勝利のセオリー・星組『RRR』感想

 

星組『RRR』観劇して参りました!!

 

 

まず最初に、私は相変わらず原作の事前予習をしておりません。

なぜって原作を見てしまうと、比較しないと気が済まないタイプなので、

我ながら自衛しています。←

 

特に『RRR』は話題作ですから、

自宅での配信鑑賞会等、何度も誘われましたし、

何度も誘惑に負けそうになりましたけど、

この日のためにずっと、ずーっと我慢していました。

 

そんな原作未履修ファンの感想を綴っていきます。

 

宝塚歌劇団の勝利のセオリー

 

宝塚歌劇団も110年目にもなると、成功のための様々なセオリーがあるように思います。例えば、時代の顔となるトップオブトップ、すなわち長期トップスターには、任期の後半に金をかけまくったスーパー超大作を持ってくる、とか。柚希礼音でいう『眠らない男・ナポレオン』(駄作だったけど)、明日海りおでいう『ポーの一族』。どちらも、これまた劇団が一年で一番力を入れるお正月公演にして、彼女たちの代表作となりました。で、本作はすなわち、令和最初のトップオブトップたる礼真琴のソレです。

特に明日海りお『ポーの一族』との親和性が高く、まずは原作ものであり、その再現度の高さもさることながら、主演を張るスターの人生を生き写すかのような物語であること。そして、次期トップスターである本命2番手(柚香光・暁千星)の大お披露目を兼ねていること。(と、ここまで書いて気付きましたが『眠らない男・ナポレオン』には次のトップとして落下傘した北翔海莉が出ているんですよね…偶然とはいえ出来すぎです。)普段ならヒロインを張るトップ娘役をポスターでも脇にどかし、トップと2番手がババーンと目立つように掲載(公演プログラムなんてW主演?と突っ込みたくなるようなページもちらほら)。また、トップ娘役とは恋仲とはならず、主人公にとって「憧れのお姉さん」ポジションとして物語を動かすだけ。主人公はトップスターであり2番手でもあり、ヒロインもまた2番手でありトップスターであるような、ザッツブロマンス作品です。

なので私が一番最初に抱いた感想としては、よくもまぁ今の星組にピッタリで、かつ一般人にも知名度の高い超話題作を、記念すべき110周年のお正月公演というタイミングに持ってこれたな、ということ。と同時に、よくもまぁ一本物にしたなかったね、ということです。だって原作は3時間なんでしょ?『眠らない男・ナポレオン』『ポーの一族』に続くなら、普通に考えたら一本物にするでしょうに。けど、冗長なシーンもなく、あっさりスッキリ濃度高めに物語を楽しむことが出来たので、ある意味正解な選択だったと言えるでしょう。

 

礼真琴は少年漫画路線でこそ

 

主人公のビームは、森で育った(?)真っすぐで穢れのない青年。攫われた村の少女を救うため、悪しきイギリス総督の家に乗り込むわけですけど、いかにも少年漫画の主人公のような純真で熱血で人情に篤くて、身体能力は抜群で、女性に弱くて、仲良くなった親友をアニキと慕い、そして命を懸けて助けに行っちゃうような人物像。もう笑っちゃうほど礼真琴にピッタリ。

だけど、背中に物語を背負っているのはむしろ暁千星演じるラーマの方なんですよね。大義のためにインド人でありながらイギリス総督に仕え、来たるべきタイミングを見計らう大人の男。大義のために友を裏切り、大義を超えた信念のために味方を裏切り、そして自分が窮地に陥る…。もうズルいやん、女の子がみんな大好きになるタイプのキャラやん、こんなの人気が出るに決まってるやん!!←

そして、礼真琴と暁千星が演じるキャラが逆じゃない、ってのが面白いですよね。普通だったら主人公としてラーマを置きそうなのに、敢えて逆にしている。そして下級生ながらタッパもあって、意外と髭も似合っちゃう暁千星がラーマを演じてこそ、そんな彼をアニキと慕う純真無垢な少年系ビームを礼真琴が演じてこそ、この萌ゆる関係性が成り立つという…。いや本当、若谷先生はやりよりますね。

男たちの熱き信念のぶつかり合いが、炎となり水となり、獣のオーラとなりぶつかり合う。インドという喧騒の国から生まれた情熱と、星組生の情熱とが交錯して生まれたパッションを、とくと味わえ!!という勢いを、この『RRR』から感じました。

 

その時代の風を閉じ込めた作品

 

演出面でいえば、今までの超本気大作やお正月公演と比べても、圧倒的に予算が少なく見えたのは、今の宝塚事情を鑑みるに仕方ないかもしれません。けど、それを創意工夫で原作を上手く再現し、そして星組生の実力とパッションで舞台を埋めていたように思います。炎と水のオーラをダンスと布のヒラヒラで表現、って若谷先生演出の『ダルレークの恋』を彷彿とさせ、今までの経験が終結しているのだなと謎の感動もありました。

また、物語的には主人公はヒロインとあっさり結ばれていないけれど、圧巻のフィナーレと花火バーンバーン!!でハッピー気分満開になり、爽快感と大団円のダブルコンボという力業でフィニッシュ。うーん、素晴らしい。これぞエンタメのパワーですよね。

さらに礼真琴&暁千星だけでなく、相変わらず自力で扉を開けちゃう系ヒロインの舞空瞳や、正3番手として今まさに旬を迎えているキラキラ全開の極美慎、その他のメンバーも役にピッタリ、かつ歌もダンスもハイパーな実力者集団だからこそ成立した本作は、まさに宝塚110周年の幕開けに相応しい、今の時代を閉じ込めた超大作となった、と言いたいところなんですけど、私はどーーーーしても『VIOLETOPIA』が不完全燃焼だったんでね。←

うーんって感じですが、とはいえ西ですらスーパーチケ難になったのも納得の出来栄え。一人でも多くの方がこの作品を目にすることが出来るよう、一ファンとして願いつつ、一旦〆ます。キャスト別感想も気力があれば書こうと思います。

 

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コメント

  1. ハリッサ より:

    まるでRRR履修済み勢からのコメント待ちのような感想!と思わずガッツポーズしてしまいました。

    映画はラーマが主人公なんですよ。でも、だからといってラーマが主人公のままもってくると、映画の焼き直しだけになってしまうし、ヒロインがさらに影薄に。拷問されがちトップの礼真琴ですし、ビームが主人公に据えたのはとても良いアレンジだなぁ、と感心しました。

    ジェイクなんか、映画だと3分しか映ってない(全体3時間のウチ、ですよ)のに、いい具合に膨らみ。映画だからこその高カロリーなアクション詰め詰めで3時間なので、1.5時間にきっちりまとめて一本物にしなかったのは本当に英断だと思います。

    星組もごらんになったことですし、ぜひ本家の方も見てみてください。

  2. コスモス より:

    こんばんは。お待ちしてました蒼汰さんのRRRの感想!
    もう書かれてる内容全てにいいねしたいくらい同意です。本当に今の星組でよくぞやってくれましたという作品ですね。素晴らしかったです!
    そもそも他の組がRRRをやってるところが想像出来ないんですよね。(もちろん他の組には違う持ち味と魅力があるのであくまでRRRという作品に対しての意味です)

    始まる前はラーマとビーム、配役が逆の方が良かったのでは?という意見を見たこともありますが、いやいややっぱり色々な意味でこの配役がベストだったのだと思います。

    見せ場はラーマも多かったけど、やはり「コムラム・ビームよ」は礼真琴さんの演技と歌唱力ですよ!このためにビームを主役にして礼真琴さんにあてたのではないかと思ってます。

    あと、超ダンサーの礼さんがジェニーとダンスをぎこちなく踊るシーンにも萌えがありました笑

    ナートゥダンス中の会場の一体感が凄くてめちゃくちゃ楽しかったです。

    他のキャストも皆似合ってて素敵でした。

    私はムラで2回観劇しましたが、今東京で現在進行形で見れる人が羨ましいです。それくらい何回も見たい作品です。宝塚はまだまだ落ち着かない状況ですが、こうして無心に楽しめる作品に出会えて良かったです。これぞエンタメの魅力ですね。

  3. YK より:

    いつも記事を楽しく拝見してます。RRRの感想ありがとうございます!全てを管理人さんが言ってくれました(笑)
    礼真琴はやっと代表作に恵まれたので、輝かしいウイニングラン(10作目?)に向けて駆け抜けて欲しいです!
    あと歴代のトップオブトップ(瀬名じゅん、柚希礼音、明日海りお等)は確かな実力で日本物のショーもされたので、9作目で礼真琴には素晴らしい日本物ショーをやって欲しいと思うのですが如何でしょうか?(皆さん日本物嫌いみたいで悲しい涙)
    今後も楽しい記事お待ちしております!

    • 甘栗プリン より:

      おはようございます!

      私は原作物は先に読む、映画は先に観る、でも宝塚舞台を自分で観るまでは他の人の観劇感想や舞台内容を知りたくない派です。
      こちらのコメント欄を読むのはとても楽しみなのですが、たまにムラ観劇の方々のネタバレがあるので油断なりません(笑)。私は東宝観劇組なので。

      私は映画を観た時、ダブル主演か、どちらかというとビームが主演だと思い込んでました。
      冒頭の少女が森で歌うシーン、まさにビームの行動のきっかけとしてとても印象的てしたから。
      映画ではラーマの許婚の方がヒロインらしく感じたのですが、舞台での舞空さんのジェニーはヒロインとしてとても良かったです。
      ジェイクの極美さんもぴったりでした。
      YKさんの仰るとおり、今後礼さんで日本物のショーあるかしら。
      楽しみにしています。

  4. 伊織 より:

    映画はラーマが主役なんですが、映画をご覧になるとどうしてビーム礼さん・ラーマ暁さんだったかわかるのではないかな~と思います。
    (私も原作はメディア展開後に履修するタイプなので、ムラと東京の間に観て色々と納得出来ることが多かったです。赤と黒に引き続き若谷先生を凄いと思いました。個人的には小池先生と同じくオリジナルは極力やらず海外版権だけやっててほしい……。)
    ちなみにVIOLETOPIA、初回は蒼汰さんとほぼ同じ感想だったんですが、3回目辺りから「ああこれはスルメだな……同じ演目を何回も観るような種類の人間にだけ刺さるよう作ったんだな……」となりました。
    大劇場デビューとしてはあまりに挑戦的だったとは思うのですが、天華さんの退団公演として何度も観る身には回数を重ねるほど深く刺さっていく作品として忘れられないものになりそうです。
    でも何度観てもサングラスだけはやめておいてほしかったなぁ!(笑)目元見えなくてもわかるけど最後なんだからずっとちゃんとお顔見せて!(笑)

  5. たのこ より:

    こんにちは。
    ムラでのチケ難公演なんとか2枚確保したの初日延期で1回だけ観れた者です。
    いつもながら鮮やかに言語化してくれる蒼汰さん(素晴らしい)、同意同意!!!と何度も読み返しました。
    途中北翔さんの話題。この時は12/11までご自身の主演公演を終えてすぐ、1/1からのナポレオン。小池先生に100周年のオールスター出演、お祭りみたいな気持ちでと、押し切られた…トップ打診を何度も辞退してた云々…裏話をあとから聞くと、劇団は長いスパンでレールを引いてるのだなあ、と。これに初めて気づいたのが北翔さんトップだったので、思い出しコメしてしまいました。

    これからも記事を楽しみにしています!

  6. みき より:

    RRR、ありちゃんの著しい成長ぶりと風格さえ出てきた姿を見ると、組替えがいかに大切か実感します。もちろん月組のままでも立派なスターに更に成長を遂げたとは思いますが、若々しい躍動感とエネルギッシュさは星組の個性の中で開花したと思います。一皮むけるには組替えはやっぱり大事!

  7. 美椒 より:

    いつも楽しみに拝見しております。
    RRRの記事、待っておりました!
    ありがとうございます。

    自力で扉を開けちゃう系ヒロインwww
    今回も爆笑してしまいました。
    ちなみに、私は自力開けちゃう系、好きなのかもしれません。
    舞空さんの前に好きだった娘役さんは、ちゃぴちゃんです。