前回、木場新理事長体制における、
新たな宝塚人事の印象についてまとめました。
その際に改めて一つ気付いたことがあります。
それは、別格男役と呼ばれるスターがほとんど居なくなったこと、です。
中堅別格男役不在問題
別格男役とは何か。
トップ候補ではないけれど一定以上の人気・実力・出番がある男役、
というのが、私の中での定義です。
トップスターになれないタカラジェンヌは存在価値が無いのか?
当然そんなことはなく、脇で輝くカッコ良いお兄さんが居てこそ、
継承されてきた宝塚の美学・世界観が構築されるし、
目で見て華やかな舞台が完成されると思うのです。
で、そんな別格男役が、天寿光希の退団により、
ほぼ絶滅状態になったのではないか?と勝手に危惧しています。
少し前は、彩凪翔、澄輝さやと、七海ひろき、夢乃聖夏、十輝いりす…。
適当に名前を書き出しただけでも、これだけ思いつきますが、
現在、このポジションに納まっているスターが居なくないですか?
その理由は2つあると思っていて、
まず1つは、本来別格枠だったはずのスターすらも正路線に組み込まれている、
という点が挙げられます。
例えば瀬戸かずやや鳳月杏が、まさか2番手羽根を背負うなんて、
5年前の宝塚ファンの誰が予想出来たことでしょう?
あるいは95期後続組の4人や和希そらだって、
以前だったら別格枠で納まっていたかもしれない。
けどこれは、その前後の代でトップ候補生のスターたちが少なく、
本来であれば別格止まりであったスターすらも、
仕方なく頭数として路線格に昇格した、という大人の事情があるわけですが、
もっと深刻なのは、その別格候補生すら居なくなりつつあるという現状です。
不思議なバウ渋り現象
96~99期でトップ当確と言われているド正路線と言えば、
永久輝せあと暁千星の2人だけ。
ここに別格候補から路線格に修正された和希そらと、
別格枠に逸れつつある瑠風輝の4人が、
いわゆる正路線と言われるスターたちです。
4学年でたったの4人…いかに人材不足かが分かると思いますが、
前述の通り、問題は別格路線候補生すら居ないことで、
それが極端に表れているのが、バウ主演者の数と扱いでしょう。
正路線スター以外でバウ主演(表記の揺れ有り)したのは、以下の4名だけです。
紫藤りゅう:『New Wave!-星-』で瀬央ゆりあとW主演
綺城ひか理:『Dream On!』でメインキャスト/しかし水美舞斗が降る
飛龍つかさ:『Dream On!』でメインキャスト/しかし水美舞斗が降る
帆純まひろ:『殉情』で一之瀬航季とバウWS主演
なんと単独主演者表記が一人も居ない。
そして紫藤りゅうは瑠風輝に、飛龍つかさは聖乃あすかにあっさり抜かれ、
一応でもバウ主演した人材とは思えない、ぞんざいな扱いに驚きます。
唯一その恩恵を受けているのは、
星組で伸び伸びやっている綺城ひか理くらいでしょうか?
ここに帆純まひろも加わると良いのですが…というのが正直なところ。
そもそもバウホール公演とは、
タカラジェンヌと演出家の育成の場として設けられたもの。
よって挑戦的な内容も多く、
採算よりもっとプライスレスなものをスターやファンに積み上げさせる、
そんな価値観で上演されていた印象があります。
ところが、小川前理事長主導の拝金主義的価値観のもと、
バウホール公演も一つの立派な興行として取り扱われるようになり、
それ相応のクオリティが求められるようになりました。
同時に、バウ主演は「とりあえずの名乗り上げ」よりも
トップスターへの大事な大事な一歩のような扱いを受けるようになり、
若手が気軽に主演出来るものでなくなってしまいました。
これを私と管理人は勝手に「バウ渋り」現象と呼んでいます。
若手・中堅にもっと活躍の場を!!
飛龍つかさ、綾凰華あたりにご褒美バウ主演(Wでも可)をさせてあれば、
別格路線としてもう少し長く居てくれたかもしれない…。
と考えてしまうのは、きっと虚しいifでしょう。
そして天華えまや蓮つかさなど、
各学年で実力・人気のあるスターにチャンスを振っておかないと、
ガンガン辞めていっちゃわない?と心配になります。
100周年前の宝塚人事では、数打ち作戦でたくさんのスターに経験を積ませ、
競争させた後に脱落者を出していく、そんな残酷なレースを見せていました。
今の感覚で言えば「可哀想」かもしれませんし、
現実に起これば、たぶんSNSを中心に文句が出ることと思いますが、
とはいえレースのスタート地点に立たないことには話ははじまりません。
コロナ禍で上演すらスムーズにいかない現状ですが、
だからこそ若手・中堅にもっと活躍の場を積極的に与えて欲しいですよね…。
宝塚はトップスターのものだけでも、熾烈な人事を見せるだけでもない、
男役としての職人芸を魅せる人材を、もう少し大切に、
そしてその芽を伸ばして欲しいと思う、今日この頃です。
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コメント
蒼汰さん
いや、もうホントそうですよねという気持ちで読ませていただきました。
綾さんも飛龍さんも自分で選んだ退団だと思いますし、路線としてやり切ったという気持ちで新しい道に進まれるのだと思っています。でも、その道を選ばれるジェンヌが増えると「え、あの人カッコよくない?」となる別格スターがいなくなりそう……。
夢奈・紫藤・綺城・帆純辺りには頑張ってもらいたいですし、蓮・天華にも見せ場が欲しいです。たとえ1回であっても新公主演経験者ですし、チャンスが欲しいですね……。(最近れんこんの扱いが微妙で、辞めちゃわないかとビクビクしてました…)
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
100周年以前からのオールドファンとしては、昨今のSNSにおける
「他組の同期の〇〇さんは羽を背負ったのに、△△さんはどうして羽根を背負わないの!」
「東上したのに、2番手羽を背負わせないのはひどい!」
「同期でトップ引継ぎできないのはなぜ?」
みたいな意見が飛び交う風潮は、若干の違和感がありまして。
柚香、礼レベルのジェンヌならトップにしますよ。本来トップには柚香、礼レベルの人が相応しいのですよ。いつの時代もそんな人は、宝塚音楽学校の受験生1,000人中1人2人ですよ。
でもトップになるだけがジェンヌ人生ではなくて、いち表現者として、素敵な作品、いいお役に巡り会ってほしい。
いつか来る退団後「主演としてあの作品、あのお役に巡り会えてよかった」と言える役者人生であってほしい。
そのために、トップ候補以外にも、バウ主演や東上公演を振っていくべきと思っています。
新人公演や若手バウの配信解禁は、大英断だと思います。
あんまり「すわ、東上したからには、次の公演で2番手羽か?あるいは餞別か!」とばかり煽らないで、舞台を見て、演技とか歌とか、芸の感想をSNSで言語化して、
チケットを持っていないライトファンにも「面白そう。配信で見てみようかな」と思ってもらえるような流れになって欲しいです。
そうしたら出演しているジェンヌのやりがいにも、劇団の収益にも繋がりますしね。
蒼汰さま
別格中堅=バウ主演者でなければならないのでしょうか。
宙組であれば留依蒔世や紫藤りゅう
雪組なら綾凰華(退団してしまいますが…)や諏訪さき
月組は夢奈瑠音
など、近いポジションはあるはずです。
今までであれば、トップ→2番手に次ぐ存在感が求められていた方たちを専科に載せ、
技巧に秀でたジェンヌを3番手と同格程度で適所に配置する、という形に変化させたのだろうと思います。
適材適所に配置しムダがないというか…
バウ公演まで収入源として見ているなら仕方ない部分もあると思います
。そして確かに別格と呼ばれる方々がもっと前に出てくる機会があったらそれは新規ファンの獲得にも繋がりますが、指標の1つになり得ただろうお茶会が開催できない以上、劇団側もどのジェンヌにどれくらいのファンがいてというのを把握しにくくなって確実性を採っているのかもなぁと思います。
もちろん名前を挙げて貰ったスターたちも素敵なスターだと思うのですが、やはり立ち位置的に過去の別格組と比べると弱い印象が…
あと例えご褒美バウだろうとスター本人もファンもモチベーションが変わると思うんですよねぇ。
限りある駒でやりくりしてるんでしょうけど、逆にいうと下手にカードを配らない手法は先細りになってしまう気がして、少しばかり心配だという素人考えなのでした。
すげーわかります。個人的には雪組100期4人衆でなんかやらせてくれないかなーとか思ってるんですが…まあないでしょうね。
コロナも影響してると思います。内部の公演や組み替えはもちろん、ジェンヌの卒業やらその後のスケジュールやらでグッチャグチャ。スポンサーも絡み路線整理に大忙し。バウや新公に(以前ならあったであろう)余裕がない。で、ぶっちゃけ財布の余裕もない。
それに乗じて配信が始まり、本公演だけでなく、以前ならその組のファンのみが見たバウや新公を、他組ファンでも見れるようにしちゃいました。
そら他組ファンですから見る目も感想も厳しくなりますが、そんな事はわかった上でやらせているわけで…。金払ってるんだから育成とか関係なくいいもん見せろや!となり…そのような感想、劇団にも本人にも直接届いていると思われます。褒め含め、清濁あらゆる意見が以前より遥かに多く。
新人公演はタイトルからして新人とついてますし、まだ甘く見てくれるんじゃないかな、とも思いますが。
もう劇団は、バウを育成の場としては見ていないんじゃないですかね。もし育成の場として考えるならば、配信やらないんじゃないかなって。バウ新公の配信までやるか、内部でも賛否あったでしょうね…迷っただろうな…。
いつも楽しく、拝見しております。
そうですね、中堅別格がいない状態に陥ってしまう…。
トップスターの姿がない場面でも、きっちりと魅せてくれる。役柄がそうであったとしても、決してトップスターの引き立て役ではなく、自身が輝いている、そのシーンをみせてもらって、ありがとう、満足です、また来ますね、と思わせてくれる脇役(配役上は)さんが、中堅世代にみられなくなるのか。
よい味出してる上級生たちがいても、ずっとではない事ですし。
娘役さんも含めてなので、目立つのかもしれないのですが、このところ98期生の卒団が続いていますね。
新公を卒業し、別箱では重宝されている(実力あるので)ようなのに、本公演ではどうなんだろ、な役柄で見せ場が少なく、いえ、出番が明らかに少ない。
9678期生の明暗が、くっきりとみえてくるのであれば、不遇の99期生も続くのでしょうか。
花組のように、バウワークショップW主演で育成を、他組でも計画してほしいものです。
限りあるタカラジェンヌ人生の為にも。
コロナの影響があるように思います。
本来あるはずだった本公演や別箱の中止、FNSみたいなテレビ出演などもなくなり、スカステの番組はコロナ対応でジェンヌ同士が近い距離では話せなくなり、スキンシップの接触も出来なくなりました。
楽屋の入出やお茶会といったファンとの交流の激減。
例えば七海さんは入出の対応でファンを大きく増やしました。
スターを育てる切っ掛けや場所が以前とは比べられないほど少なくなったと思います。
上手い役者を育てることは出来ても、別格スターを作り出すには舞台だけでは限界があるように思います。
本当は、SNS時代だからこそ、ファンも羽根だのグッズだのでランクづけして盛り上
がるようなことを自重しないといけないのかな、と思います。(こちらのブログのスターランキングの記事を止めろという意味ではありません。念のため)
路線落ちだの抜かれただの、昔だったらファンクラブ活動するような一部のファンが
内々で本音トークしていたような内容が、ライトファンどころかまだ劇場で観たこと
もない「興味持ち始めました」段階の人の目や耳に入ってくるわけです。
「自分の贔屓が大羽根つけてほしい、下級生に抜かれるなんて許さない!」気持ちは
よく分かりますが、そんなファンの声ばかり目立ってしまうと、「羽根がなければス
ターじゃない、抜かれたから負け組」と宣言されたようで、気力が続かなくなる生徒
さんが増えてしまうと思います。
お芝居の内容そっちのけで羽根に盛り上がるのは過熱しすぎです。
劇団はその層にたくさんお金を落としてもらえる方がよいとの判断かもしれませんが、それで宝塚の将来が明るいとは思えません。
個人的には花組の別格大スターを期待していた飛龍つかさの退団が残念で、最後のショーくらいもっと目立つ場面を与えてほしかったし、初日のトップ挨拶で退団者にも触れてほしかったです。
これ、正直根深い問題だと思います・・・
>小川前理事長主導の拝金主義的価値観のもと
これ、ちょっと笑っちゃったんですけど、いや、笑い事ではないか・・・
流行り病のせいで、「配信」が、宝塚だけではなく多くの舞台で根付きつつありますね。
これはこれで、時代というかイノベーションというか、まあそういうものなのかもしれませんが、
『配信と拝金と若手育成』
このバランスを、今後の宝塚歌劇団はどう取ろうとしているのか、今は過渡期なのではないかと思っています。
もしかしたら観る方も、今までの常識や意識を、ちょっと変える必要があるのかもしれません。
しかしながら、劇団が配信の拝金に目が眩むようなことにはなって欲しいわけではなく・・・
んー・・・
とは言え、新理事長の元何が変わって何が変わらないのか、ヤキモキしつつ見守るしかないのが、ファンの辛いところです・・・
全体的にスター不足なんですよね。おっしゃることごもっともだと思います。宝塚だけでなく芸能界全般じゃないですか?昔のような圧倒的なスターがいなくなった感。日本人のスタイルが良くなったからオーラがわかりにくいのか??
話が逸れてしまうので全体の話は良いとして、、。今の雪組公演みたいに満遍なく役が行き渡り、上手い上級生がいるな。とか分かると嬉しくなります。宝塚はスターシステムですから大体の方はトップスターを目指して入って来られるのでしょう。ですがスターだけでのお芝居って面白くないので巧みにお芝居を締めて下さる別格スターさんにも是非、スポットを当てて頂きたいですね。脇のお芝居でワクワクときめくファンもいることも分かって下さればとも思います。以前、芝居終わりに走って去っていく某別格男役さんの後ろ姿があまりにも格好良くて惚れました。。笑