自身の評価はスター本人が一番理解していると思う話【雑記】

 

宝塚に限らず、評価というものは実に主観的なものであり、

そこから発生する人気というものは、

実際のところ、多数決で決まるものです。

 

一番人気の人がトップになれるわけではない、それが残酷な現実ですが、

とはいえより多くの人の心を打ち、人気者になることこそが、

自身の評価を高め、宝塚で言えばトップスターになるための近道でしょう。

 

だからこそ、スター本人は自分の出来不出来について、

自分が一番身に染みてよく分かっているはずですし、

そもそも自身を客観的に見てセルフプロデュースする能力こそ、

芸能人に求められる最大のスキルだと、私は考えています。

 

朝美絢と、水美舞斗の話。

 

前置きが長くなりましたが、最近つくづく思うのは、

自身が上手く出来なかったことって、

自分が一番良く分かっているものだよな、という話です。

 

例を挙げてみますと、

たとえば朝美絢の『ファントム』シャンドン伯爵。

 

この役は宝塚の王道たるキラキラ系王子様、

超絶イケメンな彼女がどんな姿を見せてくれるのかと期待していたら、

あれれ、思いのほか板についていない。

 

ファンから見ても、どうしてもお得意のレジスタンス感が出てしまい、

ただのキラキラ人ではなく、謎の企んでる雰囲気がなんとなーく醸し出され、

むしろアラン・ショレの方がイケオジ風でハマっていた印象。

 

と思っていたら、先日宝塚グラフにて、

このシャンドン伯爵を思い出深い役に挙げ、

「宝塚らしい王道を意識し過ぎて上手く表現出来なかった。」(意訳)

と、回顧していて、なるほどなぁと思ったのでした。

 

そしてもう一つの例は、水美舞斗の、

全国ツアー『メランコリック・ジゴロ/EXCITER!!2018』。

 

この公演、柚香光と華優希のあまりの歌えてなさっぷりに、

SNSやブログを中心にビジュアル派VS歌ウマ派の大激論になったのは、

皆さん記憶に新しいことでしょう。

 

私はこの作品を生で見てていませんが、

実際に生で観劇した管理人の感想というのが、

「確かに柚香さんが歌えてなかったのは事実、だけど彼女は主演者。

問題なのは、華さんと水美さんがフォロー出来てなかったことだと思う。

たぶんこのまま柚香・水美体制になるのは難しいんじゃないかな?」というもの。

 

その後、別格のドンだった瀬戸かずやが突然番手に躍り出て、

あれよあれよと上級生2番手になったのは、皆さんご存知の通り。

なお、当時は美弥るりかが退団発表する前であり、

柚香・水美体制になると半分信じられていた時代の話です。

 

で、これまた先日の宝塚グラフにて、

「舞い上がって柚香を上手く支えてあげられなかった。」(意訳)

と回顧していて、これまたなるほどなぁと思ったのでした。

 

愛月ひかると、ルキーニの話。

 

そしてここ最近、退団が近付いている愛月ひかるの特集をよく見かけますが、

そこで必ず話題に上るのが

「ルキーニという役が上手く出来なかった」という回顧。

 

映像で見る限り、別にそこまで破綻しているわけでもなく、

さすがビジュアルは完成されているなぁと個人的に思ったくらいなのですが、

本人としては、そして劇団や演出の小池氏的には、ノーだったのでしょう。

 

そしてそれは、宝塚のことをよく知っている彼女だからこそ、

ここでの失敗が路線として大きく響いたことが分かるのかもしれません。

 

私も体感として、ルキーニやったのに人気が跳ねないなと思っていたら、

次の作品である『VIVA! FESTA!』で正3番手扱いさせて貰えず、

あれよあれよと同期・芹香斗亜の落下を食らってしまいます。

 

実はこの記事、そんな愛月ひかるの路線論を書くための、

前置きとして書き始めているものなので、

彼女については一旦ここで止めときますが、笑

 

何が言いたいかというと、

好評・不評の多数決というのは体感が大概合っていて、

そんな自身への評価はスター本人が一番自覚しているんだなということです。

だって彼女たちは、プロの舞台人ですから。

 

これは裏を返すと、イマイチだったという感想を述べた人に、

「なんでそんな酷いことを言うんですか!!スターさんが可哀想です!!スターさんはとても素晴らしかったしカッコ良かったです!!それが分からない貴方は頭がおかしいんじゃないですか?!今すぐ訂正してください!!」

みたいに喰ってかかる人がたまーにいますけど、

それってあまり意味の無い行為だな、とも思うわけです。

 

もちろん、何をどう考えるかなんて人の勝手ですし、

スター本人を愛する気持ちも分かりますが、

前述の通り、不出来については自身が一番理解しているはず。

 

いつかこの不評を乗り越えて、

さらなる飛躍を遂げるとスター自身を信じてあげることこそが、

大切なんじゃないかと私は思います。

 

とはいえ、愛するスターの批判を聞けばファンが怒る気持ちも分かるし、

そもそも私はプロでないし専門的な知識が何も無くよく分からんので、

「面白かった」「イマイチだった」「評判良くなかったけど自分は好き」

「評判良いけど自分はイマイチ」の、4種類しか書けないんですけどね。笑

 

ファンになって、時の経過を感じる。

 

今回は何が印象的だったかというと、

スター自身による過去の出来栄えについての否定的な意見というのは、

ある一定の時が経たないと出来ないことである、という前提で。

 

私が実際にビミョーに感じていたものが、

スター本人もビミョーだと思っていたことが分かったというのは、

ある一定の時が経ったという事実が有るわけで。

 

私はブログをやっていて「実際に見ていない過去のことをとやかく言うな」

と文句を言われることが多々あるのですが、

そんな私にもついに振り返れるだけの過去が出来たんだな、

としみじみ思ったという雑記でした。

愛月ひかるのトップ論については…彼女が退団するまでに書くつもりです。(小声)

 

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コメント

  1. May より:

    EXCITER!!全ツ当時の議論は凄かったですね。はいからさんでガツンと当てた華さんがあそこまで熱狂ファンと反対派を同時に生むとは、考えさせられました。と同時に、同期萌え勢が良し!とした水美さんのパフォーマンスも、一興行の支えとしては不充分だったということなのですね…。競争社会、成績順の正当性は意外と大事なのかもしれないですね。(同期萌えを押し出しつつもきちんとサポートしていたと評して差し支えないだろうVERDADの礼・瀬央を思い浮かべながら…あれはある意味お祭り企画で、ツアーと同列に語るのも、、ですが)
    舞空さんファンとして、支えの件に名前が上がっていなかったということはひとまず舞空さんの娘役芸は及第点だったということか?と少し嬉しくなりました。少なくとも、ショーの娘1でなかったにも関わらず、ハバナクイーンでセンターを張ったそのワンシーンだけで観客を唸らせたのは実績だと思います。アフリカンダンス特性がハマってました。
    昨今のクラシカル宝塚ファンによる愛月さん再評価の流れを見るにつけ、自己分析とプロデュースと引き際は大事だとしみじみ感じます。蒼汰様の愛月さん総括記事が非常に楽しみです!!!

  2. ミナコ より:

    てかね。劇団が上げたい生徒は失敗あっても必ず上げるから。

  3. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    自己観察、自身の魅力を見極め、どのように伸ばしてゆくのか…。
    かねてから蒼汰さんがおっしゃるように、組替はよい経験、機会かと思います。
    また、組替せず自組でその組の伝統を体現するのも素晴らしい。
    愛月さんについての記事を、楽しみにしております。

  4. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつもお世話になっております。ライビュ専科の地方民です。

    身につまされる話題です。SNSを書く立場からすると、どの作品もジェンヌさん全員出来がいい、素敵、というスタンスが一番無難なんですよね。

    自分がブログを書いている理由は、舞台を見ていて、どうにもひっかかる「?」があって、その「?」をどうにか言語化したい、という欲求があって。でもそれを語り合える相手がいなくて。

    ひょっとして他のファンも、SNSは褒め褒めばっかりだけど、どうにも収まりの悪い「?」を抱えていて、そんな方が私の記事の私なりの「?」への解釈をご覧になって、「あ、そういうことか」となったら、私の孤独な思いが、SNSという公共空間で誰かと繋がれたら、という思いがあって。

    「評判良くなかったけど自分は好き」と言うのは勇気がいりますよね。お前は見る目が無いんじゃね?と思われそうで。

    「評判いいけど自分はイマイチ」こそ書きづらい。批評を通じて書き手の裸の部分をさらけ出すことになりそうで。

    趣味のブログで、そこまで自分を裸にする必要があるのか?という想いと、自分自身に対して、読んでくれる方に対して、思ってもいない嘘はつきたくない、誠実でありたい、という想いもあって。

    色んな方がおりますが、読み専のサイレントマジョリティーの方には、書き手の誠実さは伝わるものだと思います。そうでなくては、この競争社会のブログ村で、蒼汰様のブログが何年もずっと上位にいませんよ。

    万人に好かれる、嫌われない、って、毒にも薬にもならないということでもありますから。そんなブログを何年も継続して読みませんよ。

    これからも、蒼汰様の宝塚に、読者に誠実なブログを楽しみにしております。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      いつもコメントありがとうございます。
      そして心温まるご指摘をありがとうございます。ちょいと記事のニュアンスを変えてみました。
      実は私、舞台の感想って書くの凄く苦手で…語彙力が無いというか、ただ好き、そうでもない、思いのほか良かった、とか、そういう言葉しか出てこなくって。
      果たして意味があるのかと悩みながら書いても、それでも突っかかってくる人はいるし…と毎度悩んいました。なので正直、人事のことを書く方が楽という。笑
      でも感想って、思いのまま書くのが一番正直ですよね。そしてそれは、読み手側にもしっかり伝わるものかもしれません。と、私は人様のブログを読んでいて思います。
      こんちゃんさんの知識に富んだ感想、いつも尊敬しています。私もそういう記事が書けるようになりたいです。これからも一緒にブロガーライフ、楽しんでいきましょう!!

  5. より:

    愛月ルキーニは、小池氏に稽古場でめちゃくちゃ言われたそうですね。上級生になってあんなに稽古場で言われることない、あれ以降稽古場でどれだけ恥かいても平気になったと言っていたのが印象深いです。稽古場で恥をかけなかったのかな、シャイなのかな…と。ちなみに実際観劇した印象は、台詞聞き取れない…でした。初観劇だったので、余計でしょうか。
    全ツメランコリックジゴロも、台詞がアレでした。水美との掛け合いが早口に怒鳴る感じで、聞いてて疲れてしまって…。柚香光くんは礼真琴のように、礼真琴さえいれば舞台が成り立つ系役者じゃないので、他の人との掛け合いが上手くいかないと魅力が半減する気がします。上手く支えられなかったと水美が言うのは舞台裏も含めてなのかもしれませんが、あの全ツで一番惜しいなと思ったのは水美でした。
    舞台人の評価は、お客さんもそうですが、宝塚は内部の先生方や組Pなども言うでしょうし、上級生のダメ出しもあるでしょうから、SNSやネットを見なくても結構分かるんでしょうかね。全ツの反省を糧にしたバロックロックの水美2番目。配信ですが、楽しみにしています。
    愛月さんの記事も楽しみにしています。

  6. 五條 より:

    愛月は自身がルキーニでミスらなければトップの目はあったであろう事、痛いほど理解しているでしょうね。その場合芹香や95期の処遇はだいぶ変わったんじゃないかなーとか、見れなかったifも気になります。
    また、自身を含め宙組からは何故トップが生まれないのかも自分なりに結論を出しているような気がします。
    他のブログさんでも、現状ほぼ「宙組配属=トップにはなれない」になっているので、それは他組と比べて大変不公平だしモチベにも関わるんじゃないかと書かれてまして。割と洒落になってない由々しき自体だと思うんですけど…。宙組若手ジェンヌ達もそう思われている事は知ってるでしょうし承知の上だと思うのですが、ジェンヌや宙Pはどう解釈してるのでしょうか。

    別件ですが、縣が「私の弱点は歌。頑張ってはいるが上達が遅い」みたいなこと言ってまして。あー周りからも言われただろうしやっぱ自覚あるのねと。新公も、すごいよかった!歌以外は!みたいな感想多かったですしw 雪Pの方針なのか逃さずに歌わせてるので、苦手なままにはさせず上達させたいんでしょう。多分全部ひっくるめて、本人わかってるんでしょうね。

  7. はる より:

    朝美氏ゲストのスカイステージトークを見ていて縣、彩海の凄いところを既に認めていて下級生だけど同志みたいにも捉えている感じがしました。あの番組は上級生ゲストを持ち上げて終わる感がまあまああるのであの回は新鮮でした。と同時に朝美氏は下級生の頃、足掻いて足掻いて現状の己と向き合って来てるからなのだろうなとも感じました。何が出来て何が出来ないとかだったらどうする?と常に考えてるのだろうなと。

    SNSの発達とファンレターと上級生や同期のアドバイスで己の評価はしっかり分かりますよね。こればっかりは時間が経ってからしか振り返れないと思います。
    1作品、1作品に勝負が掛かってる事はどの生徒も同じです。

    劇団が決めたら有無も言わさずトップだ、スターだ、な時代もありましたが、東京にも専用劇場を持ち5組ありフル回転で客入りさせると言うのは並大抵な事ではないので人気があるのも大事なスター要素になって来た昨今。
    理事長も変わりどんな采配をされるか2022年の宝塚も楽しみにしております!

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      いやぁーーーーーー前半めっちゃ分かりますーーーーーー!
      あの縣のダンスの熱さに自分も負けてなるものか…!って思いながら踊ってるのくだりとかですよねー分かりみが深過ぎるです。
      上級生として初心を忘れずに、的でなく、あくまで自分もまだ競争社会の一員であるあの感覚、素敵やなと思いながらも、
      その素敵さを表現出来る語彙力がなくて記事に出来ずにいました。笑

  8. ちょっこー より:

    なるほどなぁと少し感心しました。
    批判に対する批判って、推しのためだし、推しも頑張ってるから気持ちはわかるんですけどね。
    あまり意味はない。
    たしかにそうかも。
    批判の批判自体がマスターベーションになってるのかなと。
    擁護することで自分が推してることを正当化したいんだろうなぁ。
    結局は自分と違う意見をわざわざ否定しなくていいよねっていう。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      まさしくその通りですよね。
      自分が推してるスターさんが批判されると、自分自身を否定されてるような気持ちになってる人が少なからず居るんじゃないかと思います。
      愛があればあるほど、お金をかければかけるほど盲目になってしまうのは仕方ないのですが、果たしてそれが本当にスターの利になってるか省みないとですよね。もちろん、自戒を込めてですが。

  9. kmabojp より:

    2羽根を逃した事もあり、バロックロックのライブ配信を観るのは気が重かったのですが、マイティーの成長ぶりを確認すればいいんだ、と前向きな気持ちにさせて頂きました。

    今回の内容と皆さんのコメントに感謝いたします。