宝塚歌劇団の特徴、それは座付き演出家が作品を作ること。
それすなわち、宝塚やスターシステムの特徴を大いに理解し、
オリジナル作品を作れることを意味します。
なので全てが大傑作!!…というわけではなく、
凄まじい回転数で生み出さなければならないからか、
玉石混交、かつ演出家の好みやクセが直で表れてきます。
本日は宝塚歌劇団に所属する、
(たぶん)全演出家への個人的な感情をさくさく書いていきます。
なお、個人的な好き嫌いについて、
ストレートな書き方をしていますのであらかじめご容赦下さい。
絶対観に行きたい!!演出家御三家
まずは、演出としてその名前が上がったら、
是が非でも観に行きたい演出家3名を紹介します。
小池修一郎:宝塚が誇る演出家のドン
代表作:『エリザベード』『ロミオとジュリエット』『ポーの一族』
宝塚歌劇団の演出家と言えば、まずこの人でしょう。
宝塚を「お嬢様のごっこ遊び」から立派な歌劇団に押し上げた張本人にして、
今や日本を代表する演出家として名を連ねる巨匠。
海外ミュージカル、映画、漫画といった様々な作品を
宝塚的美意識にあてはめ再現し、数々の名作を多数輩出。
圧倒的な演出美、多くの出演者に役を振りつつ、
物語をきちんと集結させる演出力は、見事の一言。
主役を張るトップスターとしては、
任期中に彼の何の作品を振られるかこそが、
タカラジェンヌ人生の一つの答えのようなものかもしれません。
上田久美子:新進気鋭にして女傑
代表作:『星逢一夜』『金色の砂漠』『桜嵐記』
演出家若手チームの女傑にして
いまだ作品に外れ無しのスーパーヒットメーカー。
最近はその打率の高さから退団公演メーカーとしても大活躍中。
宝塚の主要ファン層の心に響く昼メロ的滅びの美学を、
圧倒的な空間演出と、美し過ぎる言葉で紡ぐのが特徴的。
舞台に何一つ無駄なものはなく、
全てが伏線として物語の結末に向かっていく様は
こちらもお見事としか言いようがありません。
また、どんな端役でも演じ甲斐があるだろうなと思わせる、
生き生きとした人物像を描けるのも大きな特徴で、
多くのタカラジェンヌが彼女の作品を「好きだ」と言うのも納得。
彼女の作品を見ていると、
一時の許されない恋に走りたくなる、そんな演出家です。
野口幸作:アイドル大好きっ子さん
代表作:『A-EN』『SUPER VOYAGER』『花より男子』
その上田久美子と同期入団の野口幸作先生。
スペキュタキュラーシリーズが有名ですが、
彼の武器はアイドル&ジャニーズ!!
昼メロドロドロの上田氏とは真反対に、
とにかく全編通してキラキラで圧倒してくるのが特徴的で、
まるで遊園地のジェットコースターのよう。
全体的に重めな作品が多い宝塚の中では、
作風が現代的、かつカラフルorパステル風味な作品が多いことから、
クラシカルな宝塚ファンには受けがイマイチの様子ですが、
伝統に敬意を払っている様子も見受けらて、私は大好きな演出家です。
個人的には「外れ無し」の演出家たち
続いては、演出家として名前が上がったらテンションが上がるような、
個人的に好きな演出家チームです。
藤井大介:レビュー作家のドン
代表作:『Santé!! 』『アクアヴィーテ!!』『Cool Beast!!』
小池修一郎先生がミュージカルのドンであるならば、
藤井先生はレビュー作家のドン的存在。
分かりやすいテーマソング、統一感が有りながら緩急が有る場面展開、
まさに「基本的には」外れ無しのレビュー作品多数で、
全ツ版等でリアレンジされやすいのも特筆すべき点。
当然、ヒット作は数知れず、サヨナラ公演メーカーでもあり、
小池氏同様、トップ任期中に彼のどんな作品を当てて貰えるかが、
スター人生の答えのようなものだと思います。
ただし、時々マンネリの極致のような作品が出てくるので注意が必要。笑
谷貴矢:突き抜けたスチームパンク
代表作:『義経妖狐夢幻桜』『出島小宇宙戦争』『元禄バロックロック』
通称、若谷先生。
宝塚には珍しく、スチームパンクやSF要素が入り混じった、
まるで電撃文庫のような世界観が特徴の演出家で、
衣装も凝りに凝っていて、見ていて楽しい作風が多いです。
総じてヒロインが「実は全部知ってた」系が多く、
主人公はその手の平の上で人生について苦悩する作品がほとんどで、
そのあたりがラノベっぽいと言われる所以かな、と。
恋愛の中に萌えを生まないあたり、実に現代的な作風だなと思いますが、
このあたりは『元禄バロックロック』で解消に成功。
自分の技法を貫きつつ、一般受けのする作品もどんどん生み出して欲しい、
これからが期待大の演出家です。
原田諒:安定したヒットメーカー
代表作:『MESSIAH』『チェ・ゲバラ』『ピガール狂騒曲』
いわゆる、轟悠主演の偉人シリーズが有名ですが、
個人的な評価としては、常に74点くらいの佳作が多いイメージ。
つまり、舞台で見ていると「お、面白いじゃん」と思うけれど、
わざわざ映像で見返したりはしなくって、
たまーに見ると「やっぱり面白いな」って思う感じ。
男役をちゃんと男役としてカッコ良く魅せようという熱意は感じるのですが、
舞台演出が単調で紙芝居的、つまり映像映えしないのが玉にキズ…。
とはいえ、舞台で見る分には外れのない先生だと思うので、
個人的には結構好きな先生だったりします。
田渕大輔:個人的には大好きだが…
代表作:『異人たちのルネサンス』『アウグストゥス』
世間的な評価はイマイチだけど個人的には大いにツボな演出家。
たぶん、私と趣味が合うんだと思うんですよね。
ローマ、ゴシック、ルネサンスと世界史が舞台の作品が多く、
衣装や舞台装置の再現度が凄い、んだけれども、
説明不足のため知識が薄い人には理解し辛いのが難点かな、と。
また、舞台が暗く、重々しいのも特徴。
実は上田久美子ばりに舞台をぐるぐる回したり大道具も出てくるのですが、
効果的でないからかイマイチ誰にも気づかれず…。
このあたりは今後の課題でしょうかね。
好みの演出家編・まとめ
以上が、個人的に好みである作風の多い演出家7名でした。
皆さん、いかがだったでしょうか?
次は一番のボリュームゾーンであろう、
当たり外れがある演出家たち編です。
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コメント
まだファン歴浅く数多くは観てはいないのですが、小池先生は当然のことながら、上田先生の作品が肌に合うようでわかります!と頷いてしまいました。神々の土地のときに寒々しく美しく、演出家の美学のようなものが見て取れる作品で若手の方で驚いた記憶があります。
しかし自分の好きな作品の演出家の方々を比べると同じ人が多いわけでもなく、その時のトップさんであったり組の生徒さんと相性の良い演出というのがあるのでしょうね。
ちなみに大劇場以外では斎藤先生の風の次郎吉がかなり好きなのですがあれは北翔さん瀬戸さん仙名さん桜咲さんといったメインの方々の歌唱力演技力あってこその面白さだなとも思います。
続きも楽しみにしています!
興味深く拝見しました
概ね同意ですね
ただし、過去に在団なされてた方なら、オギーこと荻田浩一先生推しです
この方のレビュー作品
2002年星組大劇場『バビロン』
2004年『ロマンチカ宝塚』
稲葉先生のルーツっぽい作品ですが、凄く良かったです
オギー、カムバックを願います
こんばんは。いつも楽しく拝読しております
演出家ということでまるで私の意見?ってくらいほぼ同じでした笑
野口先生のショーは曲がよく頭に残るかつ回を重ねるごとに泣けてくるショーが多いイメージです
サパ、fffはついにウエクミの駄作かと一瞬思ったことがあるんですが一回だけの観劇で私の理解不足というのが大きいのかなと…
アウグストゥス/クールビーストは劇場でも見ているのに曲や演出をほとんど思い出せず、「ああ、これが演出家との相性か」となったものです
この後のレビューも楽しみにしております
いつも楽しく拝読しています。
こちらのブログのご意見に、いつも共感して読ませていただいているのですが………原田先生と田渕先生へのご評価には異論ありです。
お二人とも実在の人物を主人公にした歴史ものがお得意で、題材選びとポスタービジュアルは秀逸なのに、実際に観るとたいがいの作品は「…?」となってしまい…(苦笑)
以下、一ファンの個人的な意見です。
原田先生のオリジナル作品は、劇中にちりばめられた各要素が終局めがけて収束していく…はずが、いつの間にか話がすりかわってちぐはぐになっていってしまい、観ていてどうしても盛り上がることができません。言及しておられるように、演出のぎこちなさもすごく気になります。
ただ、ピガールは良くできていると感じましたし、翻訳ものでは安定した手腕で、美的なセンスも優れているので、一から作るよりも、しっかりした原作のあるものを宝塚向けにアレンジするのが得意な先生なのかな、と思っています。これからはそうした作品で活躍して頂きたいです。
田渕先生の作品は、本当に本当に残念なのですが、良さが分かりません。
謙遜せずに申しますが、大学で西洋史を学んだので、古代ローマ政治史もルネサンス期の美術史も一般的に言ってずいぶん詳しいほうです。
ですが田渕先生の作品では、名匠や知識人がひしめいて刺激を与えあっていたルネサンス期フィレンツェの文化的活況が作品の効果的背景となっているわけでもなく、古代ローマの政治家も私情で動いてるだけの浅い人物のような描き方でがっかりしました。
(比較して、上田久美子先生はよく歴史と文学を研究して、作品に活かしていると思います。)
また、田渕先生の作品のテーマは、「悩める天才青年主人公が運命に翻弄されて内面的に成長する」というのが多いと思いますが、肝心の内省的な場面の演出がいまいちなので、何がしたいのかわからず、ただただ主人公が棒立ちだったという印象になってしまいます。
興味を引くような歴史上の題材を選ぶのはとてもお上手だと思いますが、残念ながらまだこれといった長所を見つけられていない先生です。
長々と否定的なことを述べて申し訳ありません。こういった意見のファンといるというご参考に、あえてコメントさせて頂きました。
コメントありがとうございます。もうおっしゃる通りですね。笑
ただなんでか知らんのですけど、田渕先生作品は心の底から楽しんで見られるんです。だから「趣味が合う」以外に表現出来ないのかも?
もちろん宝塚ファン受けが悪いのは承知のうえで、個人的に好きと表現させて頂きました。まさに人それぞれですねぇ。
管理人様方、お久しぶりです。
とっ……ても興味深い記事でした。
私の幼少のみぎり、80〜90年代ならお嬢様のごっこ遊びでしょうか、「スターの打率」が気になっていましたが、スター専科や理事の落下などを経験し、現在、特に2010年以降は「いかに舞台自体を楽しめたか」の方に重きを置くようになりました。
となると演出家がどなたかというのも気になるものです。(もちろん、お嬢様との相性もありますし)
TVドラマも恋愛ものは廃れ、お仕事モノ+恋愛の時代。
宝塚も恋愛一辺倒ではなく、劇的でありながら、あくまで恋愛もその人間を浮き上がらせるひとつの要素として魅せる作品も出てくるのかもしれませんね。
こちらに初めてコメントさせていただいた時、「久し振りに観たらダンスや殺陣の技術がすごく上がっていて驚きました」と発言したことに共感していただいた事がとても嬉しかったのを覚えています。
いつまでも「愛〜愛〜あぁい〜」の時代ではないんだよ〜!と、イメージを塗り替えるには某御大の某バラのイメージはメディアも払拭して行って欲しいなあ…なんて思うのですが。
上田先生や田渕先生のように、盆を電子レンジの如く回したり、セリもニョキニョキ出してくれると楽しいなと思います。
自分の好みの演出家を言い合うのも楽しいですね!
私はカタルシス効果のある上田先生も好きですが、漫画や映画を宝塚のキラキラした世界にしてしまう小柳菜穂子先生も好きです。以前、ルパン三世を観に来る新規ファンを宝塚の世界に浸ってもらうためマリーアントワネットをヒロインにしたって、おっしゃってました。
中村先生は、A先生よりB先生の方が評価は上がってきましたよね。大好きだった正塚先生も最後に見た大劇場公演の雪組さんを観て、そろそろ限界だなあと思いましたが、新しい若い先生達がバウでヒットを飛ばしているので、新しい風も楽しみです。
いつも興味深く読ませていただいております。
人事のお話も大変勉強になりますが、こういった主観も交えての記事も面白いですね。
内容は概ね同意です!
イケコ先生は、オリジナル作品を書く力がもっとあれば無敵だったのになぁといつも思います…
個人的には植田景子先生や小柳先生、石田先生あたりも、クセや弱点、多少の当たり外れはあれど結構好きなので、次回の記事も気になります。笑
コメントされている方もいらっしゃいますが、私も荻田先生作品が大好きだったので、また客演とかで新作を出してくれないかなあと願ってます。
(脚本だと大石静先生とかたまに書いてくれてるし、やろうと思えば実現出来そうな気がするんですけどね…一度退団した方にはお願いしづらいのかなぁ?)
いつも楽しく、拝見しております。
面白い企画であり、また様々と勉強になります。
漠然とですが、脚本・演出家と各組(主演男役や主演コンビ)との相性みたいなのも、あるのかなぁ、とも。
あの組で、あの作品をみたかったな、とか思ったりします。
私自身は小池先生好きなんですが、
エリザベートをいろいろ調べたときにわかったことで、
オーストリア本国版を愛していらっしゃる方々には、
すこぶる評判が悪いですね笑
どうしてあんな作品にしたと。
小池演出版、特に宝塚版は見れたものではないらしいですね。
本国版のトートは「死」を具現化したものにすぎず(黄泉の帝王とか死神というキャラクターではない)、
トートとシシィのラブストーリーになっているのは許容できないとか。