シャンドン伯爵という難役【雑記】

先日、スカイステージにて雪組公演『ファントム』の役替わり公演、

すなわちアラン・ショレを彩凪翔が、

シャンドン伯爵を朝美絢が演じた版が放送されましたね。

 

私は幸運にもどちらの公演も生で観劇しておりまして、

このヴァージョンを見るのは実に1年半ぶりになりますし、

Blu-ray版を擦り切れるほど見ている私としては、

見慣れていないからか実に新鮮で面白かったです。

 

この半年間で『ファントム』全公演放送が行われ、

過去4つの公演を含めて見て思うのは

シャンドン伯爵って難しい役だなぁということ。

 

本日はそんなシャンドン伯爵を通して考える、

男役の在り方についての雑記です。

 

シャンドン伯爵の適性

 

過去、本公演でシャンドン伯爵を演じたのは以下の6名。

皆さんはどのシャンドン伯爵が好きですか?

 

安蘭けい/宙組公演/研14

真飛聖/花組公演/研12

愛音羽麗/花組公演/研15

朝夏まなと/花組公演/研10

彩凪翔/雪組公演/研13

朝美絢/雪組公演/研10

 

再演の多い公演とは概して皆さんの趣味好みが分かれますので

一概にどのシャンドン伯爵が良いとはもちろん評価出来ません。

 

が、私の好みで言うならば

ベスト・オブ・シャンドン伯爵は真飛聖。次点で彩凪翔かなぁと。

 

シャンドン伯爵とは、オペラ座のパトロンの一人で、

シャンパンで財を成した実業家。

品の良い紳士だがプレイボーイで美しいものに目がなく、

可愛い娘に声をかけてはコレクションのようにオペラ座に送り込む。

 

この紹介文だけ読むと、結構なクソ男っぽく見えるのですが、

物語を通してクリスティーヌに真剣に惹かれていき、

地下深い墓地まで果敢に彼女を助けに行こうとします。

 

そして最後、ファントムの死に泣き暮れる彼女をそっと抱きしめるも、

恋敵に勝てぬと悟ったのか、そっとその場を立ち去っていくわけです、が。

 

宝塚におけるシャンドン伯爵に求められる適性とは、

前半のクソ男っぷりを打ち消すキラキラオーラだと私は思うのです。

 

やってることはクソだけど、

それを感じさせないのが宝塚的美意識による世界観であり、

典型的宝塚の白い役でありながら、

その表現(キラキラ)力が問われる難役だと言えるでしょう。

 

それが上手に演じられているのが、

個人的には真飛聖と彩凪翔かなぁと思うわけです。

 

キラキラ芸にも修行と経験が必要

 

面白いのは、シャンドン伯爵はキャラ的に、

演じるスターが若ければ若いほど良さそうなのに、

決してそういう結果になっていないことだと思います。

 

例えば花組版・朝夏まなと。

当時の彼女はバウも東上も済ませた花組の御曹司。

長い歴史で見れば1年後に宙組へ組替えを控えたスーパースターですが、

とはいえ今作ではこの大役をモノに出来ていない印象。

 

歌も芝居も安定していないし、

挙動もちと不審に見えるなぁというのが正直な感想です。

 

同じく朝美絢。

彼女はやはりレジスタンス気質なので

白い王子様ってあんまハマらないんだなぁとつくづく思いますね。

 

クリスティーヌを救出に向かう際、

梨花ますみに「地下で何が起こるか分かりませんよ!!」と警告され、

一言「分かっている」の決意の表情なんて

「なんか企んでるのか?」と突っ込みたくなるくらいの悪顔。笑

(ファンとしてはそういう彼女が好きですけどね。)

 

2人とも、顔立ち的にもキャラ的にもハマりそうなのに、

意外と似合っていなかった。

というよりモノに出来ていなかったという方が正しいのかもしれません。

 

キラキラ芸ってただ発光しているだけではなく、

修行と経験が必要なんだということがよく分かります。

2人とも、上級生の愛音羽麗、彩凪翔の方に分があったなぁという印象です。

 

逆に、安蘭けい演じるシャンドン伯爵なんかは

朝美絢と同じ「企んでる」系に見えますけれども、

ただのプレイボーイの紳士ではなく、

実業家として成功した「頭の良さ」との調和が見事ですよね。

 

このあたりの昇華力も、

実力と経験値の差なのかなぁと思ったりします。

 

難しい歌をモノにする以上に

 

最後、シャンドン伯爵の歌について。

これが結構難しいようで、

正直、みんなあまり上手に歌いこなせていない印象。

 

これは完全に好みですが、それでも一定レベルに聞かせられていたのが

個人的には真飛聖かなぁと思っておりまして、

なので彼女は私の中のベスト・オブ・シャンドン伯爵かなぁと。

(そもそも演出の違う安蘭版は別物として考えています…あのミュージカル全開な世界観も素敵ですけどね!!)

 

次点である彩凪翔は、もう全く歌えていないんだけれど

その歌えていない様すらも可愛らしいというか、

それを打ち消すほどのキラキラと気品で佇んでいるというか、

そんなトータル的男役芸が楽しめるので好きです。

 

ということでシャンドン伯爵だけで三者三様、

比べて見るからこそ分かる面白さかが、再演物にはありますね。

 

全作レビューを書くと言いながら、

蘭寿版で筆が止まっているので

頑張って書こうと思います…という近況報告でした。

 

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コメント

  1. abbie より:

    凪翔のところ、ニヤッとなりました!
    ほんと歌は残念なんですけど、気品ある佇まいで大好きな男役さんです。

    彼女の、トークなどから垣間見られる温厚そうなお人柄が更に好きで、かつてマリコさんが好きだったのも、やはり仄々としたお人柄があってのことでした。

    2人とも気品と包容力がある男役さんで、宝塚にはこういう人たちが必要だなとつくづく感じます。

    昨今モテ囃されているように感じるオラオラ系の男役芸も、なんかちょっと履き違えてやしませんかと疑問を感じるときがあります。
    オラオラした感が、ただのチンピラにしか見えない方もいて失笑してしまうことも侭あります。

    気品がないと貴族の役は厳しいかなと思います。

  2. ロット より:

    久々にコメントさせていただきます。

    安蘭さんのシャンドン伯爵役ですが、当時、私は宝塚から
    遠ざかっておりまして、友人が言うには、安蘭さんにとっての
    シャンドン伯爵役はトップスターへの道が確定した役だったと
    当時言っていたのを思い出しました。

    当時は新専科時代だということもあり、星組の2番手なのか、
    トップに果たしてなれるのか?と微妙な位置でもあった訳ですが、
    アイーダ役の熱演、『雨に唄えば』も大好評で、さらにシャンドン伯爵役で、正統派2枚目もまだまだ演じられる!と証明できての
    トップ就任だったのではと。友人はシャンドン伯爵役を見て
    トップになれることを確信したと言ってました。

    当時はそのまま、宙組でトップになるのではと噂にもなりましたしね。トップコンビは雪組で一緒に過ごしたお二人でしたし、引継ぎにも相応しいなんて。

    • みき より:

      いつも楽しく読ませていただいています❗

      シャンドン伯爵、私は今までのファントムでは今一良く分からないけれど役柄と思っていて、どれもピンときませんでしたが、彩凪シャンドンはぴたりとはまりました。
      気品、優しさ、熱さも兼ね備えていて、かつ爽やか。それでいて嫌味が全くないのは、本来のお人柄が反映しているのだと感じさせました。歌は決して達者ではありませんが、こういうプリンス系男役は宝塚ならでは、で欠かせません。
      金髪もお似合いで、友人とまるで生えているような金髪、と話していたものです笑

      コロナで公演スケジュールも変更が強いられていますが、彩凪さんの外箱主演が是非実現することを願っています。

  3. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。スカステ専科の地方民です。

    最近は外部のミュージカルや舞台も、ゲネプロの模様がネットで配信されたりして、地方民にはありがたい時代ですね。

    2019年の東宝版「ファントム」のゲネプロ動画などを拝見しただけですが(最近はミュージカル界も、2.5次元で鍛えられた、歌えるスタイル良しイケメンが進出して、宝塚の男役さんもうかうかしてられませんな)

    で、外部でリアル男性がやるならシャンドン伯は、成りあがり男の野心や、下心や、「嫌なところ」を表現しないと「リアリティが無い、ウソゥ」と言われるのでしょうが、

    宝塚の路線がやるからには「やな男だったね」だけではすまないから難しいですよね。

    なんだろうな。私も歳を取ってきて、世の中も人生も、清くも、正しくも、美しくもないことは重々わかってきて、

    でも宝塚ではリアリティを超えた、というか濾過した、というか、どこか根っこに「真・善・美」があってほしいんだなあ。それが無いとかえって「ウソゥ」と思っちゃう。

    いやー男役芸のリアルって奥が深いですね。

    • ほり より:

      いつも楽しく読ませてもらってます。私は朝美ファンですが、確かにシャンドン伯爵は、凪様素敵でした。朝美さんと、凪様は顔の系統似てるようで持ち味は本当違いますね。朝美さんのシャンドン伯爵は野心が垣間見える感じでした。(それはそれで好きですが。笑) ですが、その役作りもまた他と違って面白く、再演物を観る上での楽しみですね!朝美さんは、ショレの方が好きだったかな~(凪様は断然シャンドン伯爵)ショレの役作りが半端なかった。笑  割とシリアスな作品ですが、ほっこりする良い味出してましたね。 

  4. シュテファン より:

    いつも興味深く読ませていただいています。

    生で観られたのは雪組さん2パターンのみで、あとは映像で見ました。
    私も一番お気に入りは真飛さんです。私の中では、キラキラの中にも落ち着いた貴族の気品があったのは真飛さん、愛音さん、彩凪さんですが、中でも、前半のちょっとチャラ男っぷりも似合っておられると感じたのが真飛さんです(星組仕込み?)。
    ちなみに雪組バージョンではシャンドンは圧倒的に彩凪さんが好きで、朝美さんはギラギラしていて、持ち味が違うと感じました。ちなみにショレは朝美さんの方が好きでした。年齢じゃないんですね。

  5. はっちゃん より:

    真飛さんのお名前が出てきて嬉しくなりました!ありがとう。

  6. ことり より:

    いつも楽しみに拝読しております。
    はじめてコメントさせていただきました。

    王子様系が大好きなのですが、シャンドン伯爵は本当に難しいお役で、今まで納得したことがありませんでした。トータルでは私も真飛さんが1番なのですが、個人的に男役としての真飛さんは特別ファンではないだけにモヤモヤしていました。

    そんな中、新人公演の彩海さんがとってもお上手で度肝を抜かれました!以前の彩海さんについてのブログも拝見しましたが、彼女は本当にすごいですよね!正反対なお役のワンスのジミーも納得させられる雰囲気だったので将来が恐ろしいです!

    こんな素晴らしい人材がたくさんいるので、これからもファン歴を更新していけそうです。

  7. YS より:

    今さらですみません、が。

    「ファントム」版のシャンドンって、「オペラ座の怪人」で同じ立ち位置に当たるラウル・ド・シャニュイ(実際に観たのは忘れるくらいの大昔です、すみません)に比べてものすごく軽いというかどーでもいい存在…って、初見で思ってしまい、それを払拭できなくなってしまったんですよね…
    実際に見たのは彩凪さんシャンドンだったのですが、どーでもいい感が払拭できず、朝美さんで観たかった、と思ったのですが、、そうなのですね。ラウルは実力云々以上に華のある人が演じるイメージだったのですが…