舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』感想

 

現在、TBS赤坂ACTシアターでロングラン公演中である、

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観劇して参りました!!

 

 

これが予想以上に面白くって、

我ながら珍しく感想を綴っていきたいと思います。

 

内容を一言でまとめると、

実に上質な爽やかBLって感じでした。←

 

※以下、全体の2/3くらいネタバレしていますので要注意!!

 

前置きと2/5くらいのあらすじ

 

実は私、世代的にド真ん中にも関わらず、ハリーポッターに一切触れずに育ってきたんですよね。たぶん、第一作目の大ムーブ時がちょうど中学受験と被り、そのまま洋書や映画に見向きもしない生活を送ったからだと思われます。

で、不思議なのが、一度くらいちゃんとハリーポッターを見てみようと思い立ち、例えば金曜ロードショーの連続放送があった時にチャンネルを回すと、なぜか毎回『炎のゴブレット』だったんです。友達の家に行ってDVDを見た時も、海外に行く飛行機の中の映画案内も、なぜか毎回『炎のゴブレット』。なので私にとってのハリーポッターは「魔法式運動会的なことをしていたら、いつの間にかラスボスの前に飛ばされ死にかける話」でしかない、という酒の席での鉄板ネタがあるほどです。笑

つまり私はハリーポッターに関してズブのド素人であり、しかも何も追加予習もせず会場に向かったわけなのですが、それでもちゃんと話を理解出来たし、何なら予想を裏切るくらい面白かった、ということを前置きしておきます。

ざっくりあらすじを書いていくと、舞台はハリーたちが死闘を繰り広げてから19年経った世界線。大人になったハリーが、自分の次男であるアルバスをキングス・クロス駅で見送るシーンから始まります。アルバスは学校に向かう電車の中で、スコーピウスという少年と出会い、仲良くなります。このスコーピウス、実はあのドラコ・マルフォイの息子。そう、天敵同士の子が仲良くなってしまうのは、物語の鉄板!!

学校に無事到着し、入学式での組み分け帽子イベントの結果、スコーピウスはスリザリンに入寮が決定。そしてアルバスの入寮先も…なんとスリザリンに大決定!!え、マジ⁈と驚くのも束の間、アルバスは魔法が上手く使えず「あのハリーポッターの息子なのに」と馬鹿にされ、劣等感に苛まれます。一方のスコーピウスも「本当はヴォルデモートの息子なのでは?」と噂され孤立。境遇の似た2人が互いに惹かれ合い、親友となるのは、至極当然の流れでしょう。しかし、父であるハリーはスコーピウスとの友情を認めず、口論に。親子の関係はどんどんギクシャクしていきます。

一方ハリーは魔法省の仕事で、全て破壊されたはずのタイム・ターナー(時間を戻す不思議な時計)を押収します。これを聞きつけたエイモス・ディゴリー(炎のゴブレットの大会で死んだセドリックの父)はハリーの元を訪れ、セドリックを蘇らせて欲しいと頼みますが、ハリーはそれを断ります。そのやり取りを盗み聞きしていたアルバスは、父への反抗心から「ハリーの過去の過ちを自分なら正せる」と思うように。そして、スコーピウスと共にホグワーツ特急を脱走。エイモス・ディゴリーの姪であるデルフィーと合流し、変身薬で魔法省に潜入。タイム・ターナーを盗み出し、過去を変える冒険へと旅立つのでした…。

 

ストーリーについて

 

まず、何が一番驚いたかって、主人公がハリーポッターじゃなかったこと。そう、主人公はその息子にして反抗期真っ只中のアルバス。彼がまた実に人間味があって、青臭くて、魅力的なのですが、ハリーポッターが「選ばれし少年の冒険譚」だとすれば、本作は「偉大なる父を持つ卑屈な少年の苦悩と自分探しの旅」という、設定が今風というか、ラノベちっくというか、とにかく崇高な話過ぎず気軽に見られて良かったと思います。

そんな彼が、スコーピウスと出会い、デルフィーと出会い、旅をする。ネタとしてはタイムパラドックスという実に王道な展開だと思うんですけど、それがあまりに上質に貫いているから見ていて全く飽きませんでした。様々な伏線が張られながら映画顔負けのスピード感で物語が展開。そして「過去を変えると状況がどんどん悪化していく」お約束に辿り着いた結果、ハリー軍が滅亡してヴォルデモート卿が勝利した世界線に過去が変わってしまい、衝撃の結末(ネタバレ回避)とともに第一幕、完となるわけで。えええええええええええええええ???と初見時は客席で驚いてしまいました。

しかもこのタイムパラドックスネタは全体の3/5くらいで終了し、え、残った時間どうするんだろう…と思ったらラスボスが登場して最終章に突入。ここからの展開も実に見事でスリリングでした。もちろん最後はハッピーエンド。家族は絆を取り戻し、少年たちは反抗期との別れを告げ、平和な日常へ帰っていくという、鮮やかな終幕です。

全体通してダレることなく、時々コメディ要素を差し込みながらも最後まで緊張感を引っ張る脚本はお見事。とはいえ専門用語が多く、ハリポタ知識一切無しの人は辛いかもしれません。じゃあ私がなぜ話に集中出来たかと言えば、唯一見ていた映画が『炎のコブレット』だったからでしょうか。笑

ということで未見さんが舞台を観に行くのならば、『炎のゴブレット』くらいは予習した方が楽しめるかもしれません。

 

キャラクター萌えについて

 

登場人物で言うと、特筆すべきはやはりアルバス×スコーピウスの魅力に尽きると思います。こんな直球萌えど真ん中なキャラ作りあります??!!

スコーピウスは、父がマルフォイ、かつ本当の父はヴォルデモートかも、という暗い生い立ちがゆえ、それを跳ね返すようなお調子者キャラ(という理解でよろしい?)。一方のアルバスは劣等感の塊で、このままじゃいけないと分かっていながら周囲にアレルギー反応を起こしてしまうような、常に斜に構えたいわゆる「イマドキの子」(この表現も古い?)。互いに似た環境だけど、感情の発露の仕方が微妙に違う2人が、母の死や父との決裂で距離を詰め合い、最終的には「誰かのことを頭一杯に考えろって言われた時、君を思い浮かべたよ」なんて言っちゃうわけですが、ええーっと、ブロマンス通り越して立派なBL風味だったんですけど、解釈的に合ってるんですかね???←

…という冗談はこれくらいにして、中盤からはデルフィーとの3人の並びがあるわけですが、この男女トリオの関係性も絶妙でした。叔父の介護を嫌々やらされている少女が、いつしかアルバスと良い雰囲気に…という一瞬さざめく恋の予感が、実に洋画チック。ま、結局はアルバスとスコーピウスとの関係性に帰結するので、あくまでスパイス程度なんですけどね。笑

とにかく、2人の関係性の構築が実に自然で、これが物語を引っ張る重要な萌え芯として作用していたと思います。

親チームで言うと、まずはハリーがテンプレ糞親過ぎて笑ってしまうくらい酷い。「自分に父親が居なかったから、上手く子どもと関われない」では済まないだろって話なのですが、同行した友人いわく「こういう人間臭いところもハリポタの良いところ」らしいですし、反抗期少年の自分探しの旅にイヤな親は付き物ですから、物語的には有りなのでしょう。最後は親らしく、カッケー所を見せつけ大活躍。そう、本作はハリーの成長物語最終章でもあるのです。

その宿敵?たるマルフォイ様は「嫌味な敵役として登場したキャラほど大人化すると良識的な人物像に変わる法則」の通りになり、存在がマジでベジータ。ハリーにしっかり物言いをし、子を心配するという、本作では数少ないまともな大人キャラでした。

ロンはもうその通りのイメージ(コメディ担当)だったのですが、ハーマイオニーは私にとって「あなたのはレビオサー↓」の印象が強過ぎて、こんな戦う烈女みたいなキャラだったっけ…?と少しばかり困惑。私の読んでいないハリポタ世界で色々苦労したんでしょうね…。

ハリーの奥さんに関しては、ハリポタド素人としては完全に「誰?」なんですけど(調べたらロンの妹なんですってね?)、演じていたのが偉大なる宝塚OGである白羽ゆり様だったので、お美しいし言うことが一々正しいのでオールオッケー!!

ちなみにラスボス様については、初見時から「こいつ怪しいな」と思っていたので、正体を現した時にやっぱりそうだー!!と心の中でガッツポーズしてしまいました。これまた実に鮮やかな、そして王道な展開で良き。この役がまさか最後ああいう対峙の仕方をするなんて…少しばかり哀れで、そしてまた魅力的なキャラでした。

 

キャスト陣について

 

続いてキャスト陣について。

私が見た日のキャスト陣は、以下の通りです。

ハリー・ポッター:向井理
ハーマイオニー・グレンジャー:中別府葵
ロン・ウィーズリー:エハラマサヒロ
ドラコ・マルフォイ:松田慎也
ジニー・ポッター:白羽ゆり
アルバス・ポッター:藤田悠
スコーピウス・マルフォイ:門田宗大
嘆きのマートル:美山加恋
ローズ・グレンジャー・ウィーズリー:橋本菜摘
デルフィー:岩田華怜
組分け帽子:木場允視
エイモス・ディゴリー:福井貴一
マクゴナガル校長:榊原郁恵

あまりに面白かったので役替わり版も見たいと思い立ち、2月に行くことが決まったので、それを踏まえてから書きたいところなのですが、とにかく嘆きのマートルが凄かった!!忘却の彼方に消えていた存在なのに、見た瞬間「あのキャラや!!」と思いましたし、たぶんまんま。一幕後に公演パンフを見たら「美山加恋」という名前を見て2度ビックリ。そうか、あの子役ちゃんがこんなイイ女優さんになっていたのかー、と感動。

あと、私にとっては「昼に井森美幸と一緒にご飯を作っていた主婦タレント」という印象しかなかった榊原郁恵が、バリバリ女優していてビックリしました。想像の900倍はマクゴナガル校長でしたし、闇属性校長(半ネタバレ)との演じ分けも凄い。やっぱりホリプロのドンは違うんですね…さすがピーターパン様や!!

もちろん、主演コンビ(?)である藤田悠&門田宗大の芝居も素晴らしかったですね。瑞々しくて等身大で、まさに役に生きていたと思います。もう片方のキャスト版が見られたら、じっくり感想を書きたいけれど、果たしてそれまでテンションが持つかな?笑

 

演出面について

 

最後に、演出面についてはサラリと。

事前に「魔法の世界へようこそ」的な押し出しが強かったので、どんな凄い舞台演出が見られるのかと思ったら、想像よりもちゃちかったかな…。魔法じゃなくて手品やん?あ、「Magic」で掛けてるのか?『ほんものの魔法使』ばりに???

正直、最初30分はマジで拍子抜けしましたけど、途中からフライングや水芸まで飛び出し、ハードルを上げ過ぎなければ普通に凄いと思えます。それよりもキャスト陣の芝居と、見事な脚本で舞台を楽しめるので、あくまで「効果」として活用しているものと理解した方が良さそう。あ、けど最終決戦の炎の打ち合いにはやっぱり滾るものがありましたね!!

そんなわけで、想像以上に面白かった『ハリー・ポッターと呪いの子』。まだまだ公演は続くようですので、ぜひ皆さん足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

【アルバス×スコーピウス×デルフィーのキャスト感想はコチラ】

 

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コメント

  1. May より:

    早霧せいなさんの出演回を観劇しました!上演時間が長く、カロリー消費が半端ではなかったですが、遠い席だと手品感も薄れてなかなかいい感じに観れました。ラストは良かったですね。
    本場ロンドンで観た友人曰く、そちらでは観客のほとんどが子供だそうで、どちらが良い悪いではないですが、なんというか国の精神年齢の差を感じました…。

    少年ジャ◯プの主人公のライバルキャラとかはだいたい血統ゆえに能力値が高くわりと親と仲違いしがちですけど、アルバスを見ながら、すわ毒親…と重く受け止めてしまいました(子供を持つような歳になるとライトに楽しめず、いかんですね。笑笑)

  2. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    私はハリポタを映画館で第1作と第2作までは追いかけていたのですが、その後は金曜ロードショーでシリーズ第何作かもよくわからず流し見する程度の付き合いで、

    確かにいつも最初は魔法学校の運動会をやっていて、お風呂に入って出てきたらラスボスの前に飛ばされてバトルしている印象しか無いです(笑)

    配信の望みは薄そうですので、蒼汰様の詳細なレポと映画の記憶を統合して、脳内で自分なりの「ハリーポッターと呪いの子」の映画を上映することができました。ありがとうございます。

    蒼汰様の記事中で一番ショックだったのは「イマドキの子」という表現は、もう古いのですね。(私がヤングだったころは「ナウいヤング」という表現がナウでした。)

  3. ふくたろう より:

    蒼汰様
    いつも楽しく読ませて頂いております。
    実は私は結構なポッタリアン(ハリーポッターのファン名)でして、数年前にでた台本が本になった物を当時すぐに読みました。その時の読んだ感想は、「ハリー全然出てこないし描かれ方が酷い、、、」でした。笑
    一応名前が「ハリーポッターと呪いの子」なので、がっつりハリー主役なのかなと思っていましたが、蒼汰さんの言うように主役は確実にアルバスでしたし、ハリーは糞親。ハリー強化ファンとしては、物語としては良かったけど、なんか、えー、、って感じでした。ま、最後はハッピーエンドなのでいいんですけど。原作に思い入れがありすぎても楽しめるってわけじゃないんだなと思いましたね。好きが故に読む前の期待値がめちゃ高だったのもありますが。
    物語の主軸として、アルバスとスコーピウスの冒険もですが、やはり親子の関係、特に親に対する子の思いというのは外せないと思いますね。これはハリーとアルバスだけでなく、ネタバレになりますから間接的にいいますが、もう1組ありますよね。ここに私は心を動かされましたね。
    最初に言ったように私はあまり好みの作品じゃなかったんですが、蒼汰さんのこの記事を読んで、また読み直してみようかなと思いました。残念ながら私は地方民なので観劇はできませんが、配信とかあれば是非見たいですね。

  4. おかず より:

    宝塚以外の舞台の感想も、ずいぶんと久しぶりではないでしょうか?楽しんでこられたようでなによりですね。

    郁恵さんですが、何年か前に、戦隊シリーズに出演していましたよ。もしかしてヒロインポジション?みたいでした。ちゃんと女優さんでしたよ。あのお料理番組のイメージが強いので、私もびっくりしていました。どうでも良い話しで失礼しました。