宝塚・トリデンテ体制の新たなカタチ

トリデンテとはスペイン語で「三又の槍」を意味し、

転じて宝塚では、トップスター、トップ娘役、2番手男役スターの3名を指します。

 

そもそも雪組の早霧せいな体制時から

頻出して使われるようになった表現であり、

 

3名のスターの組み合わせによって生じるパワーこそが組カラーとなり

それが組の人気に直結していると言って過言ではないでしょう。

 

元祖トリデンテである早霧、咲妃、望海の3名は

絶妙なバランスでお互いがお互いを補完し合っていました。

 

つまり、早霧は圧倒的なオーラとビジュアルを持ち、

だがしかしその壊滅的な歌唱力を咲妃と望海がフォローすることで、

短所をかばい合い、長所をより引き出させた配置であったこと。

 

それが雪組の動員へと繋がった結果、

任期5作が全て稼働率100%越えの満員御礼となり、

かつ96期生問題までも吹っ飛ばすという、離れ業までかますことになりました。

 

まさに宝塚における奇跡の采配だったと言えるでしょう。

 

「トリデンテ体制」という幻想

 

さて、このトリデンテ体制の成功、

ひいては「歌ヘタトップには歌ウマ2番手をつければ大丈夫」という幻想

最近まかり通っていることが気になります。

 

そもそも、今の若手の中で

「歌ウマ」と呼ばれるスターって誰でしょう?

 

勉強不足な私が持つ精一杯の知識の中で

95期生以下の路線スターで言えば

礼真琴、和希そら、瑠風輝、飛龍つかさくらいしか思いつきません。

 

これはスター不足が原因なのでしょうか?

 

いいえ、違います。

 

 

望海風斗が雪組へ組替えし、

2番手となったのは研12の終わり。

 

トリデンテとしての地位を確立したのは

そこから1年後くらいですので、今でいうと来年の93期生です。

 

つまり、望海と同じような役割を

当時の彼女よりも3年以上も若いスターたちに求めるのは

酷というものではないでしょうか?

 

つまり、現在の90~92期生のスター不足にともなう

路線スターの若年化が進む宝塚において

トリデンテ体制を図ろうとするのは、私は無理があると思うのです。

 

ですから、安易に

「〇〇〇〇は舞台技術がイマイチだけど、技巧派スターをつければトップなんて余裕でしょ」

という戯言は、言えないのではないでしょうか。

 

宙組に見る「新・トリデンテ体制」

 

そんな中、私が個人的に思っていたことを1つ。

 

宙組の真風涼帆、芹香斗亜、愛月ひかるの3名の並び。

いかにも宝塚的でとても美しくないですか?

 

伝統的な宝塚の男役らしい魅力溢れる真風に対し

丸顔で爽やかな芹香と、ゴツくて渋い愛月。

 

憂いを帯びながらパキリとした男らしさを持ち合わせる真風に対し、

陽のオーラを持つ芹香と、陰のオーラを持つ愛月。

 

この3名のバランスは『天は赤い河のほとり』で見ると非常にわかりやすく、

イケメン主人公の真風、チャラい芹香に黒役の愛月という、

まさに、お互いの長所を高め合う配置であったと思います。

 

この3名はトップスターと1学年しか差のない2番手と、

その同期が3番目スターという、学年が詰まっているのが特徴です。

 

この男役が溢れ過ぎてて路線が詰まってる状況って、

ひと昔前の宝塚ではよくありましたよね?

(だからこそ宙組は「古き良き宝塚を体現している」のかもしれません。)

 

そしてもう1つ、大きな特徴として面白いのは、

この3名は誰も歌を得意とするスターがいないにも関わらず

きちんと魅力溢れる舞台を成立させていることでしょう。

 

この関係性は、各々がスターとしての個性を自覚し

それを発揮できるほどの経験値を積んでいるからこそ

互いを高め合えるという難しい芸当を可能にしてるだと、私は思います。

 

この男役芸の組み合わせは

いわば新・トリデンテ体制と言えるんじゃないかなーと勝手に思っています。

 

まぁ、便宜上「新」とつけていますが、

結局は原点回帰なんですけどね。笑

 

宙組のこの体制が2作しか見られなかったことが悔やまれます・・・。

 

今後のスター人事における「トリデンテ」

 

この新・トリデンテ体制という構図は

これからの宝塚においてキーになるのではないかと個人的には思います。

 

なぜなら現在の宝塚は、

95期、98期、100期

スターを多数輩出している学年が重なっており

 

これから番手争いをする中で、芹香と愛月よろしく

「同期対決」が生じる可能性が高いと思うからです。

 

例えば、宙組で芹香トップを支える桜木と瀬央(他誰か95期生)とか

星組で礼トップを支える天華と瑠風(他誰か98期生)とか…

(あくまで例え話ですよ)

 

トップと、それを支える同期同士という配置で

3名の男役がスターとしての魅力を引き立て合いながら

 

当時に番手争いをすることでファンの闘争心(購買欲)を煽る、

という構図が次々と生まれるのかもしれません。

 

もちろん、各組が95期→98期→100期(雪と宙は101期)と

綺麗に育成していることを考えれば

そんなことは全く起きずに予定調和に進むとも考えられます。

 

でもさ、そんなのつまらないでしょ?(主観)

 

やはり「負けたくない」という思いがあるからこそ

スターはより輝くわけですからねぇ。

 

2019年は誰もトップスターが変わらない1年なので

トリデンテ構造が変わるとすれば

2番手の異動、もしくは娘役の変更しかありません。

 

果たして、これからどんな計画が待っていて

どんなスターたちの組み合わせによる化学反応が生まれるのでしょうか?

 

もしかしたら、新・トリデンテ体制のような

男役同士が互いの魅力を高め合う、という組み合わせが

また新たに生まれるかもしれません。

 

今後の動向に注目したいですね!!

 

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コメント

  1. はやみ より:

    はじめまして。前のブログからずっと拝見していたのですが、はじめてコメントをします。
    ひとつ前の礼ちゃんの記事に胸を打たれ、本当はそちらにコメントしたかったのですが、皆様が素敵な感想を寄せていたので、こちらに。

    ちぎちゃんの頃のトリデンテは、たしかに歌が苦手なちぎちゃんにだいもんを付けた実力面のカバーも大きかったと思いますが、個人的には実力カバーを含め少女漫画のような気持ちの良い人物関係に、人気の理由があったのかなぁと思っています。

    パズルがはまるみたいにそれぞれの強みが一番生かせる関係性で、そこに尊敬も感じられて、絶対的に『愛される人』のちぎちゃんを真ん中に3人が個性を持って輝いていたように見えていました。女は関係性にハマると言いますし笑

    舞台人としては歌が苦手はやはり原点ポイントですけど、でも一人が完璧で一人で輝くより、補い合って輝く方が何倍もパワーがあるのかもなぁなんて感じていました。
    これから先に生まれるトップ周り、今から楽しみです。

    • masa 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます!!
      女性は関係性にハマる…確かにそうかもしれませんね。笑
      本人たちのスターとしての補完関係だけでなく、
      そこに人間関係という「物語性」が加味されることでより輝きが増すわけですけど
      それはずっと関係性が続いている宝塚という環境だから成り立つわけで…改めて面白いですよね。