星組の覚醒を見る・星組『ベアタ・ベアトリクス』感想

 

星組公演『ベアタ・ベアトリクス』をライブ配信にて観劇しました。

 

「怖い絵」シリーズで有名な中野京子氏の著書である

『美貌のひと』に着想を得たという本作。

西洋美術好きとしても非常に楽しみにしていました。

 

ライブ配信のため二次元的にしか見られず残念でしたが、

感想をさっくり(と言いつつ3000字超え)書いていきます。

 

星組『ベアタ・ベアトリクス』キャスト別感想

 

まずは各キャストについてさっくりと。

 

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ/極美慎

 

画家でもあり詩人でもあるロセッティ。

本作はそんな彼の人生の挫折と愛を彷徨う物語でした。

 

どうしようもないクズ野郎(当時の画家としては普通)なのに、

不思議な愛嬌で女性や友人たちを惹きつけてしまうのは、

まさに極美慎にピッタリ、というか、

彼女の圧倒的なスター性でこそ成立しうる役だったと言えるかもしれません。

 

そう、ついに彼女が真ん中に立ちました!!

早くから期待され、だけどなかなか殻を破れず、

礼真琴や愛月ひかるから「自覚を持て」と言われ続けた彼女が、ついに!!

 

ってことでとんでもないスター性です。

顔、スタイル、愛嬌、どれも最強だけどそれだけでなく、

実は卒無く歌えて、芝居もそこそこ出来ちゃう、

そんな抜け感も持ち合わせた令和的スターがここに爆誕!!という感じ。

 

少し顔芸が過ぎる(完全に紅ゆずるの系譜です)のが気になりますが、

星ファンの管理人いわく「そこが良い」らしいので、問題無いでしょう。笑

あと、人を殴る時のフォームが美しく早過ぎて感動しました。さすが極真空手家‼︎

 

リジー・シダル/小桜ほのか

 

ダンテの恋人にしてモデル。やっぱりMVPは彼女よな!!

最初は帽子屋で働く純真無垢な女性、

恋に喜び、訪れる悪い予感に震え、そして荒んでいく様、

この一連の流れが見事に表現されていました。

 

特に素晴らしかったのは、『オフィーリア』等の絵画表現の再現力。

輝きを持たない無機質な瞳を見て、

「あぁこれは絵を再現しているのだな」と一発で分かりました。

 

もちろん透き通った歌唱力も本当に素晴らしく、

デュエットでも極美慎を支えていました。

 

押し出す時は押し出し、控える時は控えつつ、それでいて実力百点満点。

これぞまさしく娘役力ですね、ブラボー!!

 

ジョン・エヴァレット・ミレイ/天飛華音

 

孤高の天才にしてロセッティのライバルとなるミレイ。

彼女はこういう捻た役が似合いますねぇ。笑

 

最初はツンツンしているかと思いきや、

あっさりロセッティと友人になり、そして事実上裏切ることになり、

さらにさらにパトロンの妻と駆け落ちしてしまうという役。

文字で書くとアレですが、つまり愛に飢えた感受性が豊かな人、なのでしょう。

 

彼女も極美慎に負けず顔芸が凄いのですが、

病室の場面、あの一瞬で泣き出したことに私はビックリしましたとも。凄い。

そしてそれ以上に、フィナーレでの伸びやかなダンスが素晴らしかった!!

 

極美慎×天飛華音の組み合わせも、

キラキラビジュアル愛嬌系とオラオラ技巧派系で最高!!

星組の未来はスーパーシャイニングって感じですね、眼福眼福。

 

ウィリアム・ホルマン・ハント/碧海さりお

 

ロセッティの気の良い友人。

MVPその2です。芝居面では完全に彼女が引っ張っていましたね。

 

いわゆる巻き込まれ系苦労人ですが、

なんだかんだロセッティを見放さず最後まで忠告してくれる良き友人。

 

それが彼女によく似合っていたし、

コロコロ変わる顔芸過ぎない表情の変化も、

よく通る声質での芝居やストーリーテラーの役割も、抜群に良かったです。

 

その他キャストについて

 

その他のキャストについてざっくりと。

 

まずは長が95期生のひろ香祐、素敵な挨拶お疲れ様でした。

物語のキーパーソンであるジョン・ラスキンとして、

出過ぎずやり過ぎない素敵な塩梅の芝居でした。

 

主人公の父役ガブリエーレ・ロセッティに朝水りょうパイセン。

今回はあまり表に出てこない役でしたが、

ワンポイントリリーフ的な感じで締められる存在感はお見事!!

 

主人公たちのアカデミーのお偉いさんに朱紫令真、極美慎の同期ですね。

重厚感のある芝居が得意な彼女、さすがの安定感でした。

 

いわゆる娘2格、主人公の第2のモデルであるジェイン・バーデンは水乃ゆり。

まさに彼女の正しい使われ方、でしょう。

歌わず喋らず、その美貌でデンと構える悪女(でもないけど)役。

セリフを発するとうーんとなるけれど、ドヤ感はさすが星娘という感じでした。

 

天飛ミレイと愛の逃避行をかますエフィー・ラスキン役は瑠璃花夏。

女のイヤな部分が出過ぎず、誘惑するでなくよろめくでなく、

ただ純真がゆえに不倫に走った感じが、良い塩梅で表現されていました。

 

碧音斗和はじめ仲良しトリオは、あえて没個性的にしたんですかね?

もう少し3人でキャラ分けしても良いのでは?と思ったり…。

 

気になったのは記者役の、たぶん羽玲有華?

天飛華音似のイケメン、芝居の口当たりも良いのですが、

もう少し押し出しが欲しいところ。顔は覚えたので今後に期待!!

 

あと、地味に出番の多かったのが、

主人公の部下にしてジェイン・バーデンの夫役の大希颯。

結婚後の芝居からは安定していて良かったです。

稀惺かずとと同期、果たして推されていくのでしょうかね?

個人的に気になった点

 

内容的には、普通に面白かったです。

時間軸の移動もスムーズで、最初の場面のリフレインなんてセンスが光っていました。

 

また、演出面がカラフルで見応えがあり、特に絵画表現が素晴らしく、

『オフィーリア』の再現なんて目を見張るものがありました。

(エリザの鏡の間を意識したのだろうか?)

 

…普通に面白かったがゆえに気になった点を2つ。

まずは、オープニングの追いかけっこが長過ぎたこと。

正しくは意味の無い描写が多いこと、です。

 

主人公たちが理由も分からず(観客に説明されないまま)追いかけまわされ、

その最中に失業者たちが「仕事をよこせー!!」と叫んでいたり、

謎の歓楽街に迷い込んで娼婦に誘惑されたり、そういう描写ありましたよね?

 

てっきり貧富の格差の中の芸術の在り方うんぬんみたいな話になるかと思いきや、

ここの描写は今後一切触れられることがありませんでした。

いらん伏線は話がこんがらがるので不要です。

 

むしろ、ここで天飛華音ミレイを出さんでどうする。

(配信なので見えておらず、実際出ていたらすいません。)

くだらない追いかけっこに冷たい一瞥をくれる天才児、

後の和解への伏線に繋がるし、2番手格の登場に相応しくないです?

 

もちろん、若手に場面を与えるためという名分があるのかもしれませんが、

バウ公演ですから全体的に出番が充分にありましたし、

むしろ他の部分含め5分削ってフィナーレ作った方が良かったのでは?と思います。

 

そしてもう1つは、話の主題が無いことです。

この話は何の話か?ロセッティの栄光と挫折の話、オワリ。

 

そうなんだけどさっ、バウ公演だからそれでも充分なんだけどさっ、

そこから浮かびあがる「何か」が私は欲しいのですよ。

 

つまるところアイデンティティの模索がテーマとして、

困った時は精神世界へレッツラゴーって、生田大和先生と同じなんですけど、

一歩間違うと「内容が無いよう」になりそうなので、

充分気を付けて欲しいなと素人ながらに思います。

 

ま、ずらずら文句を書きましたが、

これは面白かったがゆえにあと一歩惜しい気がする、という文句なので、

(本当にしょーもなかったら必死に良いところ探しする私)

内容としては、今の星組生の魅力がよく分かる素敵な作品だったと思います。

 

バウ公演に星組の覚醒を見る

 

そう、結局のところ、今の星組ってサイキョーだよね、

若手陣もこんなに素晴らしいスターがたくさんいるよね、ということが分かる、

そんな素敵な作品だったと思います。

 

全ツ公演に星組の最盛期の到来の予感を感じましたが、

バウ組もバウ組でみんな実力者ばかり、

かつ見た目も星組らしい華やかさで見応えがありました。

 

この2チームが合流する次作『ディミトリ』、

果たしてどうなっちゃうんでしょう?

星組の覚醒を改めて感じたこの数日間でした。次の大劇場も楽しみです!!

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    『ベアタ・ベアトリクス』、ラファエロ前派の画家の人生の話なのに、ロセッティやミレイの絵画そのものは舞台で見せず、ダンスで表現。

    演出の意図か、ひょっとしたら著作権上かなわなかったのかはわかりませんが、実際の絵画を客に見せてもよかったかもしれませんね。ラファエロ前派の絵はモナリザレベルに有名な絵でもなく、彼らの作品を知らずにこの舞台を見たら、画家の表現の苦悩より不倫の苦悩の印象が強くて、「よくある不倫の話だったね」になりそうで、

    エヴァレットの不倫の話まではあまり突っ込まなくてもよかったような気はします。

  2. ずんだもち より:

     配信を観ながら頭に浮かぶのは“スター誕生”。いやいやとっくにスターなのですけど。
    ほにゃほにゃかりんちゃんはそこにはいなかった!
     ラファエル前派の話は知ってはいて、ロセッティは好きではなかったのですが、“女にモテる”は極美 慎なら納得。その陰にあるコンプレックスや焦り、だらしなさをキラキラ感を失わず、よく表現していたと思います。 欲を言うなら、父親との確執がもっとしっかり描かれていたら良かった(例えばfffのベ-ト-ベンの少年時代) そこは演出の問題ですね。オ-プニングは長すぎ。つい時計を見てしまいましたよ。
    男の都合で生きるしかない、この時代の女性達の悲しみも描かれていたのは良かったとは思うけど、仰る通り芸術家の苦悩と、3カップルの悲劇とどちらがテーマなのかわからなくなりました。とはいえ面白かったし“オフィ―リア”の場面も美しく、熊倉先生デビュー作として良かったと思います。次作も期待!

  3. Miranda より:

    天飛ミレイは酒場まで出番はありませんでした!
    記者役の子、天飛華音くんと似てますよね‼︎
    すっごくイケメンでもっと出て欲しいと同意見です。

    チケット難が納得の素晴らしいお芝居だったと思います。
    星組最高!