哀しきif -やっぱり不思議な月組人事-

 

驚きと喜びに満ちた鳳月杏&天紫珠李のトップ就任劇、

これまで当ブログでは、前向きに色々なことを書いてきました。

 

【第一感想はコチラ】

【人事的振り返りはコチラ】

 

今日は、そんなスター人事の光と影の影の方、

すなわち、どーーーーしても思わずにいられない本音を綴ってまいります。

 

上級生2番手といえば

 

まず、大前提として。私は鳳月杏のトップ就任に対し、何一つ文句はございません。円熟した男役芸とその色香で、月組をさらなる高みへと導いてくれることでしょう。だけど、これまでの宝塚人事を振り返った時にどうしても思ってしまうのです。じゃあなぜ美弥るりかをトップにあげなかったのだろう、と。

いやいや、今更蒸し返してもしょうがありません。彼女は退団後も舞台にコンスタントに出演し、若者に超人気な『キングダム』や、元トップオブトップの柚希礼音と並ぶなど、同期の七海ひろきとともに元トップという肩書がなくとも活躍できるという姿を示し続けています。

そもそも彼女が退団すると知った時、私は「後任たる月城かなとにある程度任期を務めさせるためだから仕方ない」と納得していました。人気者の95期の中でも、先陣で走り続けた「3れい」をトップに揃え、ある程度の任期を務めさせること。それは客商売である宝塚歌劇が目指す方向性として、正し過ぎる選択だからです。

だ、け、ど。結局、月城かなとは5作で退団することになりました。しかもどうやら、ほぼ最初からそのつもりっぽい感じで。だったら、単純に珠城りょう(ピガール削って7作)→美弥るりか(3作、相手役は海乃美月)→月城かなと5作で良かったじゃん、とどうしても思ってしまいます。これなら3れい同時トップも叶えられますしね。

なお、これは美弥るりかのためというより、むしろ前任の珠城りょうのため、というのが本音です。彼女が色んな意味でクラッシュしたのは、人気者の上級生2番手を切ったように「見せた」劇団の人事的手腕が原因でしょう。そのため多くの批判に晒され、チケット売り上げに苦戦した。結果的に8作で退団したのは予定通りなのか想定外なのかは分かりませんけど、仮に単純に美弥るりかに繋げば、「研9就任で大変だったけど、良く頑張ったね」と多くの人から評価されていたはず。歴史に「if」は不毛な妄想で、これが全て結果論だと分かっていても、それでもそんなことを考えてしまいます。

 

残酷過ぎる「if」

 

そしてもう1つの残酷過ぎるif。それは芹香斗亜の月組落下傘論です。

珠城りょう退団発表時、私は当ブログの人事レース記事にて、芹香斗亜(と愛月ひかる)の落下傘論について何度か綴りました。宙組は『El Japón』の公演後くらいで、芹香斗亜の2番手歴は9作を数えたところ。普通に考えればトップ就任しておかしくない頃合いです。

だけど、そりゃまぁ叩かれましたよ、彼女のファンに。「縁もゆかりもない組でトップになりたいわけがないだろう」と。うん、気持ちは痛いほど分かります。そりゃファンとしたら、順当にトップにあがる姿が観たいはずです。だけど、まさかそこからさらに3年半、作数でいうと5作も待たされるなんて誰も思っていなかったことでしょう。そう、もしあのタイミングで月組トップに就任し、順当5作で退団するとしたら、今頃退団公演を控えていたはず。まさかこんなことになるなんて…。

私はこのブログでいかに組替えが重要なものであるかを書き続けていますけれど、スーパー結果論ですが、やはり彼女は外に出してあげるべきだったと思います。1期上のトップの下で2番手を9作もやるなんて、ハッキリ言って異常ですし、風通しが悪くなって清らかな池が濁ることも、そりゃあるでしょう。

だけど人事的には、桜木みなとの方が月城かなとより先にトップ就任してしまうし、そもそも3れいが揃わなくなる、という不具合が生じてしまいます。だから劇団の計算的には芹香斗亜が月組に行く可能性なんて、ハナからゼロに等しい。だから考えても無駄なifですが、結局のところその3れいフィーバーを享受するどころか110周年すら祝えない事態になっていることを思うと、つくづく「人事は上手くいかないな」と思ってしまいますね。

 

鳳月杏はいつチャンスを掴んだのか

 

他にも、例えば愛月ひかるが月城かなとの2番手に最初から降っていたらトップになったんじゃないか、とか、なんで超路線の暁千星を残して永久輝せあと揃えなかったんだろう、とか、様々なifがあります。だけど、そーーーーーんなものは全部ムダ。月城かなとトップ就任直後に暁千星を外に出し、鳳月杏にしっかり2番手羽根を背負わせ、かつ次作『グレート・ギャツビー』で1本物2番手羽根を背負わせた時点で、劇団的には彼女のトップ就任は決定項だったのだと予測出来るからです。

だけど、それがいつの頃から構想が始まっていたのかは、謎です。たぶん美弥るりかの2番手退団の時は想定していなかったはず。美弥の退団公演中に愛月ひかるは専科に行きましたけど、当時の彼女にはトップに至れるだけのパワーは残念ながらなかったし、そうこうしているうちに星組行きが決定。その後、珠城りょうの8作退団が濃厚になり、月城かなとの身体の具合もイマイチで長期は無理そう。暁千星がそのまま上がるのは彼女のためにはならないし、他に98期近辺にトップ候補はいないし、じゃあ…って感じだったんですかね?うーーーん、皆目見当もつきません。

そもそも私と管理人は同じ『FOCUS ON』メンバーだった瀬戸かずや、彩凪翔、そして上級生2番手である愛月ひかると同じ道筋を辿るものだと思っていましたし、前例踏襲という今ではそちらの方が圧倒的に順当でしょう。だけど違った、彼女は知らない間に、だーいぶ前から、トップの芽を掴んでいたのでした。我ながら目が節穴ですね。

 

新トップ・鳳月杏に幸あれ

 

もちろん、鳳月杏のトップ就任劇についてはこの他にも重要なファクター、具体的には同期引継ぎが出来ない水美舞斗トップコースへの布石など、様々な事情が複雑に絡み合いそうな気もしています。

けど、今まで書いてきたことは本当にどうでも良くて、一番重要なことは、数あるスターの中でもトップスターになったのは鳳月杏である、と言う事実です。この混乱期の中にいる宝塚歌劇団で5組の顔に選ばれたというのは非常に名誉あることであると同時に、とんでもない重責でもあります。宝塚100周年直前の混乱を雪組の壮一帆が鎮めたように、上級生トップにしか出来ないこともある。それを彼女は期待されているのでしょう。

波乱万丈なトップロードだと思いますが、彼女にしか描けないスターの花道を辿り、華々しく輝いてくれることを期待しています。天紫珠李とともに、頑張れ月組、頑張れ宝塚110周年、ですね。

 

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コメント

  1. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    (実は後半に続く)…で、締めくくられた記事が、気になっていました。
    はぁ…、そうなんですね。月組の人事って。
    あの89期から、男役トップスターが2人だけ、でなくてもよかったろうに、と今でも思いますが、そうゆうものなんでしょう。
    どうか、100期以降のスターさんは順当に(102期の彩海さんの頃には特に)、トップになってもらいたいな、と思います。波乱がないのはつまらないかもですが。

  2. あんがす より:

    長期スパンでトップ系譜が決まる宝塚では、結果を出すべき期限までに結果を出せなかったスターは路線から外されると思ってるので、愛月・美弥の2番手退団には違和感は全くありませんでした。貢献度の高いスターには2番手退団という餞別的な選択肢が用意されたのだと思います。
    鳳月はどうなるんだ?と言われれば、タイミングが奇跡的に需要と供給が一致したとしか思えません。ただここまで長く残ったからには早い段階からの打診はあったのでしょうが、タイミングはわからないですね。過去にはトップが上層部にトップにするよう直談判されたという話もいくつかあるので、そういう力も働いてるのかな?と勝手に思っています。

  3. あやこ より:

    トップ就任が発表されるよりも随分と前、母が何気なく「杏さんは、体型が変わらない。自分のベストコンディションを知っている」とぼやいたのですが、今になって怖い笑。
    ケガをせず、ペースを保ち、メンタルを鎮め、周囲ともうまくやる。努力も才能。ドラフト下位指名のBクラス外野手が、気付けば世界の人気者になるのです。
    よっ!月組のイチロー!

    美弥さん、愛月さん、和希さん、天華さん。。。幻のトップスターに心を寄せつつ、実は案外シンプルに『本人がトップスターをやりたいかどうか』だったりするのかもな、などと思いをはせました。
    予定調和じゃつまらない。新生月組のケミストリーを楽しみにしています。

  4. 佐藤 より:

    美弥さんはスカステのブリドリネクストに出演されていましたね
    ブリドリネクストはトップ候補のような印象でしたが、実際はどうなのでしょうか
    美弥さんはエリザベートで休演され(代役月城さん)トップを外れたのかな・・と何となく勝手に考えているのですが・・

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      個人的にはエリザの体調不良は、原因じゃなくてむしろ結果だと邪推してます。あれが原因というのはさすがに直前過ぎますから。もちろん真実は分かりません。

  5. さるまん より:

    いつも建設的なお話をありがとうございます。
    鳳月杏のトップ就任に異論はないけど、
    やっぱりいろいろ勘ぐりたくなる気持ちわかります。
    芹香斗亜の月組トップ就任説、
    又聞きの又聞きくらいなのでガセに近いかもですが、月組トップの打診があったけど
    本人が断って宙組での就任を希望した、
    という話もありました。

    嘘だったとしても、万が一そんな事実があったなら、度重なる組替えの苦労はあれど、今の状況に比べたら些細だったのかも、と思わずにいられません。

  6. 通りすがり より:

    こんにちは。データに基づく人事屋さんの記事にコメントすることではないのですが、奇しくも動乱の月組人事の記事だったので。

    先日、凪七瑠海さんが宙で羽しょってバッサバサしてる夢を見ました。
    番手の羽根ではなく、天使でもなく、鷹とか隼とかそっち系の羽を衣装として身につけてブンブン言わせてる・・・そしめそれに対して客席からキャーキャー声が飛ぶ・・・サイリウムもってたらどこかのアイドルライブ?みたいなのりで・・・

    我ながら意味不明な夢なのですが、色々なことがありすぎて、とにかく明るく楽しく舞台を楽しみたい!の願望が見せた夢だと思うことにしました。
    鳳月さんも、凪七さんも、芹香さんも憂なく・・・とは思えませんが(亡くなった命もですが、そもそも亡くならなくともイジメという名の暴力、ハラスメントの被害者がいる時点で憂いを捨てることは冒涜かな、と)、それでも舞台で輝くのを見たいです。
    なのによ“運悪く”宙組に配属されてしまった若い方達が早く動き出すことができるようにと願うばかりです。
    若い子達に罪はないですから。何なら全員専科に移して各組に出さないものか・・・

    取り止めがなくすみません

  7. ともじの嫁 より:

    私がヅカ沼にどっぷり浸かり、花組を応援していた頃、ききちゃんとちなつちゃんは、みりおちゃんの側でキラキラ輝いていました。その頃、今の二人の状況を誰が想像出来たでしょう。花組から、宙組と月組にそれぞれ異動し、自分の置かれた立場で、一生懸命頑張ってきたのは同じなのに。
    指導とパワハラの線引はどこ?真実が分からないけれど、ききちゃんのことを考えると、胸が締め付けられます。
    もう、ちなつちゃんとききちゃんがトップとして並ぶ姿は見られないのでしょうか?出来れば見たいと願ってしまうのは、罪なのでしょうか?
    切ない現実です。

  8. ポニョ より:

    人気のない人の長期は、劇団も損をしていると思います。組子達の士気も下がるるし、チケットも売れないし。月組は瀬名さん以来大人気トップが出てないので、鳳月さんには期待してます。

  9. るりるり より:

    蒼汰さま
    いつも拝見しています。
    私は今も美弥さんの大ファンなので、この記事は嬉しかったです。

    あの当時の美弥さんの苦しみを思うと、心が痛みます。
    一作でいいからトップになって欲しかった。

    だから2022年のAllAboutミュージカル.アワードで
    彼女が助演女優賞を受賞した時はとても嬉しかったです。

    月城さんは素晴らしいトップさんですね。
    正直言って月城さんが退団されたら、月組は…です。

  10. あつみ より:

    いつも楽しみに読ませていただいています。
    ありがとうございます。
    今回、初めてコメントさせていただきます。

    「我ながら目が節穴ですね」という文章に反応してしまいました。
    はい、失礼ながら、ちなつさんについては、かなり節穴だったと思います(^^)。

    ちなつさんが月に戻られた時に、将来的にトップを務める可能性についてもお話があったのだと思います。
    当時のスカイステージでの瀬名さんとの会話でそのように感じました。
    I’m from Austriaで、最初、破線上で発表され、即訂正されたと記憶しています。スタッフの中でもそのような認識があったため間違えて発表したのだと思っています。

    えっ、それって、ファンにありがちな妄想だよね、と反応されそうですね(笑)。
    はい、妄想かもしれませんが、ファンにとっては、月に戻られた時がトップの芽を掴んだと思えるタイミングでした。もちろん、過度に期待しちゃダメだと自分に言い聞かせながら。
    ※宝塚をよく観劇される方たちの感覚では、私はファンにはあたらないかもしれません。生で観ることはほとんどかなわず、予定が合えば映画館や配信で観ています。
    でも、私にとって、ちなつさんは、とっても気になる「特別な人」です。

    蒼汰さんmasaさんにとって、ちなつさんは「特別な人」ではないから、気にも留められなかったのだろうなと思います。
    私も他のジェンヌさんについては、前例や同じような立場の方と比較して考え、このジェンヌさんだけは異例の大抜擢を受けるかもしれない、なんて思いませんので。

    今まで、ちなつさんのトップはありえない前提の部分に関しては、正直なところ、えーっ、そうかなー?と思っていました。客観的にはそうなのかもね、と思いながらも。
    でも、それがまた私は嬉しいです。
    「特別な人」は、人それぞれ違っていて当然で、こちらでは、ちなつさんが「特別な人」でなくても、ちゃんと愛情をもって書いてくださっているのは文章から伝わってきます。

    たとえ自分と違う感じ方が書かれていても、安心して読めるブログは、とてもありがたいです。
    特に今の宝塚関係ブログは、開ける前にブログを書いている方を確認して、この方は何をどんなふうに書いていたか思い出して、自分の思いと違うことが書かれていても自分は大丈夫か、覚悟してから開けないと、深いダメージを追ってしまう可能性が高いブログがとても多いので。(結果的に、いままで楽しく読んでいたのに、開けられなくなったブログが、ヤマのようにあります。)

    ブログを読むことは、私の生活の彩りのひとつです。
    いつもありがとうございます。
    これからも楽しみにしています(^^)。

  11. なか より:

    いつも楽しみにしています。
    鳳月さんのトップ。嬉しいです。
    宝塚の人事を、(人生後半戦、さらにコーナーをまわった私から)見ていると「人生」を感じずにはいられません。どんな時でも「腐らず、奢らず」目の前の課題に誠実に精一杯立ち向かう。それが次へ繋がる・・。
    花組「カサノバ」を久しぶりにみました。
    あのときの鳳月さんは何を思っていらしたのでしょう・・・。
    人生常に、生きていれば進んでいく・・・。
    その方向を決めるのは自分自身。
    その自分自身が揺らいでしまうのが人間ゆえ。
    一人ではなく、人と人とが係わり合うがゆえの揺らぎ・・・。
    鳳月さんのトップ就任に改めて敬意と賞賛を贈ります。

  12. みんみん より:

    最後の項を読み胸熱になりました。
    以前数回コメントが反映されなかったのですが、恐る恐るコメントしてみます。
    月組はスターだらけでしたがみんな専科へ、残った美弥さんがキーマンになるのかと思っていたら、珠城さんのお膳立てだったんですね。
    で、月城さんが来てたものの、どんどん人気が上がった美弥ちゃんが抜ける穴は大きい。花組は花組でやはり柚香さん周辺に複数上級生がいるのは重く、ちょうど鳳月さんが出戻る場所があったという感じでしょうか。
    矛盾するようですが、花への異動時に主演作(スターダム)って不明瞭な番手で結構異例(当時はヅカ初心者であまり空気感がわかっていないのですが)で、劇団から評価もされてきていたと思います。また明らかなトップ候補である柚香さんとの役替わりを複数回香盤させたり、新公主演の見る目が無かった代わりに昇進チャンスを図ってきたのかなと思いました。そして毎回結果を出し、どこに出しても恥ずかしくない人材という信頼を得た。対談で瀬奈さんに怖いものなしだねと言われたりそういうのも後押しになっているのでしょうかねぇ?
    以上、時系列に書いてきただけじゃん!で恐縮ですが、ジャッキーや中大兄皇子でもしかしたら?!と思ってきたクチでした(同時に餞別かと震えもしましたが)
    月組に芹香さん降臨論で思い出したのが、紅さん降臨説です。こっちの方が薄い噂だったかもしれませんが、美弥さんが残ったのはそのためかと。紅さんが月でなら真風さんが星組で・・・とキリがないのでこのへんで。