年末恒例企画「ルネサンス宝塚大賞2021」と称し、
2021年東京宝塚劇場で公演された舞台作品の
全作レビューをまとめていきたいと思います!!
ルールとしましては
・第2位~最下位、からの第1位(ルネサンス宝塚大賞)という順番に発表します。
・順位は私の好みだけではなく、芸術性や大衆性(主観)を加味します。
・あくまで私の独断と偏見によるランキングです。
詳細は前回の記事をご覧ください。
な、の、で、す、が。
今回は諸事情により第3位から発表していきます。
それではさっそく参りましょう!!
2021年本公演全作品レビュー
第3位:美しくも儚い最後の時
■月組『桜嵐記』
珠城りょう×上田久美子、最後の岸辺。
分かり辛い時代背景や登場人物の違いを、
冒頭のわずか5分であっさり説明しきったり、
最後に敢えて『忠臣蔵』のオマージュ的な出陣の場面を持ってくる等、
上田氏の圧倒的脚本力と演出パワーは、まさにド・本気。
そして複雑難解な役どころを深く演じ切ってみせた、
月組生たちの生き生きとした芝居が、また見事でした。
苦労のすえトップの頂きを極めた珠城りょうは、
まさにはらはらと散る満開の桜のように美しく、
そんな最後の門出を飾るにふさわしい、渾身の力作。
第4位:頭空っぽで楽しむ全力コメディ
■雪組『CITY HUNTER』
今年の大劇場作品の中で唯一、
なーんにも考えないで楽しめる勧善懲悪コメディ。
キャラやエピソードがパンパンに詰め込まれ、
それは演出家の原作への愛・リスペクトかもしれませんが、
正直、分かり辛い部分が有ったのも事実。
とはいえ、おちゃらけセクシーガイが相棒と力を合わせ、
時にすれ違いながら力を合わせ事件を解決するという、
まさに少年漫画的分かりやすい一本筋ストーリーだったので、
初見殺し、って程ではなかったかなと。
むしろ、下手にメッセージ性を込めないライトな感じが、
重めの作品が多かった2021年の中で映え、鬱屈としたコロナ禍の今、
上質なエンタメとしての公演の意義があったかなと思います。
第5位:上田久美子の挑戦状
■雪組『fff』
これはまさしく、上田久美子の挑戦状。
望海風斗×真彩希帆という規格外なトップコンビの終演をどう演出するのか、
そんな彼女の苦悩の果ての一作と言えるでしょう。
なにせヒロインは謎の女にして、運命。
2番手は1度も主人公・べートーヴェンと会ったことのないナポレオン。
これでよく1作物語を書けるな、という感じ。
物語の主軸は精神世界の話となり、
正直言って、私のような凡人は少し置いてけぼりをくらいましたけれど、
こんな観念的な作品を宝塚の舞台で息づかせ、
最後の第九で妙に納得する終わらせ方が出来るのは、上田久美子ならでは。
あと、舞台演出がとにかく金かかってます。
コロナ禍前の宝塚バブルが弾けるその瞬間と言ってしまうと、
実に侘しいものがあるかもしれませんね。
第6位:歴史の始まりと終わり
■花組『アウグストゥス』
偉大なる花組帝国の礎を築く柚香光の第一歩の歴史譚にして、
(なにせお披露目は再演『はいからさんが通る』ですから)
初めて心を通わせた女性・華優希との「別れと約束の物語」。
そして花組を支えてきた瀬戸かずや最後の花道にして、
凪七瑠海の無意味にゴージャスなエジプシャンパワーを楽しむ一品でもある。
確かに名作ではないけれど、そこそこ楽しめる佳作、
だと私は思っているのですが、なぜか世間の評判はイマイチ…。
なにせ柚香光が何もしていない。
「たたかいーは、あらたなー、たたかいをーうーむーだーけぇー」
としっかり歌わないと駄目よね。
とはいえ実は死んでましたギミックはじめ、
柚香と華の関係性を美しく描き出した脚本は見事だと思うし、
何よりも花組生たちのビジュアルが最強。
それを楽しめるだけでいいじゃないか、という一作。
第7位:原作ファンには好評?!
■宙組『シャーロック・ホームズ』
さすが世界的に著名かつ人気な推理小説が原作なだけあり、
最後30分の大どんでん返しが面白い作品、
なんだけれども、実はそれだけだとも言えちゃうかな。
とにかく掴みが弱いなぁというのが正直な感想。
一番のツッコミどころは、
てっきり推理合戦の話なのかと思いきや、
最後は肉弾戦となって滝つぼに一緒に落ちていくところ。
「さすが宝塚、トンチキだぜ!!」と思っていたら、
これが原作通りというのだから驚きです。
とはいえSNSを見る限り、原作ファンには結構好評なのですよね…。
シャーロキアンが楽しんで頂けてるなら、それだけでオッケーなのかも。
個人的には華やかなビジュアルと
宙組充実期第二章を楽しむ作品という評価です。
第8位:まごうことなきTHE・トンチキ
■星組『柳生忍法帖』
まさしく宝塚的THE・トンチキ作品だと思います。
私が思うトンチキ作品の楽しみ方は、
心の中でツッコみを入れながら見ること、なので、
それを楽しめる方はもっと上位かなぁと思ったり。
全編通してシリアスな展開(なにせ話の筋が仇討ちですから)なのに、
妖術とか、謎の気絶させ術とか、
突然のご都合主義展開はツッコミどころこの上ない。
アーンド取って付けたかのように、
突然ヒロインが主人公を好きになる展開も、
ツッコミどころこの上ない。
これらを星組生が全力パッションで歌い、踊り、芝居するのだから、
その温度差に最初は戸惑うけれど、楽しめるようになったら勝ちというもの。
ちなみに、私は観劇3回目あたりでやっとこの境地に辿り着きました。笑
なお、一番の見どころは礼真琴のとんでもない運動神経と、
(刀捌きがイチイチ超カッコ良い!!)
七本槍の顔芸かもしれません。この力みこそが、星組の良さですよね。
ここまで2021年上演作品をまとめてきました。
皆さんいかがだったでしょうか?
それではお待ちかね、ルネサンス宝塚大賞の発表です!!
ルネサンス宝塚大賞・ミュージカル部門 発表!!
■ルネサンス宝塚大賞:星組『ロミオとジュリエット』
宝塚歌劇団が送る、歴代最強の海外ミュージカル再演シリーズ。
今年は礼真琴主演の『ロミオとジュリエット』。
事前の期待を上回る、さすがの一作でした。
中でも注目は、やはり愛月ひかるの死でしょうね。
ロミオVS死、あるいは死の運命に翻弄される若者たちという、
新たな物語性を引き出してしまったのだから。
そう演出してみせた小池氏と、
それを見事表現し切った星組生の熱演は、本当に素晴らしかったです。
また、配信放送を通して彼女がSNS上でバズったというのも、
まさに今年を象徴するヒットかなと思います。
なお、第2位は宙組『アナスタシア』でした。
いやー、最後まで大賞と悩みに悩みましたし、
私は本当にこの作品が大好きでBlu-rayとCDまで購入したのですが、
やはり脚本面での粗、説明不足な点が見られたのが少しだけ残念かな、と。
(仮に小池氏が演出していたらどうなっただろう、と空想してしまいます…。)
とはいえ、ヒロインの覚醒の物語と、
そんな彼女を導く中でヒロインだけの王子様へと進化を遂げる主人公という、
実に宝塚的な脚本と豪華舞台演出は、本当に素晴らしかったです。
これが宙組20周年から続く真風&星風コンビ、
最後の一作だというのが切ないところ。
コロナ禍でなければ、もっと多くの人に見て頂けたろうに…。
例年だったら大賞レベルだった宙組『アナスタシア』と、
それに出演した宙組生たちに、改めて賛辞を送りたいです。
作品が安定していた2021年
さて、便宜上ランキング形式で発表してきたわけですが、
最後に総括としてお話したいのは、
今年は突き抜けた駄作がなかったな、ということです。
正直、上位3作品(ロミジュリ、アナスタシア、桜嵐記)が飛びぬけて良くて、
あとは全部、組ファンなら楽しめるであろう
そこそこな作品だったと思います。
じゃあ私が何をもとにランキングしたかと言えば、
・原作を知らなくても一回で理解出来るか
・途中で眠くならなかったか
の2点。皆さんはどうだったでしょうかね?
2022年もオリジナル作品が続くようですので、
是非安定した舞台運営を続けて欲しいなと願っています。
次はレビュー部門です!!
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コメント
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。まあ、『柳生忍法帖』は、謎のご都合主義うんぬんは原作のほうが宝塚版よりはるかにトンチキだらけですので…
長大な原作の延々と続くトンチキに付き合っていると、私もそのトンチキに慣れてきて、宝塚版を見て「あ、こういうことか」とトンチキに埋もれていたテーマに気づくという・・・
私は『柳生忍法帖』は、主役のキャスティングに疑問がありまして。いかに礼さんが抜群の運動神経とは言え、小柄な彼女に剣豪役を振らずとも。新人公演のほうが十兵衛もおゆらもニンに合っていたと思います。
ホームズは、原作ファンならみんな気になるミッシングリンクを埋める解釈として興味深かったのですが、同人誌のノリではありますね。あと、真風氏は知的で優しくてカッコよかったですが、女嫌いで偏屈なホームズには見えない。これが江戸川乱歩の名探偵明智小五郎と女賊黒蜥蜴 とかだったらぴったりなのですが。途中でホームズを明智小五郎に脳内変換して見ていました。
やっぱり、キャスティングは大切ですね。
1位のロミジュリは納得です。個人的にはB日程の愛ちゃんの死の存在感は、シェイクスピアの原作では出てこない、これまでの宝塚での上演でもアレゴリーのバックダンサー的だった存在から、「メメント・モリ」の通奏低音を前面に出すことになり、作品の解釈としても興味深かったです。
いつも楽しみにしています!
fffはコロナの関係で観劇を断念し映像でしか見てません。それでも「ウエクミ、大変だったろうな〜」と思いました。
憶測の域を出ませんが、fffは劇団側から「ベートーヴェン主役、終わりは第九、ハッピーエンドね、はい作って!!」的なかなりの制約をつけられた上での脚本演出に見えました。
前のインタビューでストーリーは感情のうねりから書き始めると答えていて、fffは外枠が決まった上で中を埋める大変な作業だったように思えます。(それに合格点で応えるのが凄い)
この一年で退団公演2本の大仕事をした上田先生。ルネサンス宝塚大賞2021脚本・演出家部門で表彰して欲しいくらいです笑
私も今年一はロミジュリかアナスタシアです。アナスタシアは版権消えたっぽい?ので再演無さそうですね〜残念。
ランキング納得でした(といっても柳生は観てないので映像で見ます!)
柳生もシャーロック同様、原作柳生ファンも「良かった」と評しているSNSを見ました。エログロをどうするのかと思っていたらうまく回避してる!と絶賛(笑)
今年の宝塚正統ミュージカルもあり、漫画・小説原作もあり多くの「ご新規様」を獲得したのではないでしょうか。
コロナ禍とはいえ、配信を増やしたりして気軽にお家で見られることで「劇場に行くのはちょっと」という人にも良かったと思います。
1位と最下位、っていうのも、星組らしくていいですよね、マサさん笑!
卓越した技術の礼・愛月・舞空に、いろいろやらせてみたいと欲張る。だから当たり外れが大きい笑。
先日久しぶりにfffを見ると、オケピの演出に、胸がキュッと痛みました。激動の2021年、たくさんの素晴らしい作品提供をありがとうございましたと言いたいです。
他部門の発表も、楽しみにしていますね(新人賞は、うすうす予想がついてます笑)
トンチキトンチキと宝塚ファンはよく言いますが、「トンチキ」とはどのような意味なのでしょうかね?
少なからず作品を貶すような意味合いも持っているように感じます。
私は「柳生忍法帖」は原作を良くまとめられていて、見ていて頭も使わずただただ楽しい娯楽作品として、個人的にとても好きな作品でしたので、自分の評価も否定されたようで少々ダメージを受けました笑(ブログを見るなよって話ですね)
ランキングはとても楽しい企画だと思いますが、下位の作品が好きだった者からすると、それこそ決めるのは1位の「大賞」だけで良いのではないのかな〜と思いました。平和になりすぎて良くないでしょうか?笑
普段コメントなどしたことがないので失礼がありましたら申し訳ございません。流し見でも読んで頂けたら嬉しいです。
意を決してのコメントはありがたいのですが、せめて最初のルール説明をちゃんと読むなり、企画の趣旨をご理解頂きたいです。