今の世相でこの作品を上演するという、
そのタイミングに恐ろしさすら感じる星組『王家に捧ぐ歌』。
無事配信を見ることが出来たので、感想を書いていきます。
新解釈は楽しんだもん勝ち
本作は星組、宙組に続く3度目の再演物ですし、
あらすじについては今までの公演と何一つ変わっていませんので、
話題となった「新解釈」を基軸に書いていきます。
何よりも衝撃だったのが先行画像&ポスターで、
本作の醍醐味であった金ぴか衣装は封印し、なぜか世紀末風。
御園座の箱のサイズの関係で一新した、
とキムシン先生は歌劇で話しておられますが、
これまでとあまりに印象が違い過ぎて、
SNSを中心に賛否両論が巻き起こったわけです。
私自身は今までブログで沈黙を貫いてきましたが、
それは事前評価が悪かろうと舞台を見てみない分からない、
という過去の経験(例:花組『花より男子』)があったから。
で、見た。
感想:意外とイケた。
というか、結構好きかもしれない。笑
正直、私は過去の作品を生で見ていないので
そこまで愛着が無いというのが大きな理由かもしれませんけど、
別に言うほど酷くなかったよね?という。
舞台も衣装もシンプルで現代的なのにエギゾチックで謎の取っつき易さがあり、
かつエジプトが白、エチオピアが黒、と対立構図が分かりやすい。
そして動き易そうで礼真琴率いる星組ダンサーが伸び伸びと踊れていた。
何よりも冒頭、極美慎が暗闇から浮かび上がった瞬間、
あまりのビジュアルの良さ(衣装込み)に、
「はい、許した!!」と思っちゃいましたよ。笑
そしてどうやら、あまりのポスターのインパクトに、
「果たして、どんな作品に?」とみんな興味を惹かれたようで、
チケットの売れ方は良かったようですので(星贔屓の管理人談)
結果的に勝ちだったのかもしれません。
もちろん、このダサさは宝塚的美意識ではない、とか、
せっかく名古屋で上演するんだし金ピカでしょ、とか、
王家でやる必要が無い、という批判も分かります。
なので私は楽しめた、という感想に留めたいと思います。
もちろん礼真琴の圧倒的歌唱力に引っ張られた、
というのも正直なところですけどね。笑
あと季節感や世界観ガン無視なフィナーレも、無茶苦茶過ぎて面白かったです。
キャスト別・さっくり感想
ここからはキャスト別でさっくり感想を。
まずは主人公・ラダメス役の礼真琴。
一言「あんたが大将!!」ですよ。何もかも上手過ぎて言葉にならない!!
そりゃ演出家が新解釈などというハードルを課したくなる気持ちも分かる。
こんなトンチキな新世界観を、そしてキムシン先生のメッセージ性を
「せやな」と納得させてしまう圧倒的歌唱力とダンス。
そしてラダメスの若さ、情熱、疾走感に惚れ惚れしました。これぞ主人公。
アイーダ役の舞空瞳、
まっすぐなヒロイン像がよく似合っていました。
「戦いは新たな 戦いを生むだけ」という有名過ぎるフレーズも、
しっかり歌いこなせていました。ま、地声歌唱が得意なタイプですしね。
また新衣装は彼女のスタイルの良さを際立たせていて良かったと思います。
特にフィナーレの普通のお姉さん風は普通に可愛かった!!
本作の裏主人公・アムネリスは有沙瞳。
オーラと迫力が物凄い!!
分かっていましたが非常に似合ってました。
1幕はラダメスに恋する一人の女、よりも、
アイーダを虐めるシーンが似合い過ぎて笑ってしまいましたが、
彼女の本領発揮は、むしろ2幕から。
女王の宿命を背負って以降の覚悟を感じる芝居は、流石の一言。
ウバルド役は、これが抜擢となった極美慎。
出番が増えた分、歌唱力が…と気になる点も有りましたが、
と に か く ビ ジ ュ ア ル が 良 い 。最高 of 最高!!
舞空瞳と微妙に似てて、兄妹感があるのが面白かったです。
ラダメスの戦友チームである天華えま・天飛華音は、
2人とも歌もダンスも芝居も出来る芸達者タイプなので
礼真琴の近くに居ても霞まず、舞台を支える屋台骨として大活躍でした。
あとエジプトチームにロミジュリの愛役に抜擢された希沙薫、
天飛華音のシンメに居た夕渚りょうあたりが目立っていましたね。
また、個人的に好きだったのは、
鳩チャンことアモナスロ役の輝咲玲央かな。
あの不思議な衣装が似合っていたし、迫力もあって良かったです。
星組の番手問題はまだ続く
と こ ろ で 。
フィナーレの立ち位置を見るに、
番手的にはまだ天華えま>極美慎なんですね。
極美慎はウバルド役を取りながらも、いまだ3すくみ継続中の模様。
また、それだけならまだしも、
本命候補と思われていた天飛華音がひろ香祐に蓋されていたし、
下手先頭を舞空瞳でなく有沙瞳が取るという、なんだか不思議な序列でした。
ってことで、星組の番手問題はまだまだ続くようです。
本作は現代にも通じる普遍的なテーマを、
礼真琴率いる星組の歌唱力でしっかり伝えることが出来て、
実に意義深い再演だったと思います。
楽しませてくれてありがとう星組!!
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コメント
いつも楽しく拝見しております。
王家、ライビュで観てきました。
お衣装、確かに驚いたけど個人的にはこれも全然アリだと思いました。
でも琴ちゃんのライダースは…
背中の柄が残念だったかな…笑
波の音が聞こえる、南国っぽい?フィナーレも斬新で良かったですね。
お話はタイムリーな話題ということもあり、余計に刺さりました。
余韻が凄い。
ウバルドも勝手に心配してたけれど凄く良かったです。何よりビジュアルが素晴らしい
華雪りらちゃん筆頭に女官チームみんな可愛くて、音咲さん筆頭に奴隷チームはみんな歌上手かった印象。
ありちゃん来てからの星組人事も気になりますね…
こんにちは。
衣装をどう思ったかと問われれば、やはり違和感ありでした。
ラダメスの白いジャケット(背中に模様あり)
⇒ マイケル・ジャクソンBeat it のミュージックビデオで、バトルしてた黒人側リーダーの白ジャケットを思い出しました。
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
さっきライビュから帰ってきました。装置はシンプルにして、90度廻って階段になり、V字の谷になり、で効果的で良かったし、エチオピアの黒い革ジャンや、女たちのアフリカの匂いのする衣装も似合っていたと思います。
エジプトの白が基調の衣装も、アムネリス様やファラオの豪奢を引き立てていてよかったと思います。
生の舞台で見たら、歌の迫力に圧倒される演目なのだろうと思いますが、映画館では、大画面がほぼ白黒で、モノクロ映画を観ているようではありました。
ラダメスのM-65フィールドジャケットは・・・通常勤務服(コブラ)のままで王族の前に出る、ファラオの婿養子候補、ねえ。せめて礼装しようよ、と思いました。
一兵卒が敵の奴隷の女性と通じてしまった、というわけではなく、将軍という職業軍人のトップで、兵士の命を、国家を背負っているのに、敵国の王女アイーダに国家機密をべらべらしゃべるのも、軍人の自覚がどうよ、と。
愛国心と、個人の愛とで葛藤している感が薄い将軍だなあと思ってしまいました。
アイーダは少女っぽさが、祖国より愛まっしぐら、16歳のジュリエットっぽいリアリティがありました。
ラダメスとアイーダ、ちょっとセカイ系というか、個人の愛が国家を飛び越えて世界に繋がっている感があって、イマドキですね。
古典の読み替え物語としての「アイーダ」世界のヒロインは、アムネリス様でしたね。原作のオペラでは、ラダメスが漏らしたのは進軍コースの情報で、警備情報を漏らしてファラオが殺されるわけではなく、ラダメスを裁くのも神官たちで、アムネリスは減刑嘆願するが、判決は覆せない。
「王家に捧ぐ歌」は、ラダメスの情報漏洩でファラオが暗殺され、アムネリスが権力者として即位し、愛する人に処刑を命じずるという、国家と個人、愛と法の相克が強調されていて興味深いです。
虚しさを踏み越えて、それでも不戦の誓いをたてる。現代に古典「アイーダ」を読み替え上演は、誰も想像しない形で、世界の今へのメッセージとなりましたね。
ただ、音楽は、「20世紀の宝塚作品の佳曲」だとは思いますが、録音の音の厚みが薄いというか。絵面がモノクロなぶん、エチオピア勢の音楽はもっとアフリカ色を出したアレンジにしても面白かったかもしれません。
蒼太さん
久々にコメントさせていただきます。
以前の2作も勿論観ていますが、正直言って礼真琴が素晴らしすぎて1番感動しました。
だってあの歌唱!
歌詞の一音一音がハッキリ聴き取れるお陰で世界観にどっぷり浸れました。
宝塚を見始めて半世紀経ちましたが、私は歴代トップではまこっちゃんが1番歌が上手いと思います。
声に尖りがなく、耳に心地よく響く温かな歌声は最上ですよね。
名作、名曲は全部まこっちゃんに再演して欲しいくらいです。
ファラオも良かったし、アムネリウスも良かった。ウバルトも良かった!
衣装や舞台装置がシンプルだった分、より物語性が鮮明に見えたように思えました。
いやぁ〜もう礼真琴こそスゴツヨ!!
素晴らしい歌唱力、素晴らしいダンス。
最強のトップだなぁと、今回も感嘆しました。(各組トップみんな好きですけど、礼真琴はぶっちぎり無敵です。)
主要メンバーが、ほぼ全員歌ウマって、凄いですね・・・。
初演に関しては、エチオピア父娘がエジプトチームの分まで必死にメロディを引っ張るところが若干痛々しく思えてしまっていたのですが、今回、あまりに安心?して気を許して観てしまったものですから、あの難解セリフ歌のメッセージ性の強さ+激しさ+今のこの世界情勢も相まって、感動というか少々胸が苦しくなってしまいました・・・。
蒼汰様 いつも楽しみに拝見しています。
今回ライブ配信で見ました。
星組初演、中日劇場での続演、宙組と観ていますが、今回は全然違った作品に見えました。
舞台装置が抽象的なものとなり、舞台の後方にある連なった紐状の光物が照明によって青くなり栄光となったり、赤くなって戦いで地上を焼き尽くす光となったり。平和や戦場が、具体的でなくてもこんなにも、を表すのだと驚きました。
お衣装も、エジプトの人たちの白い衣装がシンプルで華やかなので、「わたしたちはお金があり、力があるのよ!」語っているようでした。演じる方たちも 統一感があり、女官たちや兵士たちのコーラスや踊りがまとまって迫ってくるので、圧倒され、権力ってこんなものかも、と思われました。
エチオピアのお衣裳は 個性的で役者さんに応じてデザインが違っていて、そのばらばらなところが反権力的な感じを表すのでしょうか。
星組さんって、歌より勢いの組だとおもっていたのに、いつのまにこんなに歌やコーラスで訴えてくる組になったんだろうと目を見張るものがありました。
礼さんの歌に導かれて、ラダメスの心情やアイーダへの想いやエジプトの壮大な大地への思いを感じ、
有紗さんの歌に女王としての威厳や誇り、うらはらな女性としての恋心を感じ、拮抗するメロディに圧倒されました。
ファラオの悠真さんの歌が優しさに満ちて、威厳もありますが、エジプトへの想いや将来を託すラダメスへの想いが伝わってきました。
アモナスロの輝咲さんの歌も こんなにロックぽく歌えるのかと驚きました。今は狂ったふりをして欺いているけれど、打倒エジプトに燃えている心を感じました。
舞空さんのアイーダは王女の誇りを感じさせた今までのアイーダと違って、翻弄される運命のなかで失ってはならないものを芯に持っている女性の強さを感じました。
その強さや、潔さにラダメスが惹かれ、それがこの作品の主題でもあると思いました。
エチオピアを解放した後に ラダメスの親友たちが こんな平和で自分たち兵士は忘れられてしまうのではないかと、歌ったり、
アムネリスがエジプトは闘うのだと歌ったり。
王家に捧ぐ歌の公演期間は短くなってしまったけれど、この世界情勢のまっただなかでの公演は すごくインパクトがありました。