じるようになります。

 

「僕たちは音楽で繋がっていた。」

長い時を経た父と子の邂逅と、その後に続く父による子殺し。

 

がんじがらめになった運命の因果による

まさに非業の死と言えるでしょう。

 

つまり、激情的かつ救いがないからこそ、

エリックが持つ悲劇の物語性がよりクローズアップされた演出であり

非常に見ごたえのある作品として成立していた、というのが

今回の雪組公演を見たうえでの率直な感想です。

 

いや、本当に感服です。

 

現・雪組体制でしか成立し得ない作品

 

まとめると、2006年花組版は

無邪気なエリックと田舎少女の絵本のような儚い恋物語

「あの一瞬でも心を通わせられて良かったね」と

全てを投げうった悲恋物に見え、とても面白く感動的な話でしたが

 

2018年雪組版は、歪んだ青年エリックが

天使の歌声に導かれ、クリスティーヌに救いを求めたけれども救われず、

だからこそ「エリック、なんて可哀想なんだろう…」と

その哀しく憐れな存在に心をうつ物語になったのだと思います。

 

そしてこの演出は、やはり望海・真彩という

素晴らしい歌唱力を持つスターだからこそ形作ることができた

至高の公演だと言えるでしょう。

 

なぜならば、この「天使の歌声に救いを求める」演出なんて

超絶技巧の歌唱力を持たなければ根本的に成り立たない話ですし

聴衆を納得させることなんてできないからです。

 

そして、その歌に感情が乗るからこそ、

あそこまで激情的に物語が演出できたわけで…。

 

そういう意味で、この公演は

まさに現雪組体制でしから作り得ない素晴らしい作品だったと

個人的に思うわけです。

 

いやー凄かったね。

語彙力がなくなるくらい凄かった。笑

 

そして同時に、同じ役でも

演じる人間が違うだけでこんなにも印象が変わるのかーと個人的に思いました。

 

それはもちろん、花組版と雪組版しかり

彩凪版と朝美版しかり。

というわけで続きはキャスト別感想編にて…。

 

☆★☆★☆

ランキング参加始めました!!

ぜひポチっとお願いします↓↓

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ

にほんブログ村

コメント

  1. 和世 より:

    私は映画しか観たことがなく、宝塚版(現雪組さんver.)も
    ブルーレイ待ちという怠惰な?人間です。
    (チケットが…全滅でした(笑))

    なので、比較はできませんが、演者によって「こうも変わるものか」と驚愕した経験は(宝塚の)別の作品であります。

    主演のお二人の歌唱力あっての作品という部分も大きいでしょうが、個人的には真彩さんのお芝居が大丈夫かな?と思っています。

    ネタバレ構わない派なので、今後の感想も拝読してからブルーレイで楽しみます。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      実は役替わりのどちらも見る、というのが今回初体験だったのですが、
      おっしゃる通り「こうも変わるものか」と驚いて、とても楽しかったです‼

      私もブルーレイ購入を本気で考えております。笑
      ぜひ楽しんでくださいね‼

  2. skyblue より:

    先週観劇してきました。
    凄いものを観てしまったと思いました。
    自分ではうまく表現出来ないところ、蒼汰さんの感想を拝読して、その感動を整理出来ました!
    望海風斗のドン・ ジュアンが大好きなのですが、望海ファントムも通ずるところがあり、屈折した役がやはり一番似合うと確信しました。笑

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      ドン・ジュアンも似合ってましたよねー。
      スカステでしか見ていないのですが、ああいう陰のある役が本当に似合うと思います。

  3. めー より:

    個人的感想を拝読いたしました!
    私も個人的感想を(笑)

    私は遠い過去に和央花總コンビで一度だけ見たきりです。スカステ難民ですー。その時は、クリスティーヌとの関係も親子の関係も中途半端な気がして、やっぱロイドウェーバー版がいいな!程度で終わりましたf^_^;

    おっしゃる通り雪組版はエリックの屈折した心があるからそこ、殺人までしてしまう心情がリアルでした。
    死でしか救われないエリック!子殺しの意味も俄然、意味を成します。

    これらの出来事に深みを持たすのはやはり歌ですね!説得力が違います。

    雪組版を観て大好きなミュージカルの一つになりました!

    ちなみに私も凪さまは好きです。美しい!だからこそもうほんの少しだけ音程が安定すれば良いのになーと思うのは欲張りでしょうか?

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      すごい、宝塚初演版をご覧になっているのですね…それは羨ましいです‼
      おっしゃる通り「死での救済=現世では救われない」という悲しい運命が、よりドラマティックに生える雪組版でしたね。

      彼女の歌はねー…うん、まぁ、仕方ないですよね。笑
      あれで歌えていたら最強のスターだったんでしょうけど、まぁ人間味があるという味わい方もするのが良いのかもしれません。