風間柚乃への一抹の不安と大いなる期待・『チェ・ゲバラ』に思う

『龍の宮物語』『出島小宇宙戦争』に続き、

月組公演『チェ・ゲバラ』をやっとこさ拝見。

 

この作品も是非観劇したいと思いながら

日程の都合上チケ取りを断念したのですが、

噂通り素晴らしい公演でしたね。

 

この『チェ・ゲバラ』と言えば、

『夢現無双』での月城かなと怪我による休演により、

風間柚乃が2番手「格」に繰り上がった作品でもありました。

 

そんなことを思い出しながら見てましたけど、

やっぱり彼女、凄いわ。

 

というわけで本日は、宝塚の将来を担うであろう

ニュースターについての雑感です。

 

その才能が恐ろしい・風間柚乃

 

『チェ・ゲバラ』の主演を務めたのは、

元雪組トップスターにして男役35年目のタカラジェンヌのドン、

宝塚の理事まで務める轟悠。

 

そんな彼女の右腕として共に戦い、

のちに首相となるフィデル・カストロ役を演じたのが、風間柚乃。

 

何が恐ろしいって、この出演が月城かなとの代役であることと、

彼女が当時研6なりたて、つまり新公学年であるということでしょう。

 

もうね、歌が上手いとか芝居上手とかそういう次元じゃない。

轟悠演じるゲバラの右腕としてあい対しても

全く引けを取らないその貫禄。軽く引くレベルです。（褒めてます。笑）

 

あそこまで何でも出来て、しっかりヒゲも似合っていて、

轟悠（ゲバラ）をおちょくったり、

あるいは執務室で眉間に皺寄せて憂う沈痛さといい、

男役として怖いもんなしかよっ!!と叫びたいくらいのクオリティ。

 

今年の年頭に放送されたタカラヅカニュース豪華版にて

100期生が集合してクイズバラエティでワイワイしてた時から思いましたけど、

彼女、舞台人として既に完成の領域に達していると思うのです。

 

セリフを言い合うコーナーの時だなんて

一人発声からして違ったし、

表現力（なりきり方）が抜きん出ていましたよね。

 

そんなわけで改めてその将来が非常に楽しみなスターさんなわけですが、

ここで一抹の不安が。

 

出来過ぎるがゆえに怖いという、

人気商売がゆえのジレンマがあると思うのです。

 

風間柚乃への一抹の不安

 

宝塚に限らず、あらゆるエンタメに言えることなのですが

日本の芸能における人気商売は、何かが欠けている人に魅力を感じ、

「私が応援せねば」とファンに思わせるのが一番の訴求力です。

 

その上で宝塚は、望海風斗しかり、北翔海莉しかり、

実力派はすいすいトップに君臨するでなく、

なかなか上にあがれない事態がこれまで往々にして起こってきました。

 

その過程で「こんな実力派が燻っているだなんて!!」と判官贔屓に繋がり、

人気を後押ししてきた印象です。

 

一方、いわゆる御曹司系のスターは、実力が伴う前に抜擢が続くことによって

「大変そうな彼女を私が応援しなければ」と

古くからのファンに思い起こさせる効果があるように思います。

 

逆に実力派がすいすい上がったパターンだと、

直近ですぐに思い浮かぶのは礼真琴や明日海りお。

 

だけど彼女たちには圧倒的な「一般受け」を持つキラキラ感と、

それぞれ「背が低い」「可愛らしい」という男役としてのハンデこそが、

ファンに「応援せねば」と思わせるにつながっていました。

 

確かに、風間柚乃は礼や明日海同様、実力派です。

歌も上手いし芝居も上手い。ダンスは普通？背は低い方。

だけど彼女はどちらかというと「いぶし銀系」。

 

何でも出来るうえで、数々の代役をキッチリこなし、

あるいは得意科目がちょうど自分の手中に収まるような運がある。

そして記念すべき100期生で、お血筋的にも話題性抜群。

 

彼女のことを「嫌い」と言う宝塚ファンは少ないと思いますが

「全財産を投げうってでも彼女を応援せねば」という熱狂的ファンも

これだけ隙が無いと生み出し辛い（いない、ではない）のではないかと思うのです。

 

何でも出来れば人気者になるわけではない。

実力者のジレンマって、とても難しいですよね。

 

もちろん、私のような素人の予想をはるかに超えるような

超人系スーパースターに成長する可能性だってあるわけですが、

それはもう劇団の方針に掛かっているとしか言えません。

 

もちろん望海＆北翔のように遠回りしろという話ではなく、

彼女のような大いなるスターの芽をきちんと育成し、

月組お家芸・サイコパス人事に巻き込まれることなく

大輪の華を見事咲かせて欲しいなと改めて思ったのでした。

 

うっすい『チェ・ゲバラ』感想

 

ちなみに『チェ・ゲバラ』という作品ですが、

原田諒の偉人シリーズ、メサイア等がハマった私としては

個人的に大いに楽しめる作品でした。

 

轟悠のゲバラ再現率は笑ってしまうほどのハイクオリティの上に、

黒塗り＆ヒゲで若返ったよう見え好印象。

 

天紫珠李は元男役らしいサバけた芝居が実に良かったし、

蓮つかさの意外な男クサさ、輝月ゆうまのさすがの芸達者さ、

千海華蘭の絶妙な可哀想さ、晴音アキの堂々たる娘2ポジ、

叶羽時のさりげない支え芝居の妙、きよら羽龍の驚くべき存在感などなど

「芝居の月組」の名に恥じない素晴らしい作品だったと思います。

 

一番印象的だったのは、ラスト、ゲバラの昇天（？）シーン。

階段を登った先の扉を開けると後光が差し、

舞台は暗転してゲバラの神々しい後ろ姿だけが見える…

って宙組版『ベルサイユのばら2001』の花總まり断頭台のシーンのようでした。笑

 

やっぱりすげぇなぁ轟悠。

なんだかんだ彼女はまだまだ現役だなぁと思いましたし

彼女と渡り合った研6・風間柚乃は返す返す凄ぇなぁと思ったのでした。

 

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