トップスターの人気を構成する4要素論

 

トップスターになること、

それは全タカラジェンヌの夢であり、

そのファンにとっても大いなる目標であることに違いありません。

 

しかしながら、トップに立つことはゴールではなく、あくまでスタート。

トップに立ったからには人気スターとなって、

チケットやグッズで宝塚歌劇団の売上げに貢献せねばなりません。

 

その人気を構成する4要素である、

「ビジュアル」「ダンス」「歌」「芝居」について、

それらが互いにどのように作用するのか、

私の個人的な考えを本日はまとめていきます。

 

ビジュアルVS歌論争が不毛なワケ

 

この4要素を語るうえで避けられないのが、ビジュアルVS歌論争。

しかしこれは、激しく意味の無いものだと私は考えています。

 

ビジュアル過激派の人いわく、

「歌が上手くても見た目が良くなければ、夢が見られない。」

ごもっともです。

 

ですから、歌だけが上手くてビジュアルいまいちな人が、

トップスターになった例は無いに等しいと思います。

 

どういう意味かと言えば、例えば望海風斗や礼真琴のファンが、

「だいもんはスタイル悪いし顔も四角くて怖いけど、歌声が素敵だわぁ」とか、

「こっちゃんは豆狸顔のちんちくりんだけど、イケボだし歌が上手いわぁ」と、

決して思っていないということです。

 

望海風斗も、礼真琴も、確かに男役としては身長が低めかもしれませんが、

ファンにとってみたら2人とも国宝級の超イケメン。

 

そもそもビジュアルが好みでなければ、

歌が上手かろうとどうでも良い、というのが本音じゃありません?

 

実際、歴代のトップスターたちを見ても、「好みじゃない」ことはありますが、

「ビジュアルが悪い」トップスターなど存在しないのです。

 

よって「ビジュアル」というのは、スターを構成する必要最低条件であり、

ビジュアル だ け で人気トップになれるというのは、

なかなか難しいというのが現状だと思います。

 

最も不要で最も必要な要素・ダンス

 

ところで、4要素のうち、

最も人気の影響を受けにくいのは「ダンス」だと思います。

なぜなら、最悪トップが踊らなくても舞台は成立するからです。

 

主役たるトップスターは、もちろん一番「芝居」をするし、

ミュージカル形式を取っている以上は「歌」います。

そして広告塔として顔を出す以上「ビジュアル」も大切でしょう。

 

だけどダンスは?確かにセンターで踊る必要はありますが、

超絶技巧を見せつける必要は無く、

むしろ他の出演者に踊らせて、自分はドヤっていて成り立つのが宝塚です。

 

し か し な が ら 。

若手が目立つには群舞やピックアップにに選ばねばならないため、

スターとしては最低限踊れることも必要です。

 

それに宝塚初心者、ならびにライトファンは、

ショーにおける大人数でのダンスに衝撃を受けることが多いため、

トップが踊れると見栄えが非常に良い、というのも事実だと思います。

 

よって「ダンス」は、トップスターとしては最も不要な要素だけれども、

最も基礎的に必要な要素であるという、

ある意味で矛盾したファクターなのかもしれません。

 

歌と芝居の重要性を改めて説く

 

さて、ここからが本旨です。

人気構築するうえで最も重要なファクターは「歌」と「芝居」だと思います。

 

もっと突き詰めて書くと、

「歌」と「芝居」のうちどちらかが平均以上でなければ、

舞台上の間がもたず、トップとして不調に終わってしまうと思うのです。

 

それは宝塚「歌劇」団であることを思えば、

当然と言えば当然ですよね。

これを踏まえ、ビジュアル特化型だと思われがちなスターで考えてみましょう。

 

例えば柚香光、彼女はビジュアル最強でダンスも上手い、

それだけだと思われがちですが、

彼女には明日海りお仕込みの自然派芝居があり、

これが二次元的魅力として多くのファンの心に刺さるのだと思います。

 

例えば真風涼帆、彼女は典型的なハッタリ型スターですが、

星組時代から考えると歌唱力の大幅な向上は目を見張るものがあります。

上手いとは言えないかもしれないけれど聞き苦しくない最低限の歌唱力はあり、

あとは男役芸でなんとか出来てしまうパワーこそ、スターの証。

 

すなわち、ビジュアルだけだと思われがちなトップスターも、

実はそれ以外の要素もきちんと平均以上が取れており、

それが人気を誇るうえで重要なんじゃないか、というのが私の考えです。

 

ちなみに、じゃあ誰がそうでないのか、という話をしてしまうと

いらぬ敵を作りそうなのでやめときますが…笑

とりあえず生え抜きトップ組に多い印象がありますかね。

やはり閉じられた世界だと内輪な自己満的表現になっちゃうのかなぁと。

 

その意味で、暁千星を外に出してスーパー技巧派礼真琴の下につけたり、

生え抜きでも彩風咲奈を望海風斗の下につけて歌唱力を育てたり、

というのは、実に理にかなった育成方法だと思います。

(ここまで書いて気が付きましたが、私が想定している人たちってみんな生え抜きの下で育った生え抜きだわ…。)

 

これからの宝塚で必要なファクターとは?

 

小林理事長時代は明らかにスタイル含むビジュアル の み 重視でしたが、

これが小川理事長時代になり一変、舞台技術と物語性重視となりました。

 

じゃあ木場理事長時代は、一体何が重要なファクターとなるのでしょう?

コロナ禍の影響もあり、今はまだハッキリと見えません。

 

しかしながら配信事業が大きな収益の元となっている今、

映像映えというのが、もしかしたら重要な要素になってくるのかもしれません。

 

いずれにせよ、新公学年内の若手路線スターの皆さんには、

もちろんチャンスを得て目立つための「ダンス」も大切だけれど、

引き続き「歌」と「芝居」も頑張って伸ばした方が良いと思うよ、

とこっそりアドバイスしたい今日この頃です。

 

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コメント

  1. エマ より:

    いつも楽しく拝読しております。
    お芝居ができない人はトップは難しいだろうと私も思います。
    間が持たないですよね。

    また、ヴィジュアルと華、というのも似て非なるもので
    舞台で華、オーラがある方と
    映像で美しい方はまた異なると思います。
    これは完全なる好みですが、姿形よりも華やオーラで目立つ方の方に惹かれます。

    芝居特化型トップといえば久世星佳、
    男役芸特化型といえば麻路さきを思い出しますね。
    久世星佳は芝居歌が素晴らしく、麻路さきはダンスは及第点と思いますが。

    今は歌が極端に不得手な方が減ったように思います。
    華も実力もある歌劇団にますます向かっていってほしいなと思います。

  2. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    だいきほの大ファンで、お二人の退団後は雪組をみないかも、と言っていた叔母が、銀橋を、ハミングのみで駆け抜けていった彩風さんのキラキラに射ぬかれ、今も超雪担だったり、コーラスの宙組っていうのは、結局トップコンビ以外は歌上手だということね、と言い放ちながらも、そのコーラスに埋もれない真風節に、魅了されている友人がいたり、と、流石にピラミッドの頂点に立つ人には何かが、あるのですね。
    物語性というのは、とても宝塚っぽくて素敵ですね。
    この先、どの様なトップスターが登場されるのか、楽しみです。

  3. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    結局ファンになる時は「この人、ビジュアルが好みじゃないけど、歌が上手いから好き」ではないのですよね。びしっと言語化してくださり、ありがとうございます。

    結局、演技力が一番大切なのでしょう。技巧派でなくても「芝居っ気」があれば。男役の業は役者の業。役者の業が無くて、女が男になれるものか。

    トップになれば、歌はトップにキーを合わせるなり、歌いやすい歌を作ってもらったりできる劇団なのだから。

    で、縣ですよ。生え抜きの彩風さんの下で、新人公演時代、凱旋門で轟さんの役をして以降、ほぼ彩風さんの役ばかり。土方歳三は本役が彩凪翔だったくらい。いつも同じ面子での芝居では、表現の幅が広がりづらい。

    ニコイチだった彩海せらの組替えは、彩海だけでなく縣の成長のためだったのかもしれないと思っています。

    次の光緒帝は、理想を掲げるも、結局西太后の元で皇帝の名は虚名に過ぎなかった清朝版ルドルフ。原作では、西太后と光緒帝の対立がメインの話を、西太后がメインキャストにいない配役なので、

    縣は、中華四千年の王朝史の黄昏の象徴として君臨しなければ、話のスケールが小さくなる。

    大変なお役だと思います。頑張って表現力を磨いてほしい!

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      いつもコメントありがとうございます!
      実はその縣さんの記事のための布石だったり…。

  4. さくらい より:

    初めてコメントいたします。

    自分は宙組ファンで、真風さんのヴィジュアルはもちろん、歌声が大好きなんです。

    確かに歌唱力抜群というわけではないのですが、綺麗な声質で丁寧に歌われるので聞いていて心地がいい!いい意味で耳に引っかかる歌声をされてます。

    歌がうまくないなりに、自らの魅力を最大限引き出す歌唱法を身に着けるため努力されたんだと思います。

    三拍子の中でも、歌い方には特に人間性が出るなあと感じていて、真風さんの歌を聞くと、落ち着いた包容力のある人柄が伝わってきてファン目線全開になっちゃいます(笑)。

  5. 12がつ より:

    歌うまとして誰にも異論はない圧倒的な実力があっても、なぜか心に響かない、ということもあるんですよね…
    歌もダンススキルも芝居も、観る人の主観、好みもあって、それが弱点と言われる人のものでも魅力的に感じることがある。
    トップになればその人に合わせて演目が選ばれ、踊れなかったら真ん中で立っていればいい、歌えなかったら他の人が歌えばいいとは思いますが、下手な歌でも心が震えることはあるけど、毎公演ただ真ん中に立ってるだけではつまらない。
    私はトップスターが踊れないのは面白みがないと感じます。
    1本物ばかりならごまかせるかもしれないけど、ショーがあっての宝塚だと思うんですよね。

  6. 金の鳩 より:

    蒼汰さん、こんにちは。
    久しぶりにコメントさせていただきます。

    書かれていることに全面的に同意します。
    歌と芝居が大事であること。これはまさにその通りだと思います。特にお芝居。ある程度の(いや、そこそこ大きな)レベルの差はあれど、心に響くお芝居ができない人はいなかった気がします。劇団が一番重視しているのはお芝居なんだろうなと、常々感じていました。
    そして歌。昔はともかく最近は、下手でも味があるというか何と言うか…(やや苦しい)。
    特に芝居歌が上手いと満足度が上がります。やっぱり歌劇団なんですよね。

    ダンスはできたらカッコいいけど、並で大丈夫。そこも同意です。
    真ん中が踊れないとつまらないと思う方がいるのもわかるけれど、そこは好みの問題かな…と。

    好みという意味では、全面同意ではありますが、正直個人的には「歌か芝居のどちらかは平均以上」ではなく「歌も芝居も平均以上」であって欲しいんですよね。
    そうでないとファンにはなれないというか。
    超歌うまでなくてもいいけど、やっぱり音がはずれるとふと現実に引き戻されてしまいます。
    他が突出していれば目をつぶるしかない、という感じです。個人的には(2度目)。

  7. ムーミン より:

    真風さんトップになってから間もなく5年が経とうとしてますが、歌唱を比較されるのはいつも星組時代ですね。
    さて「ビジュアル」とは、姿形にくわえて、髪型、化粧、仕草、居方など奥が深く、宝塚においては歌や芝居とならぶ重要な舞台要素のひとつだと思っています。そして、現在も場合によっては歌や芝居より武器になり得ると劇団が認識していることを、真風さんが証明していると思います。贔屓だから思い入れがあるといえばそうですが。

  8. 中古参ファン より:

    「ビジュアルが好みでなければどうでもいい」に笑ってしまいました。おっしゃる通りで!

    今後映像映えが重要視されることを踏まえると、歌はますます重要視されるかもしれませんね。

    舞台ではあの空気感で誤魔化しがききますが、家で映像見ると耳をふさいでしまうというのは多々あることなので…

    個人的にトップさんに求めてしまう要素は、「相手役さんを慈しみ優しくリードする心遣い」かもしれません。
    芝居力の一部と言えなくもないのですが、台詞回しの上手さや表情ではカバーしきれないときもあると思っていまして。
    実力派と言われるトップさんでも「オレうまいでしょ」感が出てしまう方とかね、見ていて冷めてしまうことがあります。

    最近の若手さんたちは、皆さん技術レベル高いので、その中で何か抜きん出るのは大変だと思いますが、最後は心で勝負!して欲しいものです。

    ということで、縣さんの記事楽しみにしています。

  9. みちる より:

    初めてまして、いつも拝見させて頂いております。

    花組 大浦みずきさんが2番手時代、TOPが高汐巴さん、3番手が朝香じゅんさんで、まさしく1、3がダンサーでありませんでした。
    その為、ショーは なーちゃん(大浦みずき)の独壇場で誰がみてもTOPにしか見えないのですよね。

    なーちゃん見せ場てんこ盛りで踊ったあと、両手を広げ涼しい顔でTOPが登場されるのですが、なーちゃんの繋ぎ役みたいでした。
    TOPの影が薄れ、結果的には2番手に押されるかたちでTOP寿命にも影響したと思います。一昨品なら誤魔化せても、毎回でしたからね。
    歌に特化していたら、また違っていたと思いますが。

    ビジュアル面では、頭身バランスが身長と同等くらい大切な気がします。
    顔がどんなに美しくても頭のハチが張っていたり、手足が一般人だと燕尾が野暮ったく見えます。
    また男役は、胸板が薄くお尻が小さいことも重要。
    真矢みきさん、柚希礼音さん、北翔海莉さんなどは、胸の大きさが抑えて切れず、燕尾姿が鳩胸っぽくて洗練されていなかったと思います。
    案外と多いですよね、このタイプ。

    また お尻が大きいと、母なる大地で女性ぽくなり、これまた垢抜けません。
    なのでビジュアル特化も立派な才能なんですよね。

  10. みみ より:

    ビジュアルの部分のお話、まさに私が宝塚を好きなポイントだなと思いました。
    宝塚が求めるビジュアルって「一般的な美人、イケメン」のみじゃないんですよね。

    一般的な美人ってとても統一感があって、女優やアイドルやモデル、皆ゴリゴリの小顔で二重で…そうじゃなきゃ美人じゃない、みたいな風潮がまだまだあると思っています。

    でも宝塚では皆さんがそれぞれのお顔立ちに合わせたメイクを研究されていて、年数を追うごとに元のお顔の個性が生かされていくんですよね。
    一重の方がすっきりとした目元で男役らしかったり、顔の骨感が目立つ方が実は舞台映えしていたり!

    宝塚における「ビジュがいい」「顔がいい」は一般的な美人、イケメンを求めているのではなく、
    「ジェンヌさん自分の魅せ方が最高に分かってる、素敵!」の要素が強いのかな?と思います。
    そういう意味でもトップ要素の必要最低条件、ビジュアル(自分の魅せ方をいかに熟知しているか)はとても納得です。

  11. おかず より:

    こんにちは。中古参ファンさん、横から失礼します。

    トップに求める要素の部分ですが、私は紅、綺咲コンビがとても当てはまると思うのですが、いかがでしょうか?あのコンビのデュエットダンスや、パレードの最後、銀橋でお辞儀しあう所、その後のあーちゃんに、どうぞと促してあげる所など、見ていてとても幸せな気持ちになります。トップコンビには、皆様いろいろ思う所があるかと思います。やはり、営業でもいいので多幸感あふれるのがいいですよね。

  12. はる より:

    おっしゃる事に同意です。私はビジュアルはもちろんでお芝居が好みか?が大きいです。次に歌、ダンスです。そして応援し続けられる生徒さんはその人の過去を超えているか?でしょうか。成長過程を魅せる宝塚ですからその過程を観られるのも醍醐味です。