検証・愛月ひかるにトップへの道筋は無かったのか

 

そういえば、そもそもこのブログって、

起きた人事の事象について、その理由を考察するのが主目的だったはずなのに、

最近は全て攫ってしまった結果、

予想ゲームばかりしているなと今更ながら気付きました。笑

 

本日は久しぶりに妄想度高めにお届けします。

題目はずばり、愛月ひかるにトップへの道筋はなかったのか、です。

 

宙組時代の愛月ひかるを思い出す

 

今でこそ星組の人気スターとして燦然と輝き、

その退団が惜しまれている彼女ですが、

宙組時代の彼女は、今一つ伸びきらない印象でした。

 

新人公演を4回も主演、そのまま研8でバウ単独主演、

研9『王家に捧ぐ歌』で初めての階段一人降り。

 

まさにザ・御曹司系スター様だったわけですが、

なぜかいわゆる「劇団は推すと決めたら全力で推す」という程の圧も無く、

(同期の彩風咲奈に比べればその勢いは歴然)

だけど成り上がるには歌や滑舌といった舞台技術も、うーむ、という感じ。

 

続く『HOT EYES!!』で伶美うららと2人降りに一旦戻り、

その次が運命の『エリザベート』ルキーニ役、当時研10です。

 

皆さんご存知ルキーニ伝説。

それは、この役を演じた男役は、

全員トップスターになっているという事実。

 

この時点で劇団は、彼女を絶対にトップにさせるつもりだった、

とは言えないでしょうけれど、

少なくとも全力で期待はかけていたのだと思われます。

 

ところが、ここが決定的な一打だったのかもしれません。

それは、残念な意味の方での。

 

続く『VIVA! FESTA!』『クラシカル ビジュー』

『シトラスの風-Sunrise-』と3番手羽根を背負わせて貰えず、

さらに同期の芹香斗亜に降られるというのが、劇団からの答えでした。

 

当時の私も「ルキーニやったのに伸びきらんな」と感じていたし、

実際、同様に感じた人も多かったんじゃなかろうかと思います。

 

そしてそれは、昨今のインタビュー関連を読むにつけ、

どうやら本人も自覚していた様子。

たった一回のチャンスに応えねばならぬ残酷さを、改めて実感しますね…。

 

95期VS93期の熾烈な争い

 

裏を返せば、少なくともこのルキーニの時点で結果を出せていれば、

彼女のトップスターへの道は切り拓かれていたかもしれない。

 

ってことで芹香斗亜に落下されないifを仮定してみましょう。

芹香斗亜が宙組に行「け」ないとすれば、

彼女は花組でトップに就任することになります。

 

そうなると何が一番問題か。

それは柚香光と礼真琴の同時就任イベントが発生しなくなることです。

 

この2人はずっと、ずーっと同じタイミングで育てられてきました。

だから片方だけ先に就任するなんて、

イベント好きな当時の小川理事長が逃すとは考えられません。

 

じゃあタイミングを合わせるために、

星組に美弥るりかあたりに落下して貰います?

理論上は確かに出来ますけれど、それは無理な話でしょう。

だって他のどのスターより、当時の95期2人の勢いは凄かったですから。

 

そもそも、芹香斗亜が宙組に組替えした理由は、

柚香光と愛月ひかるのどちらを先に2番手に上げるかを考えた時に、

柚香光が優先されたからに他なりません。

(『ポーの一族』や『オーシャンズ11』の配役についてはどうとでもなる、として。)

 

裏を返すと、柚香光と礼真琴の同時就任というイベントに、

芹香斗亜すらも圧し負けたとも言えるわけです。

なので芹香斗亜の宙組行きは、ほぼ確定項の未来だったと思います。

 

とならば、愛月ひかるはどこかに異動せねばなりません。

花組と星組は無理、雪組は同期の彩風咲奈がいる、

じゃあ…月組しかありませんね。

 

愛月ひかる・月組トップ考

 

では、当時の月組はどうなっていたか?

愛月ひかるがルキーニで苦しんでいた、まさにその最中、

外箱で『アーサー王伝説』が上演中、これは珠城りょうのプレお披露目公演です。

 

なので有り得るとしたら、ルキーニでの成功を手にし、

月城かなとの代わりに『All for One』から合流する、でしょうか。

うん、確かにこれは出来そう。(その場合、美弥るりかは暫定2番目で誤魔化しでしょうけど。)

 

…と、記事を書き始めて、今気付きました。

この時点、つまり2017年夏で既に、愛月ひかるは柚香光や礼真琴はおろか、

月城かなとに序列で負けてしまっているのですね。

なぜなら月城かなとは、続く『BADDY』ですぐ3番手羽根を背負うから。

 

けどそれは結果論に過ぎません。

何故なら、当時の彼女には「悲願の宙組生え抜きトップを目指す」という情勢が

少なからずまだあったからです。

 

けれどその悲願を達成するだけの勢いを、

宙組時代の彼女は最後まで得ることが出来なかった。

 

月城の代わりに月組に行けなかったこと、

そして悲願の宙組生え抜きトップという呪縛に囚われたこと、

それが結果的に、路線としての命取りになってしまったのでした。

 

ちなみに、愛月ひかるが専科異動したタイミングである、

博多座公演『黒い瞳』の後に月組へ組替えする、

つまり鳳月杏の代わりに『I AM FROM AUSTRIA』で2番手として合流する、

というifも、理論上はあるかもしれません。

 

けれどこれは、一度路線レースで先んじられた、

月城かなとを再び抜き返すというわけですから、相当なヒットがないと難しい。

つまりこれも、おおよそ無理筋だったと言えるわけです。

 

5席しかないトップの座を争うということ

 

そもそもトップの座は5つしかありません。

月組は94期の珠城りょうが規格外の速さで座った、

雪組は93期の彩風咲奈に座らせようと着々と計算していた。

 

残りの3席を芹香、愛月、柚香、礼の4人が争い、

さらにそこに月城かなとまで食い込んできた。

 

なので愛月ひかるがトップに立つには、

少なくとも他の4名に競り勝つほどの劇団の御曹司的推しを得るか、

他を納得させる程の人気や実力がなければ、難しかった。

 

それは『ロミオとジュリエット』で跳ねるくらいじゃ、遅過ぎた。

そのラストチャンスが、結果的にルキーニだった。

 

こう振り返ると、やはり研10あたりが、

路線としての将来を左右出来る最終タイミングなのかなと実感しますね。

 

退団を選ぶという決断

 

あるいは、北翔海莉よろしく専科で何年か待ち続けていたら、

もしかしたらトップの道が拓けたかもしれません。

 

…けれどそれは残酷なifです。

専科は次にいつ舞台に出演出来るか分からない孤独な闘いであり、

それよりも彼女は星組で2番手として「3作で退団」という

劇団でよく聞くフレーズ(つまり契約)を選びました。

 

そして今、多くの人に惜しまれ、

彼女の悲願であった『うたかたの恋』をサヨナラショーだけでも演じ、

精一杯の花道を演出して貰えて去っていくのは、

それはそれで一つの美しき幕切れだとも思うわけです。

 

悲願の宙組生え抜きトップという呪縛から解き放たれ、

やっと彼女の魅力が花開き、

多くの人の心を打つ舞台人になったことを、本当に嬉しく思います。

 

最後の一日まで彼女がタカラジェンヌとして輝けますように。

私もその雄姿を、目玉かっぴらいて観に行ってきます!!

 

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コメント

  1. 美椒 より:

    いつも冷静な分析、素晴らしいと感嘆しています。
    今回も…

    私は愛月ファンではありますが、このような理論的なお考えには膝を打つものがあります。愛月ご本人には耳の痛い分析かも、ですが、心当たりがあるかもしれませんね。

    結果、トップにはなれなかった彼女ですが、この退団に向かっての本公演のみならず、スカステや歌劇、グラフの掲載、WOWOW、新聞各社の掲載、ディナーショー、衣装の新調…劇団は愛ちゃんにかなりの厚遇を用意したように思います。ありがたいことです。他の方の退団時の状況は知りませんが。
    私のように有り難く思っていらっしゃるファンは他には少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

    何より愛ちゃん本人が楽しそうに幸せそうに、ディナーショーでも、画面上でも見て感じられること、ファンの一人としてホッと安心していますし、うれしく思っています。
    おっしゃる通り、トップの椅子の数は決まっているのですから、その中での最善を尽くしたのだと思いますし、過去を考えると、本当によくがんばったと思って、彼女には拍手喝采です。

    蒼汰さんのようなフラットな感想を書いてくださるブロガーさんは珍しいように思います。ありがたいことです。
    これからも、冷静で、クスッと笑わせていただける文面、楽しみにしています。
    愛月が退団しても、拝見させていただきますね。

    「愛月ひかるが通りますよ〜…」は秀逸でした(笑)

  2. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    もう、ifを言い出すと、もしも愛月ひかるが宙組配属でなく〇組…

    現在も宙組の御曹司たちが、宙組時代の愛月ひかるよりも歌唱力や滑舌の面では問題ないのに、宙組時代の愛月ひかるみたいになっている問題。

    お店は客の、スターはファンの欲望が育てる。スターは組ファンの「こんなスターになってほしい」欲望に応えようと努力する。

    これは、宙組の組カラーというより、宙組の組ファンのカラーが、落下傘2番手に伴って他組ファンが次々流入することにより、ファンの求める宙組「らしい」スター像が定まらないことも一因では。

    花組や星組みたいに、最も歴史ある花組らしい、少女歌劇のスタアのかほりがする柚香、星組以外では路線たりえたのか謎だが、星組だから存在できた紅子のようなスターを生む土壌が、

    まだ耕されていないのか、スターにスター性を与える客の欲望という肥料の配合が定まらないのか。

    新人公演配信で、他組ファンでも新人公演を気軽にリアルタイムで視聴できるようになりました。5組のファンの眼で宙組の新スターを見出し、応援しましょう。

  3. ハンペン より:

    宙組初生え抜きトップを待ち望んで新人公演はほぼ生観劇しています。見た目麗しいので100周年以前の基準ならトップだったかもです。

    振り返って見ればルキーニの前の段階でトップ公演博多座の方へ桜木さんが行ってしまっていたので、ヤバイのではないかと素人でも思うのでご本人も気負われたのではないでしょうか。

    昔から3番手羽は強いと言われていました。北翔さんも3番手羽を背負われた後に行かれトップへとなられたので、頑なに羽を背負わせなかったことには意味があるのかもしれません。

  4. ぽんさん より:

    こんばんは。
    読みながらなんか泣けてきました。
    あたしは愛ちゃんの大ファンですが彼女が宙組時代燻ってるのを見ていましたので…。専科異動が決まった公演の異人たちのルネサンスからは、愛ちゃんは随分と実力をつけてきました。専科時代唯一出演した星組のアルジェの男で礼真琴との相性の良さを買われたかどうかはわかりませんが、そのあと星組に異動し、三作で退団。
    今回の二番手での退団、異例な厚遇振りだったのは、間違いなく途中まで愛ちゃんは宙組初の生え抜きトップ候補だったのは間違いなかったのでしょうね。。。愛ちゃんのルキーニはそこまで酷いとは思わなかったんですが、、、小池先生的にはナシだったんでしょうかねぇ。。。
    トップにはならなかったけど、人外的で怪しい役柄をやらせたらピカイチだったし、何より愛ちゃんは星組にとてもfitしていた。。。26日まで全力で彼女と彼女を受け入れてくれた今の星組を応援したいと思います!

  5. 五條 より:

    なるほど月に行く可能性は考えもしませんでした。その場合、月の朝美や雪の月城の運命も変わってたんでしょうね。
    多人数が流動的に動いて、誰かの退団あたりでボンヤリと判明する、という流れが毎度面白いですね…って他人事だから言えますけど、当の本人とファンはたまったもんじゃないかもしれませんw 93期3人を同時期にトップで揃えるという計画もあるいはあったのかも。その計画はズレて95期に引き継がれたのかな、と感じます。
    愛月退団後に星の3〜5番手は誰が務めるのか。瀬尾は羽根を背負えるのか(水美と異なりDS踏んでないんですよね)。宙の真風はいつ辞めるのか。後任は誰か。星と宙は来年大きく動きがありそうでそっちも楽しみです。アンバサダーメンバー大シャッフルとか以前なら平気でやりそうなんですが、今は反感気にしてやらないかな?

  6. orange芋 より:

    愛月さんは大器晩成型だったんでしょうか。
    私は愛月さんの魅力に気づいたのが最近だったので退団が非常に寂しいです。
    下級生にも宝塚愛ゆえの厳しさを見せているような雰囲気や、スカステ内での静かなお喋りも全部好きです。

    他の方も書かれていたように、今月はまだ歌劇しか読んでないのですが歌劇が「愛ちゃん号だな」と思いました。朝美さんの表紙が嬉しくて買ったのですが愛ちゃん号で中身も読み応えがありました。

  7. May より:

    とても個人的な見方になりますが、ルキーニで比較するなら、愛月ルキーニと月城ルキーニ、いずれも「超大当たり」でなかった度では大差ない気がしてしまうのですけどね。。お二人ともそつなくこなされていたと思います。月組は、メインどころがニンでないキャスティングの中で、比較論で健闘したと言えるかもですが。
    やはり蒼汰様のお書きの通り、2017年時点で月城さんの優先度の方が上に来ており、そもそも月城さんはルキーニ前である程度路線が固まっていたから影響なかったという考え方になるのでしょうね。その後に怪我があってもこうしてトップに立たれたわけですから。月城さんの、現代的な柚香・礼と差別化できる端正な魅力、美貌、芝居力、破綻のない歌唱、和物適性が事業戦略的に買われたのが大前提ですね。(書きながら、あれ、これ、龍の宮を経た今の瀬央さんならば一定程度は当てはまりつつあるのでは…?と思いました)
    もはや、正統派の和物をこなせる人材が月城さんと、ぎりぎり彩風さんをおいて他にいないから、月城さんは必要なんですよね。彩風さんは相手役が和物バッチリなのが底上げされます。バロクロ、柳生、和物といえば和物ですが……………………ファンタジック要素がないとね…
    メディア露出の増えた現代において、かつて愛月さんの対人における不器用な少女めいた語りに不安を覚えていたことを振り返ると、芸よりもそちらのほうがトリッキーだったかな、と思ったりもしました。

  8. まんだ より:

    すっと腑に落ちる考察でとても楽しめました。
    愛月ファンとしてはトップに立つことを期待する一方で、その姿をイマイチ想像しきれないモヤモヤした感情がありました。
    最後のひと伸びをしきれなかった、あるいはそれが遅かったこと。本人もそれを感じ納得しているであろうこと。
    星組に来てから感じたあの余裕のある色気はすべて受け入れたからこその姿だったのかもしれませんね。
    最後にこんな素敵な形で退団していく姿を見られて一ファンとしてはとても幸せです。

  9. 12がつ より:

    歌劇の演出家からの言葉からも、GRAPHでの真風さんとの対談からも、不器用だったと言われる下級生時代も今も、またどんな道を歩いていても変わることない愛月さんの、大きな宝塚への愛と、真摯に努力、考え続けてここまで来られた姿に感動しています。
    私は神々の土地のラスプーチンが本当に大好きでした。
    正統派とか宝塚らしさとして求められているものと、ひとつの作品の完成度をあげる舞台人としての役割を突き詰めれば、その評価が路線として皮肉なものになってしまったのかもしないけど…
    卒業は意外でした。今の星組には、なくてはならない異分子であり、明日海りおさんや望海風斗さんのような、宝塚オタクだったスターが卒業して、受験まで宝塚を知らなかったスターが活躍する時代に、宝塚が好きで好きで、理想的な男役スターのビジュアルを天から与えられていた愛月さん。
    タラレバを思い描けばキリがありません。
    卒業しても次の日にはSNSを開設し、なにかと制約の多い現役時代以上に、OGの舞台での活躍の場が前理事長によって整えられているいま、もっと長く現役でその姿を観たかったと思うことがご本人の幸せなのかはわかりません。
    卒業はご本人が、考えて決めたこと、その発表後のお仕事を見ていると、とても清々しくお幸せそうで…
    残念だなと惜しむ気持ちを餞に、卒業を祝福しようと思います。
    愛ちゃん、ありがとう!!

  10. つきこ より:

    いつもながら、冷静な分析、納得いたします。私は、そうたさんのご意見に加えて、そもそも、トップスターに6年近く在籍すること自体が、他のタカラジェンヌのトップ就任の道を阻んでいる原因の一つだと考えています。
    どんなに人気があってファンが望んでも、同じ人が5〜6年も居座り続ければ、マンネリ化は否めず新鮮味が失われます。長くても3年程度に止めるべきなのではと考えてしまいます。