花組『うたかたの恋/ENCHANTEMENT』観劇して参りました。
前回の『巡礼の年』のチケットが飛んでしまった関係で、
花組を大劇場で観るのは約1年ぶり…!!
その間、外箱公演は観ていたとはいえ何とも感慨深かったです。
世間は真風&潤花のサヨナラ公演初日真っ盛りですが、
今更ながらそれぞれの感想を書いていきます。
まずは『うたかたの恋』から。
『うたかたの恋』第一感想
『うたかたの恋』といえば、『風と共に去りぬ』や『あかねさす紫の花』などと同じ、何度も繰り返し上演される宝塚古典の一つ。そんな大名作を40年ぶりに宝塚大劇場で上演する、というのはもちろんただの名目であって、本当は予算削減や話題性、そしてルドルフを演じたいと発言したことがある柚香光にこそ相応しい、という計算があってこその上演決定でしょう。それに古典作品を現代風にリメイクするという試みは上田久美子氏による『霧深きエルベのほとり』で一定の成功がありましたし、今回は同じ女流作家、しかも柚香光と縁が有り、ロマンティックな作風には定評の有る小柳先生にお願いするという、実に着実な企画の元で上演した作品のように思われます。
で、ミラーボールが回りあの前奏、幕が上がって赤い大階段、そして何十回と聞いたセリフ「マリー、来週の月曜日旅に出よう」。そして柚香光のあまりの麗しさにキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!ってなりますし、「この話、スカステで見たやつや!!」ってテンション上がるっつーもんですよね。そのまま流れるように舞踏会の場面へ…って展開の繋ぎ方も実に見事で、さすが小柳先生らしい演出!!と感動してしまうのですが、まぁお話のピークはここまでかな、と。
古典作品の致命的な欠陥は、とにかくキャストが少ないこと。そして物語の本筋の展開が、少人数が舞台の真ん中だけで芝居するのが多いことであり、最近の作品に見慣れているライトな私としては、正直、退屈でした。もちろん小柳先生は再演出にあたり必死に登場人物を増やし、しかもそれがちゃんとあてがき風に見せ、華やかなダンスの場面や舞踏会なども作り、衣装や舞台装置も見栄えの良いエレガントなものでしたけれど、それだけでは微妙にカバー出来てなかったかな…。最後20分は怒涛のロマンチック展開で面白かったですけど、もはや上演することだけに意義があるという点で、『霧深きエルベのほとり』より雪組『凱旋門』に近かったかな、というのが第一感想です。
小柳先生の改編点で言えば、トップ、2番手、3番手を従弟同士の貴族に据え置き、それぞれの恋人役をトップ娘役、期待の若手2人枠に振り、微妙に政治的思想や立場が違うという描き方は上手だなと思いました。それぞれが違う結末を迎えるのも、物語として実に締まりが良い。だけどあまりに「微妙な違い」過ぎて、西洋史に疎い、あるいはスターの顔が見分けられないようなライト層に、果たしてその違いがちゃんと伝わったのかな?というのが気がかりでした。そういう意味では、全然違う立場で微妙に出番の多い、4番手ブラットフィッシュとかの方が目立つというか、印象に残る役かなと思います。
『うたかたの恋』キャスト感想
主役・ルドルフ役の柚香光、あまりの麗しさっぷりに脱帽です!!学年が上がるにつれて「枯れ」の美しさすらも身にまとい、本作ではそこはかとなく感じる死の香りが、まさしくエロスとタナトス、お耽美路線が本当に良く似合います。着回しまくる軍服姿も本当にカッコ良くで、これぞ宝塚のスター様!!って感じ。個人的には前半のロマンティックモードより、マリーが消えた後のやさぐれモードの姿が一番カッコ良かったと思います。
ヒロイン・マリー役の星風まどか、いままでの幼い幼女的マリー像ではなく、ルドルフを包み込むような母性を有するマリーを演じられたのは、彼女の技量があってこそでしょう。学年的にさすがに「幼さ」を前面に出すのは難しく、それでも生み出せるヒロイン芝居は一級品。さすがです。
水美舞斗、永久輝せあ、聖乃あすか、星空美咲、美羽愛あたりは、作品的に「それ以上しどころのない役」で、良い意味で想像通りの出来栄えだったかな、という感じ。
個人的にはそれ以外の中堅若手陣が見応えがあって、例えば同じ賑やかしチームでも帆純まひろは眉間に皺寄せ大人な演技をしてるし、逆に一之瀬航季はお気楽そうに見えて気位は高そうな皇子を演じていて興味深かったです。マジでワンポイントリリーフ的に出て来た新聞記者役の侑輝大弥はビジュアル的に実に極まっていましたし、希波らいとののほほんお坊ちゃま感も良かった。そして期待の105期生・美空真瑠もしっかり顔見せされてましたね。娘役でいえば、朝葉ことのの曲者感が良かったし、侍女役の愛蘭みこが目を惹くくらい普通に可愛かったです。ヒロインやらんかなー。
そしてマイMVPは、本作で退団となるエリザベート役の華雅りりかでしょう!!その美しさはまさにここに極まれり、退団者だけが放つ光り輝くオーラも相まって、ひれ伏したくなるくらいでした。絶妙な枯れ具合は高学年娘役だから出せるものでしょう。抑えた芝居も良く、最後の最後で大輪の花を咲かせていました。あっぱれです。
柚香光・演目選定の「妙」
私が思う柚香光の魅力は「スタイリッシュクール」と「耽美」だと思うので、
任期前半は外箱公演『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』や
『TOP HAT』でスタイリッシュに、
任期中編で『巡礼の年』『うたかたの恋』と怒涛のお耽美路線に舵を切るのは、
個人的には正解かなと思います。
が、その一方で良くない意味で古めかしい古典作品って、
しずかーに芝居する柚香光との相性ってあまり良くないと思うんですよねぇ…。
なのに頻繁に当ててくるのは、
劇団的に何の計算があってのことなんだろう?と不思議に思ったり。
果たして『二人だけの戦場』『鴛鴦歌合戦』がどのような作品になるのか、
組体制も変わることですし、色んな意味で楽しみです。
『ENCHANTEMENT』の感想は気が向いたら書きますー。
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コメント
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
『うたかたの恋』は、
古い時代に属する戯曲という意味での『古典』なのか、
時代が変わり、価値観が変わり、人が変わり、初演の後に生まれた世代が見ても「これは自分ごとだ!」と思える普遍性を備えた『クラシック』になれそうなのか?
個人的には、柚香版ルドルフは、遠い時代の、自分とは隔絶した立場の人が、自分の価値観に合わないことをしている怖い絵を見ているようで、古典文学というよりは古典絵画を鑑賞しているような印象でした。
タカラヅカ・コンテンポラリーな、内省的な持ち味の柚香さんに、タカラヅカ・クラシックの極みみたいな作品を演じさせる意味・・・まあ、全ツに行く時に、地方の、ミュージカルを見慣れていない客には、柴田作品のロマンスの熱量と、あっと驚くラストが「宝塚、見たわー」感があって受けるんですよ。深い意味は無く、トップノルマでは。
ただ柚香さんが演じると、柴田作品の昭和の大衆演劇的な、ある意味おおらかで鷹揚な雰囲気が消えて、舞台が神経質で腺病質な空気に覆われるので、個人的には苦手です。
柴田作品は、希波 らいとさんとか、真風さんとか、細やかな心理描写よりも、オーラとハッタリで納得させるタイプの方が、全ツ会場ののどかな県民ホールで演じるような舞台が見やすくて好きです。
『ENCHANTEMENT』・・・私は「気が向いたら書きます」と宣言して書いたためしがありません。個人的には、ルネサンス・ロマンティックレビューの衝撃から、新鮮味・新規性が薄れてきて、old-fashionedになってきた印象があるのですが、映像で拝見しただけですので何とも・・・