彩風咲奈・雪組御曹司のリベンジ

さてさて、コロナウィルスの影響により

大きな人事的発表もなさそうですし、

連載企画として93期御三家について書いていきたいと思います。

 

トップバッターは93期御三家の中で

最もトップスターの立場に近い彩風咲奈。

 

彼女は次期雪組トップの最有力候補、

もとい他に選択肢がないほどバレバレな存在なわけですけれども。

 

皆さん口をそろえておっしゃるのが

「不安」「売上げが低迷する」「本当にトップに立って大丈夫?」などなど

ネガティブな意見が多い印象です、が。

 

最初に前置きしておきたいのは

雪組をここ数年重点的に見てきた私個人としては

言うほどその将来を心配していないということです。

 

本日はそんな彩風咲奈に対する希望を込めて、

彼女のこれまでとこれからを考えていきたいと思います。

 

彩風咲奈の「強み」とは何か?

 

彩風咲奈の強みとは何でしょう?

私はこれまで「異次元スタイル」と「ダンス」だと思っていました。

 

ところが最近、それ以上に彼女の持つ大きな資質に気付きます。

それは彼女が「陽タイプ」のスターであるということです。

 

良くも悪くも、彼女が舞台に立つと、

全ての役が、そして場面が、陽の属性に変わります。

 

『凱旋門』アンリ、『20世紀号に乗って』のブルースはもちろん、

カラ元気なダントン、おっさんなのに爽やかなキャリエール、

そして極めつけは『ONCE~』のマックス。

 

このマックスという役、

映画版では腹の底が見えない難解な役なのですが、

彼女が演じたことでスタイリッシュさと華やかさが前面に出ていた印象です。

 

それが原作ありきの作品として正解だったかどうかは別ですが、

役に打ち勝つほどの陽属性としてのスター性は

彼女が持つ強烈な個性の一つだと私は考えます。

 

これは同期・愛月ひかるが全ての役を

「闇属性」に引っ張ってしまうのと真逆のスター性だと言えますが、

(これは次の愛月ひかる編にて)

とはいえそれは、宝塚で主演を張るには重要な資質だと言えるでしょう。

 

その魅力がよく分かったのが、

東上主演公演『ハリウッド・ゴシップ』。

 

私はこの作品で舞台の中央で発光する彼女を見て、

ここまで真ん中がしっくりくるスターだったのかと正直驚いてしまいました。

 

雪組の御曹司として帝王学を叩き込まれた彼女は、

トップとして輝く能力を持つスターに無事育ったと言えるでしょう。

 

ポスト「古き良き宝塚」の再現

 

抜群のスタイルとダンスが武器の御曹司で、

歌と芝居に大きな穴がないトップスター。

 

こう表現すると彩風は

実に典型的宝塚トップスター像の1つだと言えると思いますが、

今その枠は真風涼帆(彼女はいぶし銀路線ですが)が任期を全う中。

 

とはいえ、彩風が就任する頃には

真風ももうベテラントップのポジションに移行するでしょうし、

同時期のトップであろう柚香&礼はそれぞれビジュアルと舞台技術特化型。

 

上手いこと「古き良き宝塚的な若きトップスター」の座に

真風と入れ替わりで収まりそうなわけで、

いやはや宝塚のトップ人事ってよく出来てるなぁと思ったりするわけです。

 

そしてここまで書いて思ったのですが、

彼女がトップに立ったとしたら、

なんとなくですが朝夏まなと的な存在になるんじゃないかと思います。

 

朝夏も花組の御曹司として育ち、

宙組組替え後は、いわゆる「テルキタ」体制の煽りを受け、

きちんと2番手羽根を背負ったのは、なんとトップ就任直前の公演。

 

当時は「本当にトップに立って大丈夫?」という声も聞かれたようですが、

その陽的パワーと御曹子育ちらしい包容力で

最後は「宙組の太陽」として組人気を押し上げ、

惜しまれながら退団していきました。

 

彩風も前任・望海風斗のような

スーパーミラクル超人気トップスターにはなれないかもしれませんが、

(彼女は歴史に残るレベルの人気スターでしょうから)

 

そのおおらかさとスター性で、

劇団の期待には充分に応えるレベルのトップスターにはなれるはずです。

 

雪組御曹司のリベンジ

 

そして雪組の歴史を振り返れば、

彼女は雪組生抜きトップの宿命を背負ったスターとも言えます。

 

雪組は、平成最初のトップスター・杜けあきから

一路真輝、高嶺ふぶきと3代続いて生抜きトップを輩出。

 

その後、現在も理事として活躍中の轟悠を挟んで以降、

異例の一作退団の絵麻緒ゆう、

異例の新公主演経験無しでトップに立った朝海ひかる、

当時としては異例の5組全出演経験を持つ水夏希と、

4代続いて「異例」「スタイリッシュさ」が売りのトップが続きました。

 

そしてその次にトップに立ったのは、

若手時代から人気も実力も備わっていた、

5代ぶりの生抜きトップスターの音月桂。

 

「ひとりっ子政策」名高い雪組で育ち、

新公主演5回、VISAという大看板まで背負わせ、

宝塚100周年に向けトップに立たせた劇団期待の星でした。

 

ところが、皆さんご存じの通り

彩吹真央の2番手退団、96期問題渦中の夢華あみの抜擢、

超絶問題作『仮面の男』と劇団の大失策が続き、

彼女はたった4作で早期退団、宝塚自体の人気もどん底となりました。

 

ここから、壮一帆の和物の雪組の復活による平定、

早霧せいな、望海風斗とバトンを繋ぎ、

そして彩風咲奈に辿りつけば、

音月ぶりの生抜きトップスターが就任することになります。

 

奇しくも、音月のお披露目公演『ロミオとジュリエット』、

退団公演『JIN-仁-』で音月の役を演じた、

つまり新公主演したのは彩風咲奈その人です。

 

まさに雪組御曹司のリベンジ。

そんな劇団の熱い思いを背負うことになる彼女に、

私は精いっぱいのエールを送りたいと思います。

 

潤花とのコンビ芸にも期待

 

そんな彼女の相手役に選ばれそうなのは、

同じく生抜きの102期生・潤花。

 

彩風と同じく、彼女もまた完全なる陽タイプの娘役で、

とにかく押し出しが強いダンサータイプ。

 

何より、彩風とはどうやらラブラブなようなので、

「ちぎみゆ」的な夫婦芸トップコンビも今は枠が開いていますし、

上手にそこに収まれば安定した人気が得られそうですよね。

 

そして音月桂の相手役である舞羽美海もまた生抜きトップでしたので

御曹司リベンジのための再現という意味では、

実にロマンチックな雪組らしいトップ人事演出だと思います。

 

果たして、彼女がどんなトップロードを歩んでいくのか

彩風トップ体制の雪組が今から非常に楽しみです!!

 

続いては愛月ひかる編です。(たぶん)

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様
    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科に戻りたい地方民です。

    役者さんって、演技の上手い下手とはまた別に
    A「若いころは美貌を生かして主役、その後うまく脇役ポジに移行」できる人
    B「脇に置くとオーラが変に浮いてしまう、主役しかできない」人(天海さんとかキムタクとか)
    C「脇役で輝くけど、真ん中はやっぱり馴染まない人」(香川照之さんとか)

    のタイプがあると思うんです。Cタイプは宝塚路線男役としては上がれないでしょう。

    望海さんはAタイプで、退団後しばらくして東宝エリザでゾフィー皇太后を演じていそうな気がする。

    朝夏さんや彩風さん、柚香さんはBタイプ(別に彼女たちが天海・キムタク「格」というわけでなく、「タイプ」の話)の気がします。

    (Bタイプって「何やってもキムタク」「いつもの天海」とか言われがちですが、キムタクだって演技派とは言わないけど「作品ごとに違うキムタク」になれていると思いますよ。)

    苦悩の似合う望海さんと、ワンスで「お前のせいでヌードルスが苦悩しているんだぞ、わかっているのかお前は」と説教したくなるマックスってホント対照的ですが(笑)

    彩風さんの真ん中でドンと鎮座して、世界を「これでいいのだ」と肯定してくれるような陽性のオーラは、昨今身に染みて感じる「宝塚は浮世の憂さを忘れにいくところ」という、ヅカの存在理由の根本に沿うものと思います。大丈夫、きっと。

  2. 松本典子 より:

    彩風さん、まぁ様ファンですもんね。
    まさに、まさに!
    という感じです。

  3. えりゅ より:

    当時衝撃的なショーストッパーと話題になった、彩風さんの『マリポーサの花』新公を生で観て心を奪われた人間です。
    奇しくもあのときも音月さんの役・・・
    思えば、まだ八重歯が愛らしかったあのときから陽オーラ満開でした。

    『ONCE・・・』のマックスは、あの陽オーラとやってることのギャップについていけず悩んだクチで(笑)、正直だいもんと逆バージョンで見てみたかった気もしたくらいですが、「役に打ち勝つほどの陽属性」というのは、確かに非常に大きな付加価値ですね。

    演目にもよると思いますが、彩風トップになっても、雪組の売上は全く低迷しないと思います!!
    二次流通のチケは間違いなく値段下がると思いますが、むしろ大歓迎です♪

    93期の連載、続きも楽しみにしています。

  4. abbie より:

    私は咲ちゃんのエレガントなダンスが好きでファンです。やはり舞台では否応なく眼を惹く存在ですから。

    とあるサイトを覗くと評価が低く残念な思いをしてましたが、確かな批評眼のある蒼太さんがこのようにしっかり評価をしてくださってると、我が意を得たり!という気持ちになります。

    いよいよトップに立つであろうとおもいますが、純花ちゃんと組む作品に興味津々です。

    ちぎみゆコンビ、だいきほコンビと人気の続いた雪組。さてさて新コンビはどんな作品を当てがわれるのでしょうか。魅力ある作品に恵まれますように!ガンバレ咲ちゃん。

  5. シンゴ より:

    次期雪組娘役トップは確実と思われた潤花の突然の宙組への組替え…!

    彩風の相手役は?この時期での組替えの意味は?蒼汰さんはどう思われるのか、興味津々です(^^;