SS席から見た宙組『カジノ・ロワイヤル』感想

 

真風涼帆&潤花の退団公演である宙組『カジノ・ロワイヤル』、

友の会が微笑んでくれて、宝塚大劇場のSS席で観劇して参りました。

 

 

「トップ退団公演に名作無し」なんて格言がありますし、

前評判で聞かれた感想も、なんだか微妙なものばかり…。

 

おいおい大丈夫かと心配しながら観に行きました。

そしたら、普通に面白かったです。

ってことで感想を綴っていきます。

 

本質は「なんちゃってスパイもの」

 

真風涼帆が退団公演でジェームズ・ボンドになるらしい。そう聞いたほとんどの方は、男役の覇者として君臨した彼女だからこそ演じられるような、死と危険が隣り合わせな危ない男が主人公の、知略と策謀と男女の思惑が入り乱れた大人なスパイものを想像したと思います。だけど実際は違いました。明るく楽しい、なんちゃってスパイもの。そう、分かりやすい一般大衆受けの娯楽作品、それが『カジノ・ロワイヤル』です。期待外れでした?だけどここには大きな計算があるように思います。

実は、ビターで大人なガチスパイ作品って、既に『Hotel Svizra House』で上演しているんですよね。しかも主演が真風涼帆で、相手役が潤花で、芹香斗亜、桜木みなと、瑠風輝、紫藤りゅう、春乃さくらが登板し、ついでに寿つかさ、松風輝、秋奈るい、花菱りず、小春乃さよと、上級生もそのまま全員出演しているという、笑っちゃうほど顔ぶれがそのまんま。なので私は、上演前から『Hotel Svizra House』との差別化が鍵だろうなと思っていましたので、こういう方向に振り切ったのは正解だと思いました。…ま、小池先生の発言を見るに、それが計算によるものなのか怪我の功名なのかは分かりませんけど。笑

ただし、そう割り切れるのは私が『007』を見たことが無く、ジェームズ・ボンドにも何の興味も無い人間だからかもしれません。逆に原作に愛着があるような、あるいは事前に想像を膨らませていたようなファン層は、そりゃイマイチですよね、という。なのでいっそのこと、ジェームズ・ボンドではなく、『Hotel Svizra House』のように架空のなんちゃってスパイものにした方が良かったのでは?と素人ながらに思ったのでした。

が、それだと偉大なる男役の覇者たる真風涼帆のサヨナラ公演には相応しくなくなってしまいますもんね。なので、ジェームズ・ボンドを原作としながら、実際の内容はそうでもない(ライトコメディ)ことを雑誌類やテレビ番組で匂わせておく、という小池先生の戦法は正しかったかな、と振り返って思います。

内容で言えば、ジェームズ・ボンド真風涼帆が任務遂行の行きずりでヒロイン潤花を助け、そのまま大きな事件に巻き込まれていく…という、それ以上でもそれ以下でもない典型的スパイアクションもの。その中で、真風涼帆にサヨナラメッセージを言わせ、潤花を綺麗に旅立たせ、寿つかさに見せ場を作り、新体制に向け春乃さくらや瑠風輝に出番を増やし、ついでに『エリザベート』『アナスタシア』『神々の土地』といった過去作品をパロり(分からなくても話は通じる程度の内輪過ぎないバランスがナイス!!真風宙組×ロシアの総集編と言った感じの、過不足無い仕上がり。何より、明るくサヨナラを言って舞台を去っていくのが、逆に心にくるものがありますね。さすが小池先生、本当に良い仕事してます。

 

さっくりキャスト感想

 

ここからはキャスト別さっくり感想を。

敵役のル・シッフルは次期トップが決まっている芹香斗亜。昨年のクリスマス特番あたりから分かりやすく精気に満ち満ちている彼女ですが、ビックリするほど煌めいていました。何より印象的なのは、お得意の「おふざげ」をほぼ封印したこと。行間で笑わせた場面はあったものの、徹頭徹尾2枚目悪役を演じております。ま、ラスボスというにはちょっと小物でしたけれど、彼女の気迫がそれを忘れさせてくれました。

過激派学生集団のボスにして実は…なミシェル役は桜木みなと。想像より若い役作りで、昔はこういう役よくやってたなぁ…という感じですが、研15だからこそ見せられる技量が光っていて良かったです。女王様である天彩峰里との組み合わせも実に微笑ましく、作品第3のカップルとして良いスパイスを効かせてくれていました。

番手カウント上順番を飛ばしましたが、第2のカップルはフランス諜報部とイギリス外務省勤務の瑠風輝&春乃さくら。瑠風輝は一気に垢抜けましたね!!出番も多く、本人の思い切りもだいぶ良くなり、素晴らしい活躍っぷりでした。何よりスーツ姿がよく似合う。そしてそれ以上に垢抜けたのが春乃さくらですよ!!『HiGH&LOW』からその兆候はありましたが、すっげー綺麗ぇぇぇぇ&細ぇぇぇぇぇええええーーーーー!!これが「立場が人を成長させる」ってやつか。芝居も歌も危なげなく、自立した大人な女性を魅力的に演じていました。芹香斗亜との並びも今から超絶楽しみです。

同じく垢抜けたといえば、ソ蓮の工作員(?)である鷹翔千空。彼女も今作がターニングポイントだって分かっているんでしょうね、ビックリするほどの気迫と圧でした。もともと綺麗な顔立ちが危険な香りにまみれていてより美しく輝き、出番が少ないを忘れてしまうほどインパクト大。最後のまさかの活躍も、そこから部下を見捨てられない妙な優しさも込みで、面白い役どころだったと思います。

今回で退団となる紫藤りゅうは、アメリカ諜報部員のフェリックス役。最初は出番が少なくて渋い…と思ったものの、結局はそこそこ出番があって大活躍。あげくカワイ子ちゃんまで奪っていって、なんだこの野郎!!って感じ(褒めてます)。最後に相応しい明るく陽気なアメリカン野郎でした。

むやみやたらと身体能力を見せつけさせられた優希しおんは、佇まいからしてポスト秋音光なんだろうなぁという感じ。風色日向&亜音有星のアホ兄弟は、いるいるこういう貴族のクソガキって感じで微笑ましかったですし、私の大好きな花菱りず&小春乃さよコンビは、大味強欲ママと神経質ママというまさかのシンメ登板でニヤニヤしちゃいましたね。あ、次期副組長の秋奈るいの成長っぷりも凄かったです。彼女って持ち味が硬質なイメージがあったのですが、しっかり上級生らしい男役芸(スカす仕草や眉間の皺)を魅せていて、本当に良かった。新体制も安泰ですね。

 

さらば真風涼帆と仲間たち

 

そして本作で退団となる組長の寿つかさ。ゲオルギー大公という、彼女らしい飄々とした欲深老人をカッコよく演じていましたし、最後の宙組スピリットの継承式のようなセリフも、ちょうど良くさりげなく、それがまた実に感動的でした。フィナーレでは誰よりもキレよく踊っていて、まさに視線泥棒。私は彼女を見に宙組に来ていた部分も少なからずあったので、退団は本当に残念です。

デルフィーヌ役の潤花は、現代的な価値観を持つヒロイン像を好感度高く演じていました。私の目からは2ndアルバムを歌ってた頃のエクステ付けた浜崎あ〇みに見えましたが、パツキンミニスカなチャンネーなのに品があるってマジで何事??!!いやはや退団が本当に惜しい…だけどその潔さも含めて、本当に大好きでしたよ潤花!!最後までカッコ良い娘役で居てくれてありがとう。

そしてイルカの賢さを教えてくれる(笑)、ジェームズ・ボンド役の真風涼帆。私が思う彼女の魅力は、男役に恵まれ過ぎたビジュアルとハッタリ芸だけでなく、以外とコメディセンスがあるところだと思うので、それが生かされた作品での退団となって本当に良かったと思います。SS席から見た彼女は、テレビで見ている以上に研ぎ澄まされた存在感が有り、その目線の動き、佇まい、呼吸やセリフの発し方、その全てが完璧な男役でした。最後に彼女をこんな間近で見られて感無量です。今まで本当にありがとうございました。

 

蛇足:まさかの遭遇

 

最後に、蛇足。(本人もSNSで宣伝してるしオッケーよな?)

劇場に向かう道を歩いていたら、まぁ桜が満開なこと!!

 

 

うわー、綺麗やなーとボーっとしながら歩いていたら、

毎年宝塚の受験を密着している某番組の撮影に遭遇。

というか立ち位置的に私が撮影の邪魔をしていたようで、一目散に退散しました。笑

そうか、もうその季節か…。

 

今年も新たなタカラジェンヌ候補生の誕生と、

涙を呑むたくさんの人が生まれるのですね。

桜が咲き誇っては散るように、春は出会いと別れの季節。

それをしみじみと噛みしめながら、東京へと帰ったのでした。

 

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コメント

  1. おさかな より:

    蒼汰さん

    SS席!羨ましいです。
    何としても潤花を宝塚大劇場で見たいと思い、私もチケを勝ち取り遠征することになりました!!
    年度末と期初の狭間という休めない状況ですが、ぶっ飛んできます!笑

    愛すべきトンチキ(?)かつ明るく見送れる作品になっているのかなと思うので楽しみです。まぁ泣くとは思うんですけど……笑。

    • こんちゃん より:

      蒼汰さま

      いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

      まあ、映画の007シリーズも脚本はトンデモですし、

      20世紀に映画化されたカジノロワイヤルはスパイ映画や007のセルフパロディみたいな作品です。

      小池先生の、知名度があって、著作権が切れていて、真風にピッタリなキャラに007!を持って来るプロデュースは慧眼だと思います。

      だけど第2幕は、スパイ映画というより、息子のお付き合いで見に行った仮面ライダー映画のショッカーとか死神博士のノリ。

      1968年にネオロマノフで世界征服!と言われましても。

      イルカのくだりもいいことを言っているのに唐突なのが?

      序盤に、ボンドが黒海のイルカスパイ訓練施設に潜入するミッションとか、もう少しリアリティのある展開を見たかったです。

  2. AKKO より:

    花の道の桜がきれいな時に大劇場で、それもSS席で観劇とは!うらやましい! でも私も東京公演のSS席、それも最前列をGETいたしました!
    SS席なんて何年ぶり?でも実は3年前にもGETしていましたが、コロナ禍で中止になってしまいました。。
    007は中身が薄いなどと叩かれていますが、娯楽スパイものとして見れば楽しめそうですね。気楽に構えて観劇したいと思います。そしてラスト真風を見納めたいですね。
    ちなみに映画の007は、ショーン・コネリーの「ロシアより愛をこめて」(もちろんリバイバル)を見ています。この時の印象は、女好きでかっこいいボンドと、ロシアと言いながら舞台はほぼトルコ?でしたね。まぁ敵対するスパイ&ボンドガールがロシア人だったかな?かなり昔なのでうろ覚えです(苦笑)
    でも個人的には映画版歴代ボンドより真風ボンドが一番カッコいいのは間違いなさそうですね^^

  3. ずんだもち より:

    「カジロワ」の感想 待っておりました。 楽しそうで良かった。
    もともと小池先生は気楽に楽しめる作品のように言われているので、最後のお祭りのようなものかと思ってはいました。
    「スヴィッツラハウス」で はるさくちゃんに“一耳惚れ”した私は「これでヴィジュアルがよければ‥」と残念に感じていたのに、ほんっっとに綺麗になりましたよね!
    東京公演は一枚確保したので、スターさんたちのまた一段成長した姿を観るのが楽しみです。
     ところで、小池先生は“オーシャンズ11”に継ぐものを考えてたりされてないかな、と。
    “ギャツビー“と”ネバセイ”は再演済み。
    “ポーの一族“は明日海りおが再来しないと無理。”ワンス”は結末が誰も救われなく暗い。
    “オーシャンズ”のように気楽に楽しめて、どの組でも上演できそうなもの。小池オリジナルなら宙組仕様の部分はその組仕様に変更できるし。
    退団公演真っ最中なのに、小池先生にも真風さんにも失礼かな‥ と思いつつ、ふと考えてしまうのでした。

  4. きゃさりん より:

    うわぁ!蒼汰さん、観劇かぶりです。私はB席でしたが、2回目の観劇で真風さんのカッコ良さを堪能してきました。キキちゃんのトップもめちゃくちゃ楽しみなのですが、やはり真風さんと潤花ちゃんのサヨナラは寂しいですね。そして、組長さんも!
    カジノロワイヤル、私はとても楽しかったです。最後のパラシュートで何だか泣けてきて。あ、いつもブログ楽しみに読ませていただいてます。

  5. あやこ より:

    あらやだ!赤黒からのSSボンド。合格発表のキラキラと退団者の勇姿。私なら、頭おかしくなりそうです笑。
    個人的に、真風体制の宙組は「浴びる」ものだと感じており、良席でわぁぁースゲー!と騒ぐのがハッピーだと思うので、今回のソウタ氏は理想の楽しみ方。それに、シリアスな銃撃線にしたら「暗い」「報われない」「よぅ分からん」になりますやんか。くすくす007からの、デリシュー!ゆうて、アクアヴィーテ!ゆうて、ホロッと泣き笑い。うむ、粋な去り方。私も、4月の観劇を楽しみにしておきます。

  6. 宙組の女 より:

    宙組ファンです。既に10回ほど観劇し、私も奇跡的に取れたSS席で観劇しましたが、蒼汰さんの感想に全文同感です。一語一句、言い得て妙です!ぼんやりと思っていたことを明確に言葉にしてくださり、感動しています。

    小池先生も「これは宝塚版」とコメントしているように007の映画のイメージで見ると肩透かしに合います。でも、真風さんはジェームズボンドに象徴される「男の中の男」を体現されているし、スーツ姿もトレンチコート姿も男役の集大成のような大人の色気満載のカッコよさはまさにジェームズボンドです。

    真風さんと芹香さんの対決はシャーロックを彷彿させ、マカキキもこれで見納めか…と感慨深いものがあります。桜木さんはコミカルで母性本能くすぐる役が持ち味にぴったり。そして瑠風さん!これまで見てきた、どの役よりカッコいいです。抜群のスタイルにウェーブがかった金髪姿はまさにエレガントなフランス人スパイ。私も今作品で一番垢抜けたのが瑠風さんだと感じました。鷹翔さんは、真風さんとの1対1のガンアクション+ラストの重要場面でしっかりと爪痕を残して目を見張りました。バウ主演を経てさらに綺麗になりましたよね。

    天彩さんのドロンジョ風の憎めない悪役も、春乃さんの透き通る肌に吸い込まれそうなヴェスパーも、そして、凛とした強さと気品に溢れた潤さんも、娘役さんたちの役も個性豊かで楽しいです。

    あと、芹香さんと天彩さんが元恋人の役だったり、カルトワインで結ばれなかった瑠風さんと春乃さんがカジロワでは恋人になるのも、宙組ファンには萌え萌えです。

    新人公演も無事に終わり(大路さんは真ん中オーラがありました!)本公演で進化する宙組が楽しみです。

  7. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    本公演、新人公演ともに観劇しました。
    やはり、宙組。
    スーツ物が似合いすぎます。
    職人ジェンヌ・真風さんと寿組長は、カッコいい!ただただ、カッコいい!
    夢見心地になれる、まさに宝塚歌劇、ですね。
    そして、星組の梅芸地上と地下とも観劇し、圧倒され声もでず、ぼーっとしてしまう、これもまた、宝塚歌劇なのですね。
    素晴らしい。

  8. ともじの嫁 より:

    こんにちは!
    大劇場SS観劇羨まし〜い!楽しめたようですね!
    実は私も来週、初めて宝塚に遠征し大劇場で観劇予定です!!時間がかかった聖地巡礼です。笑
    蒼汰さんの感想を頭に叩きこんで、楽しんで来ます!マカキキコンビ、潤花ちゃん、瑠風さん、、、全てが楽しみです!
    プラス、素敵な桜の花たちが残っていてくれれば最高ですが。ワオー!