以前、蒼汰は宝塚版『ロミオとジュリエット』を
見たことが無いと告白しました。
我ながら偉そうに人事を語るブロガーの分際で、
観たことないなんてなんたる所業!!笑
ということで買いましたよ、Blu-ray BOX!!
正直、管理人が星組版DVDを持っていたので、
予習という意味では必要は無かったのですが、
やっぱりね、こういうご時世ですから
少しでも劇団の売り上げに貢献したいと思いまして。笑
とりあえず全本公演と月組新公版を見終わりまして、
個人的所感を書きたくなったので、まとめていきたいと思います。
『ロミオとジュリエット』は「青春」
小林公一理事長最末期時代のお祭り騒ぎにして、
最大のヒット作となった『ロミオとジュリエット』の魅力は何か?
それをざっくりと表すならば、
「青春」、この言葉に尽きると思います。
若さゆえの早急さ、稚拙さ、思い込みと迸る情熱。
あらゆるものを捨て、全速力で追い求め疾走するからこそ、
ロミオとジュリエットの純愛は美しいし、
だからこそ最早そんな気力も体力も勇気も無い人々の心に、
遠い記憶や、自分には出来なかった若さゆえの過ちを
思い出させるのかもしれません。
そして長年憎しみ合う2つの名家の人々も、
互いに熱い死闘を繰り広げながら抑圧された環境下を必死に贖い、
彼らなりに必死に生きたからこそ、
我々に心に迫る何かが有るのだと思います。
そんな物語に華を添えるのが、楽曲の良さ。
ドラマティックさと覚えやすさを兼ね備えた名曲の嵐。
よってこの作品の第一感想は
「演じていて楽しそうだな」ということでした。
この作品がファン人気以上に、
「思い出に残る作品」あるいは「演じてみたい」と
タカラジェンヌたちが挙げる理由が良く分かるというものです。
各公演で全く違うロミオ像
そしてこの作品の1つの大きな特徴として、
各公演で演じられる主役たるロミオ像が全く違うということです。
例えば『エリザベート』のトートは、
「シシィを深淵の闇に誘う黄泉の帝王:初演雪組版」と
「シシィに恋い焦がれる1人の男性:再演星組版」の、
どちらを起点に演じるか、というのが再演時のセオリーになっているし、
『ファントム』のエリックは春野版が和央版を乗り越えて、
どちらが良い悪いではなく、後の再演に大きな影響を与えました。
その他、大作の再演物というのは、
基本的に初演のイメージに大きく引っ張られるわけですが、
ロミオ像は四者四様全く違うのが面白い。
例えば柚希ロミオは、野性味溢れる親分肌。
モンタギューの若者たちのボスザル感が強く、
公演としては圧巻だけれども、ロマンチック度は低め。
なんだけれども、夢咲ジュリエットとは「ちえねね」芸でカバー。
技術で夢々しさを出すという荒業でねじ伏せていました。
その真反対をいくのが、明日海ロミオ。
とにかく内向的な少年で、そりゃ2つの家がバチバチしてる間、
原っぱで綿毛にふーっってしてるよね、という雰囲気。
「今までいくつか恋をしてきた」って
どうせ手を繋いだ止まりでしょと突っ込みたくなる一方で、
だからこそ初恋に夢見がちで突っ走った理由も分かるな、という感じ。
真反対という意味では、龍ロミオも面白い。
柚希ロミオが青年的やんちゃだとすれば、こちらは少年的やんちゃ。
元気で活発、常にピョンピョン飛び跳ねてる。
ノリは典型的イタリア人のそれで、
ジュリエットとの恋も夢見がちな初恋というよりは、
情熱的イタリアンのノリと衝動に近い雰囲気がある。
音月ロミオは、これらと全く違うベクトルを行く青年像で、
見た目は一番チャラいのに、どこか真面目でしっかり者。
歌唱力はぶっちぎりナンバーワンなのに、
恋してる姿よりも苦悩してる姿の方が印象に残ります。
いまだ「正解」が見つかってないよね
主役4名のロミオ像が毎作全く違うのだから、
各公演の雰囲気も当然全く違うわけですけれど、
正直な話、いまだ正解が見つけられてないとも思います。
すなわち『エリザベート』で言う初演雪&再演星、
『ファントム』で言う春野版的な、
「これがお手本!!」という最強のキャスティングが、まだ無い。
いや、たぶんそれは初演星組版がそうなんでしょうけれど、
いかんせん外箱(梅芸)公演なので、
初演を推すということは小劇場向きで大劇場向きじゃないことを
証明してしまっている気がして…。
それに柚希ははっきり言ってロミオ役者じゃないし、
夢咲ジュリエットもビジュアルは最強なのに歌が壊滅的。
そしてこの作品はロミオとジュリエットに非常に重きを置いているにも関わらず
この2役を役替わりさせるという禁じ手を使った
雪組版と月組版はそれ以上に論外なわけで。
他にも、ある時は大公や乳母が歌えなかったり、
全体的にマーキューシオのキャラ迷走が激しかったりと、
完璧な布陣には結局出会えず仕舞い。本公演6本もあるのに、ですよ?
なかなかに難しい問題ですよね…。
ちなみに私の個人的好みを書いておくと、
圧倒的に明日海ロミオ版です。
そして外伝的に楽しめたのが、
意外にも柚希大劇場版の紅ティボルト編かな。
詳細は別途感想編を書きたいなぁと思います。…いつか。笑
礼真琴版にかかる期待と重圧
と言うことを前提に踏まえて言ってしまうと、
礼真琴版『ロミオとジュリエット』への
劇団からの期待は凄まじいと思います。
そもそも梅芸版『ロミオとジュリエット』は、
礼真琴演じる「愛」で幕が開いているし、思い出新公枠でもある。
ロマンチストな小川理事長的には大好物でしょう。笑
そんな彼女率いる星組に与えられた至上命題は
雪組版『ファントム』のように
最高傑作となる「正解」を生み出すことだと思います。
うーん、凄まじいプレッシャー。笑
当然ながらA日程が劇団の本命なわけですから、
愛月ティボルト、瀬央ベンヴォーリオ、極美マーキューシオと紡ぐ本作が
今後のお手本として語り継がれる作品になれるのか、
今から楽しみにしたいと思います。
いつか全作さっくり感想編に続くかも…?
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コメント
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。
礼さんの制作発表会での歌唱動画を拝見しまして、一番の不満は髪型でもメイクでも衣装でもなく、
歌詞のポエム不足!全体にこの作品は歌詞が良くない!←いまさらそこかい。
小池先生の歌詞は「演出意図の説明」要素が強くて、脳を現実からポーンと飛躍させる魅力に乏しい。
このミュージカルの歌詞にはシェイクスピアが紡いだ、華麗な比喩に彩られつつも、法律の条文のように緊密に論理的に構築されたセリフの魅力、
言葉の力で、砂漠にみるみる大伽藍が組み上がるのを見るような、無機質なビルディングを緑あふれるバビロンの空中庭園に変える魔法を見るような、ワクワクが無い!
セリフがほとんどなくて歌で紡がれているのに、肝心の歌詞がイマドキのケータイ小説とか、ラノベっぽい、わかりやすいが深みの無いものになっているわけですよ(それが演出意図なのでしょうが)。
ジュリエットは原作では”私は何も知らない 16歳の乙女だけど♪”って言ってなかったぞ。
”僕は怖い” ”憎しみリフレイン” ”エメ”もなあ・・・”愛”という直接的な言葉を使わずに、愛を語るのがポエムというものではないのかい。(ベルばらまでいけば、あれはあれで一つの表現としてあっぱれと思う。)
なんぼ明日海さんでも、あの歌詞で微妙な心情の揺らぎを表現するのはキツイですよ。(ポーは萩尾望都さんのポエムを歌詞にしていたからよかった)
誰か、歌詞を原作から訳し直して・・・
横から失礼します。小池先生の歌詞に文句をおっしゃるなんて贅沢な!小池先生、石田先生に比べたら何十億倍も良いですよ!2月に礼真琴主演の『ロック・オペラ・モーツァルト』がスカイステージで放映されますので、見てみて下さい。石田先生の歌詞、台詞、絶望的なレベルのセンスのなさ。こんな酷い歌詞や台詞でも、ねじ伏せた礼真琴は偉い!としか言いようがありません。石田先生、フランスのロックオペラを、宝塚風味に仕上げるために、大々的な宝塚っぽいフィナーレを付け加えたので、許しがたい罪だったけどまあ我慢するか、って感じです。
2度目のコメントになります。
いつも楽しく拝読しております。
今回のブログも考察が的確でうんうんと頷きながら読んでいました。笑
おっしゃるように今回の礼真琴さんにかかるプレッシャーは凄まじいものだろうなと思います。制作発表会でも期待され具合が節々から伝わってきて思わず笑ってしまいました。
ところで、制作発表会の礼真琴さんのパフォーマンスが劇団YouTubeに本日フルでアップされていましたがご覧になりましたでしょうか。
個人的には礼さんのロミオからはとてもナルシズムを感じました。ジュリエットとの恋愛というよりも恋してる自分に酔っているような……。これからまたどのように礼さんが役作りされるのか楽しみです。
また、制作発表会の蒼汰さんの感想も是非お聞きしたいです。
自分が好きなのは星組の柚希さんバージョンのものですが、これは初めにみたロミジュリだからという刷り込み的な要素が強いです。
男らしく雄々しい柚希さんが正反対の属性のロミオを演じられることがたまらないと当時ファンの間でとても話題になったことを覚えています。
ロミジュリ、個人的に好きな公演なので勝手ではありますが、また蒼汰さんの考察ブログがあがることを楽しみにしております。
先行画像ないしポスターが出たときに『こんなのはロミジュリじゃない!』という声がチラホラ聞こえたのですが、そもそも宝塚版ロミジュリの正解ってどれだ…?となりました笑
ビジュアル・技術共に優れたことなこ率いる新生星組のロミジュリが楽しみです!
こんにちは。私はロミジュリ好きでBOXをよく見直してるんですが、一番好きなのが新公の珠城&咲妃なんですよね。たまきちの真っ直ぐさとゆうみちゃんのほわほわが、そりゃあの結末になるわ、というか、2人とも大真面目なのにすれ違うのも分かるなあという感じで。笑
明日海さんも夢咲さんも好きなんですが、2人ともいい意味で新人っぽさというか素人っぽさというか、初々しさを出すのがお上手なのでその甘酸っぱい感じが好きなのかもしれません。その点、礼&舞空ペアも若々しく初々しい演じ方をしてくれそうなイメージが出来るので、ものすごく期待してます!
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
最高傑作となる「正解」
うーむ 正解ねえ。これはセンター試験ではなく、筆記試験ですからね。
ある程度の採点基準(歌唱力、その人の役作りの方向性の表現の納得感)はあるでしょうか、
シェイクスピア劇は世界中で400年以上、作者の死後、彼が知らなかった国、知らなかった言語でも上演され続けていて、
どの上演が最高傑作となる「正解」だったのだろう。これだけ上演しても唯一の「正解」が見つからないことが、シェイクスピア作品の生命力の根源かもしれない。
シェイクスピアの魅力って、それだけの上演史が重ねられても、その時代、その時点の演出家が物語に描いた夢、役者にとっての、役に込めた自身の「切実」を表現したい、と思わせる根源的な力があるところだと思っていて。
もちろん、ライトファンに「宝塚のロミジュリの円盤を貸して」と言われた時に貸しやすい、実力や役作りのバランスのいい「定番」は欲しいですね。
歌唱力という意味では、礼さんは「お手本」になれる方だと思います。
お邪魔いたします。
私はフランス版から入って宝塚を見ましたが、オリジナルのロックミュージカルの空気感を一番感じたのは初演星組でした。
オリジナル音源を頼りに、短い稽古期間で一気に舞台に持ち込んだスピード感もあるでしょう。愛と死の造形といい、初演というものは永遠だと思うのはそこですね。
再演ロミオから細やかな表現になり、ショーもついてより宝塚らしい演目になったなあと思いますが、役が少ないから、序列に従った配役だとベストキャストで見られない。例えば乳母はベテランがいいし、愛は初々しい若手がいいけれどそうはいかない。
ロミオとジュリエットはヴェローナの為に祭壇に捧げられる犠牲の仔羊。だから、観客が心からこの二人の幸せを願うような、そんな固く結びついた恋人たちを見せてほしい、それだけです。
ここが私の見せ場、聞かせどころよ!もいいですが、ソロコンサートじゃないのですから、ストーリーに溶け込んでほしいなあと願っています。
難しい作品ですよね。
難しい理由は「恋に恋して夢見る少年(いつか)」「大人に反発する友だち好きな少年(世界の王)」「死の影に怯える繊細な少年(僕は怖い)」「ジュリエットを包容力をもって愛する少年(エメ)」と数々の名ナンバーによってキャラクター性が変わるからかもしれません。どの部分を強く打ち出すかでロミオのキャラが変わってしまう。
芝居巧者のキムちゃんは「僕は怖い」が強く、みりおちゃんは「いつか」が強く、みんなが古典から想像するものに1番近いロミオを作りました。しかしこの2人はプレスギュルビック版で主題ともなりえる「エメ」(フランス版も初演もここが強かった)がどこか浮いてしまい正解かというとやはり違う。
トートやエリックよりロミオは古今東西様々な形で二次創作されてきたキャラクターであり、百人百通りのロミオ像がすでに観客の中にあるので、この正解議論は尽きることがない気がします笑
こんにちは!
Blu-raybox買ったんですね!長年、みりおちゃん版DVDが高過ぎて手が出ず。。今回が購入チャンス!!しかし、これまた高いので。。悩んで、悩んで、ヅカ仲間とお金出し合って買いました!貧乏くさ~笑
お蔭様で、みりおちゃん版、何度も観ております!(以前、何回かは観たことあったんですが)綿毛持った爽やかなロミオ、ジュリエットの死を知った時の「嘘だー」の叫び声が心に染みます。
これから、他のジェンヌ版も順次観る予定なので、ティボルト紅さんバージョンも、楽しみに観てみます。
あと、この前、みりおちゃんのFCイベントで、愛希れいかとエメを歌ったのですが、大人になったロミオ&ジュリエットの歌声が、しみじみと切なくて、涙が出ました。相思相愛の二人が、やっと出会えた感じがして。
素晴らしい歌が多い、ロミオ&ジュリエットの舞台、星組公演も楽しみです。
ベンヴオーリオが主要キャストと?
紅ゆずるって凄いスターだったんだ、と、思うのです。本来の作品的には、誰?どこに出てる?のなキャラですよね
余計なお世話した人か、なはず
死は出来ないから、なはず
が、なんか凄い、嬉しいな