別格路線が減少してる問題を「TAKARAZUKA REVUE」から読む

宝塚の今が分かるイヤーブック、

「TAKARAZUKA REVUE」を読み解こうシリーズ第3弾。

 

最近の宝塚人事が直面している問題の一つとして

以前から薄々感じていたことがありまして、

それは別格路線の男役が減少している?ということ。

 

「TAKARAZUKA REVUE」を読んで改めて実感したので

本日は別格路線について考えていきます。

 

別格路線が少ない現状を思う

 

そもそも「別格路線」には様々な定義がありますが、

本稿では限りなく路線に近い、ブロマイドも出るし時々階段降りはするけれど、

番手には絡んでこないスターを指します。

 

よって、例えば輝月ゆうまや煌羽レオは、

ここでいう「別格路線」には該当してこないということを前置きしておきます。

(もちろん彼女たちも素敵な別格スターさんたちです。)

 

「TAKARAZUKA REVUE 2018」では、そんな別格路線たちのために

「魅惑の黒燕尾」というコーナーが掲載されました。

 

メンバーは、紫門ゆりや(91期)、天寿光希(91期)、澄輝さやと(91期)

蒼羽りく(93期)、麻央侑希(94期)の5名。

 

その他、2016~2018年退団したメンバーだと、

十輝いりす(85期)、鳳翔大(88期)、蓮城まこと(89期)

宇月颯(90期)、香綾しずる(90期)、十碧れいや(93期)

などなど、華やかな別格路線たちが在籍していました。

 

それに比べると今年の「TAKARAZUKA REVUE」は

そんな別格枠のページがそもそも存在していません。

 

さらに言えば若手専科の減少も挙げられます。

「TAKARAZUKA REVUE 2017」では専科コーナーとして

華形ひかる(85期)、星条海斗(86期)、沙央くらま(87期)

凪七瑠海(89期)の4名が掲載。

 

しかしながら今年は、愛月ひかる(93期)が出入りした後の

凪七瑠海1人のみという、なんとも寂しい印象になっています。

 

別格路線が少ない根本的原因

 

ではなぜ、そんな別格路線が少なくなっているのか、

スターたちの「学年」から考えてみましょう。

 

「TAKARAZUKA REVUE 2018」の「魅惑の黒燕尾」メンバーの

学年を単純に2年足すと、93期~96期になります。

 

「TAKARAZUKA REVUE 2017」専科コーナー掲載メンバーの

学年を単純に3年足すと、88期~92期になります。

 

もうお分かりかと思うのですが、

現在90~95期生に別格路線がほとんどいないことが原因なんですよね。

 

主要男役スターで現在も在籍しているメンバーで言えば、

90期:瀬戸かずや

91期:紫門ゆりや、天寿光希

92期:真風涼帆、鳳月杏、彩凪翔

93期:彩風咲奈、愛月ひかる、芹香斗亜

94期:珠城りょう

95期:礼真琴、柚香光、月城かなと、桜木みなと、水美舞斗、朝美絢、瀬央ゆりあ

 

瀬戸、鳳月、彩凪の「Focus On 別格トリオ」が別格路線ではなく、

番手に絡む本路線になった以上、

現時点でこの世代で別格路線と呼べるのは紫門ゆりや、天寿光希のみ。

 

つまり「魅惑の黒燕尾」メンバーで

まだ在籍している2人だけということになります。

 

90~92期はトップスターが真風涼帆のみで

「不作の年」なんて言われたりしますが、

それは別格路線の頭数がいないことにも表れていますね。

(裏を返せば、本来別格路線扱いのはずのスターすらも

本路線に取り込まざるを得ないほど、人材が枯渇しているとも言えます)

 

しかしながらこの学年は、

既に退団を選ぶ人が大勢いてもおかしくない年齢。

問題はさらにその下であると思います。

 

新公主演経験者を珠城と麻央しか出さなかった94期、

新公主演経験者全員を番手に絡ませ、箱売りしようと目論まれる95期と、

別格路線が生まれない状況が2年続いているのが大きい印象です。

 

別格路線と「報われ論」

 

そしてもう1つ、最近のなんでもかんでも

「スターさんに報われて欲しい!!」とファンが望む様、

いわゆる「報われ論」がSNS等で可視化されたことも、

別格路線が生まれ辛い一つの遠因なんじゃないかと思うんですよね。

 

というのも、別格路線というのは、

もともと元路線メンバー(つまり新公主演経験者)であることが多く、

裏を返せば「路線落ち」と取れるとも言えます。

 

一たび扱いが悪ければ「可哀想」、下級生に並ばれたら「報われて欲しい」、

外箱主演を逃したら「大切にしてあげて」、

トップにならずして退団すれば「なぜトップになれなかったか分からない」、etc。

 

もちろんファンの気持ちも分かりますが、

別格路線も立派なスターです。

 

以前、娘役路線について書いた記事のコメント欄にて、

「トップ以外のタカラジェンヌの価値をファンこそ認めてあげてほしい」

と頂いたのですが、まさしくその通りだなぁと思ったりします。

 

上級生として舞台に華を添え、あるいはシックに引き締め、

宝塚という舞台に厚みを持たせ上質なものにするのと同時に、

売り上げ面でも立派に貢献しています。

 

別格路線は劇団に搾取されているわけでなく、

立派な一つの立場であることを、改めて認知されて欲しいなと思います。

 

別格路線の今後を思う

 

現在95期より上に別格路線がほとんどいないと書きましたが、

その一方で96期以下には候補生が結構いますし、

今後は元の宝塚らしい、百花繚乱感が出てくるんじゃないかと思います。

 

もちろん、95期生7人のうちの複数人が

今後別格路線に移行していくことも考えられます。

(とはいえ既に全員番手に絡んでしまっているので、

今までの別格路線とまた違う立ち位置になりそうですが。)

 

価値観や舞台公演の多様化により

宝塚に長く在籍する出なく、チャンスがなければ外に出た方が良いという

考えが生まれやすくなっている現状。

 

だからこそ「別格路線を大切にする」ということは

舞台興行である宝塚にとって非常に重要なことでありますし、

その魅力を大切に思うことも、ファンに求められるのかなと思うのです。

 

トップになるだけが全てではなく、また違った輝きを魅せるということ。

そんな新たな存在が生まれることを、期待したいと思います。

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    別格路線が減少、つまり95期は華やかだけれども、90~92期、94期、96期~99期に華やかな路線スターが少ないなあ、という大問題。

    原因はいろいろあるのでしょうね。これはあくまで印象ですが、

    一因に、宝塚音楽学校は、都市部の宝塚受験専門スクール出身でなければ、まず合格できない状況が続いて、

    スクールの良さも多々あると思いますが、一面の弊害といいますか、ジェンヌたちは粗はないんだけれど、みんな受験エリート的で均質化が進んだなあ、という印象はありました。

    90~92期で、トップになったのが熊本から出てきた真風氏1人、というのがね。

    で、97期から音校の入試改革があったけれど、その前後から音校の選抜基準も試行錯誤があったのかな、と思ったりします。

    香川県出身のジェンヌは、羽立さんまで長くいなかったのですが、受験制度改革前後から、香川県出身のジェンヌがぽつぽつ出だした。

    幼少時から大都会の専門スクールに通えるような家庭の出身では無くて、中学生以上になって宝塚を知ってポーっとなってから、ガムシャラにレッスンして受験するような子でも、将来性込みでジェンヌになれるようになったんだなあ、という印象があります。

    で、100期以降のジェンヌさん達を見ていると、このへんから本格的に地層が代わってきた、というか、新カリキュラムによる選抜・教育が軌道に乗ってきて、新世代スターが生まれてきそう、と期待しているのですが、今後やいかに?

  2. ねこまさ より:

    新公主演は、1つの期で9回(=年間公演数)あり、1つの組では1.8回あります。

    ところが、真風涼帆、彩風咲奈、愛月ひかる、珠城りょうが4回前後、さらに95期も御曹司3人+4人で多数を占めたので92~94期の別格路線にはチャンスが少なかったと思います。

    別格路線とはされない輝月、煌羽のほか、冴月、真那、久城、凛城あたりがそのポジションをカバーしているように思えます。

  3. 葉山 より:

    「トップ以外のタカラジェンヌの価値を認めてあげて」という意見にいつも思うのですが
    宝塚って舞台の出番・グッズの量・雑誌テレビ露出とすべての面でトップ>>>>>2番手>その他くらいの扱いの差がありますよね。
    これが、主演は◯◯さんだけど人気がある人はどんどんグッズも出すし露出も増やしますよ〜という方針ならファンも納得だろうと思うのですが、現状、トップスターになったらスポットライトを独占しまくり、トップ様万歳の空気で他の人は謙るというトップ至上主義の世界にしか見えませんので、
    トップになれないことを受け入れろと言ってもやはり無理があると思いますね。
    特に、別に大御所や事務所に気に入られなくても、実力と一般人からの支持があれば誰でもトップスターになれるYouTube・SNS世代にとっては意味がわからんだろうなと思います。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます。
      芸事という競争社会、入団当初は誰もが等しくトップスターに憧れているでしょうし、
      ファンも同じく応援するスターにはトップになって欲しいと願うものです。
      でも現実は、そう簡単に上手くいきません。何故ならトップの座は現在5席しかなく、
      しかもそれはただの人気投票で決まるものではないからです。
      スター本人も、いつかその現実に気付く時が来ます。
      その中で報われ論で彼女たちを追い立て続けるのは、私は違うと思います。

      そしてもう一つ、タカラジェンヌは素人でありながら徹底的に現世と離した存在にすることで、
      ある種の神格化、つまり雲の上の存在に見えるようプロデュースされています。
      SNSやYouTubeで出てくるようなポッと出の凄い素人の価値観とは、その意味で根本的に違います。
      会いに行ける平成末期のアイドルと、昭和のアイドルの違い、と言えば分かりやすいでしょうか。
      同じ庶民的存在でも、成り立ちも覚悟も違うわけですから、競争社会の原理も違うのです。

      上手くいかないから面白いのが宝塚だと私は思うようになったのですが、
      おっしゃるような「現代的な感覚」で宝塚を応援してるとすれば、
      確かに齟齬が生まれ過ぎて辛いかもしれませんね…。