花總まり・宝塚の歴史に名を残す女帝

今月のスカイステージは

「漫画原作公演特集」と「お披露目公演特集」のようですが、

ざっと番組表を見たところ、出演者欄が花總まりだらけなのに気付きました。

そう、今月は花總まり祭りです!!

 

番組情報

8/2:満天星大夜總会-THE STAR DUST PARTY-(03年宙組)

8/5:ネオ・ヴォヤージュ(05年宙組)

8/10:虹のナターシャ/La Jeunesse!-ラ・ジュネス-(96年雪組)

8/11:JFK/バロック千一夜(95年雪組)

8/13:真夜中のゴースト/レ・シェルバン(97年雪組)

8/16:望郷は海を越えて/ミレニアム・チャレンジャー!(’00年宙組)

8/25:虹のナターシャ/La Jeunesse!-ラ・ジュネス-(96年雪組)

 

お披露目公演特集ということは

歴代5人の相手役を務めた花總まりが出まくることになるのは当然のこと。

(なぜか姿月あさと時代の公演はたまたま放送されませんが…。)

公演年を見ると、彼女が幅広い時代で活躍していた様子がよく分かります。

 

歴代最長トップ娘役を張った女帝

 

花總まりと言えば、在位12年という

歴代最長トップ娘役を張ったタカラジェンヌであり、

ついたあだ名は「女帝」。

 

研4で雪組のトップ娘役に就任後、

一路真輝・高嶺ふぶき・轟悠・姿月あさと・和央ようか

5人のトップスターの相手役を務めました。

 

彼女について語られるのは、劇場に緞帳を送っただの、

実家が大金持ちで衣装は全部自前だの、

金銭にまつわる噂が多いわけですけれども、

 

私のような後世の人間が彼女の舞台姿を見て思うのは、

この人ほど宝塚作品のヒロインを演じるに

相応しい人はいないなぁということです。

 

薄めの顔だからこそ化粧映えがする顔立ち、

どんなドレスでも完璧に着こなすスタイルと所作、

歌唱力、ダンス、芝居力だって申し分なし。

 

その一方で、娘役という枠に捕らわれることなく、

もはや相手役たる主演者を喰う勢いの求心力も持ち合わせているのが、

彼女の恐ろしいところ。

 

彼女の代表作は数知れず、

初演作品だけざっと挙げるだけでも、こんな感じ。

 

1996年『エリザベート』シシィ

1997年『仮面のロマネスク』メルトゥイユ侯爵夫人

1999年『激情-ホセとカルメン-』カルメン

2002年『鳳凰伝』トゥーランドット

2004年『ファントム』クリスティーヌ

 

個人的には『仮面のロマネスク』の花總まりが大好きでして。

「愛にまで仮面をつけてしまった」などというセリフが似合う

クラシカルで気高い役を、よくモノにしているなぁと感心してしまいます。

 

その返す刀で「貴方が居なくなる今日、私の命も終わるのよ」と告げ、

振り返る彼女の目からは一筋の涙が…。

っはぁーーーーーーーーー!!痺れますねぇ。笑

 

その他、ベルばらだの風共だのうたかただのあかねさすだの、

宝塚のクラシカル作品にほぼ主演済み。

 

初演『エリザベート』の成功を含め、

平成宝塚史に花總まりありとは、まさにこのことでしょう。

 

花總まりの本当の魅力とは?

 

とまぁ、いかに彼女が凄い娘役だったかを列挙したところで、

私が勝手に思っている花總まりの本当の魅力について書かせて頂きます。

 

それはずばり、どれだけ主演者を喰う勢いの舞台人としての技量があろうと、

決して宝塚の娘役らしさを失わなかったことだと思うのです。

 

舞台人として圧倒的パワーがありながら

常に主演者であるトップスターを娘役として立て続けていた彼女。

 

いかに傲慢な役を演じようと、

その心の内で主役たる男性を心から愛しているように魅せる表現力、

そんな宝塚らしい夢々しさは、特筆すべき点だと思います。

 

その一方で、主演者の邪魔にならない実力も当然兼ね備え、

かつ12年間一度も休演したことが無い(らしい)という

精神力とプロ根性も兼ね備えているのだから恐ろしい。

 

さらに、彼女の娘役としての魅力は何かと考えたときに、

私は「新鮮さ」だと思うんですよね。

 

特にパレードの階段降り。

彼女の前の2番手スターが歌っている間に大階段をスススと流れるように降り、

真ん中で立ち止まり、照明が当たった、その瞬間の表情をぜひご覧頂きたい。

 

まるで美しい花がゆっくりとほころぶような、その新鮮な表情。

さも「私、初めてピンスポが当たりました!!」と言わんばかりのフレッシュさに

毎回毎回、驚かされます。(以前に自身でも語っていた記憶が…詳細は忘れましたが。)

 

何が恐ろしいって、彼女の退団公演である『NEVER SAY GOODBYE』でも、

この表情が変わっていないことです。

当時研16ですよ?凄くないですか?

 

そんなわけで、彼女が出演している公演がスカステで放送されると

毎回毎回、階段降りの表情に注目してしまう私なのでした。笑

 

現役舞台人としての活躍を思う

 

そんな彼女と言えば、退団後も舞台を中心に多く活躍中。

特に東宝版『エリザベート』ではシシィとして長く主演しています。

 

現役時代、どれだけ活躍しようとも、

その花園から外に出てしまうと思うように活躍出来ないOGが多い中、

彼女は大きい舞台作品に途切れることなく「主演」中。

 

いかに彼女が舞台人として優れた人材であるかが分かると同時に、

ある一人の女性が、美貌と、技巧と、才覚と、金銭的余裕とを持ち合わせ、

宝塚に入った運命の凄さを実感してしまいます。

 

宝塚の女帝と呼ばれ、劇団に多大なる貢献を果たし、

今なおその道の最先端をひた走る彼女。

 

そんな彼女の道しるべが今月、

スカイステージで多く放送されますので、

ぜひ皆さんご覧になってみて下さい!!

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。スカステ専科の地方民です。

    私が初めて生で見たジェンヌは花總まり様です。

    忘れもしない、1996年初夏、ムラでのエリザ初演と東宝でのエリザ初演の間に行われた、地方公演でのあかねさす紫の花。

    少女時代の額田が走り出てきた瞬間、私のシナプスは飽和の量を超えた衝撃に焼き切れ、県民ホールの客席は万葉の野原になって、私の心は野守になって立ち尽くしたまま、今にいたるのです。

    たぶん私はあの万葉の野原に、とんでもない落とし物をしたままのような気がする(笑)

    つまり私はエリザ初演の時の花總まりを、生で見ているのよ(ドヤ)

    花總まりさんの演技って、いわゆるメソッド演技なんでしょうね。

    メソッド演技:その役柄を演じるために、その感情と呼応する自らの過去を追体験する演技法

    役に入り込む、というか、役の感情と、役者自身の感情との継ぎ目が無くなって、客も役者の感情に引きずりこまれて「え、この人、マジ?」と怖くなってしまうような人。

    「本人のことはしらんけど、エリザさん本人がいたわ」と言われる人。

    過去のセピア色の記憶を掘り起こして、というより、その役者はタイムマシンのように、過去その時点に戻って、感情を「今生まれた新しい感情」として、毎回体験できるのではなかろうか。

    普通の人には、メソッド演技はある程度は訓練できても、「上手いを超えて怖い」レベルに行くには、それは神に与えられた天与の才なんでしょうね。

    でもその才能は、役者の私生活での心の平穏、という意味では、幸せなんだろうか。

    「あの俳優は繊細で、役の感情に自身の感情が侵食される時があって、“役を抜く”のに周囲が気を遣った」とか言われる方がいますが、

    「役」の感情と「私」の感情が混然一体となるって、しんどそうで・・・

    役どころか自分の感情すら忘れっぽくなって「悲しい記憶の数ばかり 飽和の量より増えたなら 忘れるよりほかないじゃありませんか♪」な人間で幸せかもしれない。

    “自分以外の誰かになる。恐ろしい芸術だわ。そんな異能に長けた人間を育てて、彼女の人生に責任がとれるの?”(少年ジャンプ連載 アクタージュ より)

  2. ちくわ より:

    こんばんは!いつも記事更新ありがとうございます。
    昨年のエリザを観劇したときのこと。プロローグが終わってニコッと笑みを浮かべた瞬間、「こんなに可憐で瑞々しい少女がいるものか」と衝撃を受けました。(前おっしゃっていたのもこのシーンだったような気がします) そこから一転し、「私だけに」を歌い上げ、最後の最高音がピタッと決まったときにまた鳥肌。永遠に記憶に留めておきたい、思い出のシーンです。
    実はわたくし、初めて花總さんを認識したのが、大河ドラマ「おんな城主直虎」の佐名おばさまでした。世界観にすっと溶け込んでいて、宝塚を知らないなりに「凄い方なんだな」と思った記憶があります。今でも家族のなかでは「佐名おばさま」で通じるほど。舞台での活躍はもちろんのこと、映像でもまた見たいです。

  3. 春田加奈子 より:

    お花様の凄さは、、、未だどんどんフレッシュな可愛さが進化しているところです❣️
    東宝エリザベートでシシィの娘時代で登場した時に本当の少女が出てきたかと錯覚してしまう。
    なのに女王を演じると風格とオーラがとんでもなくて。
    元ジェンヌ娘役さんは沢山いらっしゃいますが、お花様は別格としか言えません。
    本当に年を取らないのではないでしょうか(笑)

    昨日ムラのはいからさんが中止のLINEで自宅に引き返し、スカステ何気に見ていたら思わず見入ってしまいました。
    番組表ちゃんと見てませんでしたが、そうなのですね、今月は楽しみに見たいと思います。

  4. えべっさん より:

    こんばんは。
    僕は宝塚で現役時の花總まりさんを
    観劇したことはなく映像のみです。

    ただ、エリザベート、マリーアントワネット、
    レディベスなど退団後の公演は何回か観ましたが
    なんと主役が似合う方なのか…と圧倒されました。笑
    あの演技力、歌唱力、高貴で気品のある圧倒的なオーラ
    すべてが魅力的で、宝塚時代も生で観たかった…
    と今更ながらに思ってしまいました。笑

    映像でしか観ていないのに、トゥーランドットの登場、
    エリザベートの鏡の間の場面など全てを惹き付ける力…
    何度も観てしまいました。笑

    記事にあるよう色んな噂が絶えない方みたいですが
    それでも12年をやり遂げるだけの実力は流石だなあ
    と人並みですが感想を抱いてました。

    これからも、応援を続けていきます(^^)

  5. まちゃん より:

    蒼汰さんこんばんは。

    再演も含めて、多分2014年くらいから毎年タイトルロールで帝劇の主演をされていますよね。それだけでも舞台人として、花總さんがどれほど必要とされているのかを感じます。歌もダンスも技術的にもっと巧みな方はいらっしゃると思いますが、花總さんのそれらを観ていると、人物の感情が伝わってきて心が震えます。視線の動かし方なのか、彼女の眼差しもとても好きなんですよね。

    記事を読んでこれからどんな花總さんがみられるのかとっても楽しみになりました。ありがとうございました!

  6. 香織 より:

    こんばんは。
    新鮮さを失わない花總まり…。
    数年前、某トーク番組にて、毎年新しい生徒が入団する劇団において、トップ娘役として、フラッシュさを保つために、声を高くしていた、「テンション高いね」と周りによく言われるくらい気持ちを高くもっていた、と仰っているのを拝見し、更にその凄さを感じました。

  7. ATS より:

    蒼汰さま♡

    いつもとても楽しく拝読してます。

    私もムラでばかりですが、毎公演一回ずつ観ているという、ライトファンなんですが、ちゃんと宝塚を自分から観に行きたいと思ったのが、大学生の頃、和央さん時代の宙組がきっかけで、今回是非ともコメントしたいと思い、失礼します。

    和央さん以降も娘役さんをずっと観て来て、やはり花總さんは特別で、東宝で役替わりがあれば、まず花總さんの日を絞っていつチケットお願いしようかと思うほど。

    蒼汰さんがおっしゃってた新鮮さ、すごくわかります!少し話が違うかもですが、東宝エリザのシシィの幼少期にいきなり歌い出すところなんて、在団時より初々しくさえ思い、この人怪物だわと思いました。

    昔、彩乃かなみさんだったかな?まだ下級生の頃、花總さんに娘役で大切なものって何ですか?と聞くと、常に新鮮さを持ち続けて、お客様に飽きさせないこと、おっしゃられ、その言葉を胸に刻んで今、トップ娘役として意識してます、的な記事かインタビューを見たことがありました。

    娘役って、主演ほど役の幅が広がりがないから、常にそういう意識だったのかなぁと思っていましたが、今回蒼汰さんの記事を読んで、より深く裏づけられました。

    明後日はサパー予定で、その次はずんちゃん予定ですが、はいからさんが二回観る予定が流れてしまい、はいからさんが通らない私です。今後も楽しみにしてますので、暑い日が続き大変な今日この頃ですが、蒼汰さまもより一層のご自愛専一になさってくださいませ。