海乃美月・チャンスを掴んだ運命の娘役

 

娘役人事は、水物。」

誰が言い始めたのか知らないが、宝塚人事を表す言葉の一つです。

 

絶対にトップ娘役になると思われていた人がなれなかったり、

あるいはまさかのタイミングでチャンスを掴む人も居たり。

 

最近だと、妃海風、仙名彩世、朝月希和、

そしてこの度月組トップ娘役に選ばれた海乃美月。

 

海乃と他の3人のと違いは、

トップ娘役大本命と思わ続けながらもチャンスを掴めず、

かと思いきや最後の最後で運命の女神が微笑んだことでしょう。

 

海乃美月・その華麗なる経歴

 

海乃美月は、月組に配属された直後から

娘役として大抜擢の嵐でした。

 

研2にして『ベルサイユのばら』新人公演でロザリー役に選ばれ、

翌年『明日への指針/TAKARAZUKA 花詩集100!!』で正式に新公ヒロを務める。

 

そこから『THE KINGDOM』Wヒロイン、

『PUCK/CRYSTAL TAKARAZUKA』で新公ヒロ&エトワールの合わせ技、

続く『1789』ではヒロイン格であるオランプ役を熱演と、

トップ娘役候補として一気にスターの階段を駆け上がります。

 

…が、その後も『A-EN -ARI VERSION-』ヒロイン、

『グランドホテル』新公ヒロ、『瑠璃色の刻』東上ヒロと、

いわゆるヒロインカードだけは着々と集めていくのに

肝心のトップの座にはなかなか近づけませんでした。

 

いつも早乙女わかばとW娘2体制で誤魔化され続けた間に、

気付けば珠城りょうの後妻枠を美園さくらに奪われてしまいます。

 

今振り返れば、愛希れいかが短期だった場合の龍真咲の後妻、

あるいは龍真咲と珠城りょうの間に「誰か」がトップになった場合の相手役

というのが彼女のトップ娘役就任のタイミングだったのでしょう。

 

しかし残念ながら月組人事はそのような動きとならず

しかもヒロインの歌唱力が重要な『I AM FROM AUSTRIA』の上演も控え、

彼女にツキは回ってきませんでした。

 

美園さくらトップ娘役就任決定直後からは

強い娘2ポジションとして別箱ヒロインをほぼ独占。

 

ですが、本公演では微妙に扱いが弱くて、

『クルンテープ』は怪我休演、

『ピガール狂騒曲』では天紫以上のモブ扱い。

むむむ大丈夫かと思っていた矢先の、トップ娘役就任劇となったのでした。

 

チャンスの糸を掴むということ

 

以前、こんな記事を書いたことがあります。

 

 

この記事はコロナショック直前、

かつ珠城りょう退団発表前のものです。

もはやこの頃が懐かしいですよね。笑

 

記事を要約すると、海乃美月はいわゆる報われガールズの中で

トップ娘役になれる可能性が一番高いと思われる。

 

その理由は、月組生え抜きであり、

年齢が上がるにつれ魅力が増すタイプであり、

そして月組内に他に強い娘役が居ないから。

 

可能性としては誰かの落下傘の受け皿か?と思っていましたが、

結果は珠城りょう退団からの

月城かなと順当昇格としての相手役を務めることになりました。

 

予想としては半分当たって半分外した感じですが、

海乃トップ就任劇は個人的にずっと応援していたので純粋に嬉しいです。

 

改めて、海乃美月が97期生でなかったら、

月組生でなかったら、途中で組替えしていたら、

あるいはコロナ禍で若手育成がストップしていなかったら、

彼女はトップ娘役にはなれなかったかもしれません。

 

一番は彼女が最後まで諦めなかったことですが、

他のトップになれなかった娘役たちが、

諦めてしまったり努力をしてこなかったわけでは、当然ありません。

 

じゃあ何が違うのかと言われれば、

全てはタイミングという名の「運」でしかありません。

 

さらに月城かなとという、自分が最も映えさせることの出来る、

シックで芝居心があってダンスが不得手な男役がトップに就任することになった、

その流れこそが、彼女にツキを呼んだ最後の一手だったと言えると思います。

 

これを運命と呼ばすして何と呼びましょう?

いいえ、運を掴むのも実力のうちです。

彼女もまた、運命に愛された娘役の1人となったのでした。

 

大衆を味方につけた海乃美月

 

個人的に、海乃美月の魅力は

そのエレガントなダンスに凝縮されていると思います。

 

娘役のダンスの上手さはスカート捌きに表れると言いますが

『Anna Karenina』『出島小宇宙戦争』のフィナーレなんて

素人目にも分かるほど本当に美しいですよ!!

 

同じダンサータイプでも、舞空瞳が一般的なダンサーらしい

ダイナミックさ溢れる点が魅力だとすれば、

海乃美月はバレエが基本にある娘役らしい優雅さが魅力だと思います。

 

たおやかで気品のあるダンスは、

相手役たる男役をよりカッコ良く魅せることが出来る。

 

それを『ダル・レークの恋』配信放送で改めて気付かされましたし、

あそこまで月城とのコンビの調和の美しさを魅せられたら、

そりゃ是非トップにとなりますよね。

 

その熱が冷めやらぬままのトップ就任劇。

月組にしては珍しく、もろ手を挙げての喜びに満ちた発表になったのでした。笑

 

彼女のタカラジェンヌとしての人生は

終幕に向かいつつあるのかもしれませんけれど、

トップスターとしての頁はまだ始まったばかりです。

 

その美しいスカート捌きのように、

見る人全てが夢見心地になれるような、

そんな物語が紡がれることを期待しています。

 

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コメント

  1. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    月城さんが95期、海乃さんが97期、トップ男役とトップ娘役が2期違い、というのもすごいですよねえ。

    男役と女役の、時間の流れの相対性理論。

    たとえば、同期で新人公演で主役とヒロインを務めたコンビがいるとして、

    男役さんがトップになって思い出再演をするころに、かつて新人公演でヒロインとして組んだ娘役さんが在団していたとしたら、

    男役さんは青年役のままなのに、かつての相手役さんは、今度は主人公の母親役になっている、というくらい、娘役の時間の流れは速い。

    そんな宝塚で、いわゆる「女役」が回ってくる学年でのトップ娘役就任。

    本公演では、無垢が売りの若い娘役さんでは出せない、フランス映画的の女優さんのような「人生経験は女の勲章よ!」な役を見たいなあ。

  2. まりたん より:

    はじめまして
    いつも興味深くブログを拝見させていただいております。

    今回のブログの文章が狙ったかのように美しく纏まりすぎていて思わずコメントさせていただきました(*^m^*)

    タカラジェンヌみんなが自分のゴールを全うできるよう広く応援していきたいと思います!
    これからも更新を楽しみにしています!

  3. MS より:

    主演コンビを組んだTHE LAST PARTYやダルレークの恋も、夫婦役のアンナ・カレーニナも、名作の再演物です。過去の作品を上回る程の出来ではありますが、やはり、2人の新作を観たいです。
    祐飛さんとすみ花ちゃんがトップコンビになった時以来のワクワク感です。どんな作品が待っているのか。
    大人の恋も、そしてこのコンビでコメディーも観てみたいです。