月組トップ娘役・美園さくらが
珠城りょうに続き2020年2作目で退団することを発表しました。
まさしく「でしょうね」案件ですよね。
MSの開催が既に発表されていましたし、
ほとんどの方が予想出来た人事だったと言えます。
かく言う私も、発表は雪組千秋楽後かなと踏んでましたので
月組トップ考察の掲載を待っていたわけですが
(なにせ美園退団前提でガッツリ書いていますので)
まぁ、案の定という感じ。
また、私が勝手に提唱している
「同時就任・退団でないトップ娘役の任期は4作説」についても
(愛希・実咲は新トップ引継ぎ後4作)
また一つ確証が得られたことになりました。
とはいえ、そんな月組人事にまつわる考察は次に回すとして、
本日はそんな彼女について思う
超個人的な雑記をまとめておこうと思います。
だれもが羨むトップの座なのに
まず、大前提として。
私は彼女のことをライトファンとして結構応援しておりました。
ゴージャスで華があるし、ダンスもダイナミックだし、
湿り気を帯びた声質と伸びやかな歌唱力は特筆すべきもの。
スカステ等での発言を見るにつけ、
超主観ですが非常に賢そうで自分の立場を弁えてましたし、
そして何より「首席様」。(権威に弱い私。笑)
にも関わらず、思い返せば彼女のトップ娘役人生は
決して楽しく美しいだけのものとは言い難かった印象です。
なにせトップ就任時からして
「海乃美月が可哀想」とボコボコにされていましたし、
就任したら就任したで「珠城とは合わない」「不仲そう」と邪推され続け、
あげくプレサヨナラ公演はどうやら帯同しない模様。
誰もがうらやむトップ娘役の座を射止めたスターなのに、
なんだか常に「大変そう」なイメージがぬぐえませんでした。
そんな彼女を見る度、個人的には
元花組トップ娘役・花乃まりあを思い出してしまうんですよね。
ともに月の御曹司&中長期トップの後妻として嫁ぎ、
前妻の退団『エリザ』でエトワールと新公ヒロを務める。
劇団都合の人事(96期・99期)に振り回され、
ファンからはあまり祝福されず就任し、4作という短期での退団。
しかも、美園のプレ披露目公演『ON THE TOWN』の
ポスターの真っ赤なドレスは、過去に花乃が着ていたもの。
なんだか不思議なリフレインを感じてしまいます。
お姫様の夢と現実に思う
唐突にどうでもいいことを書きます。
宝塚で最も演じられたであろうヨーロッパのお姫様は
たぶん、マリー・アントワネットとエリザベートの2人でしょう。
そして、美園さくらはこの2人のどちらも演じたことがある
稀有な娘役でもあります。(どちらも新人公演ですが)
そんなマリー・アントワネットは、
神聖ローマ帝国の辣腕皇后、マリア・テレジアの11番目の末娘。
母から「最も自分に似ている」と期待され、
フランス王太子妃にと育てられたのは10女のカロリーネでした。
ところが、9女・ヨーゼファがナポリ王との結婚直前に病死し、
急遽10女が輿入れすることになり、
玉突き的にフランスへ輿入れすることになったのでした。
そして『エリザベート』として有名なシシィ。
舞台でご存じの通り、彼女は本当は姉・ヘレネが嫁ぐ予定であった
皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見初められたことにより
神聖ローマ帝国へ嫁ぐことになります。
2人とも、本当はそんな立場ではなかったはずなのに
なんという運命のいたずらでしょう、
大国の妃という名の華として奉られ、そして散っていったのでした。
もし、自分の身の丈に合った小国の妃どまりであれば、
きっと波乱もなく穏やかな毎日を送っていたはずなのに、です。
今振り返れば、美園さくらがトップ娘役になったのは
99期生で他にトップになれそうな人材が皆無だったからということと、
月組で『I AM FROM AUSTRIA』を上演するからの、
この2点だけだったように思います。
彼女が演じたエマという役は、歌唱力が絶対必要不可欠。
当時のライバル・海乃(や早乙女)では
スターの特性的に演じることの出来ないものでした。
もしも彼女が99期でなければ、首席でなければ、月組に配属されなければ、
あるいは『I AM FROM AUSTRIA』を上演しなければ、
もしかしたら彼女がトップ娘役になることはなかったのかもしれません。
別格娘役として活躍し、その歌唱力とダンスで組を支え、
ファンからは「報われて欲しい」と願われ続けるような
一人のタカラジェンヌとして生きたことでしょう。
もしかしたらそちらの人生の方が
ずっと平和で楽しい毎日が過ごせたのかもしれません。
美園と花乃の不思議なリフレイン
だ、け、ど。
それでも私は彼女がトップに立って良かったと思っています。
トップ娘役というポジションは、
どれだけ実力と美貌を兼ね備えていても、資金が潤沢であっても
タイミングが合わなければその座に就くことが出来ません。
どれだけの娘役たちが、その座に就きたいと心の底から願い、
必死に努力し続けたにも関わらず、涙を呑んできたことでしょう。
それが分かっているからこそ、
美園も日々の研鑽に必死に努めてきましたし、
『雨に唄えば』の頃の、今にも消えそうなほど自分に自信の無い彼女が
『I AM FROM AUSTRIA』では堂々たる大輪の華を咲かせていました。
まさにスター成長物語、
それがこの1年半の月組の見どころの一つだったと
一ファンとしては思うわけです。
マリー・アントワネットもエリザベートも、
運命に抗いながら必死に生きたからこそ歴史に名を残したし、
ミュージカルの主役として後世に語り継がれる存在になったのと同様、
美園さくらも宝塚の長き歴史に名を刻み込んだことには違いありません。
それはとても辛く苦しいものだったかもしれませんが、
彼女の人生にとっても、そして宝塚にとっても、
かけがえのない財産になったことは間違いないでしょう。
そしてそれは、前述の花乃まりあも同様です。
その戦いの日々の果てに傑作『金色の砂漠』を生み出したわけですが、
花乃の退団公演にして明日海りお人気の決定打となった今作も、
彼女無しでは決して語れない作品です。
奇しくも作・演出は上田久美子。
それは美園さくらの退団公演『桜嵐記』も同様です。
なんと不思議なリフレイン。
やっぱりこの2人、なんだか縁があるように思えてしまいますね。
長々と書いてきましたけれど、
一ファンとして彼女の成長物語を最後まで楽しみたいと思いますし、
本人の納得のいくスター人生を歩み切って欲しいと切に願っています。
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コメント
美園さん退団なんですね。
ディナーショーが「宝塚ホテル開業記念イベントとして」と、但書があったので、てっきり残るのかも?と思っていました。汗
月はまさおくんから見てなくて、美園さんも良くは知りませんが1年ちょっととは本当に短いですね。歌える方なら外部でも活躍の場がきっと得られることでしょう!
これから各組でおきる新しい変化は110周年を見据えた人事かなと思います。まさか本当に95期で揃えてくるのか?
蒼太さんの予想と劇団の発表が待ち遠しいですっ♪
さくら嬢は私が月組を観ていた頃にはまだ抜擢されてなくて、従って何の思い入れもなく、逆に海乃さんは思い入れのある娘役さんなので、すごく複雑でした。さくら嬢は(どっちがトップスターか分からない状態と言われた前任者と違い)珠城氏の相手役に徹する事の出来る娘役として娘1に抜擢されたと私は思います。しかし珠城氏と組んでも声の相性が悪いのか、歌唱力も宝の持ち腐れ。彼女は何も悪くないと分かっていても応援できる存在ではなかったです。今の月組の閉塞感を払拭するためには退団するしかなかったと思います。
海乃さんが娘1になれなかったのは龍さん・美弥さん・月城さん等他の男役さんの「お手付き」感があったせいもあるのかも…。もしトップになっていたとしても、珠城氏とは合わないであろうことは明らかで、やはり応援出来なかったであろうと思うと、今の娘2として多くのファンに支持されている立場で良かったのかも知れません。
さくさくーー(;ω;)
蒼汰さんとほぼ同意見です。
トップなのに、「なんだか大変そう」「辛そう」という感想が一番に出てきてしまいました。
かくいう私はちゃぴちゃんが100周年前からずっと大好きだったし
さくらちゃんに対してあまり好みじゃなくて(ほんとごめんなさい)、
最初はあまりいい気持ちではありませんでした。
でも、やっぱり実力があるし
たまきちの前ではいじらしいほど素直で可愛くて、
気付けば応援する気持ちになっていました。
たまちゃぴではそんな関係性は見られなかったですし(もっとさばけた感じw)、
たまにたまきちにそっけなくされてもw、
一途に慕うさくらちゃんが素敵でした。
花乃ちゃんは退団作が本当に当たり役でしたので、
さくらちゃんも当たり役だといいなぁと思っています。
うえくみ先生だから大丈夫な気しかしないですが笑笑
たまきち同様、辛いことも多かった(というか辛いことの方が、かも)と思いますが
最後まで無事トップを務められるよう祈っています。
こんばんは。超ライトなので、美園さんはIAFAでしか観たことがなくて、それでも退団は惜しいなあと思っています。
それだけIAFAのビジュアル、歌声がとても好きでした。惜しまれるくらいが引き際としては美しいとは思いつつ、やっぱりもっと見ていたかったという気持ちもあります。
残りの作品は両方とも観に行きたいなと思っています。
こんばんは!いつも蒼汰さんの鋭い記事を楽しみにしているライトファンです。
さくらちゃんもきっと添い遂げだろうなと思っていたけれど、いざ発表されると寂しいものですね。いろんなところで比較され続け苦労も(のほうが?)多かったでしょうが、それでも自分の力で捻じ伏せ突き進んでいくさくらちゃんはとても素敵だなと思っていました。宝塚を卒業するその日まで、彼女の勇姿を見届けたいです。
月組ではなく、99期でもなければもっと人気のトップ娘役になれたんじゃないかな?
大体彼女を叩いて、海乃美月を推している人ってろくに月組の舞台観ていない人か暗黒時代の月組自体に嫌悪感抱いている人じゃないんでしょうか。
真彩ほど圧倒的に歌えるわけではないけれど少なくとも星風より歌は上手いですし独特の華もある、実力面で彼女を叩く要素なんて皆無なんですけどね。別に星風が実力無いと言ってるわけではなく本当組配属と入団のタイミング、相手役との関係性でこうも違うのかと思ってしまいます。
後、不人気でもトップ娘役になった方が幸せ的な話、本当にそうでしょうか。内状はおろか生徒さん一人一人の心情なんてわかるわけありませんから迂闊な事は言えませんが、少なくとも花乃さんや美園さんを見ていてそんなことは言えないと思います。二人ともほとんどのファンからはろくに舞台技術面を見られることなど無く96期である事、組が暗黒である事等、理不尽な叩かれ方をしつつ相手役のファンの方にも大方好かれる事なく辞めて行くんですから。(美園さんはまだ猶予はあるけれど)
花乃ちゃんの場合は相手がみりおだったからみりおの退団前に宝塚幻想曲や金色の砂漠が再評価されたけれどたまきちの場合将来的な再評価も正直望めないですし…
それなら海乃、城妃、有沙の様に別箱の作品でヒロインとして名を刻みつつ謎の報われ論などで判官贔屓なファンから愛される方がよっぽど幸せだと思うんですけどね。
男役、娘役問わずトップになる事は別に無条件で幸せな事でも無いですし、逆もまた然りだと思うんですけれど如何でしょうか。
宝塚で最も演じられた女性がマリー・アントワネットであれば、
最も演じられた男性はマクシミリアン・ロベスピエールかもしれない。
彼は革命の頃には王室が出てなくても必ず出ているし、
星組ナポレオン、雪組ルパン三世のように、チョイ役でも現れる。
美園さくらちゃんへの記事ありがとうございます。
なぜか不評だったI am from Austriaは、チケット易(チケット難の反対語の意味で)のため、5回観劇できました。それも観劇してから「もう1回観ようかな」、「もう1回観ようかな」と贅沢に気分で観劇できたし、2014年以前の宝塚を思い出させました。
私個人としては、とてもよかったんですけどね。
そして美園さくらちゃんが、2幕の最後らへんで「優しすぎるわ」と歌う場面はいつも本当に涙が頬を伝っているように見えました。
この人はきちんと泣ける人なんだなぁと思いました。
声もすごくよかった。
あと、首席とか、数学ができるとか、なのに、歌もダンスも上手くて、頭もいいけれど相当の努力家さんなんだろうと思います。
4作は少なかったですね、大劇場お披露目は地味でしたし、
けれど「I am from Austria」があってよかったなと思います。
そしてウエクミ先生の退団公演、すごく楽しみです。
蒼汰さん、こんにちは
さくらちゃんの記事読めて嬉しいです。
激しくうなずきながら読んでしまいました。本当に人事ばかりは分からないことだらけで、タイミングと劇団の事情と、自分の努力ではどうにもならないことも多くて、今までもたくさんの方々が涙したり唇をかみしめたりしてきたこともあるだろうと思いを馳せてしまいました。。
私も、短い期間でしたが、そんな中でも宝塚でしかも月組で美園さくらという娘役に出会って応援できたこととても幸せに思っています。
彼女の成長物語だったというのには本当に同意で、雨唄のときのはしごのシーンの横顔が本当にかわいくて、でも自信がなくてでも必死で奮い立たせていた気丈な背中とか、すごく思い出してしまいました。
今は珠城さんや月組の皆さんの温かくも芸達者ななかで、研鑽を積んで、すごく伸び伸びと(伸び伸びしすぎ!?)1作品1作品取り組めているのだろうなと、ほっとします。そして毎回毎回成長していて(上から目線のように聞こえてしまったらごめんなさい。。。)本当に努力家で頭が下がる思いです。
就任したときからずっと花乃ちゃんも最後は本当にみんなから祝福されて送り出してもらったというのを心の支えにしていました。
さくらちゃんも、娘役のタイプとしてはまた違いますが、あと大劇場では2作品、どんな表情や役を見れるのか、今から本当に楽しみですね!!!
課題は、発声とお芝居の居方かなと個人的には思っているので、芝居の月組のプリンセスとして、そこも頑張ってほしいなと、努力で色んな声を捻じ伏せてきた彼女に期待したいです!
なるほどなー。
思ってたんですよ、なんとなく。この2人の「トップになったのにかわいそう」感が。
それが何故なのか今回の記事で合点がいきました。
そして、エリザベートとマリーアントワネットを引き合いに出すのはさすがです。
壮大なスケールの話になりましたけど、運命に翻弄されつつ必死に生きた4人の姿は美しいですね。
いやー、今回も良い記事でした。
さくらちゃん、声質がとても好きでした。
ただ、以前蒼汰さんも仰ってましたが、さくらちゃんのキャサリン芸がなかなか好きになれず、、、めっぽう月組海外ミュージカル祭りの為のトップ娘だったのかなと思ってます。
恵まれたジェンヌ、恵まれないジェンヌ、報われたジェンヌ、報われなかったジェンヌ…さまざまな形がありますね。
花乃ちゃんのお披露目が金色だったはとよく思ったものです。
たまきちもさくらちゃんも、本当に時期が違っていたら良かったのかな。
今日、またまた不思議なニュースが発表されましたね。
水美のディナーショーって何でしょう? 退団するには早すぎるし、移動するにしてもDSって? マジ労い?
良い意味で連日いろいろ出てきて、コロナの鬱々をひととき忘れてしまいます。
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
妄想:「マリー・カロリーヌは フランスの じょーおーなのですからっ!」
うーん、「アン トワ ネット」ってまず語感がすてき。まるで「アン・ドゥ・トロア!」とワルツを踊るような響きを感じるわ。「カロリーヌ」って、語感が滑らかすぎて華やぎに乏し・・・すみません。本題に
カロリーネは偉大な女帝マリアテレジアに似た、聡明で慈愛に満ちた、美智子様のような方だったのでしょうね。そんな方がフランスに嫁いだら・・・
うん、まず革命が起きない(笑)もしくは王室一家は追放か亡命かで済んでいたでしょうね。それではツヴァイクはマリーアントワネットの伝記を書かないし、池田理代子先生は「ベルサイユのばら」を描かなかったでしょう。
ヘレネも平凡に嫁ぎ、幸せな結婚生活を送ったそうで、「死」とロンドを踊るようなキャラでは無かったようで。
・・・「ベルサイユのばら」も「エリザベート」も「うたかたの恋」も無い宝塚って何なんだ。そもそもヅカが今の形では存続していないかも。うーん、ヅカが無かったら、私は何をしていたのだろう・・・想像がつかないや。
とりあえず、マリーアントワネットとエリザベートのご冥福をお祈りします。
最近、娘トップは4作が多いですが、
舞空瞳以外に中期を務める人がいないと候補が枯渇するように思います。
そうすると、海乃美月、小桜ほのか、天彩峰里あたりにもチャンスが出てきそうです。
数年前までは、「まだやるんかい!」が花組、月組であり、星組、宙組も長めでした。
割を食ったのが、早乙女わかば、星乃あんり、怜美うらら、城妃美伶だと思います。
蒼汰さん、美園さくらさんのこと書いてくださってありがとうございます。
私自身も全組観劇のライトファンで、月組はどちらかというと美弥ちゃんがいたから見ていた的な思い入れの薄い組ではあります。しかし、さくらさんはちょっと話しただけで見える ロジカルさ、賢さで気になる存在でした。そこへ『I AM FROM AUSTRIA』関連で見た旅特番で、さくらさんへのたまきちの塩対応が何かと話題になりましたが、そういうカップルも見たかったし、あれでたまきちにも 好感が持てたんですよね、 舞台でも若い相手役を迎えての覚悟が見えたというか、 ふしぎ・・・さくらさんの計算にはめられたんではないかと思うくらいです(笑)。
退団記者会見のコメントもかわいらしい。 残り2作もあってよかったと思えますし、正直もう少し歌劇であの歌声を聞きたかったですが、外界ではあの賢さをもって、難しい仕事もこなせそうなので、何を始めるのかなぁと楽しみでもあります。
そして月組にはカードが揃った「あの方」の落下傘で、「あの娘役」と短期でもいいので トップを務めてもらえたらと、判官贔屓目線で妄想をしております。