100周年を迎える少し前の宝塚には、
若手時代から実力派で唸らせた低身長スターは、
便利使いされてトップ就任は遅くなるという謎の不文律がありました。
パッと思いつく限り、
香寿たつき、安蘭けい、霧矢大夢、あたりでしょうか?
何が恐ろしいって、この謎のイメージにより、
礼真琴すらトップ就任が遅くなるんじゃないかと一部で予想されていたこと。
んなわけあるかい!!と当時からツッコんでいましたが、
一度固まったイメージというのは、なかなか塗り替えられないものです。
風間柚乃という「宝塚の怪物」
さて、表題の風間柚乃。
ご存知の通り、新公学年のスターの中ではぶっちぎりの実力者です。
入団時は、夏目雅子の姪という血筋ばかりが注目されていましたが、
今やその肩書を聞く機会はほとんどなくなりました。
何故って舞台上での彼女の方がよっぽどドラマティックで、話題性が高いから。
そして、その実力で宝塚ファンの心を掴んだ結果、
「ただならぬスター」という看板をゲット出来たから。
振り返れば、彼女は路線として順調に歩を進めたというより、
代打登板でチャンスを掴み、期待に応えたという、
珍しい滑り出し方をしたスターです。
『エリザベート』では美弥るりかの休演に伴い、
研5で本公演ルキーニを代打登板、
しかも役替わりでルドルフとシュテファンの合計3役を演じながら。
続く『夢現無双』では月城かなとの休演に伴い、3番手役を代打登板。
そのまま『チェ・ゲバラ』では、なんと轟悠の相棒役に抜擢。
しかも全部、新公学年という言い訳を使わず見事にやり切った。
相次ぐ路線スターの休演という月組の非常事態を
なんとか乗りこなせたのは彼女の実力が大きい。
いや本当、月組Pは彼女に感謝すべきでしょう。笑
改めて彼女の芝居力って凄いなぁとしみじみ思います。
昨年のお正月特番の100期生クイズ大会でも、
1人だけぶっちぎりで上手かったもんなぁ。
芸事の家系に生まれ、本人は幼少期から宝塚が好きだった。
だからこそたゆまぬ努力もお手の物でしょうし、
血筋と努力、どちらも手中に収めているからこそ、
彼女のような「怪物スター」が生まれたのかもしれません。
暁千星 VS 風間柚乃
風間柚乃を語るうえで、2期上の暁千星を忘れてはならないでしょう。
98期首席入団者にして月組の超御曹司スター。
当初は可愛らしい顔立ちとテンパり具合から「バブ芸」でしたが、
下級生の風間の猛追を受けてからは一皮剥け、
最近は本来の彼女の素に近いであろう「ヤレヤレ路線」に傾きつつあります。
キラキラダンサーの暁千星と、いぶし銀芝居達者な風間柚乃。
とても良い相性で、『ピガール狂騒曲』『ダル・レークの恋』と、
それぞれ得意分野を生かし互いを引き立て合っていました。
間もなく、月組は月城新体制が組まれます。
このままいけば、2番手・鳳月杏、3番手・暁千星、
そして4番手に風間柚乃が据え置かれるはず、盤石ですね。
気になるのは、この体制が果たして永遠に続くかと言うこと。
もっと言えば、暁と風間のどちらかは
組を出ることになるんじゃないかということです。
さすがに月城→暁→風間と無難に繋ぐなんてことは有り得ないでしょう。
宝塚は(特に月組は)予定調和を嫌いますから。笑
じゃあどちらが出る可能性が高いかと言われれば、
個人的には風間の方かなと予想しています。
月城→風間と繋ぐにはあまりにカラーが似すぎていますし、
月城→暁と繋ぐために、あえて鳳月杏を挟んでいると思うからです。
とは言え、風間はアンバサダーガールス。
万博が開催されるであろう2025年くらいまでは動かない「はず」ですので、
しばらくは月組でステイとなる可能性が高いでしょう。
月組の2学年差コンビと言えば、
龍真咲と明日海りおの「まさみり」コンビを思い出しますが、
さすがにWトップ体制なんてヘンテコなことはもう起きないと信じつつ、
暁千星との良いグラデーションを見せ、楽しませて欲しいと思います。
実力派スターに立ちはだかる壁
突然ですが、実力派スターに苦労人が多いのは何故でしょう?
個人的な見解を述べるならば、
なにがなんでもこの人をスターにさせたい!!という熱意を
ファンに抱かせづらいからかな、と思ったり。
もっと言えば、新公時代は「若いのにお上手」とみんな褒めてくれるけれど、
ある程度の学年になると「無難で小さくまとまっている」と言われてしまう、
いわゆる優等生の壁にぶち当たる人が多いように思います。
そしてその壁を乗り越えるには、
突出した何か、つまり、強烈な個性が必要です。
それは望海風斗でいう圧倒的歌唱力であり、
礼真琴でいうシャカリキダンスである。
そしてこの2人、何よりも「トップに立ちたい!!」という情熱が感じられた。
だからこそ、ファンはスターを信じ、全力で応援したのです。
今の時代は少しでも野心を見せようもんなら、
「品が無い」だの「調子にのるな」だの品格警察に怒られてしまうので、
風間柚乃に今それを見せろ、というのは酷な話でしょう。
だがしかし、彼女は宝塚が好きで入団していますので、
たぶんきっと、向上心は、ある、はず。
あとは彼女の個性が一体何なのか、という話なわけですが、
それを模索していくことが今後求められるものなのかな、と思うわけです。
最初から平坦な道なんて、つまらないもの。
これからたくさんの優等生の壁にぶち当たり、
悩み、傷つき、立派なスターになってくれっっ。
と、本人にはいたって傍迷惑なエールを、私は送りたい。
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コメント
いつも楽しく拝読しています。
風間さんてラッキー人事だったのか?というと
少し謎なんですよね。
出だしは同期の男役、蘭、新の方が役付きは良かったですから。
でも、ここぞという時に(A-ENで女装でアーサと踊ったり)
押されてる感もあり、まさか月組Pは、温めて押し出す時期を練っていたのか??と思ったことも。
彼女の評判が7光(どころではない)から彼女自身の実力に注目を集めるようになったのはやはりグラホ新公でしょう。
そこからは月Pの戦略を常に1歩先に行くかのような、役が配される運とそれに伴う結果を出してきた…彼女の研5~研6の成果は後に伝説となる気がします。
血筋と才能とZ世代(これは関係ないですかね笑)が生み出した
彼女という若者と美園さくらの頭脳(数学検定で文部科学大臣賞受賞)は理解を超えてたところにあると思っています。
(すみません、余談でした。)
ところで前述の極美くんが覚醒するには、月組で場を与えられての武者修行が良い気がしますがいかがでしょうか。
但し風間さんは星組かと言われると違うんですよね。。
そして単にチェンジとなると今の極美くんでは潰れてしまう。
となるとアンバサダーシャッフルですかね。
今の状況下では万博に関するお仕事が発生するのも
まだまだ先になりそうですし、必要であればして組に縛らず
組替えして欲しいと個人的には思っています。
>本人にはいたって傍迷惑なエール
爆笑してしまいました
こんばんは。
いつも楽しく、興味深く拝見しております。
大劇場で公演中の「桜嵐記」で、やはり風間さんのお芝居に、見入ってしまいました。
いつぞやの記事で、”本人の風格とスターとしての格が、やっと釣り合った”と、蒼汰さんが評された、風間さんのバウ主演公演、ALL THAT JAZZ ……。新たな魅力をみせて貰えそうですね。観たい!です。
初めてコメントさせていただきます。
他ならぬおだちんの記事で嬉しくなりました。
私は子供の頃から夏目雅子が大好きで大好きで、彼女の姪であるおだちんのことは注目して見守っています。夏目雅子は生前、「お嬢さん芸」と揶揄され、演技力が磨かれるのはこれからというときに亡くなりましたが、おだちんを見ていると夏目さんが生きていたら美人だけにとどまらず、ものすごい演技派になっていたのかもしれないなあと思うようになりました。夏目雅子贔屓という点を除いてもそれほどおだちんの才能は目を見張るものがあります。夏目さんの母上でおだちんの祖母スエさんは異常に芸能界、芸能人を毛嫌いし、やり過ぎじゃないかというくらい夏目さんの芸能活動を嫌がり、いったい雅子は誰に似たのかとため息をついていたようですが、夏目さんの父方のおばあちゃまが藤原歌劇団に財団していたそうで雅子はこの人の血を引いたのだろうと自著に書いてありました。おだちんもそういう血筋なんでしょうね。しかし、同じ姪にしてもいとこの方は全くパッとしないので血筋だけの話ではないのかもしれませんが。
礼真琴もあまりに器用で何でも出来過ぎ、星組は彼女だけに頼りすぎた感があり、下を育ててなかったことに今頃慌てて奮起しているようですけど、何ごともバランスよく、おだちんのことも便利に使うのではなく大切に育ててもらいたいと願うばかりです。月組は得体が知れないところがあるのでそこはすごく心配です。
ドリームチェイサーのラスト、緞帳が降りる、あのわちゃわちゃで、風間は、ラスト2秒、中腰で客席に指差しバチコンしました。生オケとのタイミングも完璧。なんやその余裕(笑)。計算されたファンサービスなのか、ただ単に楽しんでいるのか、この際どちらでもいい(沼)。
あのコメディセンス。間の取り方。場のムードを掴む力が秀逸ですね。そういう人は、人が寄ってきます。嗚呼、真ん中力。
(余談ですが、私は先日、映画館にて、BW舞台版キンキーブーツを観てきたのですが、ぜひ風間さんでお願いしたい作品です笑)
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
「個性」とは、望海さんの歌や礼さんのダンス並みに「突出した技量」を持つことなのか?…彼女たちがトップになれたのはむしろ、真風さんや愛月さんが持っているところの「男役芸」の素質の欠如に悩んだ先に、彼女たちなりの「男役でいることの切実」を提示できたゆえでは?と思ったりします。
風間さんには「役者」として得難い適性と技量があって、あとは「男役としていることの切実」をどう見つけるか。
彼女は風貌的に「女役をやらされがちな男役」ではないかもしれませんが、いちど本公演で半年間女役をやってみてはどうでしょうね?朝美さんは女役をやるたびに、次の公演で明らかに男役としてのステージが上がっていますよね。
いつも楽しく拝見しています。
名前の通り誰と誰のファンかお分かりかと思いますが、どの組も楽しんでいます。
風間さん、演技面に不安はないですが今後はしどころのない役も回ってくるでしょうからその時が踏ん張りどころですね。
また苦労人安蘭けいが2番手時代アイーダで女役を経験してから人気が出たように、男っぽいと思われがちな風間さんも儚さ柔らかさが出たらより魅力が増すのではと思っています。
ちなみに正月の100期生のクイズ番組。
「アルジェの男」のアルジェの極美君や自分の出演作品の順番を間違える雪組2人組(TV視聴率的にはおいしいし爆笑したけど一抹の不安は残りますが)に対し、クイズに即答し「ファントム」クリスティーヌになりきる風間さんとの対比が印象的でした。
どちらも今後を見守っていきたいです。
さて今日は一年ぶりの月組新人公演、彼女をはじめ100期生達最後の新公を観てきます。
桜嵐記は何回観ても飽きることなく、時折、神々の土地を彷彿とさせる場面があり、また歌舞伎のような日本らしい芸術をみせてもらっている満足感があります。
出演場面は多くはありませんが、足利尊氏の存在感は素晴らしいです。勝者の風格というか、年齢ではなく、その人物の持って生まれたトップの力が分かる役作りだと思います。
正行たちのストーリーは、珠城りょうにピッタリだと思いますが、それとは別に、足利尊氏と楠木正成の戦いもまた、サイドストーリーとして観てみたくなります。なんせ、風間vs輝月ですから。
輝月さんが専科に異動後、その枠に風間くんが入ってしまいそうで、路線としては若干心配にもなりますが、宝塚のトップスターとは少し違うかなと思われていた望海さんが、あれだけの人気を誇ったのですから、風間くんも唯一無二のトップスター目指して頑張ってほしいです。
風間さん結構好きなんですが、何か物足りなさがありました。
そうか、彼女は品が良すぎるんですね。
いわゆる「ガツガツ感」がほとんど見えなくて、上手いなぁ~で終わらせてしまう感じ。
暁さんが末っ子キャラを脱皮して兄貴っぽさを出してきてから、一段とかっこ良く男っぷりがあがった様に思うので、風間さんも新公卒業後(というか今度のバウで)一皮むけるかも?と期待しています。
あとは彼女のヅカ愛と向上心が
「長く在団すること>トップ就任」の方向に舵をきらないでもらえれば。