昭和ファンタジー・雪組『双曲線上のカルテ』感想

 

和希そら主演の東上公演『双曲線上のカルテ』を、

ライブ配信で観劇しました。

 

実は本日、休日出勤で途中から見る算段だったんですけど、

予定を1時間巻いて終わらせてきたのでしっかり開幕から見られましたとさ。

やったぜ、自分。笑

 

ってことでざっくり感想です。

なお、初演版は見ておりませんのであしからず。

 

『双曲線上のカルテ』は昭和ファンタジー

 

私は基本的に「細けぇことは気にすんなYO!!」派でして、それこそ舞台や映画、ドラマといったエンタメに現実世界の価値観を持ち込むのはナンセンスだと思っています。『ロミオとジュリエット』をアホな若者が先走ったがゆえに無駄死にした話、なんて捉えるような人が居たら、もう舞台なんて観んな!!と怒りを覚えるくらいです。

…けど、本作の前時代感は凄かったなぁ。殴る蹴るの話じゃありません。特に第一幕は、セクハラ許せ、生保の不正受有に加担しろ、ウソの手術に付き合え…もはや一周回って昭和ファンタジーですやん。当時でもオッケーだったんでしょうかね、この価値観?これで主人公に感情移入しろというのは、さすがに…と言いたいところなのですが、和希そらの熱演とカッコ良さで、まぁ半分ぐらいは吹き飛んだかな。笑

全体的に石田先生らしい昭和モラハラ&お寒いギャグ感で進行しますけれど、驚くほどサクサク話は進むし、突然挟まれる無駄にドラマティックな主題歌も印象的で、なんだかんだ結構面白かったです。最後に純粋無垢な女性を母親に会わせた挙句、結局は自殺したことについて、たぶん現代の価値観したら「ノー」なんでしょうけれど、私は「いいわー」ってなりましたし、そうさせたのはたぶん、和希そらの確かな演技力がゆえでしょう。「夏になったらヒマワリを観に行きましょう」って言われて、一瞬動揺してしまうところもさぁ…なんというか、憎いねー、ずるいわー。

好きになった孤独な男に、こんな風に一瞬愛されて、そして死んでいかれる切なさ…これぞまさしく昭和ファンタジー。現実世界なら最悪ですけど、エンタメだからこそ成立しうる恋物語をこの令和の時代に見せてくれたのが、宝塚的美意識なのかなと思う一方で、これは男のエゴだろと言われれば、まぁその通りですよねっていう話でした。

 

主要キャスト・ざっくり感想

 

では、各キャストの感想を。

主人公の外科医・フェルナンドを演じたのは和希そら。今回の再演にあたり、なんで今更『双曲線上のカルテ』?と思ったのですが、ライブ配信を見てその理由がなんとなく分かりました。『夢千鳥』でも感じましたけど、和希そらは現代劇が良く似合います。男役という究極ファンタジー創造物のはずなのに、どこかリアルで実在的、それが彼女の強みなのでしょう。青い炎のような視線、計算し尽された声色と眉間のシワ、昭和を感じさせる謎の髪型、とんでもない開襟、もうぜーーーんぶカッコ良かったし、ちゃんとしたキメの瞬間にツーっと流す涙まで完璧でした。

ヒロイン・モニカを演じたのは106期生の華純沙那。研4とは思えないほどの安定感ある芝居とダンスが素晴らしかったですし、最近の娘役には居ない珍しい顔立ち、かつ圧が強過ぎない楚々とした雰囲気が良かったです。表情がビックリするほど壇れいでした←。

2番手格・ランベルトを演じたのは縣千。まずは無事復帰が出来て良かったですね。そして驚くほど、顔 面 が 良 い 。カタブツキャラなのにこれはずるい。珍しく「静」の役だったことと、和希そらとの並びも新鮮で面白かったです。あ、和希そらに引っ張られたからか、なんだか全体的に芝居上手になりました?これぞ良い科学反応ですね。

 

その他のキャスト・ざっくり感想

 

で、個人的MVPはクラリーチェ役の野々花ひまりですかね。「あの女ともう寝たの?」「私も見せてもらったわ、あなたより先にね」というセリフを、宝塚ナイズトして表現出来る娘役はそう居ないでしょう。そんなイヤな女の役も板についていたし、病弱モードからの覚醒までの表現もさすがでした。一番ゾクっとしたのが、華純モニカに和希フェルナンドの病気のことをなぜ教えてくれなかったのかと問いただされた時の、視線の外し方。いわゆるトップ路線に絡まないからこそ出せる存在感だと思います。いやー、イイ娘2格になったもんです。

その隠れた兄、アントニーオ役の咲城けい。ノーブルでロイヤルな雰囲気は、さすが星組育ちという感じ。とはいえ、第1幕では発声からして縣千を上回るクラッシャー感があったのが若干心配…。いや、第2幕からはだいぶ安定してましたけど、走り出しから上手くのれるようになるといいですね。あ、フィナーレのニコニコダンスが良かったです。

その母、アニータ役を取った希良々うみ。スーパー上手かったですけど、さすがに咲城アントニーオの母には見えなかったかな…どう考えても姉弟だわ。初演版の夢華あみはどんなだったんだろう?(小声)ま、彼女演じるアニータもイイ女に見えたわけで、それだけで大成功な配役だったと思います。

ちょっと目立つ役を貰ったのが、期待の若手にして107期生首席入団の白綺華。噂通りのさすがの歌唱力にヒロイン声でしたね。もう少し垢抜けるとイイかなと個人的には思いますが、これからの進化と経験値の蓄積に期待です。

その他、桜路薫&杏野このみの温かみのある芝居、ジーノ役(この2人の息子で病気を黙ってた人)稀羽りんとの顔面の良さ、愛すみれのまさかの婦長エトワール、眞ノ宮るいのガツガツダンスも良かったですけれど、一番印象的だったのは久城あす演じたジョルダーノの驚く程の実在性ですかね。いやいやカッコ良すぎるでしょ。TBSの医療系ドラマに出てませんでした???というリアルさに驚きました。笑

 

なんで舞台がイタリアなんだろう?

 

で、最後まで見て単純に不思議だったのが…なんで舞台がイタリアなんだろう?ってことです。初演版を見ていないのでその雰囲気を伺いしれませんが、驚くほど日本の(昔の)医療ドラマ感凄かったですよね。

というか和希そら率いる雪組&専科2人の作画というか佇まいが「和」過ぎて(違うのは杏野&桜路くらい?)途中から日本が舞台だと勘違いするほどでした。フェルナンド&モニカの心中決意旅行なんて、完全に日本海の水飛沫と粉雪が散らついてた気が…。笑

ま、そんな妙なリアルさを含め、現代劇だからこその実在性が和希そらとシンクロした、意外と面白い逸品でした。

 

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コメント

  1. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、拝見しております。
    早霧さん主演の回を知る叔母と共に、今回、梅芸DCで和希フェルナンドをみてきました。
    100期まのみやランベルトを見られたのは、偶然とはいえ個人的には嬉しかったです。縣さんの白衣のスチール、男役度が増して、カッコよかったです(大柄な雪ん子の白衣裳も、好きでした)。
    和希さん、このさき高みにかけあがってほしいです、どうか(祈)。
    全ツの感想記事も、お待ちしております。さきあやあーさ。雪組って何でしょ、もう大好きですねー。やはり私は。

  2. あやこ より:

    久城あすの日曜劇場感!なんだったら、こないだの健康診断のレントゲン技師が、あんな感じだった笑!この頃は、学年下の桜路さんや天月さんが『おじぃ担当』になりつつありますが、脇役の適材適所を大切にする雪組、それはそれでいいのかな、と。
    和希さんの、あの謎の昭和髪型も(ボニクラの時も!)大好き。カツラの選び方、毛の散らし方、セルフプロデュース力の高さを感じます。
    次回の雪組ホテル祭りショーも楽しみ!

  3. みふゆ より:

    こんにちは、同じく配信で双曲線上のカルテ楽しみました。
    明らかに昭和の日本感が漂っているのに舞台をイタリアに変更する謎のアダプテーションって、蘭寿さんの方の「逆転裁判」も原作ゲームは日本が舞台なのに何故かアメリカの話に変更されたりと宝塚でたまにありますよね……個人的には時代物でないちょっと前〜現代の日本だと宝塚の非日常感が薄れるからなのかな?と勝手に思っていたのですが、海外のストーリーなのに日本感が漂う方が見てる方としても違和感が大きいので本当に謎です。

  4. ぴき より:

    いつも楽しく拝見しております。配信は見ずに青年館観劇予定です。

    正直、和希そらさん主演じゃなければ原作者が苦手で観ない作品。改めて原作読みましたが、嫌悪感しかありません。アラフィフの私も後期高齢者に入った母も。昭和中年男目線ファンタジー。何故令和の宝塚で。

    でも和希そらさんなら究極の男役芸で魅せてくれるでしょう。宝塚の気品を保ちつつ、お人形っぽさがないというか、リアルな実在感が際立つ演技力。加えて歌もダンスも素晴らしいので。

    宝塚の作品選びって複数の人で決定するんでしょうか。結局どんな作品でもファンは観に行くから割と適当なんでしょうか。

    • ぴき より:

      青年館観劇しました!
      原作を毛嫌いしてましたが、宝塚ならではの別作品になっており、和希さんの熱演もあり、とてもよかったです。そんなにクズ男でもなかったし。

      確かに昭和ファンタジーでツッコミどころはありますが、結末のわりには意外なほど観劇後多幸感がありました。

      久城さんのレントゲン技師と希良々さんのアニータ、野々花さんのクラリーチェ。ヒロイン華純さんも声が美しく、モニカにぴったり。そして和希そらさんの繊細な演技と素晴らしい男役芸。

      観てもいないのに、文句ばかり書き込んで後悔しましたので、訂正させていただきます。もっと色んな和希そらが観たい!!

  5. Calm より:

    「突然挟まれる無駄にドラマティックな主題歌」に笑っちゃいました笑なんか分かります。石田先生の作品は歌が少なくて同じ歌を序盤、山場、ラストに挟んでくる印象がありますね。
    あと同じダーイシ作品の「長い春の果てに」も医療系でしたけど、そういうの好きなんですかね〜。

    • サリー より:

      いつも楽しく拝読しています。
      今回のご感想、はげしく同意しながら読み進めました。

      今回は、珍しく原作予習して(→なぜヅカはこの作品を選んだのか、なぜわざわざ再演するのかというモヤモヤをずっと抱えながら)、梅田配信は都合つかず、青年館初日観劇した時点で、三拍子揃った実力と容姿に惚れ込んでいますが、私の正直な感想は、踊って歌って、カツラかぶってない和希そらさんが好き、でした。
      あんな昭和の価値観満載の官能小説を、カスミ食べて生きてるはず(これもそろそろどうなのかw)のジェンヌさんたちが参考資料として真面目に読むところとか、ジャニーズのようにアンタッチャブルな何かを感じます。

      あの色気あふれる演技が、夢千鳥に続き、クズ男を演じたら右に出る方がいないのはわかるのですが。
      ストーリー自体にどう頑張っても感情移入できなくて。

      フィナーレの和希さんを目にして、ご褒美は2時間我慢するともらえるんだ!と感じました。
      それ以外の感動ポイントは、エトワールでした。伸びやかな歌声が素晴らしかった。

      宝塚に現実味を求めるつもりはまったくないのですが、和希そらさんの実力存分に発揮する演目として、ハッスルメイツ現在版くらいの内容で、歌と踊りをあますところなく堪能したいです。

  6. 匿名 より:

    本当の昭和生まれの方からしたらあれは「昭和の謎の髪型」なんでしょうが、一周回って今前髪立ち上げセンターパーツや襟足は流行っているのですよ〜