運命の大傑作にはなれず?・星組『ディミトリ』感想

 

今年の宝塚はじめ‼︎

星組『ディミトリ』を観劇して参りました。

 

 

本作は長期トップを狙う礼真琴にとって、勝負となる運命の5作目。

前トップオブトップの明日海りおにおける、

『金色の砂漠』を狙う作品だと演目発表時から感じていましたが、

まさか、まんま二匹目のどじょう狙いだとは思いませんでした。

 

面白かったですよ?面白かったんですけど、

もっとなんかこう、さぁ…‼︎って感じの作品でした。

 

ってことで、原作『斜陽の国のルスダン』を敢えて読まずに参戦した、

初見感想をざっくり書いていきます。

(現在、舞台感想編の書き方を模索中のため、いつもと違う雰囲気で書いていきます。)

 

起:少年期の終わりと身分違いの恋

 

冒頭、盛者必衰の哀れを感じる廃墟のようなセットに、組長様演じる物乞いの男がストーリーテラーとして登場。

まず、ここの意味無しポエムが長過ぎる。冗長で退屈で想像が全く掻き立てられません。比較して申し訳ないのですが、例えばこれが『金色の砂漠』では「もう少しだ、もう少しでオアシスに着く…あと少しだ/行き倒れかしら…葬ってやりましょう/いいえ、放っておいてもすぐに砂に埋もれる…こんな砂漠では砂が弔う」のたった三台詞だけで、舞台となる遠いどこかの国の砂漠の過酷さ、流転する人や情愛の儚さ、そして物語の結末の暗示を見事に表現し、そのまま流れるようにテーマソングの調べが始まるわけで、その演出力の差は歴然。生田先生でいえば望海風斗お披露目公演の『ひかりふる路』で、見事な冒頭シーンの演出に成功しているのに、なぜにこんな感じになってしまうのか…。あ、小桜ほのか・瑠璃花夏・詩ちづるの歌ウマ三女神は聴福でしたね。これはナイス演出。

さて、主人公であるディミトリが登場。彼は国の王子でありながら、和平の証という名の人質としてジョージアに送られた青年です。そんな彼を探しに来たヒロインのルスダンは、ジョージアの王女。彼女は彼の足跡を見るだけでディミトリと分かるほど、2人は近しい関係性のよう。

逆にこの身分違いの恋は、もっとしっかり時間を割いて描いて欲しかったですね。少なくともディミトリの中でその葛藤があってこそ、後の気持ちの移り変わりがもっとドラマティックに演出出来たはずなのに。そしてこれはギオルギ(綺城ひか理)とバテシバ(有沙瞳)の関係性も同じで、なぜ結ばれてなぜ別れを選んだのか、観客がその過程を理解してこそリフレインが生きると思うのですが…。

そして輝咲玲央演じるチンギス・ハンの侵攻により、ギオルギは道半ばで果ててしまいます。ここの戦闘シーンは迫力があって良かったですね‼︎星組生たちの気迫も良かったし、暁千星演じるアヴァクの「王の目となって支えよ」がバリバリフラグを立てて印象に残るし、役柄的にも美味しい感じ。

 

承:愛する2人、すれ違う2人

 

さて、ルスダンとディミトリはギオルギの後を継ぎ、王位を継承します。そしてそれを快く思わない宰相たち…お決まりな流れですけど王道で良き。それをノリノリで演じる暁千星の楽しそうな姿も見どころの一つ。

娘も無事生まれ(演出は『エリザベート的』)、日々は過ぎていきますが、瀬央ゆりあ演じるジャラルッディーン率いるホラズムが台頭、戦争が始まってしまいます。心配したディミトリの父は、間者として朝水りょう演じる庭師を投入。ディミトリに寝返るよう説得するわけですが、なぜか無駄に爽やかな朝水パイセンに笑ってしまいました。

一方その頃、ディミトリの娘・タマラが馬に蹴られそうなところを助ける美少年金髪白人奴隷(設定モリモリ)としてキラッキラに極美慎が登場。彼は後にルスダンの不貞の相手となります、が、正直この流れはビックリしました。ルスダンがときめくには、もっと直接的な、例えば盗賊に襲われたルスダンを命からがら助けたとか、そういう段階を踏まねば女王の愛は傾かないのでは?まぁお互い顔がイケたということで納得するとして、暴れ馬を影絵で表現するのはナイスだなと感心しました。

で、アヴァクに唆されたルスダンは、間者と密会するディミトリを目撃。自分を裏切ったと誤解してしまいます。この流れはスリリングでしたねー。流れるようなセット演出も実にウエクミ的(褒め言葉です)だし、「足跡で彼だと分かる」の伏線を見事に回収(1回目)。その流れで「私を抱きなさい!!(意訳)」と奴隷に迫る女王様はどうかと思いますが、不貞直前(と勝手にロマンチック解釈したのですが、どうやらバリバリ事後っぽい?)にディミトリが部屋に入り、即刺殺。壮絶な夫婦喧嘩の末、ディミトリは幽閉されてしまうのでした。

 

転:決意するディミトリとその最期

 

幽閉されたディミトリは、なぜか幽閉先にやって来たジャラルッディーンに救われます。その理由は、ディミトリの父に頼まれたから、とのこと。ほうほうなるほど面白い展開。ジャラルッディーンはギオルギを思い出させる「男の中の男」で、ジャラルッディーンもまた大の美青年好き(違)2人は不思議な縁を感じ、ディミトリはジャラルッディーンに付いていくことを決めます。

首都・トビリシは陥落。ルスダンは身をクタイシに移します(さすがに「惜しいのは城でも命でも無い…お分かりにならないのね」とはならなかった)。そこにホラズムからの使者がやって来てます。その者は…なんとディミトリ!!彼はルスダンにジャラルッディーンとの結婚を勧めます。彼との結婚こそ生きながらえる唯一の策だと。しかしそれは国を失うこと。ルスダンは女王の誇りに懸けて、その決断をすることが出来ませんでした。

そんな彼女の姿を見て、そして子供たちの姿を見て、ディミトリは決意します。どちらの国からも追われようと、絶対にルスダンを助けようと。そのためにジャラルッディーンを欺き情報を流し、トビリシの人々を鼓舞し、最後の戦いに賭けようと!!いやー、ここは感動しましたね。心優しい、だけど愛する人のため信念を貫こうとするディミトリ、カッコ良過ぎるし礼真琴にピッタリ!!最高!!

そして作戦は見事成功。トビリシは奪還。そしてその計略がバレたディミトリは服毒し、ジャラルッディーンの腕で命尽き果てるのでした。

 

結:思い出のリラの木の下で

 

解放に沸くトビリシの人々。一方王宮には、ディミトリの死の知らせを告げる文が届きますが、ルスダンは読もうとしません。その毅然と立つ女王の姿にアヴァクはひれ伏し、彼女が真の女王となったことをついに認めます。

ディミトリの影を追い求めるルスダン。彼の足跡を見つけたその先(伏線回収2回目)には、昔よく遊んだリラの木が。しかし彼はもう居ません…。決意を新たに庭を去ると、入れ違うように白い衣装に身を包んだディミトリが現れ、そして物語の幕が降りる。

…んですが、ここの演出はもうちっとどうにかならなかったのかなー。例えば『グランドホテル』みたいにふと一瞬目があった気がするも何の気なしにすれ違う、とか、『神々の土地』みたいに相対して終わるとか、もっと余韻のある終わり方あるでしょうに。あんなスタスタと普通に歩かせんでも…。

そしてラストは、幕が降りたかと思いきや、もう一度照明が上がって、誰もいないリラの木が現れ、正式に幕が降りるという演出でした。生田先生『シャーロックホームズ』で気に入ったんですね、この流れ。だけどさすがに直近で(『巡礼の年』があるとはいえ)同じ演出をするなんて芸が無いです、大減点。

 

総論

 

ってことで、普通に面白かったんですよ?

面白かったんですけど、なんだか期待し過ぎたと言いますか、

冒頭と最後が綺麗に締まらないと評価は2割減になるなと改めて実感しました。

 

しかし『金色の砂漠』再びという目論見は分かりますし、

内容も実に手堅く、演出や配役、出番の振り方もいい感じでしたけど、

果たしてこれが礼真琴の5作目で良かったのだろうか?という疑問が。

 

人間の愛憎、あるいは亡国譚を描くというよりは、少しティーン向けな感じで、

確かにそれは礼真琴と舞空瞳にピッタリなんでしょうけれど、

あともう一歩踏み出すような新たな色が打ち出されることはなく、

勝負作としては保守的過ぎた感じ…例えばこれが任期3作目だったら大絶賛だったと思います。

 

ま、文句をダラダラと書いてきましたが、

なんだかんだ2回くらいはホロリときましたし、礼真琴もカッコ良かったですしで、

2本立てのオリジナル芝居作としては佳作だったんじゃないかと思います。

みんなそれぞれの役にピッタリでしたしね。

 

私は予定では残り2回、しっかり噛み締めて観劇したいと思います。

無事千秋楽が迎えられますように‼︎

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    普段生の舞台を見ておらず、映像では人物の目線や動線がよくわからないので、蒼汰様のオープニングとラスト場面の演出評はとても参考になりました。

    確かに、冒頭の物乞いの語りの内容、長いうえに、語りの内容とカメラの映像割とが合っておらず、全く頭に入りませんでした。物乞いがいつの時間軸から物語を語っているのかもよくわかりませんね。

    ラストの「誰もいないリラの木」の演出は、シャーロック・ホームズでは効果が?でしたが、今回のほうが、「死んでも天国で会えない」という宝塚的な甘さを排したほろ苦さが沁みて、効果的だな、と思いました。

    ディミトリとルスダン、実際の年齢は16歳くらい~23歳くらいでしょし、元々NHKの「青春アドベンチャー」で放送された、ティーン向けの作品と承知して見ていたので、これはこれで満足しているのですが、

    せっかくの礼&星風コンビに、いつまでも青春アドベンチャー枠の作品を演じ続けさせるのももったいないですね。

    「赤と黒」も、主人公は大学生くらいの年齢ですし・・・

    2020年代のトップオブトップのコンビが、後世のファンが振り返って「この人たち、上手いけどティーン向けっぽい作品ばっかりね」という評価になると、ちょっと寂しいので、劇団には企画に知恵を絞ってほしいです。

  2. すー より:

    劇団の企画力〜の記事から数日置いて冷却期間発言から心配しておりましたが、星組感想記事嬉しいです!ありがとうございます!
    いつまでも蒼汰さんのブログを読んでいたいのでどうかご無理はなさらないようにお願い致します!

    さて本題ですが、思いの外辛口評価に少し驚きましたが、拝読すればなるほど、納得の部分もあります。
    いつも仰っている感想は人それぞれ、はまさしくその通りですのでなるほどなぁと思いつつ、一星担の戯言というか嘆きを聞いて下さい笑

    もっと行けるやろ!なんか惜しいし無難、はごもっともなのですが、むしろ私はこういうのでいいんだよ!という気持ちです。

    眩耀、鷹、柳生、王家、めぐり会い、モンテと、それぞれ高い技術力でねじ伏せられてそれなりに楽しめたものの、個人的にはやはりなぜ礼舞空でこの作品?と思うものが多く、衣装、セット、楽曲が美しくて、多少の書き足りなさは否めなくても引っかかる台詞がなく破綻のない物語ってこんなにいいんだなと思った次第です。
    これが3作目なら大絶賛とありましたがここにくるまで「普通に良い」作品がそれだけなかったのだと個人的には感じています。
    つまり私はこういうのをことなこ(と星組)でも見たかったんだよ!と大満足しております。

    ジャガービートも感想記事は書いていただけるのでしょうか?
    こちらは既に賛否両論作品ですので笑、純粋に蒼汰さんがどのように感じられたのかお聞きしてみたいものです。
    長文失礼いたしました!

  3. mochiko より:

    ややモヤッとした気持ちを文章にしてくださって嬉しいです…!
    もうちょっとなんか…!!という気持ちすごく分かります。
    再開してすぐ観ましたが、最後のシーン、ルスダンが一度振り返って拳にぎしめて前を向かなきゃ…みたいな食いしばった顔をしてからゆっくり歩き出しましたがこれは新しい演出でしょうか?

    あと作者の方の語りを聞いたところ、劇団に全然注文いれてないんだなーとびっくりしました。

  4. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、拝見しております。
    そうでしたか…。常に東京公演ではブラッシュアップされているので(と、よく聞き及んでいて)、宝塚で観た少し唐突な展開などは、手直しされていたとばかり思っていました。

    宝塚大劇場では、学生団体が観劇されており(何度か遭遇しました)、途中からターバンを巻いている人って最初にでてきてた主役だよね、とディミトリが敵側に何故いるのか、で、また味方側にいるのか、そして、自らを無きものとするのか、理解しづらかったような会話をしているのを聞きました。素敵なジョージアンダンスでの婚礼の舞い、戦闘シーンもあり感動的でしたので、もし最後にふさわしい静寂な全てを成就したかのようなものがあれば、礼さんが舞って、幕がおりるのもみてみたかったです。
    只、この作品も一度観劇した後、私には予習が必要ではと思い(蒼穹の昴と同様に、原作舞台化商法にはまる)、原作本を購入してしまいました…。

  5. YUKIMARU より:

    蒼汰 様
    いつも楽しみに拝見しています。

    公演中止も、メディアも、報道もお手上げで モチベーションどこへ? って、記事に もやもやしていた気持ちが整理されて 気持ちの切り替えができました。ありがとうございます。

    星組観劇されて良かったですね。

    ディミトリーを宝塚で見た時に、リラの花の美しさとか幻想的で不思議な世界でした。ジョージアという国の事も知らなかったので、観劇した後で調べてみると今戦争している所に近くて。原作を読んでみると情景の美しいきらきらした世界で、以前youtubeで山あいの三人姉妹の音楽パフォーマンスを見たことを思い出しました。舞台のジョージアダンスもなかなか魅力的でした。
    私はディミトリーを見ていて、なぜが涙が出てきました。
    幼い頃からお互いに好意を持っていても 地位や身分や周りの情勢で 引き離されたり 結びつけられたり 翻弄されていくのは いつの時代でもあるものなのかと。儚い世界を感じました。

    ショーの方は もうあの静寂な世界がぶっ飛んでしまいそうな 斎藤ワールド。
    吹っ切れてみていました。
    あの歌もダンスも同じ人たちがやっているとは思えない迫力でした。

    花組も再開されるので、ほっとしました。
    感染がまだまだ脅威でありますが、舞台が見れることを祈っています。

  6. そも より:

    いつも楽しく拝読しております。
    さて私も今日もとい昨日、東京で観てきました。
    全体的には「こんなもんやろ」と納得できましたが、所々で説得力にポロッと欠けている印象があり物足りなさをかんじていたので、蒼汰さんのお見立てに膝を打ちました。
    といっても、トップコンビの高い力量には毎度のごとく唸らされましたし、暁千星加入の影響か、全体的なレベルが底上げされていたように感じました。
    あといまだナゾなんですが、ジャガービートの例の羽だか翼だか、最後はどうなったのでしょうか?
    途中までは追っかけられたのですが、終わってみれば『どこいってしもたん?』と疑問だけが残った次第です。ご存知でしたらご教示お願いいたします。

  7. ぴろりん より:

    小学生の作文みたいに、ひたすらあらすじを書く必要はあるのですか。ネタバレ注意くらい冒頭に書いておいた方が良いと思います。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      公演開始して2ヶ月程経ち、ライブ配信までしている演目に対してネタバレ配慮しろなんて言われるなんて思いもしませんでした!

  8. 八栄 より:

    今さら、こちらにコメントしてよいのか迷ったのですが、書かれていることに触発されて、金色の砂漠をブルーレイを借りて再度観てみましたので、その感想を。(私自身、金色の砂漠を一回観劇していますが、非常に非常にライトなファンで、当時はトップさんの名前しか知らなくて、上田さんの名前だけ覚えて帰った記憶があります)

    また、私は、斜陽の国のルスダンの原作は読んでいません。そのうえで。

    ギオルギ王の妻との愛と別れの決断、その苦しみとか愛情を描く場面があればよかったのにというご意見なるほどと感じました。

    金色の砂漠は、芹香さん、鳳月さん、天真さん、柚香さんらの男性と女性たちとの異なる愛の形が輻輳し、主役らとの対比が鮮やかでした。
    また、明日海さん演じる主役たちは面倒くさい性格をしていて、かなり、やな奴っぽいのに、最後は二人の愛憎がとても魅力的に見えるという作品。厚みがすごい。

    ディミトリは、史実に基づく作品とのことで、確かに、皆さん熱演だし、戦争の場面は迫力があり、最後は多くの人が泣けたとの感想が多数で、私自身観劇してみてよくできた作品と思いました。

    ただ、一方で、礼真琴さんが円熟期に入る段階とすれば、もう少し、ひねった人間や、さらに、複雑な余韻の残る役柄を演じてもらいたいかな。

    この作品とは全く関係ないのですが,真風さんの最後が一本物のカジノロワイヤル、その前は芝居というよりはショーのHigh and lowでした(作品自体、私もすかっとした印象を持ちましたし、潤花さんはかわいかったですが、あのストーリーはずっこけました)。
    せっかく潤花さんとのコンビの最終版なので、ボンドガールが見栄えのいいお姉さんだけではなく、ちゃんとした男女としてのお芝居があるといいなあと思っています。(最近のアクションものの欧米の映画では、登場する女性は、実力のある人間として描かれることが多く、そして、主役との葛藤もしっかり描かれることが多いように感じてます。)

    何が言いたいか。
    「座付き演出家、脚本家に、トップを生かすレベルの高い作品を期待したい。」