いかにも令和風な作品・月組『Golden Dead Schiele』感想

 

彩海せら主演のバウ公演、

『Golden Dead Schiele』をライブ配信で観劇しました。

 

最近外箱のライブ配信を観られていなかったので、

なんだか久しぶりな感覚でした。

ってことで感想をさっくり書いていきます。

 

いかにも令和風な作品

 

演出家は熊倉飛鳥先生、極美慎主演の『ベアタ・ベアトリクス』に続く「画家シリーズ」第2段だそう。前作と同様、物語の展開が非常にスムーズでノンストレス、演出力も高く、フツーに楽しかったのですが、「無難」と言えなくもないかな、という感じ。イマイチ盛り上がりに欠けるように見え、その一番の原因はたぶん、キャラ設定が薄いことだと思います。シーレを始めとする画家チームが、じゃあ誰が外交的で、内向的で、面白キャラで、ナイーブで、怒りっぽくて、精神的に大人で、エキセントリックで、という書き分けがイマイチ感じられず、分かりやすく言うと「キャラ萌え」しづらかったです。この登場人物が無記号的というのが、いかにも令和なキャラクター造形なのかもしれないのですが、アニメや漫画という近視眼的なエンタメは良くても、舞台では厳しいんじゃないかな、と感じてしまいました。

主人公のシーレは、モデルを描いた絵に自分も差し込んでしまうような、妹をモデルにしながら自分を投影してしまような、そんなナルシーで自分勝手な人物像であり、その根底には父に認められたいという鬱屈とした思いがマグマのように滾っている。それがゆえに「幻影」に取りつかれ人生を彷徨い、その果てに「死と乙女」を生み出す…。物語としては実に綺麗なんですけど、じゃあそのシーレが「死」と見紛うほど人並外れたクズかと聞かれたら、「反抗期」くらいのレベルにしか見えず、だからこそ最後でカタルシスを感じられなかった、というのが正直な感想です。ってかオチも弱かったよね。冒頭の家宅捜索突入の場面をリフレインする、くらいして欲しかったっす。

けど、裏を返せば一切のキャラ萌え無しに、物語の展開と演出力(最後のシーレが死になり変わる演出はお見事!!)、そしてスターの実力 だ け で芝居を成立させたのだから、それはそれで凄いことだと思います。上田久美子作品のようにキャラ萌えが重過ぎるのも考えものですから(たぶんこの系譜は指田先生)、その真逆の無味無臭路線として成立させていくのも、一つの手かもしれません。個人的な趣向があまり感じられない、職業作家に徹した作品作りも好感度高し。ってことで熊倉先生のこれからの飛躍に期待出来る作品でした。

 

ざっくりキャスト感想:主要キャスト編

 

主人公:シーレを演じたのは彩海せら。その高い歌唱力と芝居心がさらに研ぎ澄まされ、スターとしての成長を感じました。バウ公演とは思えぬ主演パワーを発していてすごかったです。表情の作り方、身振りの動かし方などが明日海りお×望海風斗のハイブリット風で、今回は得意のキラキラ風味を完全に封印。とはいえ、本人の持ち味もあってシーレがただの反抗期坊ちゃんに見えてしまった気もしますが、盛り上がりに欠ける本をドラマティックに引っ張っていました。

ヒロイン格のヴァリを演じたのは白河りり。最近の彼女は完全に別格枠としての歩みだったので、「ちゃんとヒロイン芝居も出来ますのよ?」と言わんばかりの控え目な白い芝居が良かったです。もちろん圧倒的な歌唱力も健在。最後のデュエダンの多幸感も素晴らしかったです。

夢奈瑠音はクリムト、もとい主人公に助言する仙人役。上級生別格として控え目ながらも確かな存在感で、若手バウ公演を支えていました。…と書いていて気が付きましたが、驚くほど脚本面でのキャラ付けが薄くて驚き…。同じく上級生枠の英かおとはスタイルの良さが光るスーツ役。ヒゲも良く似合っていました。ストリーテラーとして出番も多く、儲け役でしたね。

 

ざっくりキャスト感想②:その他編

 

若手の画家チームに瑠皇りあ、七城雅、月乃だい亜。みーんなキラキラしていて歌も上手くて、良き。七城雅は若手特有のおぼこさが取れ、シュッとしてきてカッコ良かったです。どんどん(良い意味で)音月桂化していて将来が実に楽しみ。そしてこの若手チームに入らず、現代の取材チームだったのが104期生の真弘蓮。やっぱり芝居が上手いし、顔立ちも樹里咲穂系で綺麗だと思うんだけどなぁ…使われ方が完全に別格のソレで少しばかり残念。いや、上手くて素敵なんですけどね。

「死の幻影」という役名で、役割がまんまロミジュリの死だった彩音星凪。なんか見た目がよりスタイリッシュになり、月城かなとに似てきましたね…?ダンスに圧とオーラが感じられて、素晴らしい表現力でした。若手男役枠だとダンサーチームに居た涼宮蘭奈&天つ風朱李は顔立ちが特徴的なのですぐ見つかりますね。

そして娘2格?であろう花妃舞音。2幕冒頭のロリロリ美少女路線も良いですが、後半の人妻モードも良かったですね。ちょっとおままごと風に見えなくもないですが、ただ主人公の本妻ではないからこその芝居と考えたら正解でしょう。冒頭のモテル役の羽音みかはワンポイントリリーフ、得意のダンスでなく敢えて歌パートを振ったのは修行のためでしょうかね?プチ抜擢枠は逃げ込んだ幼女:タチアナ役に108期生の彩姫みみ、次席入団らしい歌の上手さと芝居心の高さが良かったです。

そして個人的に一番印象的だったのはシーレの後見人:佳城葵と母:桃歌雪でしょう。老け役別格としての芝居、歌、その居住まいが素晴らし過ぎました。これぞ月組生の実力ですね。

 

月組生の実力の高さに驚き

 

いやはや、つくづく月組生の実力の高さには感服しました。

みんな歌もダンスも芝居も上手いし、

何よりもキラキラオーラが半端ないですよね。

 

若手陣まで出番も多く、実に見ごたえのある作品でした。

次の本公演も実に楽しみです!!

 

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