見たかったけれど見られなかった別箱公演の筆頭、
『龍の宮物語』と『出島小宇宙戦争』が
先日スカイステージで特別放送されましたね。
前回は『龍の宮物語』を見て思ったことを書きましたが、
この作品の素晴らしさは
もとの「脚本が良かった」プラス「出演者が魅力的だった」という
相乗効果がもたらした結果だと書きましたが、
では、続いての『出島小宇宙戦争』はどうなのか、
本日はそちらをまとめていきます。
ひたすら鳳月杏がカッコ良い
『出島小宇宙戦争』は事前情報から
結構なトンチキ作と噂には聞いていましたけれど、
噂 は 本 当 で し た 。笑
トンチキとは、「とんま・まぬけ」という意味。
そこから転じて、宝塚的にはスターの魅力等を全面に押し出し過ぎて
「意味不明」「辻褄が合わない」「ご都合主義」的意味を持っている印象。
作・演出の谷貴矢氏は『アイラブアインシュタイン』『義経妖狐夢幻桜』と
個人的にはツボ作品が多かったことと、
『異人たちのルネサンス』や『夢現無双』を楽しめた私は
どうやら他人よりも少しばかり駄作ハードルが低いようなので
イケるだろうと思ったら、ダメでした。笑
なるほど、分からん。
これが私の正直な感想です。
2回見ましたけど結局何の話なのか、何を主題にしているのかが
残念ながら私には理解出来ず…。
ということでこの作品は、
鳳月杏のカッコよさを堪能するための作品と割り切って楽しむが吉なのでしょう。
銀髪に気崩したネオ和服、よー分からん武器を担ぎながら
スタイリッシュに歩く姿は本当にオーラがある!!
まさしく鳳月杏の鳳月杏による鳳月杏のための舞台という感じ。
これぞまさしく昔ながらの宝塚の楽しみ方と言えるのかもしれません。
話はよく分からないけれど、とにかくスターがカッコ良い、以上!!
その他の出演者に関する雑感
とはいえ今作は「トンチキ」とすら評価出来ないのでは?
と個人的に思っている節がありまして。
それは登場人物と、それを演じるスターたちが
いまいち魅力的に見えないからなんですよね。
まずヒロイン、海乃美月。
彼女は大人っぽいビジュアルが大いなる武器ですので、
アンナ・カレーニナのような役ばかり来る印象ですが、
今作は若々しい役作りが非常に新鮮でした。
が、どうにもカグヤのどこに魅力を感じれば良いのか
よく分からない役回りでしたし、そもそもヒロインなのか?という感じ。
続いて暁千星。
彼女の最近の急成長っぷりは凄まじく、
ラスパのヘミングウェイ役からは大人っぽい魅力も出せていたのですが、
このリンゾウという役はどうにも中途半端でしたよね。
大人っぽいのか、元気キャラなのか、策略家なのか、直感型なのか、
そもそもキャラがブレているから、舞台で掴み切れなかった印象です。
紫門ゆりや演じるタダアキラあたりも
もうちょっと魅力的に映せるのではないかと思いましたねー。
逆に美味しい役どころだったのは、やっぱり風間柚乃。
歌も芝居も素直に上手いし、
当時研6にしてあそこまで舞台を大きく使えるなんて素晴らしい!!
シーボルトというトンチキ役を見事モノにしていました。
それから当時、新公主演したばかりの英かおと。
その経験が生きたからか、明らかにスターとして垢抜けていて
ヌイノスケのビジュアルと雰囲気にハマっていたと思います。
あとは無口メイドのヘレーネを演じた蘭世惠翔なんかも
美味しく映っていたかな?という感じでしょうか。
とはいえ、愛されるトンチキ作と評価されるには
もうちょっと全体的にスターが魅力的に見えて欲しいというのが正直なところです。
宝塚はトンチキを愛してこそ
その一方で、舞台や衣装の華やかさは見応えがあり、
時代設定のぶっ飛び具合なんかも面白く、
そういう意味では「これぞ宝塚」と評価出来る作品なのかもしれません。
スターという存在を丸々愛せれば舞台を楽しめるという意味でも
実に宝塚的作品だと思いますし、
こういったトンチキ作を楽しめてこそ宝塚なんだなとも言えるでしょう。
そんなわけで実に対照的だった『龍の宮物語』と『出島小宇宙戦争』。
大劇場では出来ない演出や作風が光る2作であり、
個人的には色んな意味で楽しむことが出来た作品でした。
こんなハイペースで新作を生み出せるのも宝塚魅力なわけですが、
次の新作別箱公演が果たしてどのようなものなのか、
公演再開を楽しみに待ちたいと思います。
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コメント
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。スカステ専科の地方民です。
谷先生、野田秀樹の信奉者なんだろうなあ。
このお話、前半はちょっとワクワクしたんですよ。
史実のシーボルト事件(シーボルトの乗る予定の船がたまたま台風で座礁して、積み荷が流出した中に外部秘の伊能忠敬と間宮林蔵が測量した地図を発見、シーボルトに地図を渡したのは高橋景保とされた(景保は獄中死し、結局真相は不明))が、
最近の研究では、国防問題で高橋景保と対立していた間宮林蔵が幕府に密告した、という説が有力になっていて。
野田秀樹作品のように、和歌でいう本歌取りや掛詞を駆使して、景保と林蔵に何があったのか、史実のミッシングリンクを埋めるぶっ飛び歴史観と、ダブルミーニングを駆使した言葉遊びで、
客の意識を現実から、あの世だか宇宙だかにポーンと飛ばして振り回す野田作品ならではのワクワクを味わっていただきたい、と思っていたのかなあ・・・
それって野田秀樹レベルの鬼才だから成り立つ技であって、宝塚の座付き作家は基本、大衆相手の大劇場作家、三谷幸喜的なウェルメイドな芝居を書けるスキルが必要、と思うんです。ウエクミ先生なら、景保と林蔵の関係をもっと突き詰めるでしょう。
谷先生、ちょっと知的遊戯が過ぎてお客をほったらかしですよ。今回のおなはし、月の都の設定がお話に馴染まずに分離しているし、恋愛面では伊能忠敬がメインになっているぞ(笑)
デジタル・マジカル・デジマ♪はどこへ行った(怒)
・・・あ、私正直「BADDY」は趣向倒れに感じてあまりピンとこなかったんですけど、出島を55分のショーにしたら斬新で面白そう!
いつも楽しく拝読させていただいております。
一点気になりましたので指摘だけ…
シーボルト役の風間さんは当時研6かと思います。
コメントとご指摘ありがとうございます。
訂正させて頂きます。
スカイステージを観られないので、両作品とも観ていないのですが。
私もわりと酷評(駄作と呼ばれる)される作品でも何かしら良かったと
思うタイプです。『異人たちのルネサンス』も好きです。
ただ、どうしても愛せないのが一つだけあります。
2006年月組公演『暁のローマ』…。
お書きになっている通り、衣装は華やかですし、出演されている
ジェンヌさんも錚々たる顔ぶれです。
(瀬奈じゅんさんトップ、大空さん、霧矢さん、北翔さん、龍さんに
明日海さん…轟さんご出演)
これだけスターさんが揃いながら、題材がカエサルでありながら
脚本がトンチキなのです。
普通にカエサルとブルータスの、あの話にすれば十分だったはずです。
なぜ、殺されたカエサル(ゴースト)が殺したブルータスと
仲良く踊って終わるのだ…と。
ジェンヌさんの美しさを愛でる以外の鑑賞方法が全く分かりません(笑)
私の中で感動ではなく、脱力してしまう唯一の作品です。
もし機会があれば、ご覧になった上で感想をお聞かせ願いたいです。
コメントありがとうございます‼︎
その作品もトンチキで有名ですよね…笑
先日スカステで放送されたっぽいのですが、忙しくて録画し忘れてしまいました…また放送された時は録画してチャレンジしたいと思います。
そんなはずはないと3回見ましたが、結局何がなんだかわからず…笑
なんだろう、うまく言えませんが、わかりやすさって大切だなぁと思いました。笑
本当にちなつさんの魅力を堪能する作品だと思います^_^
前から素敵な男役さんだと思っていましたが、色気が半端なかったです‼︎
海乃さんとのデュエットダンスも眼福でした(^^)
こんばんは!
出島。。期待して観させて頂きました~!しか~し、完全にトンチキ?作品でしたね。←褒めてます。
何度観ても、皆様と同様、何を言いたい作品か良く分からなかった。大好きな杏ちゃんの格好良さと、風間くんの実力は、しっかり堪能させて頂きました~!が。
近年のトンチキ臭作品に分類?のPR×Princeの方が、正直、まだ楽しかったかも。単純に笑えました。潤花ちゃんも可愛かった。
トンチキ別に嫌いじゃないので、劇団さんには、分かりやすいトンチキ作品をお願いします!←真面目です。
では!