月組『今夜、ロマンス劇場で』感想

 

さて、ありがたいことに既に2度拝見させて貰った

月組公演『今夜、ロマンス劇場で』。

 

私は宝塚に限らず、原作物は予習しない方が楽しめると学んだので、笑

敢えて映画版を見ずまっさらな気持ちで観劇しました。

本日は全体感想をさっくり書いていきます。

 

【レビューの感想編はコチラから】

小柳奈穂子先生による演出の勝利

 

まず最初に伝えたいことは、

近年稀にみる素晴らしい舞台だったということです。

 

大事件が起きるわけでなく、派手な舞台演出があるわけでなく、

ひそよかだけど心温まる、ファンタジーでハートフルなラブロマンス。

 

そう、宝塚に求められるであろう全てのファクターを兼ね備えた、

完全無欠なお披露目公演だったと評価したいです。

 

そりゃ原作の映画があるのだから当然だろ、と思うなかれ、

宝塚で舞台化するとなると、これが意外と難しい。

 

なぜなら、1組約70名の組子ほぼ全員に役を与え、

スターの格と出番のバランスを取りつつ、

宝塚という価値観にきちんとカスタマイズしながら

物語の風呂敷を包まねばならないから。

 

その点で、今回は小柳先生の演出の勝利かなと思います。

まずは何よりもオリジナル要素である、

暁千星演じる大蛇丸&三獣士の面々の部分が蛇足でなかったこと。

 

美雪が元居た世界にもきちんと物語があることを描きつつ、

リアルに寄り過ぎない程良いファンタジー感とコミカルさもあり、

舞台に良い塩梅のスパイスを効かせた存在となりました。

 

そして映像演出の使い方の素晴らしさよ!!

冒頭、白黒の世界に自身が投影されることにはじまり、

美雪と牧野が手を伸ばし合うけど届かない距離感、

牧野の祈りと美雪の祈りのオーバーラップ。

 

あと、2度目見た時に気付いたのですが、

「フィルムを手放すことになった」と本多に言われた瞬間に、

ちゃんと美雪が反応している細かさにも驚きました。

 

そして何よりも、最後の色の着く演出、あれは本当に見事でした!!

あのカタルシスを見るだけで9500円払う価値があるというもの。

 

現実世界の人々からも、映画の世界の人々からも、

みんなから祝福される愛の成就。

そしてこれが月組トップお披露目公演に重なるという、

素晴らしい脚本に感服致しました。

 

月組生による新トップコンビへの祝福

 

そんなわけで本作は、最近のどのお披露目公演よりも

月城かなと&海乃美月のトップコンビ就任への

祝福の意味合いが強かったように感じます。

 

なぜなら話の筋が、牧野健司と美雪のボーイミーツガールが焦点、

というよりも、本当にこれだけ。

 

例えば大蛇丸を交えた三角関係に焦点を当てるでなく、

俊藤龍之介と山中伸太郎を交えて男の生き様に焦点を当てるでなく、

あくまで他キャストは、牧野と美雪が描く愛の軌跡の材料でしかありません。

 

だけどむしろ、それが良いんだと思います。

2人の男女が奇跡のように出会い、

恋に落ち、そして成就する物語を描くという潔さ。

 

ありふれた毎日のようで、だけど本当はファンタジーと分かっていて、

誰もが夢見る永遠の愛を叶える瞬間を見せてくれたような、

そんな気持ちにさせてくれる作品となったからです。

 

そしてそんな作品を形作る、月組生の実力の高さも本当に素晴らしかった。

鳳月杏も、暁千星も、風間柚乃も、

達者で魅力的なスターたちでありながら、

ここでは月城かなと&海乃美月のお披露目への祝福だけに全力投球。

 

勿体ない気もしますが、それで良いんです。

だって2人のお披露目公演だから!!

そしてそれは、どんな下級生も、別格上級生も、同じでしたね。

 

全組子が芝居の月組に恥じない素晴らしい演技力で舞台を息づかせ、

まさに新生月組誕生!!という高らかな宣言のような、素晴らしい公演でした。

 

千秋楽公演は3月27日の予定です!!

 

本当は月組生一人一人にコメントをしたかったのですが、

長々と書いていたら結構な文量になってしまったのでこのあたりで。笑

もしかしたらキャスト別感想も書くかもね。

 

とにかく素敵な作品だったので、

興味のある方は既にチケットが売り切れているので

3月27日のライブ配信で観劇しましょう!!

 

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コメント

  1. リピーター より:

    細かいですが、健司が祈るところは銀橋に出てません。本舞台が映画館になってるのでそのまま居ますしそこに美雪がやってきます。

  2. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    キャスト別感想記事を、是非!お待ちしています!
    フィルムの中のおてんば姫の物語も、結構好きなんです…。

  3. なか より:

    何時も興味深く拝読しております。
    「今夜、ロマンス劇場で」の蒼汰さんの熱い感想に何度も深く頷きました。私は大劇場での観劇でした。東京では更にお芝居が深まっているのでしょうね。
    今日は、幸運にも大劇場での新人公演を観たことをふまえて、お伝えしたくコメントをします。

    少し遡ります。「桜嵐記」の新人公演も観ることができました。桜嵐記新人公演は素晴らしい出来映えで、本公演の負担減ため週に1回は新人公演メンバーでの本公演でも良いのでは・・・と思ってしまうほどでした。100期が抜けたとはいえ「今夜、ロマンス劇場で」もほぼ同じ出来映えの感想だろう・・・と勝手に思っていました。
    「今夜、ロマンス劇場で」の新人公演は、新人公演メンバーは悪条件の中、全力で頑張っていました。新人公演としては素晴らしいと思いました。でも、「桜嵐記」の時に感じたような本公演も・・・とは感じませんでした。
    何故なのだろう・・・。自問自答を繰り返しました。

    結果たどり着いたのは・・・。作品の持つ「うねり」です。
    「桜嵐記」は作品自体がうねりを持っています。演者はそのうねりに振り落とされないようにしがみつく。演技の目標がはっきりしている気がします。それに対し「今夜、ロマンス劇場で」はファンタジー要素はあるものの物語自体に大きなうねりはありません。
    ケンジとミユキが感じたことを言葉として発し受け止め返す。
    その繰り返しでさざ波が起き、やがて流れとなる。
    そんな深い芝居を月城さんと海乃さんが織りなしていることを新人公演を観て改めて感じ入りました。
    新人公演もキャラクターが立っている大蛇丸や三銃士の出来は遜色ありませんでした。
    『普通の人物』を大きな劇場の隅々まで息づかせる月城さんの月組生の演技にただただ感服でした。
    その上級生の近くで演技し、学んでいる下級生。月組のお芝居がますます楽しみでなりません。