原作ドラマを見て改めて・宙組『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』感想おかわり

 

宙組『HiGH&LOW-THE PREQUEL-』、

友人の結婚式のついでに宝塚大劇場で一度観劇。

その後、興味を持ったので原作ドラマのシーズン1を観てみました。

 

かくいう私はLDH興隆期と社会人デビュー期(人生で一番忙しい時)が重なり、

彼らに関する知識が一切無く、6人時代のEXILEで止まっているような人間。

 

そんな私がドラマを見て、東京版宙組公演を観たうえででの、

改めてのざっくり感想を書いていこうと思います。

 

【初見感想編はコチラ】

『HiGH&LOW』と宝塚の親和性

 

まず、前回の初見感想編で、

「前評判がイマイチだった割りに普通に面白かった」

とフォローのつもりで書きましたが、それを訂正します。

蓋を開けてみたら、普通に好評のご様子。

 

そもそも、素行の悪い男と病弱な女の運命の出会い、

あるいは縄張りを巡る男たちの抗争物語というのは、

ミュージカルをはじめとするあらゆる娯楽における古典のようなもの。

 

それが、現代かつヤンキー(でないけど)という設定に変わっただけで、

物語としては実にありふれた、様式美的なものだったと思いますし、

安パイとは言え普通に面白かったし、ちょっぴり泣けました。

 

さらに役が多く下級生にまで出番があり組ファンが楽しめたこと、

そして原作へのリスペクトが感じられる演出や役作りによって

原作ファンからもきちんと受け入れられていることから、

多くの層を取り込み、興行作品として成功の部類に評価出来るでしょう。

 

脚本の内容については初見感想で既に書きましたので、

今回は原作ドラマを見たうえでキャストについて触れていくと…、

まぁーみんな揃いも揃って再現度の高いこと!!

 

初見では、なんで亜音有星はあんなカワイイ顔してドレットヘア?

天彩峰里はヤンキーなのにオカッパスタイル?と思いましたけど、

ドラマ版を見たらビックリ、まさにそのまんまでした。笑

 

芹香ROCKYの狂人さ、鷹翔村山良樹のイきった小柄感も微笑ましいし、

なんなら構成員の皆さんもしっかりキャストを再現していて、

(なお私はドラマに金爆が出ていることを知らず、舞台を観たらそのままでビックリ!!)

細部に渡る人物像の再現に唸ってしまいました。

 

なお、今回のベストアクトは、桜木みなとスモーキーだと思います。

彼女の得意武器は「拗らせ美青年」で、

3番手昇格以降はシヴァーブリン、ベネディクト、アギラールと、

劇団もそういう役どころを当て飛躍を狙ってきましたが、

ついにこの自身オリジナルの役で花開いた印象です。

 

張り詰めた糸のような緊張感と儚さを合わせ持ち、

燃え尽きる直前の蝋燭の輝きのような生命力を感じさせる歌とダンスは、

原作キャストと自身のスター性を融合させた、見事な表現だったと思います。

 

また、オリジナルキャラであるヒロインの潤花カナも良かったですね。

主人公をキミ呼ばわりするおもしれー女を、

あんな嫌味無く演技出来るのは彼女のスター性ありきだと思います。

 

総じて「全員主人公」を歌う『HiGH&LOW』の世界観と宝塚の美意識は、

意外と親和性が高いのだなと本作を見て思ったのでした。

 

ドラマを見たからこそ分かること

 

また、原作ドラマを見たことで、

初回観劇した時に引っかかった「ん?」ポイントが、

きちんと意味の有る原作リスペクトであることに気付き、

腑に落ちたこと多数ありましたので、いくつか挙げていきたいと思います。

 

まず、鷹翔千空演じる村山良樹が一切本筋に絡まない問題。

原作では主要キャストだからポスターに載せといて、

出番がほぼ無いなんて酷いやんけ、と私は初見時に思ったんです。

(留依蒔世演じるリンの方がよっぽど出番や見せ場が多いですしね。)

 

けどこれ、ドラマシーズン1の最初の中ボスが村山良樹であり、

作中で主人公率いる山王連合会が初めて彼とぶつかるシーンがあるため、

前日譚である本公演で直接出会うわけにはいかなかった、

という立派な理由があったのでした。

 

また、唐突な舞踏会、炎上しまくる街、「出ちゃった(ハァト)」などなど、

およそ現実世界が舞台とは思えないトンチキな展開も、

原作がそういうノリの作品だから許されるし、

場面を「一方その頃」で繋ぐ手法、舞台前半のお寒い(褒めてます)日常パートも、

原作そのまま、というのも面白かったです。

 

あと、コブラとカナが語り合う高架線(?)も原作ドラマに出てくる、

というか主人公たちの思い出の場所として登場していて、

それを舞台再現、かつ本作のキープレイスにしているあたり、

「野口先生、本当にハイローが好きなんだな」と思ったのでした。

 

たぶん、他にも色々な小ネタが差し込まれているのでしょうけれど、

いかんせんドラマシーズン1までしか見ていないので拾いきれず…。

きっと原作ファンはそのあたりも楽しいんじゃないかなと思ったのでした。

 

個人的最大の評価ポイント

 

そして本作における個人的な評価ポイント、

それはどれだけトンチキ展開を見せるヤンキー物語だったとしても

「カタチあるものは永遠じゃない」という、

実に普遍的なメッセージ性が込められている点です。

 

友情も愛情も人間そのものも永遠じゃない、だから今を一生懸命生きよう。

それが荒んだ世界で生きる登場人物たちとタカラジェンヌが同化し、

若者抗争物としてちゃんとカタルシスが得られる中に差し込んでくるあたり、

大劇場デビュー作品なのに、野口先生やりよるわぁ。笑

 

ということで、やっぱり私は野口先生スキーなんだなと自覚した宙組鑑賞でした。

このまま無事千秋楽まで全日程公演出来ることを祈っています。

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    「余命わずかな少女のために奔走するイケメンの話」

    これを柴田ワールドの世界観でやったら、さすがに宝塚でもベタな話過ぎて、ちょっとそのままやりづらいところを、

    イマドキのLDHの音楽や、ヤンキーの風俗という宝塚界隈では目新しい意匠で包むことで、また新鮮に見られる、という印象はありました。

    ただ、ロミジュリの大公様抜き、ウエストサイドストーリーのクラプキ巡査どの抜きで、ひたすら喧嘩できる!ひゃっほう!

    おいおい禁じ手だろう!設定が、平気で横行しすぎな世界観だよなあ、という思いはあります。

  2. ずんだもち より:

    「ハイロー」 ムラも東京も大盛況のようで、野口先生おめでとうございます。
    私は公式もクレカもチケットサイトも木っ端微塵(何の呪い?)あえなく配信待ちとなりました。
    幕開きの大階段の場面、劇場で観たらガツンとやられそうですが、映画館では‥。ウワサになっていたルードボーイズのダンスもどこがアクロバティックなのか、全くわからず。
    画面の切り取り方が悪いのか、つまらないわけではないが、全体的にのっぺりした印象で、「ふうん」くらいな感想です。もしかしたら劇場で観るのと映像で観るのと全く違ってしまう作品なのかも知れません。(悲)
    円盤に編集されたら改善される?
    よくわからないまま、プログラムとブロマイドは買いに行こうと思っている、ウエクミ先生に最も嫌われるタイプのファンになります。笑

  3. パクチー より:

    初めてコメントさせて頂きます。いつも楽しく拝見しております。もともとライビュや配信、円盤で宝塚に触れていた中、ハイローファンだった訳でもないのですが、ご縁があり宙組大劇場公演デビューが本作となりました。
    誤解を恐れずに言えば、宝塚作品にしばしば現れるわざとらしさやあえての野暮ったさ・スター主義であるがために物語の細かい辻褄や文学性などが二の次にされがちな点など、歴史と伝統あるジャンルのひとつの「スタイル」を舞台上で大真面目にやるスタンスに、ハイローと通じるものが多くあり非常に親和性が高かったと感じました。
    ただ、舞台を見ながら引っかかってしまう箇所が作品しての欠陥なのか、ハイローのノリなのか宝塚歌劇のノリなのか識別できないとうまく頭と心の折り合いがつかず楽しめない部分はあるかと思います。ハイローを「ヤンキーが喧嘩する物語」とだけ認識して観劇すると疑問が残る方が多いのではないかと感じました(とはいえヤンキーの喧嘩が共通点のロミジュリのオマージュまで入っているのがニクかったです、全く性質の異なる作品なのに!)。
    それでもコブラとカナの恋愛を上手く展開させ、軸となるメッセージを通し、ハイローの美味しいシーンや演出を盛り込み、宝塚的トンチキとハイロー的トンチキを適度に配置し、苦邪組と各チームの頭の胸踊るバトルシーンを最後に配置して、勢いよく大きなロゴの幕が降りて客電がついた瞬間には爽快感すら残る作品に仕立てた野口先生の手腕に感動しましたし、真風さんの立っているだけで全て納得させる説得力とスターオーラ、潤さんの天真爛漫な可愛らしさ、組子の皆さんのほどばしるパッションが生み出す舞台上の異様な圧あっての本作だと感じずにはいられませんでした。
    今後とも更新を楽しみにしております。人事についてはまだ知識が浅いため、引き続き蒼汰様の考察を通して勉強させて頂きます。

  4. より:

    元々HiGH&LOWのファンで、宝塚ファンの方の今作への感想を探してこのブログに辿り着いた者です。
    まずはご多忙の中、原作ドラマシリーズの視聴をしていただき本当にありがとうございました。原作を見てより理解ができたとのことで、原作ファンとして喜ばしいかぎりです。
    こういった原作からのネタを丁寧に解説をしていただけるようなブログによって、少しでも理解していただける方が増えることは、原作ファンとしてとても嬉しく思います。その一助になっていただき感謝の言葉もありません。

    私は宝塚やキャストの方のことを今作公演決定まであまり存じ上げなかったので、キャストの方の特性と合わせたご感想を拝見できたのがとても勉強になりました。今回の作品のより深い理解に繋がったと感じています。
    また桜木みなとさん演じるスモーキーを「拗らせ美青年」役と断じた筆者様の感性、なるほどと思うと同時に素晴らしい感性をお持ちだと思いました。
    初見感想のほうも拝見しました。ハイローの世界が初めての方にはこう映るのかと新鮮に感じる部分も多く、ハイローに新たに触れていただく方へのフォローに役立てようと思います。

    また、初見記事含め素晴らしい記事を書いてくださったおかげで筆者様の考えだけでなく、コメント欄からも様々な見方、考え方を拝見することができました。
    何よりも、原作を見てより楽しんでいただけた声が拝見できてとても嬉しかったです。そのことがこのコメントを通じてお伝えできれば幸いです。
    素敵な記事を本当にありがとうございました。